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sazanamiの物語

恋愛小説を書いています。 創作表現上の理由から、18才未満の方は読まないで下さい。 恋愛小説R-18

近男 -Kindan- (R-18) 改稿版 5 恋の始まり(27~31話)

Posted by 碧井 漪 on  

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小説15禁・18禁(性描写あり)


「なんてね。輝美の傍に居られるなら、男として見られなくてもいい事に今はしておく」

流星がじっと輝美の目を覗き込んだ。

キスされる!

顔を背けた輝美の目の下に、流星はそうっと唇を近付けた。

あ…!ブルッ…

流星から与えられた触れるか触れないかのキスに、輝美のカラダは震えた。そのあと、輝美の耳に口を近付けた流星は囁いた。

「やっぱり、俺は出て行かない事にした。だから、寂しがって泣かないで」

どきん!

流星の囁き声に、輝美の肌が粟立った。


"寂しがって泣かないで"って、どうしてその事を…まさかさっきの聞かれてた?そんな、まさかね…

「べ、別に、泣いてないわ!寂しくもないし…!」
「それなら良かった」流星は微笑んだ。

嘘をついて後ろめたい。でも、あなたが帰って来てホッとしてる…なんて、言える訳がない。

それを言っても何も問題ない世界で、あなたに「ずっと傍に居て」と言ったら、あなたは今みたいに笑ってくれるのかしら。

その晩は、卵を入れたお粥を作った。

昔はシンプルに塩のみで味付けしていたけれど、今は鰹だしの顆粒を入れてアレンジする。

「出来たわ。どうしたの流星。引き出し漁(あさ)って、何探してるの?」
「んー、アレどこだっけなーって…」
「アレ?ああ、アレはこっちの引き出しよ。はい、どうぞ」
「そう、これ探してた。おろし金。さっすが輝美」
「何が?」
「俺の探し物すぐに判っちゃうんだもんな」
「それは誰だってすぐ判るわよ」
「何で?」
「だって、まな板の上に皮を剥いた生姜を載せてるから」
「ふーん。じゃあアレはどこ?確かここにしまっておいたんだけど」
「やかんなら、コンロの上。お湯は沸いてるわよ」
「はーっ…」

シンク下の扉を閉めた流星は、しゃがみ込んだまま深い溜め息を吐いた。

「どうしたの流星?また熱上がって来た?あとは私がやるから、向こうに座ってて」
「違うよ。どうしてくれんの?」少し怒ったようにそう言って、流星が立ち上がった。
「あ、違うの?」
「確かに次に探してたのはやかんだったし、お湯も沸かそうと思ってたけど、だからだよ!」
「それならどうして怒ってるの?」
「もー、輝美の意地悪。どうすんの?俺、どうしたらいいか分かんなくなる」

流星は両手を頭の上に乗せ、しゃがみ込んだ。

「だから、何が?」
「ほんとは輝美って鈍感?”アレ”だけで何を探しているのか判るっていうのに、どうして俺の気持ちには気付かないかな」

ブツブツ零す流星の言葉は所々聞き取り難いし、その意味も何をさしているのか解らない。

しゃがみ込んだままの流星の代わりに、私がおろし金を手に生姜をすり下ろしていると「貸して、俺がやる。輝美も飲むよね?生姜湯」と立ち上がって隣に立った流星が代わってくれた。

