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sazanamiの物語

恋愛小説を書いています。 創作表現上の理由から、18才未満の方は読まないで下さい。 恋愛小説R-18

乙女ですって 246 (R-18) イマイチ

Posted by 碧井 漪 on   0 


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【元マシココ ギタリストMAKOTO 某有名企業OLと熱愛か】という見出し文字がテレビの角を飾っている。


『超有名企業ってどこでしょうね』


“超”じゃなくて”某”でしょ?


私も知りたいわよ。


実はそんなでもないそこそこの会社なのに、一体誰が、何を以(もっ)て”有名”だなんて言い出したのか。


『聞く所によると、17歳差とか。すごいですよね』


何がよ。別に真琴さん程の男だったら普通よ。


そうそうない 103 2015年12月29日のこと(3)

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「何だよ、どんな事情だよ。」呟いて、僕はあれこれ考えた。


美和が実家で待って居られなくなった理由を。


でも、それが何なのか見当が付かない僕は、考えるのをやめ、反対車線のバス停にUターンするべく、美和が立って居るのを確認出来たバス停を一旦通り過ぎた。


そして先にポツンとあるコンビニでUターンしてバス停に戻ると、僕に向かって手を振る美和の隣に、見知らぬ若い男が寄り添うように立って居るのが見えた。


若いと言っても、僕より下で、美和よりは年上に見える細身の男。


グレーのダッフルコートの下は、黒のスキニーパンツ、靴はバスケットシューズのような濃紺のハイカットスニーカーを履いている。


そうそうない 102 2015年12月29日のこと(3)

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「どうしたの?何?」実家に何か置き忘れていた?


肩を上下させ、はぁはぁ息をする合間に母は、


「これ、おにぎり。梅とおかかと鮭。後で食べなさい。それと羊羹。」と僕が学生時代のお弁当に使っていたバンダナに包んだものを、車の窓から助手席のシートの上に置いた。


「これも。あちちっ。」と父が、今、コインパーキング前の自動販売機で買ったらしい缶入りのお茶を窓から差し入れた。


いいのに、と思いながら、両親に「ありがとう。」と言っておいた。


「元啓。」屈んだ母が、運転席の僕を覗き込む。


馮離 A面 38

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「え・・・?」


賢さんが怒った。


しかも”何より大事”って・・・俺の事が?嘘だ、そんな訳ない。聞き間違いだ。


賢さんを見ると、ベッドの上に座り込み、何とも言えない目で俺を見下ろしながら、うちわで扇ぐ手を止めない。


だけど”大事”だったらなんで、急にあんな風に素っ気なくしたんだろう。


訊ける筈もなく、それについて賢さんも何も言わなかった。


ただ、


「今日から一緒にここで寝る。朝臣が他に寝たいと思う女が出来るまで、俺が隣で寝るからな!」と宣言された。


びっくりしたけど、嬉しかった。


思わず零した涙を慌てて拭うと、

「泣く程嫌なのか?」と賢さんに顔を覗き込まれ訊かれ、

恥ずかしかった俺は両手で顔を覆い、「違う・・・」としか言えなかった。


そうしたら賢さんは、

突然俺に覆い被さるように抱き付いて来て、

「可愛い奴だー!」と、ふざけたように言い、ぐしゃぐしゃ、俺の髪を掻き混ぜた。


「ぷはっ!変な頭!」賢さんは笑い、

涙も引いた俺は、頬を膨らませて怒った振りをしようと思ったけれど、

賢さんが見せて来る変な顔に堪えられず、吹き出して大笑いしてしまった。


そうそうない 101 2015年12月29日のこと(2)

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20年前と違う。45歳になった僕に見えて来たのは、人生の終わりを迎えるまでのカウントダウン。


"次はいつ"という言葉の意味が重く感じる。


僕は結婚もしていないし、子どもも居ないけれど、父と母の気持ちは分かるよ。


家族に会えなくなるかもしれない不安。


病床のわーさんに、毎日僕が感じていたそれとは少し違うのかもしれないけれど、家族と思って居る人に会えなくなる怖さは知っている。


ふと、わーさんが亡くなった事を両親に話してしまおうかと思った。


そうしたら、僕の終活の事も話しておける。もしも何かあれば、わーさんと同じお墓に埋葬してと頼める。


だけど一つ気がかりな事があって、言えなかった。


暁と星 80 後悔

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並川と初音は、用意されたゲストルームのベッドに横たわり、天井を仰いでいた。


