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sazanamiの物語

恋愛小説を書いています。 創作表現上の理由から、18才未満の方は読まないで下さい。 恋愛小説R-18

縺曖 304

Posted by 碧井 漪 on  

濡れた事により、冷えて少し感覚の鈍くなった僕の耳殻でも、それが皇くんの指である事はすぐに分かった。

どきりとして、そこだけに神経が集中してしまう。

「ほら、ここ。よし、これでいいよ。」

ザーザーという音が僕の耳から遠ざかり、指先で目元を拭ってから瞼を持ち上げると、皇くんが自分の髪の泡を流している所が見えた。

「皇くんも、こっち、泡残ってるよ?」

「えー?どこ?ここ?」

「ううん、こっち。」

それは半分嘘だった。

縺曖 303

Posted by 碧井 漪 on  

僕が「うん。」と返事をすると、皇くんは「これがシャンプーでこっちがボディーソープ。」だと、それぞれ容器を指差して教えてくれた。

また頷いて、僕は先にシャンプーを拝借した。

頭を洗い始めると、

「伸長くん、頭から洗う派なんだ。へー。」と、シャワーの音に紛れ、皇くんの声が聞こえた。

縺曖 302

Posted by 碧井 漪 on  

「このタオル使って。あー、早く汗流してすっきりしたいね。」

バスルームの灯かりが漏れる脱衣所、あまり大きくない声で皇くんは僕に言った。僕は皇くんから渡された大小のタオルを、広い洗面台脇の平らな所に置いた。

先生達に『駄目』と言われたらしいシャワーを浴びて大丈夫なのだろうかと思いながらも、逆らえない僕は

「うん。」と返事をした。

「見つかったら共犯だから。静かにね。」

先に服を脱いで唇の前に人差し指を立て、片目を瞑っていたずらっ子のように笑う皇くんにどきりとしながら、僕は服を脱いだ。

きょう

Posted by 碧井 漪 on  

きょう
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ひとりごと



人生嫌になってしまうのは、先の事を考え過ぎてしまうからなんだろうな

先の事も考えずに生きるんじゃない

という人も居るのだろうけれど

先の事を考え過ぎて嫌になってしまうのはどうかとも思う

きょうが楽しかったらしあわせ

明日は楽しくない事が起こるかもしれないけれど

明後日はとびきり嬉しい知らせが聞けるかも

昨日よりきょうの方がいいことあった

一昨日は最悪だった

10年前は10年後は生まれた頃は死ぬ時は────

一体、何を基準にしあわせな人生だった、不幸せな人生だったと言えるのだろう

きょうはきょう

欲張らず

まずは今日

人生最高の一日にしたいと思えば

いつもとは違う

忘れられない特別な日を人生の中に増やせる






縺曖 301

Posted by 碧井 漪 on  

「まだ少し熱あるよ。食べて寝なくちゃ。あ、その前に汗掻いたから着替える?俺も汗掻いた。あー・・・シャワー浴びたい。伸長くんは?」

確かに背中も脇の下も首筋も汗ばんで、気持ち悪さは我慢出来たけれど、臭いはどうなのだろうと気になった。

自分の部屋ならまだしも、皇くんのお部屋で皇くんと一緒に居て、僕だけが汗臭かったら皇くんに申し訳ないと思った。

縺曖 300

Posted by 碧井 漪 on  

ひやりと感じて目を開けると、僕の額に手を当てて、顔を覗き込む皇くんが居た。

デスクライトだけが灯る暗い部屋の中で、ただ真っ直ぐ、静かに僕の顔を見つめて居る皇くんの視線に、僕はドキドキして、本当は逸らしたくなかったけれど、耐え兼ねて、皇くんの反対へ視線を向けた。

