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sazanamiの物語

恋愛小説を書いています。 創作表現上の理由から、18才未満の方は読まないで下さい。 恋愛小説R-18

暁と星 98 好きと好き、ただそれだけ

Posted by 碧井 漪 on  

励と抱き合いながら、るびぃは胸の奥から湧き上がる、擽ったい気持ちを噛み締め、これが人を愛するという事で、これがしあわせになるという事なのだと思って居た。

目と目が合って、励の顔が近付けられた。

目を閉じれば多分、キスされる。

でも───るびぃは励から顔を背けた。

「お酒臭い。」

ムッとしたのか、励は少し間を開けてるびぃに告げた。

「お前はさっき、俺の事を愛してくれるみたいな事を言ったけど、それ、俺のが絶対上回ってるから。お前は俺がお前を想うほど、俺を想ってない気がする。」

そうそうない 192 2016年2月14日のこと(8)

Posted by 碧井 漪 on  

「それで、元はどうするの?」

泰道からの手紙を最後まで読んだらしい美和は、開いたままの便箋に視線を落としながら、小さな声で僕に訊いた。

「うん・・・」

泰道の手紙の最後に、彼が僕に望む事が書かれて居る。

それを伝える為に書かれたと分かる僕は。迷って居た。

「私なら大丈夫だから、行って来て。」

顔を上げて美和は、僕の顔を真っ直ぐ見つめながらそう言った。

そうそうない 191 2016年2月14日のこと(7)

Posted by 碧井 漪 on  

「そうだね。この後、固まったチョコを切って、ココアをまぶす作業があるね。」

「あ、入れ物考えてなかった。」

「入れ物?」

「そう。ほら、これみたいな。」

そう言って、僕は生チョコの箱を指した。

「箱はあるよ。」

「え?」

「小さいけど、スーパーで売ってたから買っておいたの。でも・・・」

そうそうない 190 2016年2月14日のこと(6)

Posted by 碧井 漪 on  

「こんにちはー。今日はこれ一個です。」

差し出された荷物は、60サイズの発泡スチロール製の箱。

何だろう?誰からだろう?

印鑑を捺(お)した伝票の送り主の名は【虎越志歩理】だった。

「お世話さまでした。」

「ありがとございまーす。」陽気な声を出して伝票を受け取ったおじさんは、ドアを丁寧に閉めて立ち去った。

「誰から?」

そうそうない 189 2016年2月14日のこと(5)

Posted by 碧井 漪 on  

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本の通りに進めると、まず、分量のチョコレートを包丁で刻んでボウルに入れる。

生クリームを沸騰させないように温め、バターを加える。

それをチョコレートのボウルにゆっくり注ぎ、チョコレートが滑らかになるよう混ぜる。

バット等、平らな容器にシリコンペーパーを敷き、その上にチョコレートを流し込み、後は冷蔵庫で冷やし固める。

固まったら、サイコロ状に切り分け、ココアパウダーをまぶして完成だ。

うん、簡単だったな、さっきのガトーショコラよりは。

美和が冷蔵庫にバットを入れた後、

「失敗しなかったね。」と僕が広げた右手のひらを掲げると、

「うん、ありがと!」美和は頬を緩め、振りかぶった手のひらで、僕の手のひらを叩いた。

そうそうない 188 2016年2月14日のこと(4)

Posted by 碧井 漪 on  

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「生クリーム!」

「えっ?」

「確かあったよね?本の表紙に載ってたケーキの写真にはクリームが添えられてたよ?」

美和は本を持って来て、

「これの事?」と僕に見せた。

「そう、これ。生クリームでしょ?」

「多分。」

そうそうない 187 2016年2月14日のこと(3)

