FC2ブログ

sazanamiの物語

恋愛小説を書いています。 創作表現上の理由から、18才未満の方は読まないで下さい。 恋愛小説R-18

忘れられない日 3

Posted by 碧井 漪 on   2 


忘れられない日3




そうだ、目・・・


目って、キスする時に瞑った方がいいんだっけ?


でもいつ、どのタイミングで瞑るのかよく知らないよ。


下から見上げられて、段々満久の顔が近付いて来る。


どくんどくんって、耳の中はその音しか聞こえなくなってて、


雨がざぁざぁ降ってる筈の音が何も聞こえなくて、


ここ、どこだっけ・・・


みくは、満久にじっと見つめられて動けなくなっていた。


近付いて来る満久の顔、私はこのままの姿勢で顔を背けたらダメよね、と考えたみくは、


首にも肩にも力が入り、全身を強張らせて、


近付いて来る満久の顔をただ見ているのが精一杯だった。


えっと・・・どうしようかな、とみくに凝視されていると感じた満久は、


ゆっくり下から近付けていた体を停止させた。


彼女と手のひらを合わせてから握って、見つめ合って、お互いの顔を近付けたら、


ある地点で彼女が目を閉じて、


それがキス承諾の合図って事で、そのままぶちゅっとする・・・なんて聞かされてたけど、


無理じゃん!


みくは目を閉じるどころか、俺がどうやってその”1/2の確率でキスする方法”を試すのか、


その目でしっかり見届けようとしている。


うわ・・・俺、止まれ!


無理だって、ちっとも目を閉じる気配がない。


これって、みくは俺がキスする事に対して合意してないって感じ?


