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sazanamiの物語

恋愛小説を書いています。 創作表現上の理由から、18才未満の方は読まないで下さい。 恋愛小説R-18

縺曖 462

Posted by 碧井 漪 on  

闇の底へ引き摺られるようにして手放した意識を再び取り戻した時、それまで過ごした不思議な世界で得た幸福感を途端に忘れた。


────今の、何だったかな・・・学校?夢、だった?



縺曖 461

Posted by 碧井 漪 on  

皇くんの気持ちは分からないけれど、今日、僕の背中を押してくれたのは皇くんだ。


僕がイサダさんと”付き合わない”と言うより”付き合う”と言った方が、とにかく彼が安心出来ると言うなら、それに従うべきなんだ。


本当にこんな僕が女性とお付き合い出来るのか分からない。けれど今は、他に名案が浮かばない。

縺曖 460

Posted by 碧井 漪 on  

皇くんはそんな事望まない。親友が死んだら悲しくなる。


────親友で居る事が辛くなる日が来る。忘れることが出来るなら別だけれど。


忘れるのが難しいからと言って、命を捨てるなんて無責任だ。頑張ればいい。

縺曖 459

Posted by 碧井 漪 on  

いつになったら熱くならなくなって、

いつになったらスーッと消えてくれるのか。


少し前の僕は、苦しくても消したくないなんて考えたけれど、今は違うような気もして来た。


彼に対して苦しくなる想いを抱きたくない。

縺曖 458

Posted by 碧井 漪 on  

洗濯機の前で脱いだ服を籠に入れると、お風呂場に入りシャワーを浴びた。


そうだ、忘れなくちゃ。今は勉強する事だけを考えたら、余分な事は頭の中から追い出せる。


・・・皇くんも今頃、シャワーを浴びてるかな?


ふと彼の事を考えてしまうと、止まらなくなった。


朝臣先生のマンションのバスルームで、二人裸でシャワーを浴びた事を思い出すと、顔がカッと熱くなった。

縺曖 457

Posted by 碧井 漪 on  

それから電車に乗って、家に帰って来たのだけれど、よく憶えて居ない。


ハッとしたのは夕飯の時、ぼんやりして居るのを母に「どうしたの?」と訊ねられたからだ。


「ううん、何でもないよ。」


縺曖 456

Posted by 碧井 漪 on  

「それじゃあ、伸長くん。気を付けて。」


駅前広場で自転車の向きを変え、僕を振り返った彼の笑みはいつにも増して魅力的だった。


屈託のない笑顔に、僕は一瞬、自分の立場を忘れて見惚れる。

縺曖 455

Posted by 碧井 漪 on  

それから、日記を渡し、図書室へは寄らないで帰った。


駅まで、自転車も通行可能な広い歩道を、皇くんは自転車を押しながら歩いた。


隣に並んで歩く僕は、親友としての顔はどのようにしたらと悩みつつも、”恋人”が出来てしまった事で、

当然彼からは“親友”としての顔に見えて居るのではないかと思うと、それだけは安心出来た。

縺曖 454

Posted by 碧井 漪 on  

「あ、ごめん。”付き合いたい”だなんて言って、男同士で気持ち悪かったよね。」


僕は何も言えなくなって困った。


この気持ちを誤魔化す言葉も浮かばないし、浮かんだとしても喉の奥が塞がれたようになった今、言葉が出せないだろう。
俯いて苦笑いをするので精一杯だった。

縺曖 453

Posted by 碧井 漪 on  

「俺が、青維ちゃんの好きな人が伸長くんだったって知ったの、伸長くんと”友達”になってからだもん。」


「えっ?」


「そりゃあ、青維ちゃんに好きな人が出来て、急にこの高校目指すってのは中三の時から知ってたけど、その相手が伸長くんって事は知らなかったよ。だって青維ちゃん教えてくれなかったもん。”カッコいい人”ってだけで。」


「え・・・」”カッコいい人”って僕?それは大きな誤解だよ。

縺曖 452

Posted by 碧井 漪 on  

思い切ってぶつけた僕の問いに、皇くんは不快を表すような大きな溜め息を吐いた。


「殴るよ?」


「えっ?」


「本当には殴らないけど、マジで今そう思った。」


グーに変わった右拳は、皇くんの頬杖になった。

縺曖 451

Posted by 碧井 漪 on  

「伸長くん。」


向かい合う皇くんが姿勢を正した。そして、


「青維ちゃんの事、よろしくお願いします。」と言った。


心の中に真っ暗闇を湛えながら僕は、答えを迷った。


否定すれば、皇くんが今日まで一生懸命僕の”友達を演じてくれた”事が無駄になる。


皇くんはイサダさんの為に、こんな僕と友達になって頑張ったというのに。

縺曖 450

Posted by 碧井 漪 on  

「伸長くん、そんな瞳で見つめないでよ。」


不意に鼻先を押された。皇くんの指で。


どきりとして、耳が熱くなる。


「青維ちゃんの事、考えてたんでしょう?あ、ほら図星。耳赤い。」


「違うよ・・・」僕が好きなのは、どきどきしてるのは────

縺曖 449

Posted by 碧井 漪 on  

こうして二人だけの教室で、静かに君と向かい合って過ごすひととき。


時が止まってしまえばいいのにとさえ思う。


君の事以外何も考えなくて済むなら、本当に僕の世界の中心に君だけが居てくれるのならば、僕はしあわせだろう。

縺曖 448

Posted by 碧井 漪 on  

「だーかーらー、伸長くんと青維ちゃんが!」


「アオイちゃんって?」


「勇田さんだよ。」


「ああ・・・」イサダアオイ────『勇田青維』・・・そうだ、あの図書室のカードの名前。僕と同じ本を借りて居た一年生。ずっと男の子だと思って居たのは彼女だった、そうだった。