Posted by 碧井 漪 on  

ケーキが焼けるのを待つ間、朝食を作り、食べ始めた頃、焼き上がりを報せる音が響いた。

「ちょっとごめん。」と美和は箸を置き、椅子から立ち上がった。

オーブンを覗き込み、天板を引き出した。

同時に白い煙が立ち昇り、焦げた匂いが鼻をついた。

失敗したのかな、と思いながら、美和の横顔をこっそり見ると、美和はオーブンから取り出したケーキを僕に見せながら、

「ごめんね、失敗しちゃった。」と笑った。

僕の知る懐かしい笑顔に似ていた。

暁と星 97 お前を好きになって良かった

Posted by 碧井 漪 on  

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「苦労なんてないよ。大変だなと思う事はあるけれど、それは僕だけが感じている事じゃない。星良も同じだから。二人で一緒にいれば、大変でもそうじゃなくても、辛いなんて感じない。二人で分かち合えるから。」

「喜びも悲しみも、ってやつか?」

「まあ、そうだね。最初はお互い不安もあると思うけど大丈夫だよ、励さんと枝野さんなら。」

「何を根拠に。」

「自信無い励さんなんて、らしくないよ。」

「自信?・・・あいつの事に関しては全く無い。」

そうそうない 186 2016年2月14日のこと(2)

Posted by 碧井 漪 on  

「・・・うん、これなら何とか作れるかも。」と美和は手にした本から顔を上げて言った。

「じゃあ、それを作ろうよ。」

本当は、’’何の為に作るの?’’と訊きたかったが、そうした所で、美和の機嫌を損ねてしまったら、''何の為''なのかが永久に分からなくなってしまうから。

ここはひとつ、作っている最中に訊き出すか、作り終えた後で美和が話してくれるのを待つしかない。

そうそうない 185 2016年2月14日のこと(1)

Posted by 碧井 漪 on  

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ガラガラ、ガッシャーン!

静けさの中、突然飛び込んで来た音に僕は驚き、ハッと目を開けた。

まだ温かな布団の中で、僕は壁の時計を見上げると、時刻は午前5時30分を回った所だった。

昨日の土曜日は、出勤した美和だけど、今日、日曜日は休みだと聞かされていた。

だから今日は久し振りに朝寝坊出来る日なのに──やれやれ、と僕は布団の中から抜け出して、台所への硝子戸を開けた。

「美和、何してるの?」

戸口に立った僕は、冷たいであろう台所の床に素足で踏み出すのを躊躇った。

そうそうない 184 2016年1月12日のこと(14)

Posted by 碧井 漪 on  

口を噤んだ美和に、僕は

「一人だと寂しいんだ。」と、おそらく美和も抱えているであろう気持ちを口にした。

案の定、その気持ちを理解してくれたようすの美和は、

「うん、分かった。」と、僕が居間の畳の上に下ろした布団を直し始めた。

これで、いつも通り・・・とは行かないだろうけど──僕は美和をちらと見た。

そうそうない 183 2016年1月12日のこと(13)

Posted by 碧井 漪 on  

僕は美和の紺色のカーディガンのボタンに手を掛け、一つ、また一つと外し始めた。

この時、僕の首から上は、妙に火照って居た。

酔ってるからだ。そうでなければこんな事は絶対に──「元、大丈夫。一人で脱ぐから。」

そう言って、美和は僕の手の上から手を添えると、伏せていた顔を上げ、僕と真っ直ぐ目を合わせた。

そうそうない 182 2016年1月12日のこと(12)

Posted by 碧井 漪 on  

飴細工の箱を抱えて座り込む美和の横顔は、暗い中でだからはっきりとは分からないが、嬉しそうでも楽しそうでもなかった。

嬉し涙と言うよりは、悲し涙に見える。

本当は嬉しくなかったんだ。飴細工なんて貰っても困るんだ。

何だか、胸の辺りが苦しくなって来た僕は、その場にしゃがみ込んでしまった。

そうそうない 181 2016年1月12日のこと(11)

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「"急にどうしたの?"って、元が言ったんでしょ。"美和が出て行ったら、僕はどうなるのだろう"って。心配しなくても大丈夫。私は出て行かないから。お墓の事は心配しないで。」

