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sazanamiの物語

恋愛小説を書いています。 創作表現上の理由から、18才未満の方は読まないで下さい。 恋愛小説R-18

とてもかくても 20 (R-18・エロス系)

Posted by 碧井 漪 on   2 

本当にこれで良かったのか?


俺は、好きな女に突然やけっぱちにもとられそうな告白をしてフラれ、

まだこんなにも胸の奥の更に奥が熱く震えているのがありありと解るのに、捨てなきゃならない想いをどうしようも出来ずにいるなんて。


だけど、久しぶり、いやかつてないと思う激情をこのまま捨てたら、

二度とこんな風に胸を焦がす出来事には、死ぬまで多分出逢えないだろうな。


甘くて酸っぱくて切なくて、それでいて身を蕩かして浸り切ってしまいたくなる甘い溜め息の零れ出す気持ち。

しかし、

"早く家に帰った方がいいわ。二度とこんな事しないで。どうか奥さんとお子さんと大切にして"

志歩理にフラれてしまった俺は、

これで永遠に志歩理とは会えない、さよならって事?


背徳の恋心とは、たとえ死んでも蘇らせてはいけない感情・・・なのだろうか?


本当に駄目?


俺は愛されたいと思っていた。


"あなたを、絶対に愛したりしない"


はっきりしっかり志歩理に告げられて、

淡い期待を打ち砕かれた俺が夢から醒めてからも、

それでもいい、愛されてなくても、せめて愛していたいという気持ちがまだ残っていた。


この身が滅びたら、この世界から解き放たれたら、

一番最初に叫びたい、揺るがない正直な想い。


好きだ、志歩理を思う存分愛したい。


志歩理に一番愛されない代わりに、志歩理を一番愛しているのは俺でありたい。


地獄に落ちて業火に焼かれながら、

それでもきっと思い浮かべるのは、どうにも鎮まらない離れてくれないこの想いだろうと考える。


昔の想い出は美化されただけの、大した本質のない物なのかもしれないけれども、

今、俺にとって志歩理と過ごした過去の半年が一番大切なココロの支えになっている。


二度と志歩理には伝えられなくなった"愛"という想いを抱いて、

息苦しいこのままいつまでか歩き続けたら、いつの日か俺はしあわせになれる?


いつまで行ってもどこまで行ってもしあわせにはなれないのなら、

今すぐ地獄に落ちて、

焼かれそうな想いに身を委ねてしまったら楽になれる、そう思った。


落ちてしまおう、地獄に。


"愛したりしない"と志歩理に当然のごとく告げられても、

想い出に縛られたままのこんな俺。


誰も必要としなくなった存在と感じられる俺。


みんなが欲しいのは金。


美那も志歩理も、

こんな情けない俺の命より、愛より、欲しいのは金なんだ。


疲れたんだ、もう。


金を作れたら、家族にそれを遺して、

今すぐ地獄に落ちよう、


志歩理を愛していると気付かなかったら俺は、

あの家でしあわせだと思い込みながら暮らせたのだろうか?


だけど、それに大きな意味があるの?


俺自身を必要としない家族とお互い、偽った気持ちのまま暮らすのが真のしあわせなんだろうか?


常識的には解ってるつもり、大人なんだから我慢が必要だって。


それで俺が我慢したまま生きて行った場合には必ず、妻は、子どもは、心の底からのしあわせを感じられるのだろうか?


俺が二人と過ごしていて、全部とは言わないが、しあわせを感じないとしても?


たとえば、妻が世界一愛している筈の俺が、

妻と子どもと居てしあわせを感じていなかったら、妻はしあわせじゃないよな。


俺がもしも妻に、

『あなたと暮らしていても、しあわせじゃないの。あなたよりも愛している人がいるの』

と言われたら、

はたしてその時からそれでも一緒に暮らして行けるだろうか?


自分に妻を縛り続けている気持ちにならないだろうか?


