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sazanamiの物語

恋愛小説を書いています。 創作表現上の理由から、18才未満の方は読まないで下さい。 恋愛小説R-18

そうそうない 119 2015年12月31日のこと(9)

Posted by 碧井 漪 on  


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『じゃあ、私も長生きしたくない』


「ん?」


『元が長生きしてくれるなら、私も長生きするよ』


「何で?」


『そういう約束でしょう?私が、元をわーさんと一緒のお墓に入れるって』


「え・・・あ、だけど───」それは引き受けてくれないって言ってなかった?


『私、まだ生きて居たいから、元、長生きしてね。お蕎麦は、年明けになっちゃうけど、帰ったら一緒に食べよう?』


「それって、年越し蕎麦じゃなくなってるよ。」


『あ、そうか、うん・・・でもいいの!私ね、本当は帰りたかった!お蕎麦とかどうでもいいから、元と一緒に居たかった!』


「は?」


『もう年明けるね。それじゃあ来年は、一緒に年越し蕎麦食べようね!』


「来年って・・・」


5・4・3・2・1・・・ゼロー!と言う声が美和の後ろから聞こえて来た。


暁と星 85 ルビーの指輪

Posted by 碧井 漪 on  


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玄関の外に、誰か居るみたい。


バタン、バタン!


今、トラックみたいな大きな車のドアが閉まる音がした。宅配便かしら?


ティールームがお休みだといっても、お屋敷の中に人の気配が無いのは「おかしいわ。」・・・


皆、外かしら?


枝野は玄関に近付いた。


すると、両開きの玄関扉がバッと開いた。


眩い光と共に飛び込んで来たのは、枝野の待って居た人、蔵持励だった。


しかし、今日はスーツではなく、ラフな白シャツに黒のコットンパンツを穿いていた。


「おはよう、眠り姫。よく眠れた?」


にやり、いつもの不敵な笑みを浮かべる励の後ろに、枝野の祖母・鹿取が見えた。


縺曖 254

Posted by 碧井 漪 on  

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【6月1日水曜日 雨】


【今日はごめんね、皇くん。勝手にいじけて、先に帰ったりして。

僕は皇くんの一番の友達になりたかったんだ。

でも分かったんだ。一番じゃなくていい。最下位でいいから、僕は皇くんと日記を続けたい。友達でいたい。

皇くんに会いたい、皇くんの声が聴きたい、

皇くんを好きでいたい。

乙女ですって 250 (R-18) 胸がキュッとなるだけ

Posted by 碧井 漪 on   0 


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木南は菜津子の病室の扉前に立って居た。


面会時間あと30分のこの時、菜津子は面会者が居ない時は、病室内で育児書を読んで居る事を木南は知っていた。


今夜は美津子が来て居るかもしれないと思うと、木南の足は進まなかった。


結婚、退職、出産、

男は結婚しても退職しないし、出産もしない。


という事はつまり、この三つを繋げて、より深く考えるのは、男より女という事になる。


まあ、今は主な夫と書いて”主夫”と言う職業もあるらしいから、女だけが考えるべき事ではないと言われたらまあそうなんだけど、


私の個人的見解からすると、仕事をしている男性の9割以上は、結婚しても退職しない。


するとしたら、嫁の実家の家業を手伝う為とかに限られると思う。あくまで個人的見解だけど、一般的に男は結婚退職したりしないと思う。


勿論、自称”ジュエリーデザイナー”である彼も、結婚を機に仕事を辞める訳ないし、結婚するつもりなら逆に、辞められたら困る。

そうそうない 118 2015年12月31日のこと(8)

Posted by 碧井 漪 on  


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もしもわーさんに会えなかったらどうしよう。だけど自殺じゃないから、多分・・・会える筈だよね?


死後の世界の事は、何一つ分からないけれど、会えると思いたい。


ああ・・・何だか不安になって来たな。


ガタガタ、ガチャン!


え?何?勝手口の音?


