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sazanamiの物語

恋愛小説を書いています。 創作表現上の理由から、18才未満の方は読まないで下さい。 恋愛小説R-18

とてもかくても 14 (R-18・エロス系)

Posted by 碧井 漪 on   0 

口寂しいというか心が寂しいのよね、とはしっかりと身に沁みて分かっている今日この頃。


家に帰れば私の事を誰も待っては居ない。


でも疲れてるから、誰も居ない方が煩わしくなくていいのよ、とも思う。

会社が軌道に乗って程なくして手に入れた、

それなりの価格でそれなりの品質を伴ったこの一人暮らしには広いマンションの部屋での私の夜の過ごし方は、

お風呂に入ってご飯を食べて寝るという、

世間で多く親しまれている一般的な賃貸アパートに住んで居た昔と全く変わらない、

いたって普通のもの。


寝付けないという事も年のせいか無くなったから、止められているお酒も寝酒と称して飲まずに済む。


家の事は家政婦さんを頼んでいて、

掃除も洗濯も料理も全てしてくれる。


今夜も予約時刻通りにお風呂が沸かされていて、

帰宅したらすぐにお風呂に入りながら、好きな曲を二、三曲聴いて上がる。


肌触りの良いシルクの三着色違いで持っているパジャマに着替えて向かうのはアイランド型のダイニングキッチン。


気に入って購入した黒の木製ではない材質のテーブルの上には、

栄養バランスの取れた、野菜が多めのヘルシーな和食がきちんと用意されている。


今夜は秋鮭の塩焼きに昆布だしのお吸い物、かぼちゃの茶巾絞りに牛蒡と里芋と豚ロースの煮物、昔は牛蒡の独特な香りが苦手だったけれど、家政婦さんにこうやって甘辛く煮て貰って食べるようになってからは好きになった。


それとも、年齢を重ねた事に因(よ)る味覚の変化かしら?


まぁ、細かい事はいいわ。


テーブルに着いて両手を合わせた志歩理は箸を取り、

薄味にして貰っている唯一愛を感じるその小鉢の中の料理を抓んだ先を、

開いた口元に手を添えて運んだ。


一口目は大きく口いっぱいに含むのが好きな私は、人目もないのでお行儀が悪くてもと、丸く切り出された里芋を頬張った。


ゆっくりと歯で噛むと、ほろりと崩れて口の中いっぱいに溶けて行く。


うん、美味しい。柔らかくて牛蒡と豚肉とお醤油の味も染み込んでいて、とても食べやすい柔らかさに炊き上がっている。


家で誰かが自分の為だけに作ってくれたものを食べるのって、最高に贅沢な気分。


色々あった私も、今はただ生きて働いて食べて寝て・・・の繰り返し。


田舎で暮らす親の面倒はお金だけ払っていれば、お嫁さんが引き受けてくれていて、


家族としての私の手は特別必要ない。


かねてから父と折り合いの悪かった私が帰らない方が上手く行くと、母も兄弟も思っているからそれでいい。


人に必要なのは愛じゃなくてお金。


愛という見えない感情は、裏返って切りかかって来る事もあるけれど、


お金はそこにあるだけで力になってくれる。


一つ渡せば一人動かし、二つ渡せば二人動かせる。


お金=権力そのもの。


お金によってこの世は動き、動かされ、支配されている。


人間が支配していると思われているけれど、実はお金よ。


お金が無ければ、私など居場所のない人間。


持っている人と持っていない人を比較したら、命の重さといわれるものも違って来る。


私には浴びる程の愛を向けてくれる人は居ないけれど、浴びる程のお金がある。


両方手にしている人なんて、中々居ないの。


どちらかなら、大半はお金を選ぶでしょう?


僅かなお金を奪う為に罪を犯す人が居るというニュースを、一日一度は耳にしている。


多分、今日もまた・・・


プチン、志歩理はテーブルの上にあったリモコンでテレビを点けた。


今の時間帯、ニュースはどの局で・・・パッパッとボタンを押していると、

その時に流れて来た言葉を思わず拾ってしまい、リモコンをテレビへ向けていた志歩理の手は揺れた。


『結婚したら、お前を愛しちゃいけないのか?』


どこかで見たような渋めの同じ年代の俳優の男が、画面いっぱいに映されて、

堂々とそんなセリフを吐いた。


正直、どきりとした。


な、何これ、不倫ドラマ?


