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sazanamiの物語

恋愛小説を書いています。 創作表現上の理由から、18才未満の方は読まないで下さい。 恋愛小説R-18

とてもかくても 13 (R-18・エロス系)

Posted by 碧井 漪 on   0 

いつもとあまり変わらない22時頃に帰宅した泰道は、

覗いた風呂場の壁に立てかけられている風呂の蓋を見て、軽く溜め息を吐いた。


また今夜もシャワーか。

たまには風呂に浸かりたい。


それも、湯船に滔々と張ったお湯に、

ざぶんと入って、ざばーっと溢れさせる、そんなささやかな贅沢を、

何の愉しみも訪れてくれない短い夜に味わいたくなる。


しかし現実はこれだ。

休日なら息子と入るからとお湯を半分張る湯船は、

掃除もされていない。


22時を回っていたが、俺は両袖を捲ったワイシャツにパンツ一丁の恰好で風呂掃除を始めた。


ゴシゴシ、ゴシゴシ・・・


妻も息子ももう寝ているのに、俺は一人、夜中に風呂掃除。


それでも自分の為だから苦にはならない。


おっ、ステンレスのカランの白い湯垢が剥がれてピカピカになって来たら、何か気持ちいいな。


一人でこっそり湯を溜めて入ったのが明日の朝バレたら、美那は怒るかな。


もったいない!って怒るだろうな。


水道代とプロパンガス代って、風呂一杯分で幾らなんだろうか。


そうだな、一食の昼代分位だったら払ったら許して貰えるだろうか。


おそらくだが、家で入る方が街中の銭湯より安い筈だ。


ふっふっふ・・・やった!


ピカピカな風呂、そして遂に湯を張る。


急がないとな、と焦った俺は、

いつもより大きく湯栓を捻った為に、

ドドドドと、風呂全体に水の音を響かせてしまった。


それが二階で寝ていた美那にバレて、

「何?こんな時間にお風呂?しかも一人で・・・どうしたの?」

どうしたの、という言葉のトーンには明らかな不満が現れていた。


それにヒヤリとした俺は、

喉に突っかかっているような後ろめたさを、言い返せない言葉と共にごくりと飲み下しながら、

まだ湯船の半分にも満たないお湯が注がれていた蛇口を慌てて締めた。


「ああ、うん・・・肩が痛くてさ、冷えたのかも。何だかお湯に浸かりたくなって・・・駄目だった?」


「え・・・うん、いいけど、あっ、でも・・・あんまりいっぱい上までお湯張らないで、一回のお洗濯で使い切れないから。それと終わったら蓋しておいて。お風呂の壁が湿気でカビちゃう。残り湯は明日洗濯機に入れるから。」


解ってるよ、いつもそうしているだろう?と俺はパジャマ姿の美那に向かってふてくされ気味に言う代わりに、

「ああうん、解ってる。そうだ、折角だから一緒に入る?」と明るくにこやかに提案した。


「え・・・?ううん、いい。さっき入ったから・・・私、先に寝てていい?」


妻はやんわりというか、言葉はそうだが、

その目には、はっきりと俺に対する拒絶の色を滲ませているように見受けられた。


とりあえずの望みを断たれた俺は、

「ああ、うん、おやすみ・・・」

「おやすみなさい。電気、忘れずに消してから寝てね。」

「はい。」

駄目押しされた会話はようやく終わった。


パタン。


裸になった俺は、バスルームの扉を閉めた後で、はーっと大きく息を吐いた。


ザバザバと頭からシャワーを浴びて、メントール配合シャンプーでガシガシと洗って素早く流し、スースーする頭の水を振りながら切って、ざぶんとならない冷め始めた臍までのぬるい湯に浸かって、

両手のひらで顔の汗か何か解らない水分を拭って、顔を覆ったまま、

はぁーっとでっかい溜め息を、多分23時を過ぎた誰も居ない風呂場に響かせた。


一人で暮らしていたら俺の給料は丸々一人で遣える。


二人で暮らしていたら半分、三人で暮らしているから1/3なんて単純な計算式は成り立たない事は、

家庭を持った一社会人で大黒柱の俺には理解してなきゃならん事なのだろうが、

若干、腑に落ちない。


三万円の小遣いはまぁ世間一般、

だけど家に帰って来て、

新築だからまだ新しい風呂に湯も並々張る権利もない俺の存在って、

何なんだろう。


稼ぎが少ないから、それはわかってる。


妻も節約してパートにまで出てくれている。


残業しても残業代もつかないんだから、それだったら早く帰って来てこっそりバイトにでも行った方がお得じゃない?と言われながら、俺の会社内の立場的にはそうも行かなくて、

サービスと言われながらのタダ残業して、

電車に揺られてクタクタになって帰宅したら、

妻も子どもも眠っていて、お帰りなさいとは迎えられない現実。


シャワーを浴びて、レンジで温めるのもメンドクサイから、若干冷たいままの夕飯をもそもそ食べて、

二階の寝室で、

ベッドに眠る妻と息子の隣の床に敷かれた安くて薄っぺらさが特徴の布団に縮込まりながら寝るのがいつものパターンだ。


こうなると知っていたら、

俺は果たして結婚していたのだろうか。


そもそも何で結婚した?


美那が好きだったからか?


まぁ、好きだから?嫌いじゃないから結婚したんだが、

付き合っていた期間は短かったから、新婚当時と比較してみると、

現在は明らかに俺に対する態度が変わっている。


よく、母になると恥じらいなど無くなるというが、まさにそれは否定しない。


いや、別に家の中で恰好付けていろとかばっちりメークしろとか、そんな事は言わない。


細かいから割愛するが、とにかく変わったのは俺より妻の方だ。


俺も大した家事育児はしていない方かもしれないが、全くという訳でもないと自負している。


出来るなら、もっと仲良くというか優しくされたい。


必死にご機嫌を損ねないように努め、年々開いて来てしまっているように感じる距離を縮めようとする俺は、

現在、妻からしたら結婚時よりも腹が出て、格段にくたびれたただのオヤジとしか見られてない。

判ってる、

一番嫌なのは、この俺が築いたとされる家庭に納まろうと、妻にも息子にもいい自分であろうと媚びてしまう態度に対してだって事も。


この苛立ちを吐き出せないまま、どんどん溜まって行く。


温いというより冷たくなってしまった湯の中から、重い腰を中々上げられない。


結婚していなかったら、実家の両親には35にもなって嫁の来手(きて)もないのかと、やいのやいの言われるだろうが、

今はその方が、こうして築いてしまった家庭への責任がない分、まだマシだったかもしれないという想いに頭の中が支配されている。


俺には妻と息子が居る。


美那には夫と息子が居る。


志歩理には、両方居ない。


志歩理が俺と結婚していたら・・・


妊娠した俺の子を志歩理は産みたかっただろうか、それとも・・・


その夜も俺は志歩理の夢を見た。


志歩理が俺との間に生まれた子どもを抱いて、


そして俺においでおいでと笑いながら手招きしている夢。


俺は幸せだった。


愛されていると感じて、涙が零れた。


この夢は願望だ。俺自身が愛されたいという願い。


それも・・・何故か妻ではなく、志歩理に、無性に愛されたい。


しかし、それは結婚している俺には絶対に言ってはいけない想い。


独身で志歩理と同い年で金も地位もある木村副社長を、俺は妬む程羨ましく思っていた。


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    碧井 漪

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