縺曖 447

Posted by 碧井 漪 on  

彼にうっかり告白して振られてしまったかもしれない。それでもいい。本当の気持ちを明かせない今の状況よりは。


だけど・・・現実は、僕は男で皇くんも男。


彼の好きな人は女の子。そしてBLは大嫌い。朝臣先生の小説であっても読まない位嫌い・・・・・・

縺曖 446

Posted by 碧井 漪 on  

「黙ってないで何か言ってよ。」


「うん。」


「あの動画、誤解なんでしょ?」


“誤解”というのは”キスして居た”という点だ。動画は多分、捏造では無かった。

縺曖 445

Posted by 碧井 漪 on  

放課後、各教室には毎日鍵が掛けられる。けれどまだ、授業が終わって一時間に満たないせいか、鍵は開いて居た。


席と席の間に立って黒板の方を向いた皇くんは、何も話さず黙ったまま。


怒って居るのだろうと、彼の背中を見て思いながら、情けなくて泣きたくなって俯いた。

縺曖 444

Posted by 碧井 漪 on  

「何で黙ってるの?俺には言えない事でもあった?」


信じて貰えない事が、疑われる事がこんなに辛いなんて、知ってたけど知らなかった。


生まれてから今まで疑われた過去の様々な出来事なんて取るに足らない、痛くも痒くもなくなった。

縺曖 443

Posted by 碧井 漪 on  

これ以上、皇くんが彼らを挑発する場面を黙って見て居られなかった。


僕のせいなのに、皇くんを悪者にしたくないのに。


「してないよ!みんなが考えるような事は何もしてないから!」僕は今までで一番大きな声を出した。
皆が僕を、はっとした表情で見つめた。

縺曖 442

Posted by 碧井 漪 on  

「白岸に用って何の?」真田くんが落ち着いた様子で訊いた。


「白岸先輩、今日図書委員の当番なので。」


えっ?今日は僕、当番ではない筈・・・すぐに、皇くんの僕を助ける嘘だと分かった。

縺曖 441

Posted by 碧井 漪 on  

「こ・・・!」びっくりして、思わず名前を呼びそうになった。


けれど、この状況で僕と皇くんが親しい事が知られたら、今度は皇くんに攻撃が集中するのではないか、と危惧して止めた。


皇くんが彼らの背後に立った時、彼らは道を開けるようにして左右に離れた。

縺曖 440

Posted by 碧井 漪 on  

しかし僕は、事実でない事を『事実だ』とは言えない人間だ。


例えばそれが、イサダさんを守る為なら嘘をつく事も考えるが、今はそうではなさそうなので、否定し続けるしかない。


「何もしてない。誤解だよ。」


縺曖 439

Posted by 碧井 漪 on  

僕の方は頭と足しか映って居ないのに、どうして僕だと分かったのか不思議だったけれど、

「このリュック、白岸くんのだよね。靴もこれ履いてたよね。」グループ内では物静かな真田くんが言ったので、ああなるほどと思った。


普段目立たない僕の持ち物まで知って居るなんて、と少し驚いたけれど。

縺曖 438

Posted by 碧井 漪 on  

朝から気になって居た、クラスメイトの普段とは少し違うような視線の意味を、僕は6限目が終わってから知った。


「違います。誤解です。」


僕が放った否定の言葉は焦って聞こえ、偽りではないのに真実でも無いように思われそうだった。


「彼女とはどういう関係?」

縺曖 437

Posted by 碧井 漪 on  

ずっと傍に居るなんて事は、家族であっても難しい。


夫婦、親子、恋人、友人、いずれにしても24時間離れないのは無理で、

ただし、頭の中では考えてしまう。それも、なるべく考えないようにしようとは思うけれど。


彼の事を考えて居る間は、一人でも寂しさは紛れる。

縺曖 436

Posted by 碧井 漪 on  

表舞台に上がるより、裏方でひっそり作業する方が、僕の性に合って居るなんて考えにも至った。


誰からも注目されない事に慣れてしまった僕には、そちらの方が居心地が良かったんだ。


失って初めて知るありがたみ。

縺曖 435

Posted by 碧井 漪 on  

本鈴と同時に教室に滑り込んだ僕は、すでに席に着いたクラスメイト達に刺さるような視線を浴びせられながら自分の席に辿り着いた。


リュックサックを机の脇に掛け、中からペンケースを取り出した時、先生が教室に入って来た。


すると、ざわざわして居た教室内が、途端に静かになった。

自殺相談所 53 失態

Posted by 碧井 漪 on  

彼に会えたら、所長に引き合わせようと考えて居た。

けれど彼から貰った一言で、俺は動けなくなった。

『後悔したんです。あなたに色々話した事』

『何だかモヤモヤして苦しかった』

俺を受け容れた事を後悔する言葉。

すなわち拒絶されたに等しかった。

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