バタ、バタバタ・・・急ぐ足音。


「元、元?」


美和だ。帰って来た。


「・・・元!」驚いて息を呑む美和の気配を感じる。そうか、仏壇の前で死んだ僕を見付けたんだな。


いいぞ。


「ただいま、元!起きて!元!」


起きられないよ、もう死んでる。


「どうして・・・待って居てくれなかったの?私が帰るまで。ねえ、嘘でしょ?ふざけないで起きて。急いで帰って来たんだよ?おかえりって言ってよ。」


美和、揺さぶり過ぎだよ。僕は、どうしたって起きられない。

そうそうない 117 2015年12月31日のこと(7)

Posted by 碧井 漪 on  


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バカだな。何を期待していたんだろう。


独りには慣れた筈なのに、静か過ぎると、自分の家なのにどこか居心地悪くて。


トプトプトプ・・・コップになみなみと注いだワインを再び呷って、次のあたりめに手を伸ばす。


酒を飲んでしまったから、美和を迎えには行けない。


これで一人だ、完全に独り。


ざまあみろ。


いいだろ、僕は一人が好きなんだ。


あの日から、ようやく静かになったよ。これが僕の望む暮らしだ。


わーさんを偲びながら、一人、静かな暮らし。


何にも惑わされる事無く、ただ日々を僕のペースで送る。


最高じゃないか。

そうそうない 116 2015年12月31日のこと(6)

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夕方五時を過ぎても美和からの連絡は無かった。


夕飯の支度、と言ってもカレーだから大して時間は掛からない。


下ごしらえをして、煮込む間、スマホ片手に待っていた。


しかし、午後六時になっても、美和からの連絡は無かった。


一度、僕から電話してみるも、美和は出ない。


居間から窓の外を見ると真っ暗で、縁側に斜めに吹き付けられる雪が、窓から漏れる灯かりに照らされていた。


窓を開けると、パタ、パタパタと小さな音と共に、軽い氷の粒が足下に降って、僕の靴下を濡らした。


窓と雨戸を閉めた僕は、畳の上に胡坐を掻くと、溜め息が漏れた。


そうそうない 115 2015年12月31日のこと(5)

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「あ、赤松さん!」美和が声を上げる前に、僕は気付いていた。


ロータリー内に停められた、青のスポーツカー。


雪深い地域には走っていない物かと移住前は思って居たが、そうでもなく、中心地では時折見かける。


ただ、かなり目立つ。特に青色だし。


彼も僕達の車に気付いたのか、運転席から降りて、こちらに向かって歩いて来た。


こちらに、と手で誘導され、僕は彼の車の後ろに車を着けた。


バタン、車を降りたのは、美和が先だった。僕もシートベルトを外したものの、降りるまでもないかなと迷い、結局エンジンも切らず、運転席に座ったまま、美和と彼のやり取りを眺めて居た。


ちら、ちらと僕を気にしながら美和は、やがて話がついたのか、助手席のドアを開けて、いつものトートバッグを持った。そして僕に、「ありがとう、元。行って来るね。」とだけ言って、ドアを閉めようとした。


「待って、美和。帰り、何時?」どうせ突然迎えに来いと言うんだろうから、予定時刻を聞いておきたい。

暁と星 84 あの人の世界から私の存在を消したい

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突然、枝野は後ろから抱き竦(すく)められた。


怖いと思ったのは一瞬だけ。肩に埋められたその人物の匂いを、枝野はよく知っていた。


「何をしてるんですか・・・人の部屋で。」


胸の前で掴まれた腕。ゆっくりにならない鼓動がどうか伝わらなければいい。


励は一言も発さないまま、枝野を抱き締める腕を緩めなかった。


「離して、励さん。」


枝野は落ち着いた声でそう言った。


しかし、内心は落ち着いてなどいなかった。


───さっきの、聞かれた?もしかして、ずっとこの部屋に潜んでいたの?励さんならやり兼ねない。


「いつからこの部屋に?」

縺曖 253

Posted by 碧井 漪 on  

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皇くんを振り切って帰って来たくせに、何事も無かったかのように僕から電話する事なんて出来ない。


謝らなくちゃ。本当は電話じゃなくて、ちゃんと会って、皇くんの目を見て・・・だけど今は無理だから、せめて電話で謝ってから───えいっ、伸長は皇に電話をかけた・・・が呼び出しても皇き電話に出なかった。


───皇くん、怒って居るのかな。どうしよう、どうしたら・・・


伸長は、皇が家まで届けてくれた日記帳をまだ開けずにいた。読むのはきちんと謝ってからだと。


自分からはかけられない。けれども、皇からかかって来たら別だと、机の上に開いた携帯電話が鳴るのを、伸長はずっと待って居た。


食事中も部屋着のポケットに携帯電話を忍ばせて、伸長は皇からの電話を待って居た。


しかし22時を過ぎても伸長の携帯電話は鳴らなかった。


怒っているんだ、皇くん・・・明日、絶対に会って謝ろう。


乙女ですって 249 (R-18) ヒニン

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はぁ・・・と玄関の上がり口から立ち上がった木南は、イマイチ、トイレ長いわねとトイレのドアを見た。小窓の灯かりは消えている。いつ出たの?


