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sazanamiの物語

恋愛小説を書いています。 創作表現上の理由から、18才未満の方は読まないで下さい。 恋愛小説R-18

自殺相談所 29 他者

Posted by 碧井 漪 on  

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伝えたいことば。


夫は多分、私が死のうとしてた事なんて知らない。言わなければ気付かない。


家出した今も、実家か友人の所か、なんて焦ってもいなくて、ただ家事を放棄しただけと怒っているかもしれない。


私達が家に戻った後、夫は柊を連れて家を空けた私を責めるだろう。


もしも夫が私だったら、この状況からとっくに逃げ出していたかもしれない・・・と考えると、私はよく我慢した方ではないかと思えて来た。だって、夫より私の方が辛抱強いから。


渡辺さんの言う通りに、夫には連絡せず、少し心配させてやろうかなとも思ったけれど、柊も一緒だったから、万が一、夫が警察だなんだと騒ぎだしたら厄介だと考え、【柊と二人、しばらくお友達の家でお世話になる事にしました。心配しないで下さい】とメールだけ送っておいた。


電話をかけて来るかもしれないと少し期待して、携帯電話の電源を切らずにいたら、


【俺の飯は?】と夫から返信された。ガッカリ。

乙女ですって 220 (R-18) 恋々

Posted by 碧井 漪 on   4 

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リアル・恋愛小説



それから男性は、自分のだと言って、月曜の夜、二つ折りの黒い携帯電話を隆人のベッドの枕元に置いて行った。


その電話に、火曜日昼過ぎの今、電話がかかって来たという訳だ。


世の中、捨てた物じゃないと言うのはこう言う事か。


彼と出会って居なければ、俺は死んでいたかもしれない。


打撲の痛みは日々薄れて行ったが、頭と首筋の痛みは消える事が無かった。薬が切れると、激痛が襲った。


もういつ死んでもいいと思う位の痛み。


あとは何が俺をこの世に繋ぎ止めると言うのだろうか。

そうそうない 28 2015年10月6日のこと(1)

Posted by 碧井 漪 on  

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コポコポコポ、美和がサーバーからマグにコーヒーを注ぐ。以前はコーヒーメーカーがあったが、古くなったのと、頻繁に飲まなくなったので、一杯使い切りのコーヒードリッパー付きパックを買っている。


二人分、だけど一パック。


本来なら一つのマグに一つ使う所を、一杯分のお湯を注ぐだけだと濃いので、耐熱ガラスのコーヒーサーバーに無理矢理セットした使い切りドリッパーに二杯分のお湯を注ぐのが僕とわーさんには丁度良くて、


僕がそうして美和の分と僕の分を淹れていたら、美和は貧乏臭いと言うかなと思ったけれど、「へー、こっちのがいいね。丁度いい濃さ。経済的だし」と気に入ってくれて、以降、美和もこの淹れ方を採用してくれている。


砂糖は互いにスプーン一杯。牛乳がある時は、カフェオレにしたりもする。


「美和、牛乳あるよ。入れる?」


「んー、今日はお砂糖だけでいい。元はどうする?」


「僕も、いいや。」


チーン。次のパンが焼けた。皿の上にはトーストが三枚。僕が一枚、美和が二枚だ。


「じゃあ食べよう。」


「うん、いただきます。」


そうそうない 27 2015年10月5日のこと(2)

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二枚の布団の間は、座布団が一枚入る程度。


もう少し離した方がいいかなと考えた事もあったけれど、窓側と廊下側、どちらに近付き過ぎても朝晩寒いので、このように落ち着いた。


今まで、美和はレズビアンだから、間違いなど起こりようがないと考えていたけれど、今日の”片想い”発言を聞いてから、変に意識してしまう。


もしも美和が、男が好きだったら、或いは男も女も好きだという”バイセクシャル”だったら、僕も恋愛対象になってしまい、そういう間違いも───


美和の方を見ると、いつの間にか美和は、先に布団に潜り込み、目を閉じていた。


間違いなんて起こらないか。僕が変な気を起こさない限り。


起こす訳ない。


居間の灯かりを消した僕は、お風呂場に向かった。


ゴシゴシ、体を洗いながら考える。

累とみみ 4

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恋愛小説(オリジナル)


