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sazanamiの物語

恋愛小説を書いています。 創作表現上の理由から、18才未満の方は読まないで下さい。 恋愛小説R-18

累とみみ 8

Posted by 碧井 漪 on  


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本物の僕って何だ?益々解らなくなった所で、

「今度、累のおうちに遊びに行ってもいい?」と訊かれた。


「え?僕の家?」


「駄目?迷惑?」


「い、いや・・・そうじゃないけど。」


「じゃあ、いいの?」


僕が自宅にみみを招く所を想像してみた。


両親は腰を抜かすかもしれない。励はニヤニヤしそうだ。


侶偉は友達になりたがるかもしれない。


考えたら、みみは侶偉と同い年だ。


「いいけど、今度ね。」


「うん、今度。楽しみ。」


僕は、みみが心配になって来た。


ゆうべ知り合ったばかりの僕を、次の日には自宅に招き、またその次には僕の家に来たいと言うのだから、もしこれが僕ではなくて、僕以外の男であったなら危険極まりないと思う。


犯罪に巻き込まれてからでは遅い。


僕はみみの父になったような気持ちでみみに言った。


「僕以外の男をこの家に入れては駄目だ。」


「入れないよ。」


「それから、夜、一人で出歩くのも駄目。」


「えー、どうして?」


「危ないから。」


「大丈夫。河に落っこちたりしないから。」


「そういう危ないじゃなくて・・・」


「累、また河に夜来る?」


「行かない。だからみみも来ちゃ駄目だ。」


「じゃあ、どこに行けば累に会える?」


「どこに、って。」


「累の会社どこ?」


「会社?」


「行ったら迷惑?でも、近くならいい?」


「どうして僕に会いに来たいの?」


「だって、累だけだから。」


「何が。」


「あたしの目を見て、話を聞いてくれる大人は。」


「え・・・?」どきん、と胸が鳴った。


“累だけ”と言われて、変な気分になった。


そのせいなのか、「じゃあ、連絡先教えるから、何かあったら電話して。」と僕は自分の携帯電話の番号をみみに教えた。


「ありがとう。いつ電話していい?」


「いつでもいいよ。出られない時は留守番電話にメッセージ残して。」


「分かった。」


「みみの番号は?」


「あたし?持ってない。お母さんは持ってるけど。」


「携帯電話、持ってないの?じゃあ、家の電話は?」


「ないよ。お母さんの携帯電話だけ。」


「そう、なんだ・・・」


「あっちの橋のちょっと先の所に、公衆電話があるから、そこからかけるよ。」


「夜は駄目だから。」


「じゃあ、累が会社お休みの日しか、電話かけられないの?」


「分かった。土曜日、朝10時、今日の河のベンチで会おう。それならいい?」


「それまで会えないの?」


またどきりとした。僕に会いたいと言う人が居るなんて。しかもそれが年下の女の子だなんて。


「そんなにしょっちゅう会ってたら、飽きてしまうよ。」


「そういうものかなぁ?友達居た事ないから分からないけど。」


友達かぁ・・・そう言われれば僕も会いたいと思う友達は居なかった気がする。


「お・た・の・し・み、だろ?土曜日までの。」


「そっか。分かった。土曜日10時ね。待ってる。」


外まで見送ると言うみみを家の中へ押し戻した僕に、みみはバイバイと手を振った。


「鍵を掛けて、早く寝るんだよ。」


「はーい。累、また転んだりしないようにね。」


外はもう暗くなっていた。


「分かってるよ。おやすみ。」


「おやすみなさい。」


僕が出ると、ガチャ、みみはすぐ玄関扉に鍵を掛けた。


締め出された気分だけど、みみの安全を確かめた僕は、安心して帰途に就いた。








★お知らせ★


「累とみみ」ご愛読ありがとうございます。

現在「そうそうない」「暁と星」「乙女ですって」「縺曖」の執筆に追われ、「累とみみ」その他のシリーズ執筆が止まっていますm(T-T)m

話は出来上がっているのですが、書く時間が取れない為、しばらく休載致します。

mecuruに登録して下さった皆様、長らく更新せず、大変申し訳ございません。「累とみみ」の続きを書けましたら、ブログより先にmecuruにて(限定)公開したいと思います。「そうそうない」は引き続きmecuruにて毎日連載を続けますので、こちらもよろしくお願い申し上げます。

その他のシリーズ、哲・公子・真琴については現在連載中の作品の目途が付き次第、「累とみみ」と共に連載再開致します。

次週は「馮離 B面」更新予定です。

まだまだ寒い日が続きます。皆様、どうぞご自愛下さい。


sazanami

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碧井 漪

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