ここは街から離れていた為とても静かで、周りに灯かりも無いので、夜空には星が沢山見えた。窓から見える夜空は、美しい絵の様で、灯かりを落とした部屋の中で、ついさっきまで初音と並川は窓辺で星を眺めて居た。


「素敵だったわね。星良ちゃん達。それにみんな喜んでくれて、ここへ来て本当に良かったわ。」


「初音も結婚式、挙げたいんじゃないか?お義父さんだって初音の晴れ姿、見たがってたじゃないか。」


結婚式を挙げなかったのは、並川の都合だった。治療中の星良の傍を離れる事が出来ないという理由で。しかし初音は、違う理由で両親を説得し、結果、結婚式は挙げていない。


「いいのよ。ちんちくりんな私がドレス着たって似合わないわ。」


初音は低身長だった。150センチ未満。中学生に間違われる事は日常茶飯事だった。


「おいおい。俺の可愛い奥様を侮辱しないでくれるかな?」


「よく言うわ。そんな事、思ってないくせに。」

縺曖 250

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“失恋”───この気持ちを恋とは思って居ない伸長の頭の中に、それでも浮かんだ言葉。


いいな・・・イサダさんは。


望めば毎日皇くんと一緒に居られる。羨ましい。


・・・あ!日記。


駅に向かう道の途中で、日記の事を思い出した伸長は足を止めた。


でも・・・と伸長は、図書室での二人を思い浮かべた。


さっき、皇くんがイサダさんに贈った日記帳で、二人は交換日記を始めるかもしれない。


そうしたら僕とは、交換日記をしなくなる。


乙女ですって 245 (R-18) 週刊誌

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7月1日水曜日。


出社した由佳は、自分の机の前で大きく息を吸った。


そして、月末とはまた違う忙しさに見舞われるだろうと覚悟しながら息を吐いた。


よし!頑張りますか!


引き出しの中のアルミパックから、アルコールウエットティッシュをシュッと取り出した由佳は、机の上を拭き始めた。


続々と出社して来る営業部の面々。


殆どが内勤と呼ばれる内務をこなす主に女性社員達。外勤社員も直行業務でない時は、朝、同じ時間に出社する。


メグちゃんは今日、来るのかな。


月初には会議がある。外勤組の男性社員達も続々とやって来て、今朝の営業部は賑やかだった。


一部の女子社員達が集まり、騒いでいた。彼女らが勝手に窓辺に作った通称グリーンスペースという井戸端会議場のミニテーブルの上で、週刊誌を開き、何やら話しているようだった。


その話題は、主に『MEGwithMAKOTO』としてデビューした営業部の外勤社員・寺沢恵(てらさわめぐ)の事。


今ではすっかり珍しくなくなった朝礼前のこの光景を、男性社員達からは密かに”メグ会議”と呼ばれたりもしている。


水曜日か・・・今日、週刊誌の発売日だっけ。彼女達が騒いでるって事は、寺沢(メグ)の記事が出たのかな。何だろ?


当の本人は今日も来てない。悩んでたみたいだけど、結局、会社辞めるって結論出したみたいだから当然来ないか。


そうそうない 100 2015年12月29日のこと(1)

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コトコトコト、トントントン・・・


味噌汁の匂い。美和かな───


あれ?


そう言えば僕、いつの間に帰ったんだ?


