FC2ブログ

sazanamiの物語

恋愛小説を書いています。 創作表現上の理由から、18才未満の方は読まないで下さい。 恋愛小説R-18

馮離 B面 25

Posted by 碧井 漪 on  

馮離25

にほんブログ村



先の事を考えたくない、そう言っている人間は、この先の逃れられない嫌な事を、一秒でも味わいたくないからなんだろう。


自分のしあわせを追い掛けたいなら、親を捨てる非道な人間にならなければならない。


親に恨まれるのが俺だけならそうしても構わない。


しかし───そうではないから、俺はそうしてはならない。


お昼を外で食べようと、外に母さんを連れ出したら、少しは気分が晴れたようで、再び実家に戻ってから、午後三時前に解放してくれた。


「それじゃあ、お兄ちゃん。次の日曜日、絶対ね!」と念を押されたが。


車の中で朝臣に訊かれた。


「次の日曜日って、何?」


「ああ・・・俺だけ行くから。実家の荷物整理したいんだと。」


「ふーん。そっか。」


嘘を吐いたのは、何故かと自分でも考えた。


何故だろう。後ろめたいから?何に?










家に着くと、皇くんは居なかった。今日は学校が休みの筈。


友達と出掛けたのかな。


「朝臣、疲れただろ。少し眠るか?」


「うん・・・」


先に一人でシャワーを浴び、着替えた朝臣を俺はベッドに運んだ。それから俺も、一人でシャワーを浴びながら考えた。


『結婚して、戻って来て』


母さんの考えを朝臣に知られたら、朝臣は俺を追い出すかもしれないからだ、と思った。


カチャッ。


着替える気力もなくなった俺は、濡れた肌にバスローブを羽織り、朝臣の眠るベッドルームに入った。


朝臣は───眠っている。


すとん。


ベッド脇に膝をついた俺は、ベッドの上に頬杖をつき、朝臣の寝顔を覗き込んだ。


疲れたんだな。


ここの所、原稿に追われ、終わってすぐ旅行するなんて、スケジュールがタイト過ぎたか。


まあ、原稿が予定通り進んでいればこんなタイトにはならなかったんだが・・・それを調整するのが俺の仕事だと言われてしまえば・・・やはり俺のせいだな。


「振り回してごめん。」


ツン、ツンと、朝臣の目尻に掛かる前髪の先を指で引っ張る・・・と、「ぷ、ぷふっ!」朝臣が吹き出した。


「え?起きてた?」


「ウトウトしてる時、賢さんが部屋に入って来たのに気付いてさ、賢さんがベッドに入ったら脅かしてやろうと思って寝たふりしてたのに、ベッドに入って来ないばかりか、なんか、俺の髪、ツンツンし出して、可笑しくて・・・」


恥ずかしくなった俺は、

「悪かったな。」と顔面をベッドに埋めた。


「ちょっと賢さん、窒息するよ?」


「・・・・・・」


「こちょこちょ、ほら、顔上げて。」


朝臣は俺のうなじを指で擽った。しかし、そんなものでは全然擽ったくない。


そのまま、黙ったままでいる俺の頭を撫でながら、朝臣は「ごめんね。俺、今日一緒に実家行くべきじゃ無かったよね。」と言い出した。


顔を上げた俺は、朝臣と目を合わせられず、ベッドの上に視線を落としたまま、


「違う。嫌な思いさせて悪かった。」と母さんの態度の悪さを詫びた。


「そうじゃないよ。ただ・・・」


その後に続けたい言葉は沢山あるのだろうと、俺は朝臣の頭の中にあるであろう、あらゆる言葉を想像した。


ベッドの上に上がった俺は、体を起こしている朝臣を寝かせ、自分も横になった。


そして、

「誕生日プレゼント、もう一つ貰ってもいい?」とねだった。


朝臣は驚いて目を丸くした。


普段なら恥ずかしくて言えない事も、今、こうして朝臣に向けて愛おしさが溢れている中でなら、なんて事は無かった。


今、この世で俺に安らぎを与えてくれる人。


俺の気持ちばかり優先して考えて、寄り添おうとしてくれる人。


そして俺が尊敬し、傍に居るだけでしあわせな気持ちにさせてくれる人。


でもこれを、愛と呼んではいけない。


それでも俺は、朝臣が愛おしくて、触れて居たくて、叶うなら、その身の中に融けてしまいたいと考える程で───「もう一つって何?」


俺に訊ねるその唇を、今だけ奪わせて欲しい。


愛して居る。愛して居たい。ずっとここに、朝臣の傍に居る事だけが、俺の願い。


「ん、ん・・・はっ、け、んさ・・・っ!・・・ど、した、の?んんんっ・・・!」


「キスしたいからしてるだけ。」


一度離し、再び、朝臣の唇に噛み付くようにくちづける。


深く深く、もっと深く。今は俺の、俺だけの人・・・


一体、いつなんだろう。俺と朝臣の別れる日は。


その日を予(あらかじ)め知る事なく、聖子のように突然別れた方が、うんと楽なのかもしれないと、たった今、腕の中にある熱を感じながら思っていた。


その日が永遠に来ない事を───願っても、多分叶わない。


関連記事
碧井 漪

Lorem ipsum dolor sit amet, consectetur adipiscing elit, sed do eiusmod tempor incididunt ut labore et dolore magna aliqua. Ut enim ad minim veniam, quis nostrud exercitation.

該当の記事は見つかりませんでした。