一番愛しているなら、なおさら相手のしあわせを願うだろう。


子どもがいるから簡単には別れられない、

その理由は、俺という男の存在よりも、父親という役割と金の問題であるかもしれないと、

普段の生活を踏まえて冷静に考えてみるとそう思う節が多々出て来る。


確かめてみよう。


俺は妻と息子にとってどんな存在なのか。


金よりも、俺の命を、俺自身を必要としているかどうか。




もしも、俺を必要としていないと解ったら、

俺は、死ぬまで自分の気持ちに真っ直ぐ向き合って、正直に生きて行きたい。







帰宅した泰道は、パソコン画面に向かって作業していた美那を呼び、

ダイニングのテーブルに着かせてから切り出した。


「生命保険金より価値のある男だと思う?2500万と俺と、どっちが欲しい?」


「はっ?何、どうしたの急に。」


美那はぎくんとした。


どっちが欲しいかなんてそんな質問・・・


「俺が死んだら2500万だっけ?手に入れるの。それとこの家も。」


「な、何言い出すのよ、急に。」


「美那が俺と一緒に居るのって、金の為だろ?」


「だから、どうたしのよ、急にそんな話・・・」


「もしも美那が大金を持ってたら、俺なんか相手にもしないと思う。」


「えっ・・・大金?」


「俺が死んで金が入ったら、この家で息子と二人楽しく暮らしたらいい。」


「何を馬鹿な事言ってるのよ!そ、そんな事、ある訳ないでしょう?悪い冗談はやめて!」


「俺は居なくても平気だろ?」


「子どもはどうするのよ!パパが居なくなったら大変でしょ?」


「俺と暮らしたい?息子も美那もそう思うの?」


「当たり前でしょう。何を言い出すかと思えば。」


「そう、なら・・・俺、会社辞める。」


「会社辞めるって、どういう事?何かミスでもしたの?」


「田舎に帰って実家の仕事を手伝いながら近くに暮らそうかなって思ってる。向こうの方が土地安いから家建てても1/2で済む。」


「田舎・・・?この家はどうするのよ!」


「売る、それでみんなで引っ越そう。」


冗談じゃないと美那は思った。


美那の実家に近い場所に新築で建ててまだ二年のこの家を売り払い、

会社を辞めた泰道が田舎の実家近くに家を建てて移住して、それで農業の手伝いをするとか、考えられない。


「何でそんな、急に"会社辞める"だとか、"この家を売って引っ越す"とか、そんな事言うなんておかしいわ。何かあったんなら正直に言って。」


「・・・何もないよ。ただ、美那はどうするかと思って。この先、俺に付いて来て、死ぬまで俺と一緒に暮らして行きたいかどうか、考えて欲しい。」


「死ぬまでって・・・」


美那の脳裏に浮かんだのは、お盆にお墓参りした泰道の実家近くにある墓地と墓石だった。


墓所に出来る土地があるから、この場所に墓石だけ買って建てたらいいという、周りは見晴らしも特に良いという訳ではない、森と深い藪に囲まれて、普段住人もあまり寄り付かないような寂しい場所だった。


死んだら同じ墓に入る・・・それは解っているけれど、暮らした事も無い土地のそんな寂しい場所にいくら死んだ後だからって、そんな所に弔われたくはないと思っていた。


それならまだ、お骨を海に撒くとか山に撒くとか、そういう方が墓参りの度に遠くに来なくてはならなくなる息子の為にも良いと思った。


「嫌よ!私はこの家を売って引っ越すのには反対。第一、今この家を売ったら赤字よ。損するだけなの。」


人見知りの強かった息子だって、やっと今の幼稚園に楽しく通えるようになったし、

私だって、派遣登録してフルタイム正社員を目指して頑張ろうと思っていた矢先、

こんな事、絶対に嫌だし、受け入れられない。


だったらまだ、泰道が死・・・ううん、だめ、そうじゃないでしょう?


「とにかく、私も子どももここから引っ越したいと思ってないから。考え直して?」


「それなら、離婚してくれないか?」


「離・・・婚?」


え・・・?


「離婚したら、子どもは、この家はどうなるの?」





泰道は美那の一番大事なものが判った。


一番は息子で、少しほっとした。


二番は家、そして金。


三番以降のどこかに俺、が入っているのかどうかは定かではないが、

"離婚したら"と美那が言った時点で、

妻は"離婚"はアリだと思っていると判った。



"奥さんとお子さんを大切にして"と言った志歩理の方がまだ、

俺と美那の離婚を望んでいないように思える程、

俺と妻の関係はもう冷え切っていて、

という表現も変だけれど、

ただ"夫婦"っていう名前だけの、

お互いへの感情が何も持てなくなった"同居人"という関係だけに思えて来た。


きっと周りから見られている姿とは違うんだ。


しあわせそうな家族というのは、内側から見たら実際はこんなものなんだ、

だから俺が求めているしあわせって、なんなんだかもう解らない。


こんな俺達と暮らす息子はどうなんだろう。それでもいいのかな。


俺の男としてのしあわせと美那の女としてのしあわせは捨てて、目を瞑って暮らしたらお互いにしあわせ?


もしかしたら俺の様にいつか美那の前にも昔好きだった男が現れて、

恋心を再燃させる事だってあるかもしれない。


その時、俺は、今別れなかった事を後悔するだろう。


一生愛せない男と暮らす女はしあわせじゃないと、

一生愛したい女にフラれたばかりの俺が思うのは間違っている?


俺をまだ、想ってくれる気持ちが見えたなら、

俺はここで燻りながら生きても構わないと思えただろう・・・でも。


はっきり、してしまった。


俺の居場所は、ずっと生きて行きたいと思う場所は、ここにも見つけられなかった。


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    碧井 漪

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    2 Comments

    says..."管理人のみ閲覧できます"
    このコメントは管理人のみ閲覧できます
    2014.09.29 00:09 | | # [edit]
    碧井 漪 says..."匿名さま ありがとうございます。"
    その通りです。


    息子の名前は色々考えましたが、名前を付けてしまうと未熟な作者は感情移入してしまうので、あえて息子、子どもと呼ばせてみましたが、

    確かにしっくり来ませんよね。

    短編が思ったより長くなって来てしまったので、
    ゆっくり?じっくり今後書き進めて、名前もいずれ出せるようになったらいいなと思います。


    色々考えられました。ありがとうございます。

    本日は不幸?な出来事(三時間かけたエロ原稿が1クリックで消えました)に見舞われてもなお頑張った?エロnamiのタダのエロ「それでも、アイシテル」の特別脱線Ver.を公開させていただきますm(T▽T)m
    2014.09.29 21:55 | URL | #- [edit]

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