縺曖 368
Posted by 碧井 漪 on
例えば日本でなくていい。現在でなくても。
過去や未来の異世界、そして皇くんは皇くんのまま、僕は僕で無くていい。
皇くんの好みの女性になって、そうしたら僕は、自信を持って彼の隣で、彼を好きだと言ってもいい。
告白してもいいんだ・・・好きで居続ける事も許されるんだ。
もしも、そうなれるならいいな。
・・・ならないけれど。
電車が再びガタンと鳴って揺れた後、駅に着いて扉が開いた。
乗客が乗り降りする様子を僕は見て居た。
男の人、女の人、若い人、年を重ねた人、どの人も自分の人生を懸命に生きて居る感じだった。
僕は、僕以外の人間にはなれない。
空想の時間は終わった。
僕は僕の人生を生きるしかない。
白岸伸長として、彼の親友として、
“恋”を否定して、
ずっと生きなくてはならない。
彼を好きでも彼に好きだと告げてはならない。
彼を好きでも彼の手を握ってはならない。
彼を好きでも────
望めば望むだけ苦しくなる。
傍に居たいと思う度、辛くなる。
せめて親友として接したい、そう思っても、
それだけでは嫌だ、なんて我が儘も勝手に溢れてしまう。
僕の頭はおかしくなってしまった。
自分でもどうにも出来ない。
眠る彼の顔を見て居ると、切なくなる。
好きなのに好きと言えない。
彼に恋して居る事を告げられる人は、とてもしあわせな人だと思う。
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