パッと目を開けると、そこは、僕の家には違いなかったが、実家の方で・・・僕は体を起こした布団の中から「おはよう。」キッチンに立つ母の背中に向かって声を掛けた。


驚いた顔で振り向いた母は、

「元啓、おはよう。あなた早起きになったのね。それとも枕違って寝難かった?」と朝から元気だ。僕とは違う。


そうそうない 99 2015年12月28日のこと(5)

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「ごめん。今夜は帰れそうにない。」


今から発つとそっちに付くのは夜中になってしまう事、そして酒を飲んでしまった事を言い訳のように付け加えると、

『うん、分かった。ゆっくりして来ていいよ』と美和が言った。


"ゆっくり"って何?僕は美和も早くあの家に帰りたいものだとばかり思って居たけれど違ったのかと、それとも怒ってしまったから嫌味なのかと、僕は美和の答えをどう取ったら良いのか考えた。


もしもの話だけど、美和は僕と同じように今日、あの家に帰りたいと思って居て、でも今日は帰れないと告げられ、実はがっかりして居るのを隠していたのだとしたら───


「ごめん。僕も今日帰りたかったんだけど。」

馮離 A面 37

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あれから何日経っただろう。


朝臣は昼夜逆転の生活を送っていた。そうしたくてなった訳では無い。


夜、ベッドに入っても眠れなくなった。


一人ベッドに入って眠ると、悪夢にうなされるようになった。


あの日の夢。聖子と死に別れた日の夢。そして訪ねて来た賢一に憎悪剥き出しの目で見られながら、ナイフで刺される───そこでいつも目が醒める。


机の前でパソコンを開き、書いては消し、消しては書くの繰り返し。


朝、賢一が朝臣の様子を見に来る時間になるとベッドに入り、眠った振りをして、賢一が出掛けると起き、賢一の淹れたコーヒーを飲んで眠る。


そうして夕方頃起きてシャワーを浴びると、早目に夕飯を食べ、部屋に籠もる。

そうそうない 98 2015年12月28日のこと(4)

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しんとしたリビングに日葵と二人きりになると、頭にバスタオルをグルグル巻いたままの日葵が、僕にドライヤーを差し出して言った。


「おじちゃん、ひまりね、どらいやあ、あついからきらいなの。それでね?あした、ふわふわしたいから、みつあみして?」


僕がドライヤーを受け取ると、日葵は小さな八重歯を見せて笑った。


"ドライヤーは熱いから嫌い"かぁ・・・そうは言っても、日葵の髪は肩甲骨がすっぽり隠れる位まである。髪を乾かさずに寝たら、風邪を引いてしまうだろう。


美和先生なら何て言うかな、と考えた。


「乾かしたら、三つ編みしてあげるよ。」


「えー?」


暁と星 79 結婚式

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コンコン、初音がドアをノックすると、ガチャリ、ドアが内側へ開いた。


その部屋には大きなベッドがあり、真ん中で旺治郎が眠っていた。おそらく暁良の両親と旺治郎のベッドルームだと星良は思った。


そして、「綺麗、星良ちゃん。」「本当に。」黒留袖を纏った二人の母と、「暁良には勿体無いな。」礼服姿の暁良の父が、ウエディングドレス姿の星良を見て目を細めた。


「良かったわね、星良ちゃん。」


「はい。」


みんなの嬉しそうな顔を見た星良は、ここへ来て本当に良かったと喜びを噛み締めた。


「星良、おめでとう。」


「ママ・・・ありがとう。」


「しあわせ?って訊かなくてもそうだって顔してる。良かったわ。」


嬉しくて零れそうになる涙を堪えて、星良はにっこり微笑んだ。


縺曖 249

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そう、彼は今の僕にとって、一番“大事な人”───だった。


僕が勝手に想って居るだけだけど。


家族より先生より、大切に想う”親友”。


今、はっきりした。


例え僕の片想いだとしても、好きだと会いたいと願ってしまう人。


足を止めた伸長の背中は震えていた。


乙女ですって 244 (R-18) リハーサル

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「忘れてるって何を?」

痺れを切らした由佳が強めに返してしまうと、

「もう少ししたら、ここ、西尾で予約出来なくなるからな?」真琴が淡々と言った。


「はぁ?勝手に私の名前で予約したのは真琴さんでしょう?」


「だって、その方がお前に分かり易いかと思って。」


「どっちでもいいわよ。」


「じゃあ、この先ずっと西尾で予約出来なくなってもいいか?」


「別に、原元ですればいいでしょ?」有名人だから嫌なの?