ああ、恥ずかしいな。僕はさっきうっかり、考えて居る事を口に出してしまったのか。

「違うよ、僕が考えて居たのはお墓の事じゃなくて──」

ハッとして、口を押さえた。

こんな事言うのはおかしいと思った。

暁と星 96 しあわせと呼べる温もりを抱いて

Posted by 碧井 漪 on  

何をしても手に入らないと思っていたあいつの心。

それがすでに俺の方を向いていたなんて、都合のいい夢かと思った。

はっきりと目を開けるのが怖くなる時間の中で、しあわせと呼べる温もりを抱いて、死ぬまでこのままで居たいと願った。

俺が俺で良かったと初めて思った夜、限(きり)のない愛しさを持て余しながら、無防備に眠るあいつを見ていた。

そうそうない 180 2016年1月12日のこと(10)

Posted by 碧井 漪 on  

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「そんなに言われる程、大した事はしてないよ。」

あまりに感謝の言葉を聞かされ続けて気恥ずかしくなった僕は、美和より先にケーキを食べ始めた。

続いて美和も「いただきます。」とケーキを食べ始めた。

僕は俯きつつ、ちらと美和の表情を確かめる。

美和は満足そうに、チーズケーキを頬張って居る。

満足だった。

今日が本当の誕生日ではないのに、誕生会を受け入れ、喜んでくれた事、僕は嬉しかった。

そうそうない 179 2816年1月12日のこと(9)

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カメラに映っていたのは、ぼやけたケーキの側面と、僕らの胸から下だけだった。

「あれ?ちゃんと撮れてないねえ・・・」

「テーブルは低いからね。」

「そっか、失敗。」

「何か台になる物を探して来るよ。」

「えっ?」美和が驚いた声を出した。

「えっ?って写真、撮らなくていいの?」

「ううん、撮りたい!・・・元がいいなら。」

そうそうない 178 2016年1月12日のこと(8)

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「はい、お水。」

すでに落ち着いた僕に、美和はコップを差し出した。

受け取る時に触れた美和の指は僕より温かくて、触れてはいけないもののように感じた。

それからゴクンと飲んだ水はとても冷たくて、そのおかげで僕は少しだけ冷静になれたと思った。

喋らない僕に向かって美和は

「大丈夫?」を繰り返す。

そうそうない 177 2016年1月12日のこと(7)

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後部座席のドアを開けてケーキの箱を積み込もうとする僕を

「後ろに積んだら駄目だよ。」と美和が止めた。

「どうして?」

「支えてないと、ケーキが崩れちゃうかもしれないでしょう?飴細工もあるし・・・」

僕は驚いた。美和の不機嫌を作り出してしまったケーキを守ろうとするなんてと。

そうそうない 176 2016年1月12日のこと(6)

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そうかもしれない・・・テレビ番組で認知症の特集も見るが、やはりリタイアした後の、ゆったりした暮らしの中で発症してしまう人が多くみられるようだし、

刺激が足りないと脳は退化するのかもしれない。

ストレスがあり過ぎても無さ過ぎても駄目なんて、一体どうしたらいいのか。

人って生きづらい。

もっと今の生活に刺激を与えるには、どうしたらいいのだろうか。

後で美和に訊いてみよう。

そうそうない 175 2016年1月12日のこと(5)

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「去年、僕の誕生日を美和に祝って貰ったから、その分を美和に返したいんだ。」

『・・・・・・』

志歩理は黙り込んだ。

「美和の誕生日を訊くのって、そんなにダメな事?」僕がそう言えば志歩理は答えてくれると思っていた。

現に昔は『しかたないわねえ』と言って、教えてくれる事が殆どだった。

暁と星 95 未来

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その日、暁良と星良の家に泊まる事になった励と枝野は夕食後、励は暁良の、枝野は星良の部屋へ呼ばれ、共に寛いで居た。

「枝野さん、これはどうかしら?」

星良は袖を通していないという、フェミニンなデザインのネグリジェを鏡の前に立たせた枝野の体に当てて訊ねた。

そうそうない 174 2016年1月12日のこと(4)

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「これでお願いします。」僕は書き終えた注文書をおかみさんの方へ向けた。

ペンを取ったおかみさんは、注文書の【その他】欄にケーキの名前を書きながら、

「お誕生日ですね。ロウソクは何本お付けしましょう?」と訊いた。

「二十・・・五本、では多過ぎますよね。」

そんなに載らないだろう。

そうそうない 173 2016年1月12日のこと(3)

