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sazanamiの物語

恋愛小説を書いています。 創作表現上の理由から、18才未満の方は読まないで下さい。 恋愛小説R-18

縺曖 507

Posted by 碧井 漪 on  

ドックン、

心臓が、この胸から飛び出してしまうのではないかと思う程、大きく動いた。


嬉しい感情が波のように寄せられ、そして引いて行く。砂浜にぽつりと残された貝殻のような寂しさが、僕の胸に残った。


君は波、僕は砂浜、

僕の気持ちを攫って、だけど一緒に連れて行っては貰えないんだ。

縺曖 506

Posted by 碧井 漪 on  

────綺麗だな。本当に絵画の中の人だったら、僕は一生、彼を好きで居続けても誰にも咎められなかっただろう・・・

打ち明ける事が許されないなら、いっそ彼がこの世のものではなければ良かったのかもとさえ思えてしまう。


「俺、伸長くんを独り占め出来なくなった事に”ガッカリした”んだ。」

縺曖 505

Posted by 碧井 漪 on  

しかし、今ここで僕の気持ちを打ち明けてしまえば、

イサダさんを諦めた皇くんと僕を好きだと言ってくれたイサダさんの気持ちを台無しにしてしまう。


二人から絶交される。


そして、皇くんの想いもイサダさんの想いも僕の想いも、誰一人報われないまま。


「ごめんね・・・」


縺曖 504

Posted by 碧井 漪 on  

ギクリとした。皇くんに、とうとう僕の本当の気持ちが気付かれてしまったのだと。


「違う、違うよ・・・」


否定しながら、もう唇の下まで『皇くんが好き』という言葉が出掛かって居た。


─────駄目、我慢、我慢して・・・・・・


縺曖 503

Posted by 碧井 漪 on  

「ぶつけた所ってどこ?」


「ぶつけた所?」


「ゴチーンってぶつけたっておでこ、見せて。」


皇くんに言われ、僕は額を半分隠す自分の前髪を、手のひらで下から上に持ち上げた。


「あー、ここかな?薄っすら赤くなってる。」



縺曖 502

Posted by 碧井 漪 on  

そして僕は、

何があったのかとの君の問いを無視出来ないと、

「イサダさんに振られちゃった。」と答えた。


「えっ?どういう事?」


「よく分からないけれど、帰り道、急にイサダさんが”ありがとうございました。さようなら”って、一人で走って帰ってしまったんだ。」


「一人で?何で?」

縺曖 501

Posted by 碧井 漪 on  

世界は広くて、僕の悩みはちっぽけで、

夕焼けの色は目に沁みて、

彼のやさしさは僕の全部に溶け込んで、

果ての見えない愛おしさは、どこにも向ける事が出来なくて、

ただただ苦しい、けれど嬉しい。


縺曖 500

Posted by 碧井 漪 on  

「どうしたの?何かあった?」


そう先に訊いた僕に、

「それはこっちのセリフ。伸長くん、すごく暗い顔してるよ。」


心配そうに、僕の顔を覗き込んだ皇くん。


彼に心配されるのも嬉しくて、つい目元が緩んでしまった。


縺曖 499

Posted by 碧井 漪 on  

僕には、僕のペースでただひたすら駅に向かうほか無いんだろう。


“さようなら”と僕に告げた彼女の顔は、

笑って居た・・・ううん、悲しそうだった?


どっちだったか、思い出そうとすればする程、僕の頭の中に靄が掛かったみたいになって、分からなくなって行った。



縺曖 498

Posted by 碧井 漪 on  

ヒヤリとした。頭の中を過った皇くんの顔を、慌てて打ち消す。


どうして?イサダさんは僕の考えて居る事が分かったの?読心術?それとも僕の思考が全世界の人に開示されてしまって居るとか・・・なんてまさか、そんな物語みたいな事はないよね?