「ありがと」

輝美は大き目のマグカップを二つ食器棚から出すと、調理台の上に並べた。

「俺の理想は、おじいちゃんおばあちゃんみたいな夫婦だから」
「ふうん、そうなの」

輝美はそれが輝美の両親の事を言っているのかと思ったが、流星のいう"おじいちゃんおばあちゃん"の意味は違った。

「アレ出して」
「はい、スプーンね」

私が引き出しからティースプーンを出すと「ほら、そういうの。俺、もうお手上げ」と笑った流星は舌を出した。

何がお手上げなの?さっぱりわからない。




「輝美、一緒に、寝て──」

マスクをした流星は、ベッドの中の輝美の体に寄り添った。輝美もマスクをしている。

「甥としてなら、一緒に暮らせる?俺をここにまた置いてくれる?」
「うん──」輝美は手のひらで流星の背中をさすった。
「今は何でもいい…輝美の傍に居られるなら」

すう…眠りに就いた流星の隣で、輝美も目を閉じた。

とくんとくん、とくんとくん──

あったかいお布団の中で、聞こえる鼓動。私の音?それともあなたの音?生きている、傍にいる──それだけで、とてつもない安心感に包まれる。

あなたの居場所になるつもりが、いつのまにか私があなたの腕の中に収められて、安心を得ている。

ここにいて。あなたの為と私の為に。

いつまでかわからない。もちろん、結婚は出来ない。だけど、一緒に居ましょう。その日が来るまで、一緒に暮らしましょう。

私は独りでいいと思っていた。でも、あなたとなら、二人の方がいいわ。

あなたが私に飽きるまで、あなたの傍に居る事なら、私にも出来ると気付いたの。

大好きよ。あなたの事が、とても愛おしいの。

「ゴホ、ゴホ…あさ…?」

翌朝、起きた輝美は、声が出し難くなっていた。手足に軽い痺れを感じ、ベッドから起き上がる力もなかった。

怠い…喉が痛い。

「おはよ、輝美」
「おは、よう…」
「輝美、顔が真っ青だ」

水を入れたコップを手に戻って来た流星は、

「飲ませてあげる」と輝美の体を背中に通した片腕で起こすと、輝美のマスクを外した。
「……」

流星は自らコップの水を口に含むと、輝美の乾いた唇にくちづけ、輝美の口の中に水を移した。

こく、ごくん…輝美の口の中から水がなくなっても流星は唇を離そうとせず、輝美の後頭部を両手で包んだ。

輝美の口の中に、流星の舌が入り込んで、輝美の舌をたっぷり味わうかのように絡めて、唇を中々離さない。

「ん、りゅ…!」輝美は流星の胸を両手で叩いた。

やっと離れた。はぁ、はぁ、はぁ…

「会社に電話しておくね。ほんとにごめんね、俺の風邪移しちゃって──」

ううん──輝美が首を横に振ると、より一層、頭が痛くなってしまった。

風邪を引くなんて、何年ぶりかしら…予防接種を受けなくてもインフルエンザにならなかったというのに。少し眠れば良くなるわよね。私、頑丈だから。

ここ何年も熱を出した事は無かったから、汗を掻いたらすぐ治る筈と気を強く持った輝美は目を閉じた。

流星は昨日と同じように輝美のスマートフォンから会社に電話した。輝美が休む事を会社の人に伝えてベッドルームへ戻ると、輝美はもう眠っていた。

指先で輝美の首筋に触れると、少し熱かった。これから熱が上がって来るかもしれない。輝美の目が醒めたら、お粥を食べさせて、薬を飲ませよう…そう考えた流星は、ベッドルームを出て、掃除と洗濯に取り掛かった。

お昼近くになって、輝美は目を醒ました。明るいが、カーテンが閉められたままの部屋では、陽の位置が判らなかった。

ん…はぁ、はぁっ、今、何時…?

もう12時近い…

寒気が治まったと思ったら、今度は熱くなって来た。喉がカラカラ…でも、起き上がる気力がない…流星、どこ──?

シンと静まり返った平日昼のベッドルーム。

一人暮らしだったら、誰かを頼ったり出来ない──解ってた筈なのに、少し体調を崩した位で、人恋しくなってる私は情けない人間。

チクタクチクタクチクタク…一人では、すっかり重くなってしまった体を起こせない事を、時計の秒針の音に責められているようで、耳障りに感じて来た、その時──カチャ、とベッドルームのドアが開いて、覗いた流星の顔を見た時、心底ホッとした私の目の奥に涙が込み上げた。

「起きた?具合どう?お粥と薬、持って来た。熱測って、あんまり高いようだったら医者行こう」
「ゴホ、ゴホゴホッ…!」頭を起こそうとするのに、枕から少し浮かせた所で力尽きてしまう。