「起きた?気分どう?」

普段より落ち着いて、低く感じる皇くんの声が耳に心地良く、もっと聴いて居たくなる。

だけど返事しないのも変なので、

「うん、大丈夫。」と言いながら、そっと窓の方を見た。

縺曖 299

Posted by 碧井 漪 on  

「はい、それでは・・・失礼致します。」

先生は僕の携帯電話を折り畳み、はいと手渡した。

「ありがとうございます。」

「先輩、じゃなくて伸長くんって呼んでもいいかな?」

「はい。」

「今夜、うちに泊まっていいって。」

縺曖 298

Posted by 碧井 漪 on  

「───先輩、先輩、どうしたの?」

「えっ?」

皇くんの寝顔に見惚れて居た僕の手を、先生がギュッと握った。

様々な世界を創り出してしまう先生の指先、そう思うと、僕などが触れてはいけないもののような気がして、慌てて手を引っ込めた。

「ぼーっとして、先輩も熱あるんじゃない?手が熱かった。」

縺曖 297

Posted by 碧井 漪 on  

無表情で黙ったままの賢さんとは対照的に、朝臣先生の表情は柔らかく、饒舌だった。

「朝、無理するなって止めるべきだったかなぁ?賢さん、ねぇ、聞いてる?」

「聞いてますよ。」

「冷たいなぁ。」

「あなたのいとこですからね、皇くんは。今朝、たとえ"行くな"と止めて居たとしても、彼は学校へ行きたかったから"行った"でしょうね。」

「何、その言い方。」

朝臣先生は、まるで子どものように、頬をプクッと膨らませた。




縺曖 296

Posted by 碧井 漪 on  

誰も居ない家。

先生も賢さんもどこかへお出掛けのよう。帰りはいつかも分からない。

皇くんはベッドに寝かせた。

机の上にあった薬を三十分以上前に飲ませ、同じく机の上にあった冷却材を額に貼り付けたら、今はさっき程辛くなさそうに眠って居る。

一安心した僕も、頭痛が酷くなったので、皇くんの薬を一錠貰って飲んだ。

今、薬の効き目が表れて、痛みが軽くなった僕は、キッチンに立って居た。

綺麗な夕焼け色に染まるリビング南窓の見えるオープンなキッチン。

縺曖 295

Posted by 碧井 漪 on  

カシャリ、と開錠音がして、皇くんの手が扉の取っ手に伸びたけれど、その指先に力は入らず、気付いた僕は、皇くんの手に重ならない部分を掴んで引いた。

扉が開いて、少しバランスを崩した皇くんの肩を慌てて支えながら、玄関の中へと進んだ。

先生の家の匂いがした。僕の家とは違って、すっきりと物の置かれて居ない玄関。

シューズクローゼットは鏡張りで、僕らの姿を映して居た。

縺曖 294

Posted by 碧井 漪 on  

皇くんの暮らす先生のマンション前に到着すると、「着いたよ、皇くん。」僕は皇くんの体を揺らして、目を醒まさせた。

ぼんやりと開いた皇くんの目は赤く、頬もうなじも赤かった。まだ熱が高い。

そんな中で、運転手さんに「3499円です。」と言われた皇くんは「えっと、これ・・・電子マネーで。」とポケットから取り出した財布を、運転手さんが前から引っ張り出したカードリーダーの上に翳した。

ピッと電子音が響いた後、機械からレシートが出て来た。

縺曖 293

Posted by 碧井 漪 on  

玄関を出た僕は、運転席の窓を少し開けて待って居てくれたタクシーの運転手さんに、「乗ります。」と言って後部ドアを開けて貰い、乗り込んだ。

扉が閉まる時、玄関を出て来た母が「待って!これも持って行きなさい。」と大きな声で言った。

気付いた運転手さんはドアをそのままにして、母が僕の元へ来るのを待って居てくれた。


縺曖 292

Posted by 碧井 漪 on  

タクシーに乗って二十分足らずで、最初に僕の家に着いた。

その時、シートに凭れてタクシーの天井を仰ぐ皇くんの顔は赤く、目は閉じていた。

「えっと、お金を・・・」

メーターに表示された料金は1500円弱、僕が財布を取り出そうとゴソゴソしていたら、皇くんは両目を片手で覆いながら、

「いいよ、俺が降りる時に纏めて払うから。」と言った。


先輩の好きにしていいですよ? -女子大生Mの恋愛事情- 14

Posted by 碧井 漪 on  

夢野は、バッグの中から取り出したスマートフォンの画面を確認したのち、耳に当てた。

『もしもし、松田?今どこだ?』

快人の声の後ろで、複数の子どもの騒ぐ声が聞こえた。外に居るらしい事が分かった。

「先輩こそ、今どこですか?」

縺曖 291

Posted by 碧井 漪 on  

「先輩、行こう。」

僕のリュックを引っ張ったまま、はぁ・・・と吐く皇くんの息はとても熱そうだった。何故そう見えたかと言えば、皇くんの目も頬も赤かったから。

僕の体も熱いけれど、それ以上に皇くんの方が辛そうで、「行こう。」と僕は体の向きを変え、廊下に出た。

するとそこには、思いがけない人が立っていた。

自殺相談所 44 休暇

Posted by 碧井 漪 on  

エレベーターの階数がこのままという事は、彼は自殺相談所に行くつもりなのか。

俺と同い年位の、一見何の悩みもなさそうな青年・・・って、何の悩みもない人間など居ないか。

ここへ来る前の俺は、自分ばっかり悩んで、自分ばっかり苦しくてという考えがどこかにあった。

けれど今の俺は、どんな人にも悩みはあり、それと上手く付きあって行けるか行けないかの差で、自殺を考えたり考えなかったりなのだと分かっていた。

彼もまた、何かしらの悩みを抱え、この自殺相談所へ来た一人。

何が苦しいのだろう。もしそれを打ち明けて、彼の心が軽くなるなら、そうして欲しいと強く願った。

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