縺曖 497

Posted by 碧井 漪 on  

「ごめんね。」


僕は彼女の手の代わりに、右手で彼女の額に触れた。


僕と違って前髪を上げて居る彼女の額は丸くてつるんとして居て、綺麗だと思った。


傷は付いて居ないけれど、ぶつかった所だろうか、一点赤くなって居た。


縺曖 496

Posted by 碧井 漪 on  

「じゃあ、行こう。途中で具合が悪くなったら言ってね。」


はい、と頷く彼女と歩き出し、しばらくして彼女と歩幅を合わせる事に努めた。


速過ぎずゆっくり過ぎず、最初の内は難しかったけれど、タイミングを合わせたら後は繰り返し。


時々彼女の横顔を見ながら、駅までの道のりの半分を歩いた。


僕の右手に大きな道路。その道路と広い歩道を隔てるのは、桜並木。

縺曖 495

Posted by 碧井 漪 on  

「あ、違うんです。嫌とかじゃなくて、ビックリして・・・だけどあの、嬉しいです。」


「え?」


具合悪い、僕が背中を摩る、悲鳴を上げる・・・嬉しいに繋がるものはどれだろうと考えたけれど、分からなかった。


「図々しいお願いですけれど、もしもおんぶして下さるつもりなら、あの・・・手を・・・・・・」

縺曖 494

Posted by 碧井 漪 on  

「大丈夫?」と僕が訊くと、

「大丈夫って、えっと・・・」と困ったように訊き返す彼女の両耳と両頬は真っ赤で、

もしかして熱が出て具合が悪くなってしまったのかな?と、僕は急いで彼女の前に立ち、

「ちょっと失礼。」と手のひらで彼女の額に触れた。

縺曖 493

Posted by 碧井 漪 on  

それからの僕らは、図書委員の仕事を片付け、副岡先生が図書室を閉めるお手伝いをした。


午後五時前、冬場なら暗くなって居る頃だが、初夏の今、日は長くなり、まだ明るかった。

縺曖 492

Posted by 碧井 漪 on  

「そんな事無いよ。嫌だなんて思わない。」


皇くんにもそう思って欲しい僕は、願いを込めるように言った。


「一緒に居るのは、楽しいよ。」


僕は、皇くんになったつもりで言った。


目の前の彼女は僕。


好きな人の前で、ドキドキ震える心を隠し切れないで、嬉しいのに悲しくなってしまう。

縺曖 491

Posted by 碧井 漪 on  

「手?」


何だろうと、僕は自分の右手のひらを見ると、

上から真田くんが

「白岸が彼女の手に触ったからだろ?」と言った。


「えっ?」僕がイサダさんの手に触った?

縺曖 490

Posted by 碧井 漪 on  

イサダさんはカウンター上の本を手にして訊いた。


「こちら、返却ですね?」


「あ、うん・・・でも僕が。」


「当番なので、私・・・やります。」


「ありがとう。」


「いえ・・・」

縺曖 489

Posted by 碧井 漪 on  

「返却手続きなら僕がするよ。」


「あ、じゃあお願いします。ところで、お薦めの本ってある?」


真田くんはカウンターの上に返却する本を置いた。


「どういう本がいい?」


「物理と、あと小説かな。」


「小説のジャンルは?」

縺曖 488

Posted by 碧井 漪 on  

「まただ!逃げるなよ、白岸!」


僕に続いて立ち上がった島崎くんの目を、僕は見てはっきり言った。


────島崎くんに言われた”逃げる”は、ここから”逃げる”意味なのか、それとも答えを出す事から”逃げる”という意味なのか、とにかく答えるまで島崎くんは、こうして何度も僕を問い詰めるのだろう。

縺曖 487

Posted by 碧井 漪 on  

────やっぱりやめようか。こんなの間違って居る。皇くんに言われたからと言って、イサダさんと付き合うのはおかしい。
今ならまだ引き返せる────「・・・おい!聞いてるか?白岸。さっきから何で百面相してんだよ!」


