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sazanamiの物語

恋愛小説を書いています。 創作表現上の理由から、18才未満の方は読まないで下さい。 恋愛小説R-18

自殺相談所 41 要点

Posted by 碧井 漪 on  

「何でしょうか?」

厨房奥の扉の先、居酒屋の事務所らしき所へ連れて来られた俺は、机の上の手提げ金庫に向かってゴソゴソしているウチマキダに訊いた。

─────まさか、売上金が合わないからと、俺が疑われている?でも、俺はずっと裏で洗い物やごみの片付けをしていたから、店のレジには近付いていない。

不安になりながらも、ウチマキダがすでに前掛けを外している事に気付いたので、俺もと前掛けの紐に手を掛けたその時、

「はい、これ。今夜の分。お疲れ様でした。」振り向いたウチマキダは満面の笑みで俺に向かって茶封筒を差し出した。

「えっ?」

「えっ?て何。給料。要らないの?」

「いえ、あの、てっきり・・・」

そうそうない 239 2016年4月1日のこと(3)

Posted by 碧井 漪 on  

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長編小説、ノベルシリーズ

仕方ない。

「分かりました。後は僕が確認します。先に帰って下さい。お疲れさまでした。」

「ではお願い致します。お先に失礼致します。」

「お気を付けて。」

「はい、失礼致します。」芝本さんは社長室を出て行った。

彼女の仕事ぶりは真面目で、一つ一つ丁寧だった。

目の付け所が僕とは違う。女性だからなのか。

僕の気付かない点を彼女が補い、彼女の気付かない点を僕が補う。

そうそうない 238 2016年4月1日のこと(2)

Posted by 碧井 漪 on  

「僕も・・・大好きだよ。」

この時は、"好き"より"大好き"の方が言いやすかった。

美和が先に"大好き"と言ったから、僕はあくまでそれに返したと取られるようにと考えた、と頭の中で暴れ回る羞恥を抑える言い訳をしながら。

『まだ切りたくないけど・・・元、明日会社だから切るね』

「美和こそ、明日幼稚園でしょう?」

『そう、早出なの』

「だったら早く寝ないと。」

『うん・・・そうだね』

美和の少し沈んだ声に僕も同じ気持ちだと分かる。

まだ、繋がって居たい。

そうそうない 237 2016年4月1日のこと(1)

Posted by 碧井 漪 on  

美和は一瞬体を強張らせた後、おずおずと僕を見上げた。

僕が顔を近付けると、美和は顔を背けるのではないかと思ったけれど、実際美和は目を閉じた。

それはキスをしてもいいって事なのかと、許可を貰えたような僕は美和と唇を重ね、目を閉じた。

離した後、抱き合うと、益々寂しさが募ってしまう事は、お互い分かり切って居たのに。

もう行かなくては、と僕は手を離した後、美和に背を向け靴を履いた。

「元・・・」

「ここでいいよ。」僕について外に出ようとする美和を止(とど)めた。

「うん、でも・・・」

そうそうない 236 2016年3月13日のこと(8)

Posted by 碧井 漪 on  

「謝る必要ないよ。誤解させた僕が悪い。」

「誤解?」

「美和にキスしたいのは、美和の事が好きだから。」

僕は口に運んだ親指を湿らせ、覗き込む美和の顔に向かってそれを伸ばした。

少し渇いて居る美和の唇に、僕は親指を押し当てた。

一瞬ビクリと肩を揺らした美和だったけれど、嫌そうには見えなかった。

美和の唇から親指を離した後、体を起こした僕は、両腕を畳に突っ張ったまま、美和と唇を重ねた。

想像より温かくなかった美和の唇。


縺曖 261

Posted by 碧井 漪 on  

賢さんがドアを開けた後から、たった今、「先輩!」と皇くんに声を掛けられるまで、僕の記憶は無かった。

「えっ、あっ、はい!」

「アイスカフェオレでいいですか?」ベッドの上でマスクをしている皇くんと目が合った。

「アイス・・・?あ、はい。」僕が答えると、

「かしこまりました。」と賢さんは言って、部屋を出て行った。

ゴホン、ゴホンと時折咳込みながら、皇くんは僕とイサダさんを交互に見て「わざわざお見舞いなんて良かったのに。」と言った。


そうそうない 235 2016年3月13日のこと(7)