握っていた手の力を緩めた時、


ガチャッとドアノブの回る音が、隣接された司書室の方から聞こえて来て、


俺はそのまますっとみくの手を離して、立ち上がった。


「満久?」と立ち上がる俺の顔を追いかけて、座ったままのみくの目線も上に付いて来る。


「先生、来たんじゃないか?」とだけ言うと、


案の定やって来た図書館司書の四杉先生に、


「あら、まだ残っていたの?雨に加えて風が強くなって来たから、下校しなさい。」


と言われて初めて、みくと満久の二人は窓がガタガタビシビシ音を立てて激しく振動して事に気が付いた。


「あっ・・・雨が、風も酷くなってる。」とみくは驚き、更に、ブラインドを上げている部分の窓の外が白く光ったのを見て、「きゃっ!」と声を上げた。


「帰ろ。」


満久はみくの肩をポンと叩いて、机の上に広げていたノートと参考書をみくの鞄に入れて自分の鞄と共に肩に担いだ。


ガタンガタンとみくは椅子を直し、四杉先生に

「先生、さようなら。」と言うと、

「気を付けて帰りなさい。」と見送られ、

図書室を出た廊下で、

『全校生徒に連絡します。まだ校舎内に残っている生徒は速やかに下校するように』

という放送を耳にした。


誰も居ないガランとした昇降口を見て、

「俺達が最後かな?」と慌てた様子もなく満久は靴を履き、

「そうだね。」とゴロゴロと遠くで聞こえる雷の音におろおろしているみくに、

「今、小降りだからとりあえず駅まで急ごうか。」

と落ち着き払った満久は、傘立てに残っていた二本の傘を引き抜いて、一つをみくに差し出した。


「う、うん・・・でも。」


みくは雷が落ちたらと不安だったが、その事を満久に言い出せないでいた。


「雷、怖いのか?」


「う、ん・・・だって、ニュースとかでどこに落ちるか分からないって聞いたから・・・」


「そっか。じゃあ。」と満久は自分の鞄を昇降口のすのこの上に下ろして、中をガサゴソと手で探り出した。


「あった!じゃーん、雨合羽。まだ使ってないから汗臭くないぞ。」


「えっ?合羽?って、どうしたの?」


「部活の練習で使うかもって、みんなで揃えて買ったんだけど、今日の風が、ちと強過ぎて練習自体中止になったもんでな・・・」


「ぷっ、ふふふ、ふふふふ。」


雨合羽を広げながら満久がおかしな口調で話すので、


みくは雷に怯えていたのも忘れて笑い出していた。


「ほら、これ被って、駅まで急ごう。」


駅までは数分の距離。


駅と駅の中間にある笹並高校は、近くに大きな公園があり、そちらに向かって歩くと、歩道橋と駅ビルが連結しているバス通りに出る。


もう一つの駅は、坂を下り、高架式になった線路沿いは、橋げたの周辺に建築資材を置いてフェンスで囲ってある部分が所々に点在していた。


駅の傍には交番、そしてコンビニが北口と南口に分かれてそれぞれ一軒あった。


バスで帰る生徒達はこちらの駅は利用しないので、坂を下って行く生徒は少なかった。


満久も本当はバスロータリーのある、駅ビルのある方の駅を利用した方が家は近かったが、


みくと帰る時はいつも満久が坂の下の駅まで一緒に歩いて、そこからお互い反対方向に進む電車にそれぞれ乗っていた。

ゴロゴロゴロ、と不穏な音が遠くから聞こえるような、そうでもないような小降りの雨の中、

二人は道路沿いの、元々は白かったであろうが今はくすんでしまった色のガードレール内側の歩道を、

みくは高架線路側を雨合羽を着て、

満久はスポーツタオルを頭に巻き付けて、歩いていた。


「ごめんね、いつも・・・一緒に帰ってくれてありがとう。今日は、満久が居てくれて良かった。」


「俺も役に立つ?付き合ってちょっとは得あった?」


「そんな風に言ったら、私・・・全然満久の役に立ってないから、どうしよう。」


「そういう意味じゃなくて・・・だーっ、俺、口下手だからさ、上手く言えない。なんか、さっきもさ、ごめんな、上手く行かなくて。」


「上手く行かないって、何が?」


「えっ、だから、図書室でさ、キス・・・失敗だったろ。」


「あ、ああ・・・えっと、それで、方法って全部試してみたの?1/2でキスが成功するっていう方法・・・」


“キス”という言葉を発したみくは、急に恥ずかしくなって俯いた。


「試したけど、1/2ってヤツに引っかかったのか、俺の意気地が無かったせいなのか出来なかったけど、でも、その方がみくはホッとしてる?」


「して・・・ないよ。」


そう言ったみくと繋いでいた手を、満久は決意したようにギュッと握り直して、


高架下の風を遮る壁の方へとみくを引っ張って行った。


「あのさ、今、もう一回さっきの試してみてもいい?」


雷の音は消え、代わりにザアッと雨の音が激しくなった。




にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村

にほんブログ村 トラコミュ TL好き、ティーンズラブ好きvへ
TL好き、ティーンズラブ好きv









    関連記事
    碧井 漪

    Lorem ipsum dolor sit amet, consectetur adipiscing elit, sed do eiusmod tempor incididunt ut labore et dolore magna aliqua. Ut enim ad minim veniam, quis nostrud exercitation.

    2 Comments

    くみ says..."No title"
    満久くん、目を閉じない派の人もいるみたいですよ。

    えいっ!てやってみたら?
    または、
    このまましないで、最終回!


    かわいらしいお二人のご様子、いつも楽しく読ませていただいています。
    ありがとうございます♪
    2014.09.17 00:44 | URL | #- [edit]
    sazanami&エロnami says..."くみさん ありがとうございます。"
    エロエロな夫婦も居れば、初々しい付き合いたての恋人同士もいて(//x//)何なんだ、このブログは!

    と自分でツッコンでみたりして・・・(もうibさんがツッコンでくれなくなったのでT▽Tハハハ・・・)


    どっちが恥ずかしいのか、

    うーん・・・どっちも恥ずかしいですが、最強はおそらく雅斗(//x//)次はあのY作品全体。

    くみさんのお好きなさゆりのくだりは爆破したいです。(粉々にしないと諦められない矛盾)


    ヘキチザザナミという怪しい作家に書いて貰った方が、面白い気がしています。


    乗れない日、乗れそうだけど時間がない日、両方ない日、乗りまくって四話位書いてしまう日(滅多にナイ[T-T;]です)、

    そのどれも、コメント拍手ランキングに支えられていて、とても感謝しています。

    ありがとうございます。

    もっと期待に応えられたらいいな!m(*^^*)mと思っています。

    2014.09.17 20:02 | URL | #- [edit]

    Leave a reply






    管理者にだけ表示を許可する

    該当の記事は見つかりませんでした。