島崎くんに肩を揺すられた。


「あ、ごめん・・・」また、ぼんやりして居たようだ。


「泣いたり、にやけたり、沈んだり、忙しいヤツだな、お前。」


「え?」



縺曖 486

Posted by 碧井 漪 on  

汚い、僕はとても。


皇くんへの気持ちを隠す為に、イサダさんを利用しようと考えてしまう。


彼女と”付き合う”事になれば、欺ける。


皇くんも、世間も・・・だけど、彼女も。

縺曖 485

Posted by 碧井 漪 on  

吐き出せない想い、周囲には認めて貰えない想い。


だけどようやく、僕と皇くんの関係が”親友”だと周囲に認めて貰え、

僕と皇くんは、このままでもいいと許された気がして、安心したんだ。


“恋”ではなく”友情”としてなら、許される。


島崎くんと真田くんのように、男同士”友情”なら世間から綺麗な感情として扱って貰える。

先輩の好きにしていいですよ? -女子大生Mの恋愛事情- 59

Posted by 碧井 漪 on  

「・・・聞いてるか?松田。この薬は副作用が─────」

「別に、大丈夫です。先輩にして貰いたい事なんてありませんから。強いて言うなら誰にも口外しないで貰う事だけですね。そうじゃないと、私、色んな人と遊べなくなっちゃいますから。」

「え?」

「アフターピルくらい常識です。そんな事も知らないでラブホとか入ったりすると思います?」

縺曖 484

Posted by 碧井 漪 on  

────あ、どうしよう・・・涙を零したら変に思われる。


僕は咄嗟に横に顔を逸らしたけれど、遅かったみたい。


「泣いてんの?なんで?」島崎くんが訊いた。


「スカイツリーがウケたんだろ。」真田くんが言った。

先輩の好きにしていいですよ? -女子大生Mの恋愛事情- 58

Posted by 碧井 漪 on  

「今、行きます。」


夢野はもう一度鏡を見た。


化粧が剥がれて少し幼く見える顔。今までで一番ブスに見えるのは、惨めに思えてならないからなのか、それとも自分の本当の心に気付いて、それが浅はかで愚かなものに思えてしまうからなのか。


────醜い、ブス、最低・・・・・・


縺曖 483

Posted by 碧井 漪 on  

だけど・・・いつ、どんな風に出逢っても、僕は皇くんを好きになってしまう気がして、真田くんと島崎くんのような関係になれないのは、僕が原因だと分かって落ち込む。皇くんを親友として見られない僕のせいだと。


「・・・で、いつから付き合ってんの?別に広めるとかじゃないから言えよ。」


「黄雅は信用ないから無理だよ。」

縺曖 482

Posted by 碧井 漪 on  

勇田さんと真田くん、島崎くんは同じ中学出身・・・という事は皇くんもなのに、島崎くんは皇くんの事を知らないようだった。


変だなと思う僕に、

「彼女、有名人だからね。こいつ、訊かれたんだよ。近所の先輩方に。勇田さんの付き合ってる相手はどんな奴かって。だけど、俺らはまず動画の真偽を確かめないとと思って。それに・・・」

縺曖 481

Posted by 碧井 漪 on  

「一つだけ、訊いてもいいですか?イサダさんと島崎くんはどういうお知り合いですか?」


「はあ?てめえ、俺が質問してんのに何だよ!」


「島崎くんがイサダさんのお友達なら、僕ではなくイサダさんに訊いて下さい。」

自殺相談所 55 信頼

Posted by 碧井 漪 on  

「でも、もし俺のせいで、俺が上手く話を聞けなかったせいで彼が"自殺でも"したら────」



少しの怒りと焦りと不安が、使いたくなかった"自殺でも"という言葉を俺に吐かせた。



それを聞かせた所長はどんな顔をして居るのかと、目だけを上に向け、ちらと見ると、

怒っては居ないように見えたが、眉を少し動かしたのが分かった。



所長は両手を組んだ姿勢のまま、穏やかに言った。

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