Posted by 碧井 漪 on  

目の前に居る美和がだんだん霞んで、あの日の記憶の中のわーさんと重なった。

『いってきますのチューは?』

『行って来るよ。帰って来たらキスする』

まさかあれが最後のやり取りになるだなんて思わなかったというより、思いたくなかったから、わざとキスしなかったんだ。

あの時、と何度も後悔した。

思い出しただけで胸が苦しくなって、グルグル眩暈と吐き気がする。

「元?元、どうしたの?しっかりして!顔が真っ青だよ?」

「・・・いや、何でもない。」

「私がキスしてもいいなんて訊いたから?だとしたらごめんなさい。」

「そうじゃないよ。」

「とにかく、このまま行くのは駄目。少し休んで。」

「・・・・・・」



そうそうない 234 2016年3月13日のこと(6)

Posted by 碧井 漪 on  

「元、あの、どうしたの?」上擦った声で戸惑いを隠しきれない美和を「可愛い。」と思い、それを口から零してしまうと、

「えっ、あ、嘘。私、おでこ出すの変だから見ないで・・・」

美和は恥ずかしそうに目を伏せたまま、両手で僕の手首を掴み、自分の額から引き剥がそうとした。

「変じゃないよ。綺麗。」

僕がそう言うと、美和は益々困ったように、「やだ、恥ずかしい!」と目の下を赤くした。

「も、元の方が綺麗!」

そうそうない 233 2016年3月13日のこと(5)

Posted by 碧井 漪 on  

穏やかで安らぐ時の中、これがもっと続けばいいと欲を出してしまうから、やがて来(きた)る終わりに脅えてしまうのだろう。

好きなものが増えれば増える程、手離す時の事を考えて嫌になる。

無意識の内に僕は、僕の髪を撫でる美和の指を捉え、少し冷たいそれを唇で食んで居た。

「も・・・!」驚いた美和の声が聞こえる。

僕の口の中にある美和の指先に舌を這わせた。

何故そうしたのか分からない、けれどそうしたくなって、止められなくて、今、僕は美和の指を舐めて居た。

嫌なら美和の方から離れてよ。僕にはもう気力が残って居ない。好きなものから離れるという。

そうそうない 232 2016年3月13日のこと(4)

Posted by 碧井 漪 on  

二人で包まった布団の中で、一時間もしたら、今度は本当に美和が眠ってしまった。

僕は美和の寝顔を見ながら、あくびをして、それでもまだ眠る気になれなくて、美和の無防備な寝顔を眺めて居た。

僕の腕の中で、僕を愛してくれて居る人が安心したように眠って居る。僕も安らかな気持ちで居られた。

でも・・・カチコチカチコチ、時が流れるのが早い気がした。

朝になって、昼を迎え、夜になる前に美和とまた離れる事を考えてしまうからだろうか。

さっき、あのままキスをして、抱き合って居たら、何かが変わって居たのかな。

いずれ籍を入れて正式に夫婦になったら、今までの暮らしと何か変わるのかな。

そうそうない 231 2016年3月13日のこと(3)

Posted by 碧井 漪 on  

僕がわーさんを忘れる日が来ても、わーさんは僕を愛したまま変わらないと言って居たんだ。

亡くなる日までわーさんは、僕だけを愛して居てくれたから。

わーさんの愛は止まったまま。僕の心の奥で止まったまま。

僕はわーさんの愛が増えないなんて拗ねてしまって居たけれど、それはわーさんが望んでそうなった訳では無い。

もしも僕だったら、先に死ぬのが僕だったら、わーさんに言えただろうか。

『僕が死んだら、僕の事は忘れていいから』そう言えただろうか。

そうそうない 230 2016年3月13日のこと(2)