カチャン、カチャ。


キッチンから音がした。覗くと、イマイチが勝手にコーヒーを淹れていた。


「何してんの?」人んちのキッチンで。


「コーヒー、貰った。飲む?インスタントだけど。」


悪かったわね、インスタントで。


マグは二つ。誰かの結婚式の引き出物のブランドペアマグ。パステルピンクとパステルブルー。


「要らない。」


木南は冷蔵庫から発泡酒を出して、カコッ、蓋を開けると、一気に半分呷った。


「いい飲みっぷり。」


そう言って、イマイチはコーヒーをぐびり。


そうそうない 114 2015年12月31日のこと(4)

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年が明けたら、数えで46になる僕だけど、未だ知らない事が沢山ある。


ただし、それを全て知って行く事は不可能な事だと思って居た。知らないまま終わる事が大半だと。


でも、日々生きて居れば、一つ一つ、僕には縁が無い事だろうと考えていた事にも出逢う事があると知れた年だった。


───今朝もこうして、目が醒めても布団の中でぼんやりしていた僕。早起きが苦手なのではない。朝、血圧が上がり難い体質というだけ。


さあ、決意も新たにした事で、そろそろ起きようと思ったけれど、しまった、と暖房を点けておかなかった事に気付いた。タイマーを設定してあるが、その時刻よりも前だから、部屋の中は寒い。


この家の真冬の寒さは、ただ寒いというレベルではない。布団も暖房も無しで眠ったら、凍死する・・・かもしれない。


そんな訳で、僕は布団に包まったまま、美和との布団の間にあるエアコンのリモコンに手を伸ばすと、届いた僕の指先に、何か乗っかった。


ん、何だ?と見ると「おはよ。早起きさん。」美和が僕と同じく布団の中から手を伸ばして、リモコンを取ろうとしていた。


そうそうない 113 2015年12月31日のこと(3)

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反射的に公園の入口を見ると、黒い傘を差した大柄の男が近付いて来る。


あの傘───


ふっと上げた傘の下から顔を覗かせたのは、わーさんだった。


どうしてここに。


僕は立ち上がった。


「元!」


「わーさん、どうして・・・」


「馬鹿野郎!どうしてじゃねぇ!」


彼が怒っているのは、普段使わない言葉を吐いた事ですぐに分かった。


「どれだけ心配させれば気が済むんだよ!」


僕の肩に傘を載せたわーさんは、空いた両手で僕を抱き締めた。


そうそうない 112 2015年12月31日のこと(2)

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「癌だって。」


え?何が?誰が?───わーさんが?


「でも、薬は、手術は?志歩理みたいに手術して、今は癌でも治るでしょう?」


僕は期待を込めて顔を上げた。


だけど、少し残念そうに微笑んだ彼の口から、


「いや、末期で、手術しても意味ないって。余命宣告された。」と聞かされた。


"余命宣告"?嘘でしょ?嘘だって言って。


認めたくないのに、立って居る僕の両膝がガクガク震え出した。


「その病院がおかしいんだよ。もっと他の、大きな病院で調べてみた方がいいよ。」


「うん・・・でも、治らないみたいだ。」


彼は多分僕より穏やかな顔をしていた。


余命宣告を受けた時、どうだったのだろう。


僕みたいに立って居られず、床に崩れ落ちたりしたのかな。


そうそうない 111 2015年12月31日のこと(1)

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2015年最後の日・・・とは言っても、明日、年が明けても僕らの日常は変わらない。


昨年の大晦日と大きく変わった所は、"僕"ではなく"僕ら"になったと言う所か。


しかし、結婚した訳でも恋人を作った訳でも、ましてや子どもを産んだ訳でもない。


わーさんの一周忌前日にこの家を訪ねて以来、住み着いた女。


彼女は僕の二十年来の友人である志歩理の会社に勤めていたらしい。それは僕が志歩理の会社を退職してからの話だそうだけれど。


直接会った事は無かった。ただ、志歩理がどう話したのか、同じ同性愛者である僕に興味を持ってしまったと考える。


彼女も初めて好きになった相手が同性で、それは誰なのか明かしてはくれないけれど、僕としては、志歩理である可能性を捨て切れずに居る。

暁と星 83 恋なら間に合ってます

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カツコツカツコツ、長い廊下に響くのは、枝野の足音だけだった。


