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sazanamiの物語

恋愛小説を書いています。 創作表現上の理由から、18才未満の方は読まないで下さい。 恋愛小説R-18

そうそうない 44 2015年10月12日のこと(1)

Posted by 碧井 漪 on  


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2015年10月12日月曜日。体育の日。カレンダーの文字は赤。祝日だ。


僕が子どもの頃の体育の日は10月10日と決まっていた。


2000年からハッピーマンデーという制度を導入して、固定されていた祝日が一部、月曜日に移動した。


それ以来、体育の日は10月の第二月曜日、日にちで言うなら8~14日の内のどれかが、毎年祝日となる。


今年、2015年は12日が月曜日。美和の勤める幼稚園も休みで、まだ寝ている。


明け方、腰の痛みで目が醒めた僕は、トイレに立った。


それから一時間程何もせず、窓辺に座っていた。掛け布団に包まったまま、カーテンの隙間から、ぼんやり畑を眺めている。


昨日、美和と二人で片付けたひまわり畑。


今年も一人で片付けるのかと思っていたから、美和が手伝ってくれて早く終わったし、何より楽だった。


体もだけど、気持ちも。


孤独に慣れたつもりでいたのに、そうでもなかったんだな。


美和が男だったら、わーさんに悪いと追い出してた。


女らしい女でもそうしてた。


でも美和はどちらかと言うと女らしくない女で、男らしくない僕とその点は同類だと思えた。


年下だけどそれも感じさせない。20年来の志歩理と変わらず接して来る。まるで幼い頃から知っている幼馴染みのように。


妹とは違うし・・・一番近いのは、こんな事思いたくないけど、やっぱりわーさんかもしれない。


わーさんと考え方が似ている気がする。言う事が近いと言うか、時々、わーさんと同じ事を言うと感じたりする。


僕はどちらかと言うと人見知りの方で、広く浅くよりは、狭く深く付き合う方が好きだった。


恋人だって、ゲイという事もあるけど、わーさんは三人目。好きになっただけの人はもう少し居たけれど。


今まで出逢った男の中で、いや、人類の中で、わーさんが一番好きだった。


だった、なんて過去形。今も一番はわーさんだよ。


仏壇を振り返ろうとした時、ポン!両肩に何かが乗った。


「ひっ!」驚いて声を出した後、わーさんかもと思ったら怖さはなかった。


僕の魂を抜いてあの世に持って行ってくれるならそれもいい、と思ったのに、


僕の肩を掛布団の上から叩いたのは「おはよ、元。」美和だった。


「おはよ・・・」


「寒いねー。入れて。」


美和は、勝手に掛布団の右端を掴んで引っ張ると、僕の右隣りにちゃっかり座り込んでグッと身を寄せると、バサッ、掛布団の中に収まった。


二人で入るには狭い。前が開いてスースーと冷たい風が入って来る。


「寒いよ。自分の掛布団持って来て。」


「いいじゃない。少しだけ。」


膝を抱えた美和は、僕の右腕に頭を寄せた。


何故かどきりとした。


まるで恋人同士みたいな、変な距離感。


パジャマ越しに触れる美和の頬はやわらかくて温かかった。


嫌じゃなかった。もう少しこうして居たいと思った。


その時、分かった。


僕は人肌が恋しかったんだと。


男とか女とか関係なく、ただ、そのぬくもりに触れて安心したかったのだと。


母を恋しく思っても、甘えられる齢でもないし、それを考えるだけで、お互いに気持ち悪いだろう。


同年代の友人や志歩理に会って、何の前触れもなくいきなりハグしたら、一体何だ?と思われるだろう。


美和も同じなのかな。


男を好きになれない。かと言って、その女以外の女も好きになれない。


美和も母親に甘えられる齢ではないし、女友達に会っていきなりこんな事をしたらやはり何だ?と思われると出来ない───こういうのは大抵、男女の恋人同士がするもので・・・いや、僕はわーさんが生きていたら出来たけれど・・・


もう出来ない。


美和もそうだからなのかな。僕にこうして寄り添い、凭れているのは。


絶対に恋人同士にならない僕らなら、くっついても許される?わーさんも許してくれる。


「美和。寒いから、もう少しくっついて。」


「えっ?・・・うん。」


美和は僕の顔を下から見上げ、少し間を開けて返事をした。


嫌だったら、最初からくっつかなければいいのに。


少し苛立った僕は、男に触られるのが嫌だろう美和の背中に腕を回し、肩を掴んで抱き寄せた。


僕にそうされた美和は声一つ上げず、しばらく僕と一緒に畑を眺めていた。


体は、さっきよりは温かい。


でも、僕の気持ちは少し冷めていた。


確かに人肌は恋しかった。だからさっき美和が僕に凭れて来た時、嬉しかった。


でも、僕が抱き寄せると、美和はそれを望んでいなかったから黙り込んだ。


それに勝手に傷付いた僕は、嫌がらせのように美和の肩を抱き続けて、でもそれもそろそろやめようと思う。


畑に陽が射して、明るくなって来た。現在六時半過ぎ。僕が美和の肩を抱き寄せて二十分程。


すでに、僕の望んだぬくもりではなくなっている。


美和の肩から手を離した僕は、バサッ、背中を包んでいた掛布団から一人抜け出した。


「元・・・」


美和は、立っている僕に縋るような眼を向けた。


嫌がっていた筈なのに、何故?と不思議だった。


僕に肩を抱かれて、

「嫌だったんじゃ───」ないのと訊こうとした途端、

「くしゅん、くしゅんっ!」美和が二回連続でくしゃみした。



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碧井 漪

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