Posted by 碧井 漪 on  

トン、トン、トン・・・美和の手の動きが止まった。

すると、スースーと、美和の寝息が聞こえ、力の抜けた美和の体が僕の方へ傾き、僕の顔面はグニュッ、美和の胸元に押し潰された。

「えっ?!ちょっと、美和・・・!」

僕を寝かしつけようとしていたのに先に美和が眠ってしまうなんて。

何とか美和の体を引き剥がそうとしたら、反対に美和の両手は僕の頭を包み込み、ギュッと強く抱き締めた。まるで抱き枕になったかのような僕は、どうしたらよいかと考えたが、眠ってしまった美和の力は案外強く、僕は美和の胸元からしばらく抜け出せないで居た。

何だかとても安らいで居た。

縺曖 260

Posted by 碧井 漪 on  

ヒタヒタヒタ・・・気付くと、僕は少し俯きながらマンションの廊下を歩いていた。

イサダさんは僕の前を、案内人のように静かに歩いている。

エントランスを潜り、エレベーターに乗って降りても、お互い無言で、僕は今日、彼女とここへ来てしまった事を心底後悔していた。







そうそうない 229 2016年3月13日のこと(1)

Posted by 碧井 漪 on  

バサッ。

突然僕の背中に、何かが、いやおそらく布団が掛けられた。

こんな事するのは、化けて出て来たわーさんではなかったら────「風邪引くよ?」

美和しか居ない。

屈んだ美和と肩越しに視線が合うと、何だか恥ずかしくて、どちらともなく顔を逸らした。

「どうしたの?眠れない?お茶淹れようか?」

灯かりは点けず、暖房を点けた美和が台所へ行こうとするので、

「ちょっと、来て。」と僕は美和を呼んだ。

そうそうない 228 2016年3月12日のこと(16)

Posted by 碧井 漪 on  

「具合、悪くないよ。違うよ、死んじゃうって言ったのは、こんな事、夢にも思わなくて、だから怖くて、明日、目が醒めたら全部このしあわせが消えちゃってたらどうしようと思ったら、震えが止まらなくなっちゃったの・・・」

「こんな事って?」

「元が・・・」

「僕が何?」

「元が、私を"好き"と言ってくれた事・・・」

「え?・・・と、あの・・・えっ?しあわせ?」

そうそうない 227 2016年3月12日のこと(15)

Posted by 碧井 漪 on  

「えっと、だからもう一度訊くけど、一体僕のどこを好きになってここに来たの?」

訊いたらもっと照れに襲われる事は分って居るのに、変だな、訊かずには居られない。

「一目惚れって言ったでしょう?志歩理社長の結婚式で初めて元の姿を見た時に、頭の中が真っ白になったの。」

「真っ白に?ええとそれって一目惚れではないのでは?」

「ううん、間違いない。」

一目惚れって事は顔やスタイルって事が。僕は見た目にそれ程自信は無いが、結婚式ならまあ、普段よりは整った恰好をして居たから・・・

そうそうない 226 2016年3月12日のこと(14)

Posted by 碧井 漪 on  

「それで良かったんだと思う。正直に話してくれなかった事、今となっては良かったんだよ。」

「じゃあ、私が嘘をついてた事を許してくれるの?私、この家を出て行かなくてもいいの?」

「え?まだ出て行くつもりだったの?」

僕が"好き"だと、"傍に居て欲しい"とも言ったのに、まるで伝わって居なかった?

それとも"つまらない"この家にずっとなんて居たくないとか?

