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sazanamiの物語

恋愛小説を書いています。 創作表現上の理由から、18才未満の方は読まないで下さい。 恋愛小説R-18

そうそうない 143 2016年1月4日のこと(4)

Posted by 碧井 漪 on  

そんな夜は、かつて毎日のようにあった。わーさんと一緒に暮らす前。別々の家へ帰らなくてはならない、どんどん寂しさに包まれて行く夜。

今の状態は、その時のわーさんと離れがたかった気持ちに似ているように思えた。

だけど変だな。今、僕と美和は同じ家に一緒に暮らして居るのに、離れても居ないのに、こうして寂しさを募らせているなんて変だ。

美和とはお互い"家族"と思って居るけれど、実は友人でも恋人でも夫婦でもない。明確な繋がりはない。

そうそうない 142 2016年1月4日のこと(3)

Posted by 碧井 漪 on  

ふと、わーさんと暮らしていた頃の事を思い出す。

わーさんが僕より先に眠ると不安になったりしていたのを思い出す。

息もしていないような静かな寝顔。本当に眠っているだけなのかどうか分からない。

病気の事を聞かされてから、僕は心配性になった。

わーさんに言わせれば、僕には昔からそういう所があったという事だったが。

そうそうない 141 2016年1月4日のこと(2)

Posted by 碧井 漪 on  

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僕からしたら女は、秘密を抱えてじっと耐えて居るというより、実は計算高くしたたかな生き物だと思えてならなかった。

美和もそうだったんだ。何かが引っ掛かると思っていたけれど、それが今まで僕の心に引っ掛かっていたんだ。

そうそうない 140 2016年1月4日のこと(1)

Posted by 碧井 漪 on  

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「妹さん、何て?」

突っ込んで訊く事でもないと思ったけれど、ここまで話を進めてしまっては、引くに引けなくなった。

「特には何も。」と言って僕に見せた美和の無表情の横顔は、これ以上、詮索されたくないという感じだった。

その時、僕の頭の中に浮かんで来た文字は、ゆうべから忘れていた【結婚】だった。

暁と星 89 (R-18) 初めての人

Posted by 碧井 漪 on  

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小説15禁・18禁(性描写あり)


結婚・・・それは駄目。

「いいえ、結婚は出来ません。」枝野は励の体を押して、抱き締められる腕から逃れた。

一生好きで居るなんて無理かもしれない。

私には出来るかもしれないけれど、励さんには私の事を好きじゃなくなる日が来るかもしれないから。

「るびぃ、そこは『はい』だろ?」

「だって、いずれ離婚すると思うから。」

「は?いずれ離婚?何で。」

「励さんが私の事好きじゃなくなって『離婚しよう』とか言い出しそうだから。」

「何言ってんの?言う訳ないだろ。」

「そんなの分からない。みんな”一生一緒に居よう”とか”永遠に愛を誓うよ”とか言いながら離婚してるのよ?信じられる訳ないでしょう?」

そうそうない 139 2016年1月3日のこと(15)

Posted by 碧井 漪 on  

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「そうだね。変わらないね・・・本当は怖いのかもしれない。私の運命の人だから。でもその運命の人には別の運命の人が居て、私の方は向いて貰えない。」

女同士の事だからか。相手はまさか美和が自分を想って居るなんて考えないのも無理はない。

「別に僕は、無理に告白しろなんて言ってない。」

そうそうない 138 2016年1月3日のこと(14)

Posted by 碧井 漪 on  

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財産一切は、僕が死んだら美和の好きにしていい。両親にも渡るように遺言書を作成しておけば・・・って、だったら美和と結婚までする意味はないんじゃないか?