日曜日、お昼前。


いつもならのんびり、自分の部屋で一人、珈琲を愉しみながら好きな音楽を聴いて、読みかけの本を開く。


しかし今日は朝から慌ただしい。


僕というより両親が。


ゆうべに引き続き、僕のお見合いが会社近くの料亭で行われる。


今日の相手は、うちのメインバンク頭取の姪というから、両親も力が入ってしまうのだろう。


政略結婚という訳でもないが、それなりの家で育った女性とではないと、蔵持家の長男の嫁は務まらないという考えを両親は崩さない。


『自分の結婚相手は自分で決めます』


僕がはっきりそう言える男だったのなら、良かったのだろうけれど、

この世に生を受けてから一度も、女性とお付き合いした事がない僕に、そのような台詞を吐ける訳もなく、言われるままお見合いを続けるしかない今日この頃。

そうそうない 26 2015年10月5日のこと(2)

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自作小説・漫画万歳!


「こら、そこで寝るなよ。」


「んー、だってぇ、疲れたんだもーん。元が買い物しておいてくれて助かったー!」


今日は何となく、美和が幼稚園から出て来るのが遅い気がして、先に買い物を済ませておいて正解だった。


案の定、美和はいつもより30分遅く出て来た。


僕はぼんやりしてたから、美和が来た後で時刻を確認し、いつもより遅い事に気付いたんだけど。


今夜は簡単に焼き魚。見切り品で処理済みの秋刀魚が出ていたから。それと、きんぴらごぼうの総菜を買った。


ご飯は炊いてあるし、豆腐の味噌汁をチャチャッと作って、後は漬物出して終わりでいいかな。


「ぐー、ぐー。」

暁と星 54 目醒め

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「せ・・・星良ちゃん!」


はっ、とした途端、浮かんでいた星が消え、眩しい・・・


辺りは真昼のように明るく、目を開けていられない程、眩しかった。


星良は目醒めた。


ここは、何?お部屋の中・・・病院みたい・・・


この男の人は、誰?・・・白衣を着ている。お医者さん?


「ああ・・・嘘だろ。信じられない・・・だけど本当に良かった。星良ちゃん、分かる?」


医者らしき白衣の男は、星良の手首を掴んで脈を測り始めた。


「口開けて、舌見せて。この指は何本?」


「さ・・・ぼ、ん。」


「ああ、水・・・飲めるかな。リュー、まだ居たら水持って来て!」


閉まっているドアの向こうに向かって、男の人が叫んだ。


「あれ?もう戻っちゃったかな。待ってて、すぐ水を持って来るから。」


バタン。

縺曖 226

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オリジナル小説発表


一冊は、養父母と暮らす少年と一匹の犬の成長を描いたお話の本。


もう一冊は、魚屋を継いだばかりの青年と近所の小学生達が協力して町内の怪事件を解決して行くお話。


伸長は、このどちらもすでに読んで内容を知っていた。


読み終わった後、心と心の繋がりって見えないけれど、こんなに強いものだったんだと思えた。

乙女ですって 219 (R-18) 大安吉日

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長編小説、ノベルシリーズ



2015年5月19日火曜日、正午過ぎ。区役所窓口前の長椅子に腰掛けていた。


ピンポーン、電子音が響くと、電光掲示板に034と番号が表示された。


「お待たせ致しました。番号札34番でお待ちの方───」


舞は椅子から腰を上げた。


右手に番号札と婚姻届を持ち、左手は大きくなったお腹を下から支えて、ゆっくり窓口に向かった。


「お待たせ致しました。」


舞が窓口前に立つと、眼鏡を掛けた30代後半と思しき男性が言った。


「これを提出したいんですけど。」


「はい。こちら・・・婚姻届ですね?おめでとうございます。」


そうそうない 25 2015年10月5日のこと(1)