「じゃあ、その内、お前は死ぬまで西尾と名乗れなくなってもいいんだな?」


「は?死ぬまで?何言ってるの?」


「来年から、ずーっと原元で予約するからな。」


「ええ。だからそうして?」


そうそうない 97 2018年12月28日のこと(3)

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「ああ、ちょっと外で酔いを醒ましてた。」


「たった一杯で?」


「あまり飲まなくなったから。」


「彼は飲まない人だっけ?」


何気ない、母の"彼"という言葉が胸に刺さった。


母が、わーさんの事を気に掛けてくれる事は嬉しかった。


でも、彼はもう居なくて、その事実も両親に伝えられなくて、

僕は、ぐっと奥歯を噛み締めた後、

「最近、飲まないんだ。時々ワイン飲む位。」とだけ答えた。


そうそうない 96 2015年12月28日のこと(2)

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先程おばさんの話した女性とは違うのではないかと思った時、

「あら、照れ屋さんね。さっきまで私に元啓くんの事を訊いていたのに。」とおばさんがにやりと笑いながら言う。


えええ?


・・・だけど、そんな気のない僕は、彼女の顔を潰さずに断る方法が思い浮かばず、「何かの間違いですよ。」と逃げ道を探していた。


「そんな事ないわよ。元啓くん、カッコいいもの。ここに居る女性の大半は、あなたの顔に見惚れてたわよ。」


うわわ、そんな事を言われても。


恥ずかしくなった僕は、何か理由を見付けてとっとと逃げれば良かったのに、まだその場に止まっていた、それが徒(あだ)となった。

馮離 A面 36

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それから朝臣は、賢一に車椅子への移乗を手伝って貰い、トイレへ向かった。


その間に、自分の使う枕を部屋から持参した賢一は、朝臣の枕の隣にそれを並べ、車椅子で戻って来た朝臣の体をベッドの上に移した後、掛布団を掛けた。


賢一も朝臣の隣に潜り込み、ゴロリ寝返りを打つと、朝臣の方を向いた。


「ち、近くない?」


「そうか?この前もこんなもんだったろ?」


「そうだっけ?」


「ほら、あんまり端に行くと落ちたらいけないから、もっとこっち来いよ。」


二人でも十分な広さのベッド。手摺りもあるし、端までの距離も十分あるから、下半身を動かせない俺が簡単にベッドから落ちる訳ないのに。


今夜、どういうつもりで俺と一緒に寝ようなんて、賢さんは言い出したんだろう?


そうそうない 95 2015年12月28日のこと(1)

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実家には、昨日の夕方前に着いた。


車は、実家の近所に新しく出来ていたコインパーキングに停めた。


門を潜ると、丁度通夜に出掛ける両親と妹夫婦に、一緒にどうかと誘われたが、運転疲れを理由に実家で一人、留守番する事にしたのは大正解だったと、今日思った。


葬儀後の精進落としの食事の席で、親戚達から酒を勧められた。


僕は葬儀後、車で帰るつもりだったから酒は断ったのだが「今夜も泊まって行きなさい。夕方に出たら、真夜中になってしまうわよ。」と母に言われ、少し考えた。


確かに、僕一人なら真夜中に家に着いたって何の問題もない。


だけど、一人で帰るのではないから考えてしまう。美和を実家に迎えに行かなくてはならない。


夜遅い時刻に、女性の実家に面識のない男が一人で迎えに行くと言うのは不審だ。知り合いだったとしても、家族はいい気がしないだろう。

暁と星 78 秘密のティーパーティー

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家に戻ると、それまで暁良の腕の中で眠っていた旺治郎は目を醒まし、「おなかすいた」と騒ぎ出した。


「制服、着替えてから。」暁良が箪笥の前で言うと、


「やだ!」


「やだ、じゃないよ。着替えない子はおやつ抜きだ。」


まるで父親のような口振りで旺治郎に言う暁良の姿を見た星良は、クスッと笑った。


それに気付いた暁良は、「星良も何とか言って。」と言い出した。


旺治郎は剝(むく)れて、暁良に背を向け、部屋の隅に座り込んでいる。


星良は旺治郎に近付き、隣にしゃがみ込んで旺治郎の顔を覗き込んだ。


縺曖 248

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「白岸くん?どうしたの?」


ぼんやりしてしまった僕を現実に引き戻したのは、副岡先生の声だった。


ハッとした僕は、机の上のリュックを掴むと、前に抱え、先生にお辞儀した。


「急用を思い出したので帰ります。」


「あら、藤野くんに会わないで帰るの?」


今、会っても何も話せないかもしれない・・・というより、会いたくない気持ちが湧き上がっていた。


乙女ですって 243 (R-18) 未婚者

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結婚はアクセサリー。誰かがそう言ってたのを聞いた。でも私はそうは思わなかった。