僕が死ぬ前に、この家の名義を共同にしておくとか、いくらでも方法はある。

「あのさ、美和。この家を手に入れたいなら、僕と結婚しなくても別の方法があるよ。」

そうそうない 137 2016年1月3日のこと(13)

Posted by 碧井 漪 on  

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ザバッ、大急ぎでお風呂から上がった僕は、着替えるとすぐ、台所に向かった。美和は居ない。湯呑みもない。

眠ってしまったのかと居間に続く戸を開けると、美和が布団を敷いていた。

まだ起きてた。良かった。

「どうしたの?珍しいね。」と枕を置いて立ち上がった美和が僕に近付いた。

「えっ?」

「髪、濡れてるよ。」

「あ、うん・・・」

美和は居間をスッと出て行くと、タオルを手にして戻って来た。

「ここ、お布団の上に座って。」

言われるまま、僕は敷いて貰った自分の布団の上に正座した。

美和は、いつも僕が美和にそうしているように、濡れている僕の髪をタオルで包み、ゴシゴシゴシと拭いてくれた。

何だか子どもみたいに思えて、

「いいよ、自分でやるから。」と言うと、

「いつもして貰ってるから、お返し。」と美和は手を休めない。

そうそうない 136 2016年1月3日のこと(12)

Posted by 碧井 漪 on  

本当は、お風呂は後回しにして、美和の表情を暗くしている事が何なのか訊きたかった。

でも、何故か泣きそうな笑顔に見えて、僕は美和の逃げ道を作ったんだ。

「ありがと。そうしようかな。」

美和が指で短い髪を引っ張る仕草。あまり見かけないそれは、美和が困った時、苦笑いを隠す為のものに見えた。

そうそうない 135 2016年1月3日のこと(11)

Posted by 碧井 漪 on  


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帰りの車の中でも、運転しながら考えていた。


"最近嬉しかった事"で思い付いたのは、さっきの喫茶店でのやりとり。


『僕が死んだら頼むからな』


『分かってる』


僕の頭を悩ませる死後の事。


美和がそれを一言で片付け、安心させてくれた事。冗談だったのかも知れないけれど、もしも本当にそう考えていてくれるのなら。


車から降り、買い物袋を抱えて家に入るなり、


「わぁー、やっと帰って来れた!嬉しーい!」と燥いだ美和が落ち着くのを待ってから、

僕は切り出した。


「あとで、話がある。」確かめたかった。さっき美和がああ言った真意を。


そうそうない 134 2016年1月3日のこと(10)

Posted by 碧井 漪 on  


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「こちらの方は?」


お母さんは僕の方に手のひらを傾けて、美和に訊ねた。


「以前勤めていた会社の先輩です。」


間違ってはいない答えを返した美和の横で、背筋が固まってしまった僕は、何とか動く首だけでお辞儀した。


「一緒にお買い物?ご近所にお住まいなの?」


まさか一緒に暮らして居るなんて思っていないという感じだが、ちらちらと僕らの買い物籠の中身を確認している。一人暮らしにしては多い量だから。


列が動き、美和は答えるのを一時やめたのか、聞こえなかった振りをしたのか、黙ってカートを前方に押し、籠をレジ台に載せている。


困惑する僕の目に飛び込んで来たのは、アカマツだった。


「親父、そっちのビールよりこっちの発泡酒のが安くて美味いよ。」右手に六缶パックの発泡酒を持ち、左手に乾き物の袋を二つ三つ束ねている。

暁と星 88 誰も知らない片想い

Posted by 碧井 漪 on  


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「はい。」


返事をした枝野は、冷蔵庫からペットボトルを出し、蓋を開けると、励に差し出した。


しかし、励はソファーから起き上がろうとしない。


「飲ませて。」と甘える励に、普段ならピシャリと撥ね付ける枝野だったが、今夜は色々して貰ったからと、ペットボトルを、励の口にくっつけた。


しかし、このまま傾けたら、励の顔も首も浴衣も濡れてしまう。


「口移し、してよ。」


どきりとした。さっき、ルビーを弁償する話の時も『体で払って』と言われた。


枝野は隣の部屋のダブルベッドを見た。


今夜ここに泊まると言ったのは、そういうつもりで?