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愛のかたち


10月5日、月曜日の朝。


僕は今日も美和を車で幼稚園まで送る。


後部座席は、二人で作った紙の花と輪飾りを入れた袋で埋まっている。


それらを幼稚園前で車から降ろそうとすると、


「あ、元。車ここに停めてて大丈夫だから、荷物、中まで運ぶの手伝ってくれない?」と美和が言い出した。


「え?中まで?」


「いいでしょ。ほら、早く!」


僕の背中を手のひらでバシンと叩いた美和は、ガサガサと両手に持てるだけの袋を持って、幼稚園の通用門を潜ると、真っ直ぐ職員玄関へ向かった。


「まったく・・・」

そうそうない 24 2015年10月4日のこと(3)

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オリジナル小説サーチ!コミュ☆


美和は冷蔵庫の野菜室から玉ねぎを取り出すと、水に濡らし、皮を剥いた。その方が剥きやすいらしい。僕は乾いたままでも剥いてしまうけれど。


半分に切った玉ねぎを薄くスライスした後、長葱を刻む僕の横で、美和は茄子、にんじん、玉ねぎを入れたボウルに水を入れ、ザッと混ぜると、ザルに空けて水を切った。


長葱を小鉢に移した僕は、予(あらかじ)め用意しておいた天ぷら生地の入ったボウルを冷蔵庫の中から取り出した。


その中へと、ザルの中の野菜を一度に全部混ぜた美和は、油鍋の用意を終えた僕にボウルを手渡した。


天ぷらを揚げ終えると、蕎麦を湯がく美和の横で、僕は麺つゆを仕上げた。


かけ蕎麦とかき揚げが完成した。


美和がどんぶりに蕎麦を入れ、僕が麺つゆを掛ける。


お盆に載せたどんぶりを運ぶのは僕の役目。


運ぶ間に転んで、美和にまた火傷されたら面倒だから。

累とみみ 3

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食べさせてあげたいな。


でもそんな事を言ったら、みみはさっきのように、同情かと怒るだろう。


「お腹ペコペコだ。どこかに食べに行かない?」本当は、僕のお腹は空いてない。


「でもあたしお金ない。」


「奢るよ。その代わり、みみのお勧めの店を教えてくれたらね。」


「え?本当に?いいよ、行こう、累!」


「待って待って、あ、いてて。」


「早く早く!こっち!」


「待ってってば。」


みみが案内してくれたのは、駅前の古い商店街の中にある、お世辞にも綺麗とは言えない中華料理と看板の掲げられた店だった。

そうそうない 23 2015年10月4日のこと(2)