励さんは追い掛けて来ない。良かった───のかな、これで。


あんな風に告白するなんて、考えた事も無かった。まだ信じられない。一生言うつもりなんて無かったのに。


振り向きたくても振り向く勇気が出ない枝野は、そのまま作業室に入った途端、ふーっ、と息を吐き、肩を落とした。


モップとバケツを洗って、道具入れにしまった。


「シャワー浴びて、寝よう。」


いつも吐かない独り言が、枝野の口からつい出てしまったのは、恥ずかしい告白をしてしまったからだった。


作業室から出た枝野は、隣接する使用人の使うバスルームへ入った。


扉に掛ける札を使用中にして、内側から鍵を掛ける。入室から退室まで、原則一人15分以内。二人以上の同時利用で、浴槽を使用する事も出来る。今の時刻は空いていた。皆、食事も風呂も済ませ、自室でのんびりしている頃だ。

縺曖 252

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「それ?さっき学校のお友達が来て、『伸長くんに渡して下さい』って。ずぶ濡れだったから、『上がって』って言ったんだけど、『いいです』って走って行っちゃった。」


じゃがいもの皮を剥き終わった母は、手を洗い、濡れた手をエプロンで拭った。


「ずぶ濡れって、どれくらい?」


「伸長より濡れて居たわよ。傘は持ってたみたいだけど・・・」


「え───」


「急いでいたのかしらね。大丈夫かしら、風邪引かないといいけれど。」


窓の外を見ると、依然として雨は降り続き、だんだんと暗くもなって来ていた。


伸長は、ずぶ濡れで帰ったと言う皇の事が心配になった。

乙女ですって 248 (R-18) 短冊

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「あー、食べた飲んだ満腹、満足。ごちそうさまでした。」と椅子に座ったまま背中を反らして、わざとらしく突き出したお腹を摩った今市は、ちらりと木南を見て口の端を上げた。


「そう?それなら良かったわ。」美津子が目を細めた。


木南がふと見た時計は20時50分過ぎ。


───もうこんな時間。そろそろお暇(いとま)しなくちゃ。


「ごちそうさまでした。後片付けお手伝いします。」


お祖母さんは眠たそう?と思って見ると、

「これね、二人で書いて頂戴。」と綱島さんのお母さんが短冊を二枚、テーブルの上に出した。


「七夕の短冊ですね。」


今市が受け取り、一枚を木南に手渡した。


「書いたら、商店街の中にある笹に二人で付けて帰ったらいいわ。後片付けはいいから。タケちゃん、アサちゃん送って行ってあげて。」


「承知しました。ペンあります?」


「あるわよ。電話の所。」


立ち上がった今市は、電話機の傍のペン立てから二本、黒い油性ペンを取って戻って来た。


「はい、アサちゃん。」と今市に言われた木南は、え?と思って今市を見た。


そうそうない 110 2015年12月30日のこと(6)

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「あれっ?親戚って言ってなかった?」


「うん。いとこのいとこ。私が実家に戻ってると聞き付けたいとこが、自分のいとこ、つまり赤松さんをうちの実家に初めて連れて来たって訳。」


「彼は独身?」


「赤松さんは独身だよ。赤松さんと同い年のいとこは昨年結婚した。」


「そう・・・何か言われなかった?」


「何かって何を?」


「結婚したら?とか。」


「あー、まぁ・・・何で分かったの?もしかして元も言われた?」

そうそうない 109 205年12月30日のこと(5)

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今時の幼稚園児は、すごいと思った。スマホ発着信操作が一人で出来るなんて。


日葵にお別れを言わずに発ってしまったから、日葵は僕が実家に戻って来るのをずっと待って居たのかな。


それなら、悪い事をしたな。


手紙でも置いて来れば良かったか。


スマホを手に台所に戻ると、美和がコーヒーを飲んでいた。


ゴトッ、テーブルの上にスマホを置くと、


「電話、終わったの?」と美和に訊かれた。


「うん。」


「ひまりちゃんって名前の子、うちの幼稚園にも居るよ。」


やっぱり、電話を聞いていたのか。

そうそうない 108 2015年12月30日のこと(4)