そうは思いたくなかったが、励も男だからと考えると、悲しくなった枝野は、少し自棄になり、ペットボトルの水を口に含んだ。


両目に腕を当てたままの励の、少し開いた口の中に、枝野は自分の口に含んだ水を流し込んだ。


これ、キスよりえっちな感じ・・・


枝野の心臓は、とても速く打ち続けていた。

そうそうない 133 2016年1月3日のこと(9)

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「ごほ、ごほん、ごほんっ!食べるって、こほっ、何、言っ、て・・・っ、ゴホッ!」


「大丈夫?水飲んで、落ち着いて。」


噎せて咳込んだ美和の顔は真っ赤で、目尻からは涙が零れた。呼吸を整え、美和は水をごくりと飲んだ。


僕は、テーブルの上のスタンドからペーパーナプキンを引き抜いて美和に手渡した。


「あり、がと・・・」


「変な事言ったかな。」


「こほ、こほっ・・・言ったよ、私に"食べられたい"だなんて。冗談にも───」


「美味しそうに食べてるから。」


「だからって、どうして私が元を・・・食べるなんて。」


そうそうない 132 2016年1月3日のこと(8)

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そんなにお腹が空いてたのか。美和は食いしん坊だからな、と思わず頬が緩んだ僕に向かって美和が言った。


「元とこんな風に喫茶店に入れるなんて、夢みたい。」


「は?」


「デートみたいよね。」そう言って、美和はふふふと笑った。


「デートなら、この前しただろ。」


さざんなみランドへ行った。美和は、あれをデートだとは思ってなかったのか?


「えっ?あれもデートと思っていいの?」


「思っていいも何も、世間一般ではそう言うんじゃないの?」


「だって、わーさんも居たし。」


ああ、そういう感覚?三人で日帰り家族旅のような?それとも遠足?

そうそうない 131 2016年1月3日のこと(7)

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「赤松さんの言った事は嘘なの。」


「だから、何が?」


彼はこう言った。


『美和ちゃんは、木村さんと暮らして───』


───つまらないって言ってました、かな?

それとも、

───早く引っ越したいって思ったそうです、かも。


どちらにしても、これ以上僕と暮らす気はないって事が分かった。


美和は僕のコートを掴んだまま俯き、固まっている。


「離して。一人で帰る。」


「嫌!私も一緒に帰る!」

そうそうない 130 2016年1月3日のこと(6)

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アカマツは美和の両親と妹に紹介されたのかな・・・って、従兄弟の従兄弟と言っていたから、遠縁。顔見知りなのかもしれない。


僕は親戚でもないし、『どういう関係ですか?』と訊ねられたら答えに詰まる。


単なる同居人。だけど異性同士だから、美和がレズビアンだと知らない人達から見れば、変に勘繰られてしまうのは避けられない。


独身同士だからいけないのだろうか。仮にどちらかが結婚していたとしても、それはそれでイケナイ関係に思われてしまう。


もうどうあっても、恋人や夫婦ではない男女が一つ屋根の下で暮らすという事には、周りは目を瞑れない、見過ごせないのだろう。


もしも僕がさっき美和のご両親に会ってしまって居たら、アカマツのように『結婚する気があるのか』と訊かれていたに違いない。


僕と美和はそういう関係ではないと言っても、信じて貰えないと思えた。


はあっ・・・吐いた息が白かった事に、今気付いた。


見回すと、さっきアカマツと話していた三階のテラスに一人、ぽつんと立って居た。


あれ?いつの間に。

そうそうない 129 2016年1月3日のこと(5)

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彼は目を伏せた。そしてゆっくり口を開く。


「美和ちゃんは、木村さんと暮らして───」


"僕と暮らして"その続きは?・・・ごくり。


その時、彼の上着のポケットから鳴り響くメロディーに気付いた。スマホかな?


彼はポケットの中に手を入れ、黒のスマホを取り出すと耳に当てた。


「はい・・・うん、分かった。すぐ戻る。」


仲間からの呼び出しかな。


「あの・・・」続きが気になる僕は、ポケットにスマホを戻した彼に声を掛けた。


「すみません。俺、戻らないと。」


「あ、はい。」続きは?僕と暮らして美和はなんて思ってるの?訊きたくても訊けなかった。


そうそうない 128 2016年1月3日のこと(4)

Posted by 碧井 漪 on  


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小便器に視線を落としていた僕は、ぼそりと話し出した彼に対し、こんな所で女性の話をするなよと思った・・・が黙っていた。