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リアル・恋愛小説


「あのっ、私の話は、出来ればなるべく社長にはしないで下さい。」


「心配しなくても、何も言ってない。美和がこの家に来た理由って、僕が志歩理の親友・・・というか、友人だったからなんだろ?」


「・・・はい。元が社長と友達ではなかったら、ここへは来られなかった訳ですから、社長には感謝してます。」


「それ違うんじゃない?ここへ住めるのは、僕に感謝すべき事でしょ?」


「あ、うん、そう、そうですね。」


どうして気付かなかったんだろう?志歩理の話になると、美和は丁寧な言葉遣いになる。


そうか、美和の好きな女って、志歩理だったのか。


わーさんも『いい女だ』なんて言ってたな。


志歩理は金遣い荒いし、僕より甘えたがりだけど、憎めない、いや、憎たらしい程いい女。

暁と星 53 祈り

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星良が薬を飲んでから、一年十一か月が経過した。


懸命の治療のおかげで、星良の体内の毒は中和され、今は薬を飲む前とほぼ同じ状態まで戻っていた。


あとは目を醒ますだけだった。


ただし、目を醒ましたとしても、何の後遺症もないという保証はなかった。


二月初旬の昼下がり、治療を続ける部屋には、並川とリューが居た。


「星良ちゃん、体拭きましょうね。ねぇ、センセ、少し休んで。私が見てるから。」


「いいよ。リューこそ、忙しいんだろ?昼休みにわざわざ戻って来なくて良かったのに。」


「あら、いいじゃない。お昼食べに来たついでよ。私の家はここでしょ?」


縺曖 225

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長編小説、ノベルシリーズ


「伸長くん、どうしたの?ぼんやりして。あ、分かった!小説借りなかった事、後悔してるんでしょう?」


「あ、う・・・」伸長は”ううん”と言おうとしていたが、否定してしまうと、他の事を考えていたと詮索されるだろうと考えて、「うん、そうなんだ。」と答えていた。


「もう一回行く?」


今日、伸長が立ち寄ったのは児童書コーナーのみだった。そこにある殆どの本を目にした事があるので、困った症状は出なかったが、小説のコーナーとなると別だ。


目にして興味を引かれた片っ端から読み漁ってしまいたくなるだろう。

乙女ですって 218 (R-18) 俺より先に死なれたくない

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小説15禁・18禁(性描写あり)



「違うんじゃないかな?安藤さん、お腹の中の子が俺の子だと知ってるみたいだったけど。その上で、舞と再婚するんだ、寛容な人だなと思ってた。」


「え?知ってる?安藤さんが?舞は隠してるみたいだけど・・・」


「何かでバレたんじゃない?出産予定日から逆算したとか。男は妊娠出来ないけど、だからこそ冷静に客観的に、お腹の中の子が自分の子かどうか判断しなくちゃならないからね。」


「なんで?安藤さん・・・知ってるならなんで舞と再婚なんて・・・」


「安藤さん、いい人過ぎるみたいだから。舞の事、ほっとけなかったのかも。」


「だーっ!もーっ!それじゃ駄目なんです!はなちゃんパパも安藤さんも!とにかく、何とかして下さい!舞がああなったのは、はなちゃんパパにも原因が───」


その後、はなのパパは、はなが止めるまで、延々と木南に説教された。










そうそうない 22 2015年10月4日のこと(1)

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オリジナル小説発表


紺色の包みを開けると、中から白い箱が出て来た。


蓋を開けると、中からマークシートはがきと冊子が出て来た。


「何、これ・・・カタログギフト?」


「そうみたいね。好きな物、選んでって事じゃない?」


「好きな物、ねぇ・・・」


毎年恒例、志歩理からの誕生日プレゼント。昨年は何だっけ?ああ、旅行券かな。今年、志歩理の結婚式の参列の為の旅費に使った。


パラパラと捲る。日用品、要らない。ビジネス用品、要らない。お米、お茶、果物、お菓子、レトルト食品、要らない。


テーマパークのペアフリーパス、要らない。


温泉旅行、要らない。


折角だけど、カタログの中に欲しい物がない。まだ昨年の旅行券の方が使い道がある。換金出来るし。

そうそうない 21 2015年10月3日のこと(6)

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美和が手にしていたのは、コンパクトデジタルカメラ。


「はい、そっちを背にして、こっち向いてー!」


パシャッ。


シャッター音がした。


「もー!笑ってよー!」


「やだよ、気持ち悪い。」


「はい、じゃーもう一枚。」


「やめろ、撮るなよ。」


「へへーん、今はビデオに切り替えましたー。ローソク、火点けるね。」


美和は、逆さにしたコップの上にカメラを置くと、仏壇から柄の長いガスライターとわーさんの遺影を持ち出した。


そうそうない 20 2015年10月3日のこと(5)

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南の縁側の鴨居の上に、横断幕ならぬ、紙製の花をぐるりと一周あしらった模造紙に、

【おたんじょうび おめでとう!】と書かれていたからだ。


文字の両端には、色画用紙で作られた、イヌだかネズミだかキツネだか判らない生物が貼り付けられていた。


そして部屋の壁には、さっき美和が一生懸命作っていた輪飾りが取り付けられ、所々、花も使われていた。


「運動会の為の花じゃなかったのかよ。」


残った花は、と見ると、段ボール一個分だけだった。袋の中の花は全部使われていた。

暁と星 52 二人それぞれの道

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ギリッ、旺治郎は奥歯を強く噛み締めた。そして並川の襟首を掴んでいる手を離し、代わりに、目を閉じて動かなくなった並川の両肩をガッと掴んで言った。