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もぐ、もぐもぐ・・・


ホロホロと栗が砕けて粒になる。そして、美和の言った通り、羊羹は絶妙な甘さだった。


うん、美味しいかも。


甘過ぎず薄過ぎず、栗とも相性の良い甘さ。


何だか、僕らみたいだと顔を上げて美和を見た。


栗が僕だとしたら、羊羹は美和。


甘いから苦手だと敬遠していたけれど、あっという間に丸め込まれて、同じご飯を食べて、同じ部屋で眠る今、僕らの相性は悪くないんじゃないかと思ってる。


美和も、僕を嫌っていたら、いくらこの家が好きだと言ったって、何も無くて不便なこの場所で、暮らし続けられないだろう。


「美和は・・・好きなの?」僕の事、と続ける勇気が出なかった。


そうそうない 107 2015年12月30日のこと(3)

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「んー、床の間とか。」


「飾らなくてもいいよ。」そんな古い写真。


付き合い出して二年位のわーさんと僕が海辺で撮った写真。


日に焼けて、サーフボードを抱えた笑顔のわーさんの横に、半袖の白いシャツを着た僕が立っている。写真に映ってはいないが、下は砂浜。サンダルで、その灼熱に耐えながら、カメラのセルフタイマーが切れるのを待った記憶が蘇った。


「飾ろうよ。だって、わーさんの宝物でしょう?」


宝物・・・わーさんは僕との想い出を、宝物だと思って居てくれたの?


僕は、再び込み上げる涙を隠す為、

「じゃあ、飾って来てくれる?」と振り向かず言うと、

「うん。」美和は写真たてを持って、部屋から出て行ったようだ。

暁と星 82 13年後

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星良がアノ薬を飲んで13年後、お屋敷の管理を任されていたのは、ティーと暮らす枝野と蔵持励だった。


「ねぇ、ルーちゃんは結婚しないの?」


「その呼び方、やめて下さい。」


「だって、るびぃって呼ぶと怒るじゃん。」


「枝野でお願いします。励さん。」


「美人なんだから、彼氏とか作ればいいのに。」


「必要ありません。」


「好きな人とか居ないの?」


「間に合ってます。」

縺曖 251

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ごめんなさい、皇くん。酷い友達で───僕は皇くんに好かれなくて当然だ。イサダさんならそんな事しない・・・って、ほら、また比べてる。


駄目だよ。僕なんて、イサダさんの足元にも及ばない。


僕が皇くんだったら、僕とイサダさん、どっちを好きになるって、それはイサダさんに決まってる。綺麗で、スラッとしてて・・・それに、女の子だから。


ほらね。僕は論外。自分でも分かってる。


皇くんに“友達”だと思って貰えた事が奇跡なんだ。


短い間だったけど、僕はとてもしあわせだった。


この先、誰一人”友達”が居なくても大丈夫だって位、皇くんとの想い出だけでやって行ける。

乙女ですって 247 (R-18) 七夕の夜

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うわっ、これってまさかの本人登場?


何これ、夢?どっちにしても嫌だわー。


逃げたい、うん、逃げよう!


「それ、ちょっと見せて下さい。」


今市は木南の左手を、スマートフォンごとグイッと引っ張った。


顔を近付け、画面を覗き込んだ今市は、「これ、俺の写真?何で?」と怪訝そうに木南の顔を見た。


「知り合いから勝手に送られて来たんです!別に盗み撮りしたとかそういう訳じゃないですから!」


「知り合い?だけど、この写真って───」「気持ち悪いなら消去しておきます。それじゃあ、私急ぎますんで。」


何なら、今目の前で消したって良かったわよ。でもそれはさすがに傷付くかなって。


あー、気持ち悪い。何なのこの偶然バッタリ。


何かのドッキリかと思うじゃない。

そうそうない 106 2015年12月30日のこと(2)

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ガサガサ、取り出して賞味期限を確認すると、確かに、今月半ばで賞味期限が切れていた。


まあ、こういう物は切れても食べられるだろうと、僕は取り出した袋麺を二つ、コンロ横の調理台に置いた。


閉めた戸棚の中には、袋麺があと一つ残っている。


三つ作ったら多いだろう。期限が切れているからなるべく早く食べてしまいたい所だけれど。


沸騰した湯の中に、袋を破って取り出した麺を二つ入れると、その間に冷蔵庫から長葱を取り出して刻んだ。


菜箸で麺を解した後、テーブルの上にどんぶりを二つ並べた。


鍋の火を止めると、添付の粉末スープを入れて軽く混ぜ、完成。


出来上がったインスタントラーメンを鍋からどんぶりに移していると、ようやく美和が台所に入って来た。


そうそうない 105 2015年12月30日のこと(1)