まあ、そう思うのはゲイの僕だけで、他の男連中はトイレの中で股間以外にも開放的になるのか、女性との卑猥な話をしたりもするから、特別変わっていると言う訳でもないけれど、それが美和の話というのは嫌だった。


そういう目で見ないで欲しいと考えているからかもしれない。美和は、男が穢していい女性じゃないから。


早くしまって手を洗おうと考えて居ると、隣の彼は僕より先に手洗い場へ向かった。


コートのポケットから出したハンカチを咥えた。


ザー、ザー・・・


壁一面の鏡に映る僕と彼の屈んだ姿。僕の髪だけ、ちらほら白い物が混じっている。


「45なんですか?」と腰を伸ばし、鏡を見つめた彼が言った。


「ふぇっ?」


僕が水を止め、咥えたハンカチを握ると、

彼は設置されているハンドドライヤーに両手を入れた。

暁と星 87 海が見えるホテル

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「ムカ付くんだよ、お前。俺の気持ちなんてこれっぽっちも考えてくれないから!」


「どっちが!」


「お前だよ。」


「いいえ、あなたよ。」


「お前!」


「あなたです!」


ぷぷっ、励が吹き出した。


「何故笑うの?」


「いや、やっぱ手離せねぇと思って。」


「何の事?」


「るびぃ、お前を。」

そうそうない 127 2016年1月3日のこと(3)

Posted by 碧井 漪 on  


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このステージが早く終わればいい。そうしたら美和を連れて帰ろう。まだ終わらないのか、この曲。随分ゆっくりな曲だなと、思って聴くと───


【まだよく知らないけれど 恋ってこんな風? 君と出逢えた僕はしあわせ 苦しくなる時もあるけれど楽しい事の方が多いから 傍に居て欲しい 多分君が僕の運命の人 そうだといいな】


"君"の所で美和の顔が浮かんでしまった。


この歌の通りだったら、僕が美和に対して抱いている気持ちは"恋愛感情"と言う事になってしまう。


違う違う、と呟きながら僕は首を振っていた。


僕はゲイだ。女性を好きになった事は無いし、これからもその予定はない。


まして、一緒に暮らす美和をだなんて、絶対・・・いや、絶対なんてこの世に無いから、そうそうない。


そうそうない?それだと分からないって事か。


いや、無い。僕が美和に恋するなんて、1%以下の確率だ。

そうそうない 126 2016年1月3日のこと(2)

Posted by 碧井 漪 on  


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残暑お見舞い申し上げます。

皆さま、いかがお過ごしでしょうか。

自分は仕事が忙しく、食事を抜いていたら少し痩せましたΨ( ̄∇ ̄)Ψナツヤセ?デモケンコウデス


☆お知らせ☆

本日も当ブログにお越し頂き、誠にありがとうございます。

「乙女ですって」「縺曖」は、しばらくお休み致しますm(__)m

続きを楽しみに応援して下さった皆さま、大変申し訳ございません。連載再開時期は未定ですが、必ず書きますので少しお時間下さい。








午後2時半、僕は一階の広場へ向かった。


観客はさっきより増えていた。


美和の参加するバンドって、期待されているのか?


用意された座席で空いているのは、どこも座りにくい場所ばかり。


パンフレットによると、美和達のバンドの出演時間は30分から40分。


立ち見でも良さそうだ。


僕は、ステージ上に設置されたキーボード側、向かって左側の丸い柱の前に立った。ステージから近過ぎず遠過ぎず、丁度良い位置だ。


僕は柱に少し背中を預けながら、美和の出番を待った。


午後2時59分、いよいよか。


僕の方が緊張して来た。

そうそうない 125 2016年1月3日のこと(1)

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愛のかたち



それが"結婚"だと言う人もいる。


僕も否定はしない。


ただ僕の場合、結婚出来なかった。男同士だったから。


仮に結婚出来ていたとして、死に別れたら、結婚せずに一人で生きて来た人より、強い痛みを味わってしまうのは仕方のない事だって、みんな言うのだろうか。


離婚したり死別したりする事は、お互い愛し合っていない中でなら何ともないと思えるのかもしれないけれど。


人を愛する事は素晴らしいと同時に、それと同じだけの苦しみも寂しさも併(あわ)せ持っている。


時々、片想いの美和が羨ましくなったりもするのは、相手の愛を得られない分、苦しみと寂しさも両想いの半分だからなのだろう。


僕らは二人分、それぞれ抱えている。


わーさんはわーさんの分と僕の分の苦しみと寂しさを、僕は自分の分とわーさんの分の苦しみと寂しさを抱えている。


どちらかが重いという事はない。どちらも同じ。愛が同じ分。


愛して愛されて、それは得とか損とか分からない事。

そうそうない 124 2016年1月2日のこと(3)