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すぐに戻るつもりで車を降りた。

大通りから左折して入ったこの道は、一方通行だった。

駅のロータリーと違って、路肩には雪が残っていた為、あまり道端に寄せられなかった。

ただ、今時分、幸いな事に車通りは少なく、大型車ではない限り、車一台通行出来る余裕はあった。

僕は、表から覗くと少し薄暗いその店に入った。

そうそうない 172 2016年1月12日のこと(2)

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「あ、お父さん、あれ話したの?いやだわ、もう。」

「家でも携帯でも、これからはいつでも僕に電話していいから。」

「いいわよ別に。もう平気。」母はそう言うが、簡単に信用出来ない。

「平気だったらこっちまで来ないでしょ。」僕が言うと、

「大丈夫だ。美和ちゃんが居るから、もう心配ないだろ。」父が言って、

「そうそう。」母が頷いた。

そうそうない 171 2016年1月12日のこと(1)

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「母さん、スイーツ位、こっちだって食べられるから。」

「元啓に言ってないわ。私は美和ちゃんと出掛けたいの。」

「そうは言ったって───」「元が良ければ、私はお母さんとお出掛けしたいよ?」

「やきもちよ、きっと。」

「え?元、そうなの?でも私、元のお母さんを取ったりしないよ?」

「違うわよ、美和ちゃん。私と美和ちゃんが二人で出掛けるのに嫉妬してるのよ。」

そうそうない 170 2016年1月9日のこと(11)

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そして、母と向き合うと、一瞬言葉を失った。

僕を見上げる母の瞳が潤んでいたから。

「ごめんなさい。あなたの気を悪くして。」

先に母に謝られてしまい、どうしようと思った。

「違うよ、ごめん、母さん。何だか恥ずかしくてついあんな事───」「ううん、私がいけなかったのよ。」

「二人共、もうそれ位で。写真、注文済んだのか?」

そうそうない 169 2016年1月9日のこと(10)

Posted by 碧井 漪 on  

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「え?父さんが行こうって誘ったの?」

「そう。家に居たって沈み込むばっかりで、お前と美和ちゃんには迷惑だったろうが、我々は来て良かったよ。母さん笑ってて、とても楽しそうだ。」

そんな事があったなんて、何も知らなかったよ。

僕が女性と暮らして居る事を知った母が浮かれて、結婚結婚とただ騒いで居るだけだけだと思ってしまった。

暁と星 94 夫婦愛

Posted by 碧井 漪 on  

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拗ねて、今にも帰ろうとする励の背中に向かって枝野は「ではどうぞお好きになさって下さい。折角なので私は旦那様と奥様にご挨拶してから帰りますので。」と言った。

驚いて足を止めた励が振り返ると、丁度玄関扉が開き、暁良が出て来た。

「どうぞ枝野さん。励さんも。」

暁良はレディーファーストと玄関に近い枝野を先に迎え入れた。

暁良が枝野の背中にそっと手を回した事が気に入らなかった励は、

「待て待て待て暁良!それは俺のだ!」と焦って二人の間に割り込んだ。


自殺相談所  38 要らない人

Posted by 碧井 漪 on  

「しばらくここで待機しましょう。私はトイレに行って来ます。冷蔵庫に麦茶がありますから、ご自由にどうぞ。」と所長は、裏の扉を開けて事務所から出て行ってしまった。


窓の外から、小さくジーと蝉の声も聞こえるだけの、静かな午後の雑居ビルの一室。


ここに居たいと言ったけれど、一人になった途端、何だか急に、どうしたら良いものか分からなくなってしまう。


俺はここに居てもいいと所長に許可を貰ったけれど、それはここに俺が必要と言う訳だからではなく、どちらでもいい、或いは居なくてもいいと言う事。

ここの仕事には給料は発生しない。ボランティアだからここにずっと居なくてはならないという義務もない。

自殺相談所。

ここの事を調べて、記事にしようなんて考えて居たけれど、それはもういい──幾人かの人生を見て、様々な生き方がある事を学んだ今、もう一度、自分の命を生き方を考えてみたくなった。



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