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sazanamiの物語

恋愛小説を書いています。 創作表現上の理由から、18才未満の方は読まないで下さい。 恋愛小説R-18

暁と星 61 真相

Posted by 碧井 漪 on  

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恋愛小説(オリジナル)


人の隠し持った本心に触れる事は、時に危険な事なのだと、並川は改めて思い知った。


満知は、教授から愛されている事を知り、満知も教授を愛してしまった。ただそれは、許されない事だと罪悪感に苛まれた満知は、二人の関係を終わらせようと、自ら薬を飲んだ。


女性には危険だと知らされていても、薬を飲んだという事は、満知は死も覚悟の上だったのだろう。


現に、もう一通、自分が死んだ時の事を考えた、家族宛の手紙もあった。内容は、自殺と取れるように書かれている。


「ばかやろう・・・馬鹿、馬鹿だよ!満知・・・・・・」

その後、教授は大学を辞め、奥さんとも離婚した。研究室以外の持ち物を処分し、満知の意識を取り戻す為、残りの財産も全て注ぎ込み、手を尽くした。


研究を離れていた俺に出来る事は、金銭援助だけだった。


そして、満知が薬を飲んでから四年経ったある日、奇跡的に目を醒ました。


教授に訊くと、原因物質はまだ特定出来ないが、ある物を定期的に与えていたという。


「アルカノイド・・・」


「まだ断定出来ないが、男性より女性に向かない薬だという事から───」


「そうですか・・・とにかく、良かった。満知が目醒めて。」


上手く行くと思った。このまま、満知が以前のように元気になれば・・・


満知が目醒めて心から嬉しそうな教授と共に、ひっそりとでも、穏やかにしあわせに暮らして欲しいと願った。


ところがある日、教授はレンタカーで崖の上から湖に落ちて亡くなった。


その助手席に満知を乗せて。


満知の書いた遺書から、二人は心中だったとされた。


【大学教授、不倫恋愛の果ての心中】


そう書かれる事は覚悟の上だったようで、葬式後に会った、教授の知り合いだという記者から、並川は真相を聞かされた。


『死にたい・・・』


毎日そう訴え続ける満知に、教授は自分の研究が人を不幸にしたという現実にとうとう耐え切れなくなって、今まで情熱を傾けた研究を捨て、満知と一緒に死ぬ事を決意したと、手紙に認めてあった。今までのすべてのデータの処分を、並川裕司に任せて欲しいとも。