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リアル・恋愛小説


僕とわーさんだけの物だったこの家に入り込み、自然と居付いた美和は、来るべくして来た運命の使者。


もしそうなら、僕が死ぬまでこの家に居てくれて、

もしそうなら、僕は美和と、志歩理以上の親友になれると思った。


落ち込んで下を向いた気持ちが、明るい希望が差す上を向いて来た。


美和が戻って来たら何をしよう。


二人で何かやってみたい。新しい事でも何でもいいから、何か美和の望む事。


一人では出来ない事を二人で、無性にしてみたくなった。


だけどもしも、美和が戻って来なかったら───僕は・・・・・・


考えたくなかった。わーさんを亡くす前と同じような苦い想いが胸に広がる。


僕は、どうしたって一人になる運命なのだろうか。この家に居る限り。


だとしても、わーさんを置いてここを出て行く事は、僕には出来ない。


そうそうない 123 2016年1月2日のこと(2)

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恋愛小説(オリジナル)



1月2日am11:26


志歩理は今頃、数年前買ったというこたつに旦那と二人で入って、みかんを剥きながらテレビで大学駅伝を見て興奮している所だろう。


邪魔するのも気が引けたが、優勝の懸かった明日の復路中に電話するよりはいいかと、スマホを手にした。


しかし、志歩理の携帯電話は呼び出すものの出ず、留守番電話の応答に切り替わった。


緊急でもないので録音するまでもないと、何もメッセージを残さずに電話を切った。その後で、『年賀状ありがとう。僕は元気です。時間が出来たらまたかけます』と言えば済んだのではないかと後悔しながら、消灯した画面を見つめた。


すると、突然スマホが光り、振動と共に鳴り出した。


志歩理かなと、慌てて出ると、

『もしもし、元?』

美和だった。

そうそうない 122 2016年1月2日のこと(1)

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恋愛、恋、愛、ラブ



ああ、そうか。


ただ───会いたいだけかもしれないな。


唯一、僕を"人間として愛してる"と言ってくれた人。


友達でも友人でも親戚でも同僚でもない、同居人。


僕の退屈を毎日の食事と一緒に食べて、僕の寂しさをどこかへ放り投げてしまう人。


死ぬ前に美和と会って居たら、疲れ果て、静かに眠りたいとも思うだろうから。


一人だと、疲れてないから眠れない。ゆうべも遅くまで起きていた。早起きする理由もないし、起きても家事位しかする事がないから。


この家にこのまま、独りぼんやり生きて居たら、誰よりも早くボケてしまいそうだと思う。


そうだ、このままじゃ駄目だ。何かしよう。

暁と星 86 キズ

Posted by 碧井 漪 on  


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枝野はどきりとした。


励が自分の名を呼んだのかと思ったからだ。しかし、それは思い違いだと、この指に嵌めた指輪の事だと思った。


「指輪ならお返しします。少しお待ち下さい。」


扉から手を離し、励の方を向いた枝野は、再び指輪を引っ張った。


その間に励は起き上がり、枝野の前に立った。


それに気付きながらも指輪を外す事に集中していた枝野は、励が再び扉の鍵を閉めた事に気付かなかった。


指輪、もう少しで抜ける───あっ、えっ・・・?


突然、枝野の体は宙に浮いた。励が抱き上げたからだった。


「な、何して・・・やっ!」


励は枝野をベッドの上に下ろすと、枝野が逃げないように自分の体で枝野の体の上を覆った。


襲われる!