「助からない?死ぬ?何を言ってるんですかっ!しっかりして下さい。あなた医者でしょう?」


旺治郎は並川が医師免許を持っている事を知っていた。弁護士というのは嘘だという事も初めから。


「無理だ。あのクスリは男なら生きて居られるけれど、女は死ぬ。」


「何故?」


「男は女が持っていない物質を体の中に保有しているから助かるんだ。」


「持っていない物質?」


縺曖 224

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BL小説(創作)


買い物を終えた皇と伸長は、ショッピングモールを出て、中央図書館へ向かった。


それぞれ借りたい本を借りた後は、外へ出た。


待ち合わせした頃より西に傾いた太陽の陽射しは、随分和らいでいた。


日陰になっている図書館の外のベンチに二人揃って腰を下ろすと、借りた本を開いた。


伸長が借りたのは、子ども向けの絵本。原始的な生活の図解本だった。


勿論、火熾しの方法も載っていた。

乙女ですって 217 (R-18) 誰かを不幸にする覚悟

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長編小説、ノベルシリーズ



木南は病院前のバス停のベンチに座り、バッグの中からスマートフォンを取り出した。


トゥルルルル、トゥルルルル、トゥルル・・・『はい』

電話越しの舞の声が少し不機嫌そうに思えた木南は、緊張しながら、

「舞、今、電話してて平気?」と確認した。


『うん、何?』


あれっ?不機嫌と言うより、寝起きの声?


「体調どうかなと思って。変わりない?」


『うん。大丈夫』


「はなちゃんは?まだ向こう?」


『そう。預かって貰ってる』


「寂しいでしょ?」


『そうでもない。体怠いし、面倒見て貰えるならその方がいい』


「・・・そうなんだ。」

そうそうない 19 2015年10月3日のこと(4)

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「きゃー!降参、降参、ごめんなさーい!」


キャー、きゃあ!そう言いながら美和は手にしている缶のボタンを押すもんだから、クリームはどんどん噴出して、僕達は勿論、台所は酷い有様になった。


騒ぎ過ぎて、息が上がった。はあはあ・・・


「やり過ぎた。ごめん。」


「ううん。私こそごめん。勝手な事して。」


二人で暴れたにも拘わらず、料理もケーキも無事だった。


一頻り騒いでスッキリした僕は、大人げなかったなと反省し、


「先に風呂入って来たら?」と僕に髪をクリームで白く染められた美和に向かって言うと、


「主役が先。ついでにお風呂、お湯溜めといてくれると助かる。」と返された。

そうそうない 18 2015年10月3日のこと(3)

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愛のかたち


「僕の小学校では給食にゴーヤなんて出なかったけどな。」


もしかして、美和は沖縄の小学校出身か?


「そう?いいなー。」


「沖縄出身?」


「違うよ。」


土地の差でなければ年齢か?昔と今ではメニューが違うと聞いた事がある。


僕らの頃は給食に鯨肉が出た。


「美和っていくつ?」


「女に齢を聞くものじゃないでしょ?」

累とみみ 1 -僕のしあわせは君と居る事-「暁と星」派生編-

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恋愛小説(純愛)
「暁と星」特別編です。面白そうだと思われましたら応援して下さい。(オクラさんにならないように・・・φ^^;)
【星良と励が婚約する一年前の三月中旬。蔵持家の長男・累の恋が始まった】