教授は研究を続けて薬を完成させるより、満知の人生を狂わせてしまった事、そしてそんな満知の望みを叶えてやりたいと思ってしまったんだ。


教授が直接並川に言わなかったのは、止められると思ったからだろう。いや、止めても結局同じ事になっていたかもしれない。


二人の意志は固かった。


教授は知り合いの記者に二人の不名誉を書き立ててでも、薬の研究の事は最後まで隠すよう指示していた。


二人の死後、並川の心にはぽっかり穴が開いてしまった。


今まで、教授と満知は何の為に研究していた事になるのだろう。


ただ不名誉だけを残して、あの薬をこの世から抹殺してしまったら、二人は何の為に生きたのだと言えるのだろう・・・


並川は勤めていた病院を辞めた。


そして、人手に渡った研究室を買い取り、並川一人で再び研究を始めた。


リューこと初音は、半田が家庭教師をしていた時の教え子だった。時々、満知の代わりに並川が初音に教えた事もあった。


初音は満知を姉のように慕い、満知の恋人だと思われていた並川に対して冷たかった。


満知の死後、歯科医になった初音は、並川を訪ねて来た。


満知はどうして死んだのか、本当の事を教えて欲しいと詰め寄られた。


口外しないという初音に、並川は一人では抱え切れずにいた真実を初音に話してしまった。


それからの初音は、並川に付き纏い、あれこれ世話を焼くようになった。


「リューに話すんじゃなかったなぁ。」


「はいはい。今更でしょ。私が居なかったら、センセ、干物になっちゃってるわよ。ご飯も食べないで、まったく・・・」


そんなある日、弁護士である並川の父が、付き合いのある賓海家の事で頭を悩ませている事を知った。


賓海家の当主、賓海昇治郎が病に倒れ、瀕した家を続けるにも潰すにも後継者が必要になってしまったと。


父親から話を聞いた並川は、暁良と星良を結婚させる事を思い付いた。


「この問題が解決したら、研究資金、出してくれる?」


「あと少しだという研究か?本当にあと少しなのか?」


「ああ。あとは臨床試験だけだ。」


暁良とかいう青年にあの薬を使って、そのいとこの娘と既成事実を作ってしまえば良い。


まず並川は暁良に近付いた。居所は父親に訊いた。


暁良の父親は賓海晃治郎、18歳で家を飛び出した賓海家の跡取りだった。


使用人の噂によると、庭師の畑谷の娘が晃治郎と恋仲になり、娘が妊娠した為、晃治郎は娘と、その父親の畑谷と共に賓海家を黙って出て行き、畑谷の親戚の農園で働く事になったという話。


やがて生まれたのが暁良だった。賓海の子と知られないよう、暁良の母は籍を入れず、畑谷の子として暁良を育てた。


当主である晃治郎の父は晃治郎の居所を突き止めていたが、縁談を断り、家を出た事に激怒し、晃治郎の事を見限った。


晃治郎の姉・佐智子は、父の怒りを治めようと、晃治郎を庇い続けた。


そんな佐智子に、父は突然、良家から婿を貰って賓海家を継ぐよう言い付けた。


当時、佐智子は、父の右腕だった富山と婚約していた。それは父が決めた事、それなのに、婿は富山ではならないとしたのは、しあわせそうな二人を妬んでの事だったのかもしれなかった。


妻・良子を亡くして三年、昇治郎は変わってしまった。


佐智子の父は富山を会社に居られなくした。


しかし佐智子は富山を追い、賓海家を出てしまう。


のちに二人は結婚し、貧しいながらもしあわせな家庭を築いた。星良も生まれ、家族三人これからと言う時に、富山が事故で亡くなった。


佐智子は幼い星良を抱え、一人で星良を育てた。


星良もそんな母の頑張りを知っているから、貧しさを恨んでも、両親を恨んだ事はなかった。


暁良、星良と名付けたのには訳があった。


幼い頃、母の作った絵本『暁と星』に出て来る暁の王子、星の姫という話から、晃治郎が"暁良"と付け、それを知った佐智子が"星良"と付けた。


初め、暁良の事は佐智子にも女の子として紹介され、写真も女の子の服を着せたものを送っていたが、佐智子だけは分かっていた。

女の子なら"星良"にする筈。"暁良"なら男の子だと。


数年後、佐智子は女の子を産んだ。その子に"星良"と名付けた。


いつか二人が出逢えますように。


暁と星、二人にはしあわせになって欲しいと願いを込めて。


俺は、そんな二人が結婚したら、家の問題も家族の問題も一気に片付くと思った。


『暁と星』の話は、幼い頃、良子さん自作の絵本を、何度か読んで貰った事があり、朧気に憶えていた。


星の姫に恋をした暁の王子、そして星の姫も暁の王子に恋をした。


ただ、二つの世界は異なっていた。暁と星の世界は、鏡を隔てるようにして分断されていた。


星が見えなくなった時、暁の王子は星の姫に会いに行く事が出来る。けれど星の姿は見えないまま。


暁が見えなくなった時、星の姫は暁の王子に会いに行く事が出来る。けれど暁の姿は見えないまま。


お互いの姿が見えるのは、ほんの一瞬。朝と晩が交代する時だけ。


二つの世界に別れたまま、二人は、いつまでもいつまでもお互いの事を想い続けた。


決してハッピーエンドとは言えないような話に、何か意味があるのかと後々考えたりもした。


今は、少し解るような気もするが・・・それでもやはりハッピーエンドとは言い切れない気がする。


ただ、何を以ってハッピーだと言えるのか。想い続けていられる内は、二人にとってしあわせな時なのではないかと思えた。


四六時中、傍に居られなくても、お互い愛し合っているという確かな気持ちがあれば───そうか!


解ったぞ。暁良と星良ちゃんをしあわせにする方法。


星良ちゃんが暁良と一緒に生きていたいと思うようになればいい。


満知と星良ちゃんは同じじゃない。


必ず、星良ちゃんの気力を取り戻して見せる。


暁良の愛で!


・・・少々の不安は残るが。


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碧井 漪

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