『私を捨てて取引先のお嬢さんと結婚したのに、今更勝手で都合が良過ぎるわ』


対する女が困惑した表情を浮かべるお芝居を見て、


ああ、そういう系統のお話と一歩引いて考えられた私は、止めてしまっていた呼吸を再び始めた。


カタン・・・リモコンをテーブルの上に下ろした。


愛のない政略結婚の後に、昔自分の捨てた貧乏な家の女と再会して、

やっぱりヨリを戻したいっていう感じの展開に、

反吐(へど)が出そうよ。


思うけど、この場合悪いのは男よね。


二人の女の間をフラフラしちゃってさ。


奥さんが旦那の元恋人の存在に嫉妬して何か企むつもりみたいだけど、

それなら元恋人じゃなく、旦那の方を懲らしめなさいよ、というか、

私はそんな旦那から慰謝料貰って別れたけれどね。


どん底を味わったそのおかげというか結果で今の成功があるんだから、人生はどうなるのか解らないわね、本当に。


男と女の最後、

愛より必要になるものは結局お金なのよ。


結婚するにしても離婚するにしても、

浮気するにしても不倫するにしても、

お金が要るのよ。


寂しさを埋める為にもお金。


生きる為にお金、

私の存在価値もお金で量るのよ。


お金の為に働いて、働く為に生きて、

周囲は「私」が必要なのではない。


畠山志歩理という社会の中の一人、会社社長である一人であるから構うだけ。


ただ過去に旦那に浮気されて捨てられたバツイチで子宮全摘して生殖能力も無くなった四十路の女だったら、

誰も見向きもしない。


成功して良かった・・・私にはもうこの人生にしがみ付くしかない。


誰も信用なんてしない。


「誰も・・・」と考えず呟いていた志歩理の脳裏に浮かんでいたのは泰道だった。


今頃は家で、奥さんとお子さんと川の字とかで眠っているのかしら。


私には出来なかった事を実現してくれた奥さんとお子さんと、しあわせに暮らしている彼の顔が思い出されて消えてくれない。


「よかったね・・・しあわせになれて。」本心だった。


産む事は出来なかったけれど、この躰に唯一宿した子の父親。


不幸になってなんて、願った事がない相手。


病気にならなかったら、子どもを産めていたら、私達は今頃、どう過ごしていたのかしら。


生きていたら、丁度幼稚園に通っている年齢の子。


朝から、細かい細工を施した子どもに人気のキャラクターのお弁当を作って、その残りを自分と旦那のお弁当に詰めて、

合間に他の家事を慌ただしくこなしながら、旦那を送り出し、幼稚園の送迎バスに子どもを乗せて、

そして自分も出勤する・・・みたいな事は、

私には縁がなかったけれど、あったらあったできっと大変で、それがしあわせだと思えるかと考えたら、どうなのかしら?


寂しいと思う暇がなさそうな事だけは確かかもしれない。


泰道と奥さんもそんな感じなのかな。


ふう。


そんな事をいくら考えたって、私の一生はもうずっと一人でいる事が決まっている。


いつ病気が再発するか解らない、子どもも産めない私と、お金目当てで結婚する以外の理由を持たない相手と一緒に老後を過ごしたいとは思えない。


そうなると、私に残るのはお金と孤独だけ。


そうか。


自分の半分を占めている寂しさを、無理に埋めようするからいけないのよ。


堪えられそうにない寂しさだとしても、それだけで死んだりしないんだから、

苦しくてもじたばたせずにこのまま黙って抱えて、死ぬまで生きるしかないの。


一人は惨めなんかじゃない、逆に私を強くしてくれる時間なの。


カシャカシャカシャ、カシャカシャカシャ、

テレビを消し、ほのかな間接照明が灯るだけになった部屋には、

唇を固く結んだ志歩理が振り続けるプラスチック製のタブレットケースが立てる静寂を壊す音が、

孤独を強く感じている志歩理を宥めているかのように響いていた。



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