「だって、出て行きたくないけれど・・・元が留守の間、私が一人でこの家に居てはいけないのでしょう?」

あ、えーと、"実家に戻る"と言って戻って居なかった、そっちの嘘の事?僕ではなく他の人を"好き"と言っていた方ではなく───「"いけない"と言うか、単に心配なだけで・・・」

そうそうない 225 2016年3月12日のこと(13)

Posted by 碧井 漪 on  

そして今、僕の心の中には再びあの感覚、わーさんの事を"好きだな"と認識した瞬間と同じ感覚が僕の胸の奥に湧き上がり、窮屈に閉じ込められて居た気持ちが、広い世界に解き放たれたような気分になった。

僕の美和に対する"好き"は、もしかしたらわーさんに抱いたものと同じものなのかもしれない。

───いや、そうなりたい。

それで、美和は僕の事を"好き"だと言ったから、今から僕が美和を"好き"になっても困らない・・・と思うが、一応、確認しておこう。

「美和、あのさ・・・」

なんて言おう。

そうそうない 224 2016年3月12日のこと(12)

Posted by 碧井 漪 on  

「ほん、とうに・・・?」

美和の頬には無数の涙の痕があり、目も真っ赤だったから、そうか、布団の中で泣いて居たんだなと分かった。

「私、この家で暮らしていいの?元、嫌じゃないの?」

「え?どうして僕が・・・ああ、だから出て行けと言ったのはわーさんとの事を勘違いして───」

「違う、そうじゃなくて、私、元にあんな事言っちゃったから・・・」

「"あんな事"って?」何だっけ・・・えっと?

僕の問いに、美和は口籠り、下を向いた。

縺曖 259

Posted by 碧井 漪 on  

皇くんの家の最寄駅に着いた時は安堵した。

混雑した電車内では身動きも取れず、彼女に密着する僕は、ずっと呼吸するのを我慢して居て、だからホームに降り立った途端、ようやく大きく息を吸う事が出来た。

改札を抜けると、彼女は「ここに寄ってもいいですか?」とお店を指差しながら訊いた。

「うん。どうぞ。」



そうそうない 223 2016年3月12日のこと(11)

Posted by 碧井 漪 on  

「信じてくれないかもしれないけど、いつもやさしい男の人の声で『大丈夫だよ、美和ちゃん』って聞こえるの。わーさんに会った事が無いから、わーさんの声は知らないし、私が勝手に想像してしまって居るだけかもしれないけれどね。」

「・・・・・・」多分、わーさんかもとは言えなかったけれど、そうかもしれないと僕も思った。

「元、お風呂沸かし直すから、入って来て。体、冷えちゃってるから。」

美和は、廊下の真ん中で立ち止まったままだった僕の背中を押し、お風呂場の方へ促した。

「嫌だ。入らない。」

「どうして?駄目だよ。こんなに冷えちゃってるから風邪引いちゃうよ。」

「美和は、僕がお風呂に入って居る間に出て行くつもりなんでしょう?」

「・・・そんな事、しないから。」

そうそうない 222 2016年3月12日のこと(10)

Posted by 碧井 漪 on  

「"どうして?"は、こっちのセリフだよ!いくら僕が"出て行け"と言ったからってこんな夜中に出て行くなんて非常識だ!」

いや、"非常識"と言うか、"理不尽"な事を言ったのは僕の方。

「ごめんなさい・・・」と美和は顔を下に向けて謝った。

違う、反省すべきは僕の方なのに。

僕は美和が可哀相になって、抱き締めた。

「馬鹿───────馬鹿だな、美和は。こんな僕を・・・"好き"になったりして。」

もう嫌いになっただろう?だから出て行ったんだろう?

そうそうない 221 2016年3月12日のこと(9)

Posted by 碧井 漪 on  

僕は、ドクドクと高鳴る胸を手で押さえながらトイレへ向かった。

トイレから出た僕が手を洗い、洗面台の鏡を見ると、何とも情けなくくたびれた男が一人そこに映って居た。

さっき聞いたのは、きっと何かの間違い、或いは嘘だ。

だって、美和が僕を"好き"だなんてそんなの・・・

僕は今の今までずっと美和が"好き"なのは"女"だと思って居たから、それをまさか"男"の、しかも"僕"を"好き"だと告げられてもピンと来ない。

僕なんかのどこに"好き"になる要素があると言うのか訊いてみたい。

これは一体どういう事なんだ?夢か?幻か?