ボフッ…熱くて重たい頭が枕の上に逆戻りした時「輝美、大丈夫?」枕元に立った流星は跪き、私の上半身をベッドの上に起こしてくれた。

「食べられたら少し食べて、お薬飲もう?はい、じゃ、あーん。食べさせてあげる」レンゲで掬った卵入りのお粥をフーフーと冷ましてから、私の口へと運ぶ流星。

もぐ、もぐ、ごくん。

「……」何だか、おばあちゃんになって介護されているみたいな気分を味わうと、途端に悲しくなった。

このまま二人で暮らして、私も流星も結婚せずに独身同士一緒に暮らしていたら、いずれこんな風に、流星に私を介護させる事になってしまうかもしれない。

ぐっ…輝美は、掛布団を握り締めた。

「食欲ない?じゃあ水分摂って、お薬飲んで」

薬?薬はダメ──妊娠している可能性がある今、薬は飲めない。

輝美は首を振った。

「くす、り…ら、ない…」
「何言ってるの。ほら、おでこ、こんなに熱くなってる。飲まないとダメだ。熱が下がらないよ」
「いら、ない…あせ、かいてっ、ゴホッ、熱、下げる、から…!」

バサッ。輝美は頭から掛布団を被った。

「輝美、ワガママ言わないで。薬飲まないなら、医者連れてくよ?」
「……」
「こうなったら、無理矢理飲ませる」

流星は輝美が握る掛布団を、足元から捲り上げて剥ぎ取った。

「や…っ!のま、ない、ゴホッ!」
「何で!」


「…せ…り、こな、いの…にんし…して…かも、しれな…から、くすり、のめな…っ…はぁはぁ…!」
「え?」

“生理来ない”?
”妊娠”?

ベッドの上で丸まった輝美の姿勢から、胎児の姿を想像した流星は、驚きと同時に喜びが溢れて来ていた。

「うそ、ほんとに?」
「まだ、しらべて、ない、けど…たぶん──」
「それ、俺の子、だよね?」
「……」輝美は僅かに首を縦に動かした。
「やった!マジ?マジだったら、俺…!」

その時、輝美が「寒い…」と漏らしたので、流星は慌てて輝美の体を布団で包んだ。

「ごめん、輝美が辛いのに嬉しいとか言って。でもそれが本当なら、俺、死んでも──いや、死にたくないけど、ぐすっ、すごく嬉しい」微笑む流星の目には涙が浮かんでいた。

それまで『妊娠していたらどうしよう』という不安と罪の意識しかなかった輝美の心を、喜びだけで包んだ流星の言葉に、輝美の目からも涙が零れていた。

うっ、ひっく、うう、ひっく…!

顔をくしゃくしゃにして、辛そうに泣く輝美の姿に、流星は胸を痛めた。

輝美は、俺の子を妊娠して悲しいんだ…いや、まだ妊娠したかどうか定かじゃない。もし、妊娠していなかったら薬が飲めるし…

「俺、妊娠検査薬買って来る。いや、やっぱり医者に行こう」
「ううん──」

独りで悩んでいた事を打ち明けて心が軽くなった輝美は、とにかく今は休んで、何とか熱を下げたいという気持ちが強くなっていた。

「ねむ、っても、いい…?あせ、かいて、なお、したいの、コホッ…」
「うん、わかった」

しかし、流星の看病も空しく、輝美の熱は夕方になっても下がるどころか上がっていて…熱に浮かされた輝美の意識は朦朧としていた。

「う…りゅ、せい…ああ…!」
「輝美、病院行こう。妊娠してたとしても使える薬があると思うから。このままだと、熱で胎児だって…」
「はっ、は…っ…!くすり、いらな…」
「輝美。だけどこのままじゃ…」