けれど、あなたとの結婚をずっとこの身に着けていられるならそうしたいとも思うようになった。


独身を負け組と呼ぶのはどうかと思うけど、社内の女性社員の中で、30歳過ぎても結婚していない女は、30歳以下で結婚している女より劣っていると密かに格付けされている事を知ってる。


結婚したら勝つ。何に?と昔なら憤って吐き捨てたりしたかもしれないけれど、今なら黙って頷いてしまうかもしれない。


溪と加集さんは、いい時に結婚したと思う。早過ぎず遅過ぎず。社内の看板夫婦として、上司からの印象も大幅に良くなった。


私は・・・本音を言えば、もう待ちたくない。一緒に暮らせなくてもいいから、とにかく籍だけでも入れたい。事実上の妻になって、あなたに忘れられても傍に行ける切符を手に入れたい。


このまま、何もしないまま別れたら、私の中に何も残らない気がする。


結婚したい。いつか離婚して傷付く事になるかもしれないとしても、それでもあなたが欲しい。


まあ、一度結婚したら、私は絶対離婚する気はないけど。


早く結婚しましょうよ。式も指輪も旅行も新居も要らないから、一日も早く、私をあなたの奥さんにしてよ。世間に秘密にしたままでいいから。


そうそうない 94 2015年12月27日のこと(2)

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「直すって、どうして?きちんと決まってるよ?」


「そう?でも美和は、この髪型、好きじゃないでしょう?」


「えっ、何で私・・・」


「ずっと目を合わせてくれないから、嫌なのかなって。」


「ち、違う違う!さっきも言ったけど、カッコ良過ぎて見られないだけ。元じゃないみたいで───」


そう言った後、ハッとした美和は手で口を押さえた。


「僕じゃない?」


どういう意味だろう?うーん・・・


「ご、ごめんなさい。悪い意味じゃないの。その髪型の元は素敵だから、私の知ってる元じゃなくて、そう!どこか遠い国の王子さまみたいで!」


「ぶはっ、王子さま?」


この齢になって、まさかそんな言葉を貰うとは。


吹き出した僕の頬が引き攣る。

そうそうない 93 2015年12月27日のこと(1)

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「そんな事ないよ、似合ってる。」


「・・・と言ってる割には、こっち見ようとしないよね?」


「そう?あ、お味噌汁出来たよ。お椀お椀。」


そう言って振り向いた美和は、目を伏せたまま、僕の前を通過し、食器棚からお椀を二つ取り出した。


「変じゃないなら、ちゃんと見てよ。」


美和が内心、僕の髪型を変だ、可笑しい、似合ってないと思って居るのなら教えて欲しいと向きになった僕は、味噌汁をお椀によそう美和の隣に立って、美和の表情を覗き込みながら、お椀を受け取ろうと手を差し出した。


すると美和は、顔を上げず僕にお椀を渡そうとした、その時、

するっ・・・美和の手から僕の手に渡る前に滑り落ちたお椀は、

バシャッ、熱い味噌汁を振り撒きながら、床の上に転がった。


あちっ!


僕のズボンの裾と、靴下の上に熱い味噌汁が掛かった。


「ごめんなさい!元、大丈夫?」


僕の足元を見つめて慌てる美和に、「大丈夫・・・」足の甲が熱いなと感じながら僕は、前にもこんな事があったような、と記憶を辿った。


馮離 A面 35

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風呂から上がり、賢一に着替えを手伝って貰った朝臣は、ベッドの上にうつ伏せの姿勢で賢一のマッサージを受けていた。


「・・・っ、つつっ!」


「腰と肩、大分凝ってるな。背中も張ってる。」


「そうかな・・・」朝臣が惚けても、賢一には分かっていた。


下肢が不自由な分、上肢には負担が掛かっている。


適度なストレッチを行っても、制限付きの動きでは、全ての筋肉を一人で解す事は難しい。


「辛い時は俺を頼れよ・・・って言っても、お前の事だから辛くたって黙ってるんだろ?」


「そんな事ないよ。甘えてる方だよ。」

そうそうない 92 2015年12月26日のこと(3)

