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sazanamiの物語

恋愛小説を書いています。 創作表現上の理由から、18才未満の方は読まないで下さい。 恋愛小説R-18

縺曖 500

Posted by 碧井 漪 on  

「どうしたの?何かあった?」


そう先に訊いた僕に、

「それはこっちのセリフ。伸長くん、すごく暗い顔してるよ。」


心配そうに、僕の顔を覗き込んだ皇くん。


彼に心配されるのも嬉しくて、つい目元が緩んでしまった。


「あ、えっと、大丈夫?」


僕がうっかり零した涙を見て慌てる皇くんも愛おしくて、益々涙が湧き上がる。


さっき拒絶されたのがイサダさんで良かったのかもしれない。もしも皇くんにそうされたらきっと、僕は自分がどうなってしまうか分からないと思えた。


「伸長くん、おうちに・・・あ、でも、このままじゃ無理か。この辺に公園とかある?」


僕は首を横に振った。住宅地であるこの辺に公園は無い。坂を下って幾つか曲がった先にはある。


もうすぐ日は沈む。その前に皇くんを家に帰したい。


「平気。」と急いで手の甲で涙を拭った僕に、

「俺が平気じゃないから。この坂の上の方とか確か、道路広かったよね?そこ行こう。」と皇くんは自転車を坂の上に向かって押し始めた。


どうしよう、と迷うけれど、皇くんの申し出を無視して一人、家に入れる僕では無かった。


彼の自転車の後を、ゆっくり付いて行くと、道路脇に設けられた車一台停められる場所に辿り着いた。


カーブする白いガードレールの向こうに、茜色の空が広がって居る。


本物ではなく、まるで大きな絵画みたいに見えた。


広がる夕空の下に、僕らの暮らす街が見えた。


知って居た筈なのに、知らなかったような、そんな光景。


そして僕の世界にまだ、君が居てくれた。




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碧井 漪

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