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朝食を終えると、美和が両手をパンと合わせ、「大掃除しよう!」と言い出した。


「大掃除?」


「そう。私は台所とお風呂とトイレを掃除するから、元は仏壇と居間と、箪笥部屋を掃除して。私の方が終わったら合流するから。」


そう言うと、美和は幼稚園で使っているらしい、ぞうのアップリケの付いた黄色いエプロンを付け、同じく黄色いバンダナを三角にして頭に巻いた。


まるで真夏のひまわりみたいな色のそれらは、美和にとてもよく似合っていた。


「ほら、始めるよ!」


腕を捲った美和は、僕の背中を両手で押し、居間の仏壇の前に移動させた。


「タオル、持って来るね。」


「うん。」


僕は、両手を合わせてから、仏壇の上に並ぶものを一つ一つ丁寧に下ろして行った。


風邪みたいに移して 52

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3月3日火曜日。


仕事着に着替えた公子は、洗面を済まし、ダイニングへ顔を出した。母の用意した朝食には手を付けず、父が読み終えた新聞の隣に、省かれた折込みチラシの束を見付けた。


まだ少し時間がある、と公子は駅から少し離れたホームセンターのチラシを手に取ると、テーブルの上に大きく広げたチラシの端からざっと目を通した。


あ、このボディーソープと洗顔フォーム、ドラッグストアより安いかも。


こっちの布製ボックスも、三個セットでお買い得。いいなぁ、明日買いに行っちゃおうかな。


ん?本日限りの数量限定お買い得商品?


こ、これは・・・!


そうそうない 104 2015年12月29にちのこと(4)

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玄関すぐの廊下から、ヒュウヒュウと冷たい風が吹き込んで来る。


僕を見下ろす美和と視線を合わせた僕はハッとした。掴んでいた美和のトートバッグを柱の方に慌てて押しやると「寒い。」と誤魔化した。


「あ、ごめん。」


美和はパシンと戸を閉めた。


ポタン、ポタンと美和の濡れた前髪から、頬に滴るしずくは、涙のよう。


いつも通りだが、やっぱり見て居られない僕は立ち上がった。そして、美和の首から提げたタオルで美和の頭をすっぽり包むと、少し乱暴に、わしゃわしゃと濡れた髪を拭いた。


僕にそうされている間の美和は静かで、一体どんな顔をしているのか気になったけれど、ここからは見えなくて。


今の僕は、美和が実家を早々に出て、バス停に居た理由が気になっている。


エロひいき 19 毎年恒例?

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今年もこの日がやって来てしまいました・・・

「何の日?(i)( ̄▽ ̄)ニヤニヤ」

「・・・・・・(s)(-_-;)シッテルクセニ」

例年書いて来た事を読み返したら恥ずかしかったので、今年は書くのはやめようかと思いましたが、それも寂しかったので書いてしまいました。

年々衰えて行く頭と体、それに伴ってブログの方も衰えて行っている気がします。

数年前の訳の分からない謎の勢いは今は無く、これでいいと思うこの頃。

そろそろ、と言うか、いつでも終わらせていいんだよ、とやっと思えるようになって来ました。



暁と星 81 北極星

Posted by 碧井 漪 on  

暁と星 81
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「綺麗・・・」

夜空を見上げ、星良が呟いた。

星良の頭上には、今まで見た事の無い数の星々が瞬いていた。

「あれが北極星だよ。」

「どれか分からないわ。」

「北の空に向かって、ほら、柄杓の形をした北斗七星は分かる?柄杓の口、一番上の星から斜め向かって左下へこう辿って行くと、ほら、明るい星が見える?」

「あれかしら?それともあっち?」

北極星を見付けられない星良の頬に頬を寄せながら、暁良は右手人差し指で宙(そら)をなぞって教えた。

自殺相談所 35 相手の気持ち

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モグモグモグ、出汁の味とほのかな甘さに塩味。お師匠様の出汁巻き玉子は絶品だ。料亭で出せる、なんて、料亭に行った事はないけれど、そんな風に思った。


その時、ガチャッ、後ろでドアの開く音がした。


振り向いて見ると、ネコがドアを閉めている所だった。


今日、来ているのは、俺と所長とお師匠様の他、ネコとウサギとイヌ。


レスラーは来ていない。

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