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sazanamiの物語

恋愛小説を書いています。 創作表現上の理由から、18才未満の方は読まないで下さい。 恋愛小説R-18

自殺相談所 58 待ち人

Posted by 碧井 漪 on  

「おーい!」と聞こえた若い男性の声に、俺はハッと足を止め、振り向いた。


もしやと期待して目を凝らす。


人垣を掻き分けて現れたのは、俺が待ち続けていた人、タケノウチくんだった。


「え?何で・・・」


何故今になってと、でも嬉しい、だからこそ夢か幻かと、目を疑った。


あれほど待っても現れなかった彼が、今、目の前にいるのは、警察官に職務質問後の連行中に見ている都合の良い夢ではないのかとも思ったが、違った。

タケノウチくんは急いだ様子で僕と警察官の間に立つと、物怖じせず警察官に訊いた。


「すみません、彼、何したんですか?」


「あなた、この人の知り合い?」


「はい、同級生です。」


「待ち合わせてたのって、あなた?」


「多分・・・だよね?」


俺に同意を求めたタケノウチくん。どういうつもりなのか分からなかったけれど、彼なりに俺を助けようとしてくれて居るのかもしれないと思い、


「そうです。」と俺は彼と話を合わせた。


「ほんと?」と初め警察官は疑ったが、

二人してうんうんと頷いたので、少し考えた後、四十代くらいの男性警察官は

「最近、ストーカーとかの相談が多いから、気を付けて。誤解される行動も謹んで下さい。」その後納得したのか、俺達をその場に残して交番の方へと静かに去って行った。


ぷはあ、と先に息を吐いたのはタケノウチくんだった。


警察官が去ったのと同時に、人も減り、今は二人だけだ。


「じゃあ、僕は・・・」と帰ろうとする彼の背中に、

「あの!ありがとう。よければお礼させてくれないかな?」と期待せず言うと、

「・・・・・・」彼は黙ったまま、だけど帰らないで居てくれたので、

「コーヒーとか、なんかあったかいもの飲まない?」と言って見ると、

「ナガイさんの奢り?」と彼が顔を上げた。

「うん、勿論!」と言うと、

「嬉しそう。変なの、奢りたい人なの?」と彼はクスクス笑った。


それが何だか嬉しくて、彼が笑ってくれるなら、俺は警察に連行されそうになっても、道化になってもいいと思った。しかしそれを伝えたくても、まだ上手な伝え方まで習得して居ない俺には難しく、

「じゃあ、どこがいい?」と彼に店選びを委ねる事しか出来なかった。


「どこでもいいの?」


「うん。」


「じゃあ、あの喫茶店。」駅近くの店を指差した。


「分かった。」


そして喫茶店に着くと、彼は奥の窓際のボックス席を選んで座った。俺はその向かいに腰を下ろした。


「ナガイさん、これ頼もうよ。すみませーん。これ二つ。」


彼は開いたメニューの中から、中サイズのフルーツパフェを頼んだ。


「えっ?これ?」


てっきりホットコーヒーかココアを想定して居た俺は、

「お待たせいたしました。」どーんと目の前に聳え立ったフルーツパフェを見て、仰け反りそうになった。


一番下に赤いもの、おそらくイチゴジャム、その上にシリアル、そしてバニラアイス、バナナ、またアイス、ミカンのシロップ漬け、生クリームの山にバナナとキウイと飾り切りのリンゴが突き刺さり、頂きにお日さまのように赤いサクランボのシンボルが・・・そうか、これは雪山の日の出を表しているのかもしれないとは初めて考えた。


しかし、このサイズの豪華なパフェは、今の冷え切った体には正直きついと思いながらも、

「いただききまーす。」と柄の長いスプーンを手にした向かい合う彼に倣って、

俺も真っ赤なサクランボの乗ったクリームを端から掬った。


うん、クリームはそれ程冷たくない。問題はこの下にぎっしり詰まっているバニラアイス。


せめてクリームソーダとかなら、まだ良かったのかもしれない、なんて考えても仕方ない。


幸い、店の中は暖かく、のんびりして居たら、クリームが溶けてしまうくらい。


フルーツを交えつつ、クリームを食べ終えた頃、彼が

「訊いてもいい?」と切り出した。


「うん、何?」スプーンを置こうかどうか迷ったけれど、彼がまだ手に持って居たので、同じくした。


「毎週、僕の事を待ってたの?何で?」


俯き加減の彼の目は三白眼というやつで、普段より凄味が増したその雰囲気が、彼の言葉を、まるで鋭い刃物のように象った。




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碧井 漪

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