そうそうない 220 2016年3月12日のこと(8)

Posted by 碧井 漪 on  

「この家を空っぽにしたくなかったの。」

「"この家を空っぽに"って?」

「わーさんと二人で、元が帰って来るのを待ちたかったの。」

"わーさんと二人で"って・・・僕はその時、ようやく分かった。

美和の"好きな相手"は、志歩理でも、僕の知らない既婚女性でも無く、亡くなった"わーさん"だったのだと。

わーさんと美和がどこで知り合ったのか分からないが、美和がわーさんを好きなのだとしたら、今までの事すべてに合点が行く。

どうしてもっと早くに気付かなかったのだろう。

美和が仏壇に手を合わせた時、必ず心の中でわーさんに話しかけて居るようだった美和。

それは─────彼を好きだったからだ。

そうそうない 219 2016年3月12日のこと(7)

Posted by 碧井 漪 on  

お返し、どうしよう。明日一緒に買いに行くしかないかなと考える僕に、

「疲れたでしょう?歯磨きしてそろそろ寝よう?」そう言うと美和は、生チョコの入っているプラスチック容器に蓋をして戸棚にしまった。

湯呑みを下げると、「さ、行こう。」と僕を洗面所へ促した。

暖かかった台所から一転、寒い洗面所に立つと、一刻も早く歯磨きを終えて、布団へ潜り込みたくなった。

洗面台の鏡に向かって、歯磨き粉を付けた歯ブラシを手にした僕らは、それをそろって口の中に入れ、歯を磨き始めた。

シャカシャカシャカシャカ・・・・・・

磨く腕と腕がぶつかると、お互い顔を見合わせる。

歯ブラシを咥えて窄めた美和の唇の端に、白い泡が沢山付いて居る。

そうそうない 218 2016年3月12日のこと(6)

Posted by 碧井 漪 on  

そう言われれば・・・と、まだ仏壇に手を合わせて居なかった僕は、

まあとにかくと、仏壇の前に座り、傍らに湯呑みを置いた。

仏壇はひと月前と変わらなかった。埃っぽくも無く、綺麗な状態だった。

美和が掃除してくれて居たのだろう。

僕の留守中、もしかしたら美和はこうして、わーさんと向き合って"話し"て居たのかもしれない。

何も返してくれない、しかも会った事もない相手に、美和はひと月の間、しばしば語り掛けて居たのだろうか。

僕はこの家を離れたひと月の間、わーさんの事は忘れなかったけれど、こうして手を合わせたり、語り掛けたりはしなかった。

縺曖 258

Posted by 碧井 漪 on  

イサダさんと二人、学校を出ると、駅までの道を付かず離れず歩いた。

彼女は脚が長いせいか、僕より歩く速度が速くて、だけど二人並ぶと、彼女の歩く速度はゆっくりになり、やがて僕の後ろへ行ってしまう。

僕の歩く速さは特に変わらず・・・だから、彼女は僕を抜いたり、抜かれたりして、現在僕の斜め後ろを歩く気配がしている。

自殺相談所 40 要領

Posted by 碧井 漪 on  

開店前の居酒屋の厨房に初めて入った俺に向かって、ウチマキダはこれはこっちでそれはそっち、あれはああだけど、まだ分かんないだろうからいいやと説明を始めた。

俺は一応頷きながら、だけど半分も理解出来ていないと自分でも思っていた。

何事も半端な俺に務まる訳がない。迷惑掛ける前に断って帰ろう─────と口を開き掛けた時・・・

「基本、単純作業だから簡単だろ?ま、やってみて分からない事あったらジャンジャン訊いて。それじゃあここ、頼むな?リョータ!」

そう言い放ったウチマキダに、背中をバーンと叩かれた俺は、その後、ぽつんと一人、厨房に残された。

どうするんだ?俺・・・とにかく、とウチマキダに言われた事を指差し確認。

「ええっと、ここはこうであそこは・・・うーん、大丈夫かな、俺。」

何があるって?不安しかない。

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