累とみみ 1



「しあわせにするから、絶対に。」


「うん。」




僕の力でしあわせにしたいと初めて思ったのが君だった。


御曹司と呼ばれ、何不自由ないこの暮らしを捨てても、君と生きたい。


君は僕を曇りのない瞳で、いつも真っ直ぐに見つめてくれる。


君にあげたいと思っていた贅沢な暮らしを、僕は君から奪ってしまう事になるけれど、それでも僕は君が欲しかった。


何より大切な君は、僕の秘密の宝物。君がいれば他に何も要らないと言うけれど、本当にそうだと思う。


今まで僕は、しあわせになるにはお金がないとなれない、そう思っていた。


実際、お金に困り、不幸な顔をして家にやって来た人達を、幼い頃から見続けていたから。


お金がないのは不幸な事。


お金があれば、人はしあわせになれる。


僕の家にはお金があった。今までお金に困った事もなかった。だから、不幸だと感じた事はない、筈だった。


でもそれは、しあわせが何かも知らなかっただけだと知ったのは、君と出逢ってから。


「僕のしあわせは、君と居る事。」


「あたしも。」


お金はないよ、でも、しあわせが次から湧いて来る。君と居るとね。




そうそうない 17 2015年10月3日のこと(2)

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「わーさんは僕みたいに泣かなかったし、懐が深い人っていうか、そういうのを男らしいと言うのなら、誰よりそうだった。」


美和は視線を薄紙に落とした。次の色へ取り掛かる。


「いいなあ、好きな人に好きって言えた元は。」


そんな事ないよ。思い出してみるけど、あんまり言った事が無かったよ。


面と向かって『好き』って、改めて言うのは変な感じがしたし。


わーさんだって、そういう言葉を吐く人ではなかった。


彼が口より目で物を言う人だとしたら、僕の頭を撫でる時、本当に愛おしそうに、寂しがる子猫を甘えさせるように撫でてくれていたから、それはきっと、繰り返し繰り返し『愛してる』と心の中に想っていてくれたと信じられる。

暁と星 51 (R-18) あなたも一緒に

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ちょいエッチ


並川は星良のブラウスに手を掛け、

バッと星良の胸を開(はだ)けると、旺治郎の付けたキスマークを指でなぞった。


その行為に、星良は震え、鳥肌を立てた。


「やめて下さい。」


「叫べば?オウジ助けてって。そしたらオウジは飛んで来るかもよ?」


「・・・来ません。」


「どうして?」


「このお屋敷から出て行くように言いましたから。」


「はっ、面白いね、星良ちゃん。まだこの家を継いでもいないくせに、もう当主気取り?オウジの雇い主は俺だよ。やるコトやって貰わないと、金払えないんだよね。そうなったら困るのはオウジだから。」


縺曖 223

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「これと似たのがうちにあるんだ。黒革の日記帳。今日は俺が書くから、明日は伸長くんが書いて。交互に書く交換日記なら続きそうだから。」


「交換日記・・・」


「嫌?」


「嫌なんてそんな・・・僕はいいけど、でも・・・」


「でも、何?」


「多分、僕の日記はつまらないよ?」

乙女ですって 216 (R-18) 現在進行形

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「十二年前?じゃあ、安藤さんが舞と結婚する前から?」


「はい。」


「もしかしてずっと片想いしてたんですか?」


「はい。」素直に返事をした菜津子の事を、木南は自分より年下の純粋な乙女のように初めて感じた。


「それで今になってどうして付き合う事になったんですか?」


「それは分かりません。ただ、彼も私も本気でした。」


菜津子の口から”本気”という言葉を聞いた木南は、頬が熱くなるのを感じた。そして目頭が熱くなった。


綱島さんと安藤さんの恋愛。想像出来なかったけれど、綱島さんが安藤さんの事を語る時の表情を見ていたら、その想いはとても一途で純粋なものだったと思えて来る。


二人共“本気”だったのに、別れる事になってしまった。舞のせいで。


それって何だかすごく切なくて悲しい。

自殺相談所 28 他人との繋がり

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伝えたいことば。


「何か可笑しかったか?」


きょとんとする渡辺を見た梢は、涙を更に零して笑い続けた。


こんなに笑ったのはいつ振りだろう。


誰の目も気にせず、安心して、お腹の底からただ、可笑しいという感情が素直に出せる。


梢は久し振りに、幼い頃に戻ったかのように、何のしがらみにも囚われず笑う事が出来た。


柊の事で悩んでいた、確かにそうだった。


でも・・・と梢は渡辺に指摘されて気付いた。


それに加えて、自分と夫についての悩みもあったのだと。それを柊一人のせいにして死んでしまう所だったと。


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