流星は熱に喘ぐ輝美の体を冷却剤で冷やしながら、妊娠の可能性だけで薬を飲まない輝美の、過去に中絶した時の気持ちを考えた。

やっぱり輝美は、中絶手術を受ける事を簡単に考える女じゃなかったんだ。二年前に知った時、輝美の事を信じられなくて輝美から離れたのを後悔してる。

今は──欺かれたとしても、信じたい女。男として愛されてなくても、愛したい女。

「…つら、いの…あああっ…!」
「輝美!」

流星はとうとう、これ以上輝美が苦しむのを見たくない、と薬を飲ませようと考えた。

「アレ…かえし、て…」
「アレ、って何?氷枕は取り替えたし、何?わからない!」

苦しむ輝美を目の当たりにしながら、輝美の欲しがる”アレ”が何か判らない流星は、唇を噛んで考えた。

「アレ…バイブ…はぁ、はぁっ、ココ、イレて…ツラ、いの…」
「バイブって──」言われた流星はハッと気付いた。

熱、そうか!今の輝美の状態は、風呂でのぼせた時と同じなんだ。

バイブは以前からこの部屋の段ボールに戻して置いたけど、輝美は気付いてなかったみたいだ。

どうする──

「はぁ、はぁっ、ああん…!」
「イレたら、薬、飲む?」
「それ、は、だ…っ…!」輝美は体を捩り、悶え苦しみながら、首を振り付けた。

輝美、もういいよ。愛してない俺なんかとの間に出来た子どもを、これ以上守ろうとしなくていい。

流星は、輝美の望まぬ妊娠を再びさせてしまった行為を悔いた。輝美を想うなら、これ以上望むのは諦めるべきだと考えた。

「わかった。とにかく落ち着いたら病院連れてくから!」
「ん…ふぅんっ…!」

流星が掛布団を捲ると、体を丸めた輝美の右手は、すでにパジャマのズボンの中へ入り込んでいた。流星はシャツを脱ぎ、ジーンズに続けてボクサーブリーフを脱いだ。

熱と欲に喘ぐ輝美を仰向けにした流星は、キスをしながら輝美の丸まった体を解いて、パジャマズボンを脱がせた。

愛液に濡れたショーツを剥ぎ取ると、蜜壺に挿し込まれている輝美の指を抜いた。

「こんなに濡れてる…」ちゅぷ、じゅぷっ…流星が輝美の濡れている指先を舐めると、少し鉄の味がした。
「う、ふぅ…っ!はや、く…はや、くぅ…!」

こっちの輝美は、本当の輝美じゃない──本心では、俺なんか別に愛してない──快楽を与えられるなら、ヒトでもモノでも輝美にとってはどっちでもいいんだ。

辛そうに泣く輝美の両脚を開き、間にあるヒクついた入口から、流星は宛(あてが)った雄を輝美のカラダのオクに向かってゆっくり押し進めた。

ず、ずちゅっ…ヒク、ヒク、ヒクン!

互いの蜜で潤う中を擦って、まるで融かし合うかのように、熱くぴったりとくっついて、一体になる感覚を同時に味わう。

だけど今、この時間に同じ快楽を共有しているのは俺と輝美だけ…モノだと思われていても、ここにいたいよ。

流星にとっては、輝美の存在が何より大切で、何より愛を感じていた。

こんなにカラダの深くを抉っても、届かない俺の想い──どんなに頑張っても、俺は甥という立場から抜け出せないのか──だけどもしも輝美が妊娠していたら、俺は輝美と結婚してその子の父親になれると思った…けど、それを望むのは俺だけで、輝美は違う。

「あ、う…イッ…くっ…!」
「イッて、輝美」

俺は輝美に、愛してない男の子どもを産ませたかった訳じゃないだろう?

輝美と家族になりたかっただけだ。こうしてずっと、繋がっていたいだけだ。

ぐいっ、流星が腰を深く沈めた時、輝美は達したのか、ビクン!と、強張らせたカラダから力が抜けて行くのが流星にも判った。

「はっ、はっ、はぁ…っ!」

イッた輝美の姿を見ていたら、俺も一気にイキそうになって、あっ…こんな時なのに、俺まで…っ!

……!

流星は輝美のカラダのナカで果てたモノを、自省しながら引き抜いた。

輝美は病人なのに、いくら求められたからって、俺の欲まで晴らすなんて最低だ。けど、我慢なんて出来る訳ない。俺がこの世で最も愛してる女のナカで出せないなんてそんな事…ん?

情けない姿に変わり果てたイチモツを包んだティッシュが白ではなく薄紅色に染まっている。

血…?!