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僕は生きてる、まだ。


わーさんは死んでしまった。


二度と僕の胸の音を聞いてくれない。こうして僕の上に乗っかって、抱き締めてもくれない。


悲しいんじゃないよ、寂しい。


生き別れなら悲しいのだろうけれど、死に別れだから寂しい。


"悲しみ"は他のもので埋められる。他のものを代わりに出来るのが悲しみ。幾つか抱えられるもの。


時が過ぎれば、終わりに出来るのが悲しみだ。


"寂しさ"は他のもので埋められない。他のものを代わりに出来ないのが寂しさ。一つしか抱えられないもの。


いつまでもどこまでも、果てなく続くのが寂しさだ。


暁と星 77 家族

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五月中旬。今日は快晴。昼に掛けてだんだん強くなる陽射しの中、暁良の運転する車は星良、並川、初音を乗せて、暁良の実家、畑谷農場、通称・御茶畑農園を目指していた。


途中、高速道路のサービスエリアで休憩を挟んだ後も、渋滞に巻き込まれる事も無く、車は順調に目的地を目指していた。


「結局、交代しないで暁良一人で運転したな。疲れてないか?」


「大丈夫です。」


「この分だと、昼過ぎには着きそうだな。」


「はい。」


車は市街地を抜け、山間部へ向かう道をひた走っていた。


「いい所ね。」


星良と一緒に後部座席に乗って、眠っていた筈の初音が声を上げた。


縺曖 247

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図書室と司書室を隔てる窓に掛かるブラインド越しに、僕が見た彼女の横顔は凛として、さっき、ぶつかって転んだ僕の前で見せた興奮した様子とは違い、本当に美しかった。


以前、彼女とカウンターで遭遇した時もそうだった。僕は相当、彼女に嫌われているらしい。


絶望的な気分だった。


女性に好かれたい訳では無いが、彼女の事は別だった。


親友の想い人。その彼女から、『私、白岸先輩が嫌いなの』と打ち明けられた皇くんは、僕と友達をやめるだろう。


僕が皇くんと友達で居られる道はただ一つ。僕が彼女に嫌われない事だ。


乙女ですって 242 (R-18) 狡くなるから愛していて

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それから商店街に着いた溪と由佳は、スーパーで夕飯の買い物して、洋菓子店でケーキを加集の分もと三つ買った。


加集と溪の家で一緒に夕飯を作り、加集の帰りを待ちながら、一人ケーキを食べる由佳と溪はお茶を飲んでお喋りした。


「やっぱり狭いでしょう?引っ越さないの?」


「そうね、考えてはいるのだけれど、結婚式もまだだから家を探す余裕が無くて。」


「まあね。家は一生の買い物って言うから慎重にしないとね。今の家は会社から近いし、狭さ以外は住むにはいい所よね。菜津子さんち隣だし、何かあったら頼れるもんね。」


「うん。」


いい物件が見つかったとしても、溪はまだここに住み続けたいと考えていた。


菜津子さんの赤ちゃんが生まれるまで、結婚式が終わるまで・・・・・・それが大きな理由では無い事は、溪にも分かっていた。


慣れない土地で加集と二人で暮らす自信が、溪にはまだ無かった。

自殺相談所 34 相生

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「違いますよ。自分の悩みじゃなくて───ワタナベさんとフルサワさん親子はどうなったのかなってちょっと気になってて。」


「渡辺さんならきっと大丈夫ですよ。」所長が言うと、お師匠様も頷いた。


俺は「はい。」と返事をした。気になってはいるものの、俺が深く追求すべき事ではないと言われるのが嫌だったからだ。


この話はこれで終わりだと思った時、

「その後の事が気になるのですか?」所長が俺に訊ねた。


「まあ・・・そうです。」


「相談者のその後は、私達には分かりませんからねぇ。でも、気になるのはいい事ですよ。誰か一人でも多く、ここを訪れた人を案じるのは悪い事ではありません。」

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