縺曖 255

Posted by 碧井 漪 on  


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6月2日木曜日。


今日は曇り空。湿度が高く、少し肌寒い日だった。


お昼休みと放課後、僕は日記帳を持って図書室へ行った。


けれど皇くんには会えなかった。


帰ってしまったのかと、皇くんの靴を確かめに昇降口へ急いだ。


もう帰っちゃったかな。もしかして、昨日の僕の態度に腹を立てて?


ううん、そうだったなら、僕の家までこれを届けてくれる訳がない。


うん、大丈夫。皇くんは多分他の理由で───どん!


急いで階段を下りきって角を曲がった瞬間、誰かと肩をぶつけてしまった。

乙女ですって 251 (R-18) モーニングアフターピル

Posted by 碧井 漪 on   2 


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シャワーを浴びる為、覆いを外した木南の左手の薬指には、今市の置き土産のプラチナダイヤリングが輝いていた。


キラキラ綺麗。センスいい。本当にアイツがデザインしたの?って思う位、完璧なデザイン。


本当に純プラチナ、ダイヤなら相当のお値段だけど・・・そんな訳ないか。私みたいなのに、そんな高価な指輪贈るバカ、どこに居るのよ。ニセモノよ、ニセモノ。


だけど・・・

「どーせ安い指輪なんでしょう?」そう言ったら、

『値段なんて付けられない』とか彼は言いそう。


あー、バカバカバカ!何の妄想よ。ほんと、バカじゃない?


もしもこれが本物の婚約指輪で、もし彼が本当に私と結婚したいと思ってて、ゆうべの事も遊びのつもりじゃなかったら───どうする?


考えながら、インスタントコーヒーを啜り、チーズケーキを頬張った。

そうそうない 121 2016年1月1日のこと(2)

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美和が居たら、悪夢を食べると言われる伝説の霊獣・獏のように、忽(たちま)ち僕の退屈を食べてしまう。


こんな風に静かにのんびり、コーヒーを飲む暇も与えずに、あれやろう?これやろう?と忙(せわ)しない。


若いくせに、一分一秒を惜しむ、せっかちさん。


くすっ、と笑った僕は、窓辺に歩き、外の景色を眺めた。


畑の端に生み出された"かまくら"。


僕だったら、作ろうとも考えない。


「若いなぁ。」嫌じゃないけど。


自分の齢を忘れてしまう。美和と過ごしていると。


そうそうない 120 2016年1月1日のこと(1)

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以前、それを訊いたら泣き出して、結局答えてはくれなかった美和。


想うだけで泣ける相手が、まだこの世に生きて居る事は羨ましいと思う。


ただ、会いに行けないというのは、悲しい。


僕ら同性愛者は、"普通の人"と呼ばれる異性を愛する事の出来る人達と比べて、相手に想いを打ち明ける事が簡単ではない。


相手の、見えない気持ちにぶつかって行くのだけれど、ぶつかった後、例えばそれまで好きでも嫌いでもない人から、一気に嫌い以上の生理的に受付けない人に変化してしまうかもしれないからだ。


一度そう思われてしまっては、なんて事の無い連絡さえ取れなくなってしまう。


勿論、失恋した後は、相手が同性だろうが異性だろうが、へこみ方は同じだろうと僕は考える。


体を起こすと、ズキン、重い頭に鈍い痛みを感じた。


まさか二日酔い?たったあれだけの量のワインで?


はーっ、目を覆いながら溜め息を漏らした。

自殺相談所 36 相談者

Posted by 碧井 漪 on  

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九月半ば、まだ暑い昼下がり。


冷房は効いていて、快適である筈なのに、体の内側に籠った熱は逃げず、食べる度上がるような気もした。


モグモグモグ、

一人分の量は十分食べた頃、お師匠様に改めて注がれた冷たいお茶をぐいと飲んで、そろそろだと立ち上がろうとした時、俺より少し前に箸を置いたネコが先に立ち上がった。


椅子に腰を下ろしている所長とお師匠様が、立ち上がったネコの顔を揃って見上げた。



「まだもう少し良いのでは?」と所長が言うと、

「ウサギちゃんと交替して来ます。」ネコは答えて、使っていない机の上に置いた頭を両手で持った。


ウサギって、あの受付というか案内役の?そう言えば来てない。

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