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sazanamiの物語

恋愛小説を書いています。 創作表現上の理由から、18才未満の方は読まないで下さい。 恋愛小説R-18

自殺相談所 56 信用

Posted by 碧井 漪 on  

焦らず、じっくりゆっくり、

俺に足りないものは、受け止める力だった。

勿論、発信力も足りないとは感じる。

しかし、俺が伸ばすのに時間が掛かるのは、受け止める方だと考えた。

所長に言われ、気付かされたあの日から、俺はその力を伸ばす為に有効だと思う事を生活の中に取り入れ始めた。

まず、人の話を"聴く"。

所長を始め、お師匠様、相談所の仲間、それからまた頼まれたバイト先の店長、同僚の話、そして家族。



今まで家族とは話しているつもりだったが、そうじゃない事がよく分かった。

今日あった出来事を話す位では、"会話"になっていなかったのだと。

相手の気持ちまで聞き出せたら、それは会話と呼んでもいいだろう。

打ち明けられた"気持ち"が"本音"であったら大成功だ。

"愚痴"でもよい。

今、俺は以前の俺ではないと、それまでに無かった"自信"を得ていた。

何の"自信"かと言うと、周りの人の事がよく分かっている"自信"だ。

人の気持ちが分からないと思っていたのは、俺に"聴く力"と"受け止める力"、そしてそれを"認める力"が無かったからだ。

人の話を聴き、人の心の内が分かるようになってからは、自分の心の内も見えて来て、この世界がどんな風になって行くのかにも興味が湧いて、過去に感じた重苦しい気持ちは失せていた。

"自信"が心を軽くする。

その"自信"は一人で得られる人もいるだろう。けれど、俺の場合はそうではなかった。

周りの力があってこそ得られた、いや、周りの人がいるから得られたものだと今は分かる。

"認められたい"意識せず、その気持ちが強かったらしい俺は、

"認める"まずは周りの人の"本音"を"聴いた"事で、その人が自分のどんな所を認められたいのか分かり、

それに伴い、自分の"認められたい"所が見えて来た。

そうすると"焦り"が減って行った。

ああ、俺は、こんな所をこんな風に認められたかったんだなと、一つ一つ、小さなそれを、今度は誰かに要求するのではなく、自分で"認めて行った"。

自分で自分を認めるなんて、かつての自分では出来なかった事だ。

自分で自分を認めるというのは、自己満足とは違う。

自分を客観視出来るようになれたから、出来た事だ。

自分なのだけれど、自分ではない誰かから見た"永合遼大"はこんな感じの人間で、こんな所をこんな風に認めて欲しい。

こう考えるけれど、ダメかな・・・と思う所も、客観視したら、それでもいいんじゃないか?と、言ってもいいかなんて思ったり。

自分の中に生まれる声、それを昔は善悪、天使と悪魔の囁き、二面性なんて、悪いものだとして、相反する意見を矛盾だとか優柔不断だとかで深く考えないようにしていた。

そうじゃなかたんだと今更気付く。

自分の中から生まれて来る反対意見は、自分が客観視した時の声なのだと。勿論毎回生まれる訳では無い。迷った時、特に多い。

それは優柔不断なんかではなく、客観だと、俺は思う。

俺以外の人ならこう思うと、他の人の心を考えてそうなる。

人の顔色を窺っている、自分の意見を貫き通せない、

勿論、最終的にはどちらかを選ばなければならない時が来る。

時間制限のある中で選ぶその答えに、納得出来ず、後悔する事もある。

受け止め、認め、前に進む事で、また次の困難に立ち向かう自信に繋がる。

受け止められず、認められず、前に進めない事で、また次の困難に立ち向かう自信は失われる。

簡単な事で躓き、傷付いたまま、立ち上がるきっかけを見つけられず、長く引き摺ってしまう。

そして自信を失ったまま生きるのは辛くなり、死を考える。

周囲の目が気になる。周囲はどう思っているのか。

訊いても本音を明かして貰えない。

どうせ自分なんかいない方がいいと思われている。

ここで所長の言っていた"聴く"が大事になって来る。

自信を失った人も周りの人も、

お互いがお互いの心の声を"聴く"。

そうすれば分かり合える。両方でもどちらか一方でも、"聴けたら分かり合える"。

一歩踏み込む勇気は、実はとても大きくて、一人では抱えきれない。だから持っていない。

誰でも傷付くのは怖い。死に繋がる。

特に人の"本音"を"聴く"のは、"覚悟"も要る。

だけど、やろうと思ったらやれる。聴ける。

飛び込んで、ぶつかって見る。

案外痛くない。

勇気も覚悟も持てないなら、

死に飛び込む前に、人の心を聴こう。

自分の心を"話しても"駄目なら、"聴け"ばいい。

あなたが死ぬ前に、誰か一人の"本音"を"聴いて"欲しい。

「"聴く"事で救われるなんて、今までの俺は、考えもしなかった。」

今の俺の財産は、人だ。

俺に関わってくれたみんなが大切な宝物になった。




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碧井 漪

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