それを見た瞬間、流星の血の気が引いた。

そういえば、輝美に挿れる前、輝美のナカから引き抜いた指は、血の味がした、ような…

これって、生理?けど、もしも生理じゃなかったら…

ようやく落ち着いて目を閉じた輝美の膣にタンポンを詰めた後、輝美の体を布団で包んだ流星は、急いで服を着るとリビングに行き、ノートパソコンを立ち上げた。

検索したのは、『妊娠』『出血』…


"妊娠週数"?そんなのわからない。

"最終月経日"?月経って生理の事だっけ?

生理が遅れてるってどのくらい遅れてたんだろう?うー、さっぱりわからない。

さっきの出血が『生理』なのか『不正出血』なのか『切迫流産』って、えっ…?

流産って、まだ妊娠確定前。じゃあ、違うかな。

調べれば調べる程、不安が募ってしまう流星は、自分のした事を後悔しながらベッドルームへ輝美の様子を見に行った。

「輝美…!」

眠っていると思っていた輝美は、ベッドの上にうつ伏せで、剥き出しのお尻を突き上げた恰好で、陰部に手を這わせていた。

輝美が後背位を求める時は…生理の時だ。

流産ではなくてホッと胸を撫で下ろした流星だったが、生理…という事は、輝美は妊娠していなかった、という事になる。

「う、うう…?」

輝美は、脚の間から出している右手の指先を挿したい場所に挿せずに困っている。流星が挿れたタンポンが邪魔で指が挿れられずに唸っていた。

落胆と安堵が入り雑(ま)じった複雑な気持ちを抱えつつ、流星はベッドの上に上がった。

ティッシュペーパーの上に、輝美から引き抜いたタンポンを落とすと、真っ赤に染まっていた。

やっぱり生理か…輝美は妊娠してなかった。

安堵と落胆が交錯する中、勃つ己(おのれ)を正当化する理由を頭の中に並べた。

誰でもいいと思っているのは、輝美の方だ。俺は違う。

ジーンズの前を開き、ずらした下着から覗かせた煩悩の根源を、輝美の疼きが求める場所へ向かわせる。

ず、ちゅ…っ!流星は、腰を高く突き上げる輝美のナカへ後ろから繋げた。

「はっ!ああ…!」

熱と生理で朦朧としている輝美は、今、俺がこうしている事も、正気に戻ったらきっと憶えていないんだろうな。

セックスは今まで数えきれない位、何回もした。けれど輝美は、その殆んどを憶えてなくて、俺の記憶だけ、輝美でいっぱいになって…こんな、愛しいとか思う気持ちも、俺だけなんだなって思うと、遣り切れなくなる。

輝美と結婚したかった。奥さんにしたいというより、輝美の旦那になりたかった。生涯俺だけを求めて、俺だけと暮らしたい、そう言わせたかった。

俺と輝美の子どもが出来たら、俺と輝美は本当の家族になれる──でもそれは間違っていた。

輝美は俺の事を甥としてしか見てくれない。今までもこれからも、輝美の中で男として見られるのは、この繋げたカラダの一部分だけなんだろう。

俺の存在は、輝美にしたら、あのバイブと変わらない。

バイブよりややこしくてうるさくて手のかかる甥かもしれない。だけどもう、俺の方から輝美の傍を離れるなんて無理だ。

昨日、輝美が泣き叫ぶ声を聞いたから。

甥だけど、家族で、居なくなったら寂しいと思ってくれるんだって、わかったから。

たとえ結婚出来なくても、輝美の人生に関わる人間でいたい。

これが『愛』と呼べない気持ちなら、きっと一生、俺は『愛』を感じる事はないだろう。

輝美にしか、捧げたいと思えない。この気持ちも、この命も、全部。

輝美が熱に浮かされる中で三度目を欲した時、流星は冷蔵庫に保管していた座薬を持って来て、うつ伏せにして腰を上げた輝美の後孔に埋め込んだ。

「あ、ううっ!」

痛みに腿を震わせた輝美のまだ鎮まらない欲を慰めるべく、流星は、ベッドルームの灯かりの下に晒されている割れ目の前方に指先を忍ばせた。

「ふっ、ううう…!」

ぷっくり肥大した陰核に触れただけで、輝美の背中が跳ねた。

まだ熱が引かないから、輝美は体の奥が疼いて仕方ないんだろう。お風呂でのぼせた状態と一緒、加えて生理中に性欲が増す体質だから、輝美は今、本当に辛い筈。

イキたくて、イッても次の欲が溢れ続けて止められない。

二年前まで、輝美の生理中はお風呂で、ナマバックが常だった。

経血が溢れている中でセックスするのには抵抗があったが、その時だけはゴムを着けずにナマで中出し出来たから、いつしか血も気にしないようになっていた。

こういう体質だから、俺を好きな訳じゃなくても受け入れてくれる…それでもいいよ、俺が輝美の役に立つなら。

輝美の陰核や乳房を指と舌で弄って悦ばせながら、流星は「俺を見てなくても、俺は輝美だけが好きだよ」と囁いた。

クチャ、クチャ、グチャ…

「あ、あ、あ…んっ!」弛緩するカラダから零れる甘い声と熱い息。

ベッドに横たわる白く滑らかな肌にくちづけると、切なさが込み上げる。

俺に一番近い女。なのに手に入らない。どこまでもいつまでも、俺は輝美にとって”甥”のまま。

何度カラダを繋げたって、俺の事を愛しては貰えない。

俺の欲しい”愛”は、輝美から”唯一の人”と認めて貰える”愛”だよ。俺じゃなきゃ感じさせられない、そういう”愛”を、輝美から発注されたいのに。

ずっとこのままなのかな?俺と輝美は、どうしても、男と女にはなれないのかな?

果てた後、うつ伏せのまま眠っている輝美のパジャマを整え、頬に残る涙の痕を指で拭った。

「アイシテル…」

何度も試したけれど、心には届かない呪文を、目を閉じている輝美の耳許で流星が今夜も唱えた後、その愛おしい唇にくちづけた。

輝美の熱は、翌木曜日の朝には下がっていた。

しかし、今日も輝美をこのまま寝かせて置きたいと思った流星は、輝美の出社時刻に、リビングで輝美のスマートフォンから会社に電話をかけた。

相手は”カシュウ”という男。

輝美の事を心配している口ぶりに、輝美と加集の仲を勘繰った流星は「心配しないで下さい。輝美の事は命懸けで護りますから」と電話口の加集に言った、その時…

「流、星!まさか、会社、に電…ゴホゴホッ!」咳込むのを堪えながら、パジャマ姿の輝美がリビングに入って来た。

輝美の声を聞き付けた電話口の加集が流星に『塩谷さんに代わって下さい』と言うと、流星は「まだ体調が思わしくないので無理させたくありません。失礼します!」と電話を切った。

「こ、らっ!流…ゴホゴホッ!今の、誰…?」
「無理したら駄目。薬飲んで寝てて。はい、喉と咳に効く薬」
「薬は、いいっ、て…コホッ、言った、で、しょっ…」

ケホンケホン、咳き込む輝美を流星はソファーに座らせ、広げたフリースブランケットで輝美の両肩と背中を包んだ。

流星はソファーに座らせて輝美の前に跪いて「妊娠してないよ。輝美、生理来たから」輝美の手を握りながら言った。

「え?嘘…」
「妊娠してなかったのは俺にとっては残念だったけど、輝美にとっては良かったでしょう?」
「……」
「ごめんね、俺、どうしても輝美と家族になりたくて、焦ってたのかもしれない」

流星は握り締めた輝美の手に、自分の額を乗せた。

妊娠…してなかったのね、私…

思わず下腹に手を当てた輝美は、ホッとしたような、何か大事な物を失ったかのような気持ちになっていた。そして、輝美は黙ったまま、流星の後ろ髪に頬を寄せた。

こんなに私を想ってくれるあなたとずっと生きると決められたら、私の未来は明るくなると思う…でも、それはあなたの未来を犠牲にするようで、私には出来ないの。

あなたと一緒にいたい、いつまでも。だけど、それを私のワガママで叶えた後、あなたが私と一緒にいる事は、しあわせではなかったと気付く日を迎えるのが怖いの。

顔を上げた流星は、頬を緩ませ、やさしい視線で私を包んだ。何だか夢が続いているみたい…熱にうなされている間ずっと、流星が私の熱を冷まして、楽にしてくれる夢。

どきん、どきん、どきん、ずきっ…え?!子宮が痛い。これって、生理痛?

はっ!そうだわ。どうして私の生理が来た事、流星が知っているの?膣に違和感。という事は、流星、またアレを挿し込んだのね。普通なら恥ずかしくて逃げ出したい事だけど、流星には、もう何度もみっともない姿を見せているから…

輝美は生理中、バスルームで流星と交わる時には意識はあり、記憶に残っていた。ただ、それ以上に激しく求める、意識混濁時のセックスの記憶は無かった。昨夜の記憶も。

私ったら、今更何よ…みっともない姿を晒して、流星に幻滅された方がいいでしょう?そうよ。流星は、私と結婚したくなくなる、その方がいいのよ。

「お腹空いたね」と流星が輝美の膝の上から頭を起こした。
「そう…ね」
「最近おかゆばかりで飽きたよね?うどんの乾麺があったから、それ茹でて、煮込みうどん作る。ネギと豚肉入り」

流星は、よっ…と、輝美の前から立ち上がった。

「あり、がと…」昔より大人で優しい流星と暮らすのは独りより楽で安心出来る。
「うどんの湯気吸ったり、おつゆ飲んだりって、鼻が詰まって喉が痛い時にいいんだって。耳鼻科の先生が言ってた。生理食塩水みたいなもんなのかな?」

はははと笑ってリビングのドアを開け、キッチンに向かう流星の背中は少し寂し気に見えたけれど、私には慰められない。

流星は私のせいで傷付いているのに、何も出来ない…ごめんなさい。

私があなたを好きにならなかったら、お互いに辛く思う事もなかったでしょうね。

トクトクトクトク…あなたを見る度、胸が鳴る。多分、恋かもしれない。

せめて初めてあなたに出逢った時の齢に戻る事が出来たら…「好き」と素直に言えたかもしれない。





金曜日の朝、マスクをした輝美は「いってきます」と玄関で流星に告げた。

「いってらっしゃい。気を付けて…」流星は、病み上がりの輝美よりも元気のない表情を浮かべていた。

流星ったら、元気ないわね。私の事を心配しているからなのかしら?でも、そうではないような気がする。何か、思い詰めているような感じ…何かしら?

ゴホ、ゴホッ、ゴホン! 輝美は会社に着いた途端、咳が止まらなくなり、水を飲んだり、のど飴を舐めたりと頑張ってはみたが咳は全く治まらず、結局お昼前に早退する事になってしまった。

半日で早退なんて、根性無くて恰好悪い。

久し振りに外に出て、このまま家に帰りたくなかった輝美は、駅の喫茶店で時間を潰そうと、会社を出ると、自宅マンションとは逆方向へ歩き出した。

駅ビルの書店でファッション雑誌を買い、上の階の喫茶店へ入ると、輝美はある人の姿を目にして、手に持っている雑誌を滑り落としそうになった。

「いらっしゃいませ」店員の声にハッとした輝美は、その人物の座る場所から死角になるテーブルを選んだ。

「ご注文は?」若い女性店員の声にハッとしてテーブルの方を向くと、目の前に水とおしぼりを出された。

咳込むのを恐れた輝美は、コップを掴み、氷水を飲んで喉を冷やした。

「こ、コーヒーを、ホットで」
「かしこまりました。少々お待ち下さい」店員が下がると、輝美はすぐ隣にある間仕切りの低い壁の上に並べられたポトスポットの隙間から、外の景色の良く見える窓際の席に一人で座る若い女性の様子を窺った。

彼女は先週の金曜日うちに来た、確か名前は…サチさん。流星の別れた彼女。

一人で紅茶を飲んでいるみたい。

“別れた”…と言っても、今ならまだやり直せるかも。だけど、私はそれを嫌だと思ってしまった。彼女とヨリを戻したら、うちを出て、流星は彼女と結婚するかもしれない──

ギュウ、輝美は手にしている雑誌の端を強く握り締めていた。

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碧井 漪

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