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sazanamiの物語

恋愛小説を書いています。 創作表現上の理由から、18才未満の方は読まないで下さい。 恋愛小説R-18

積み重なって解けるとき 63 ※哲編

Posted by 碧井 漪 on  





「おつかれさまでした。」


公子の声に、ハッとした哲は、

「あ、もうこんな時間?」と、指で眼鏡を押し上げ、壁の時計を見た。


「閉店準備、終わりました。」


「ありがとう。おつかれさま。」


きみちゃんを見ると、朝と同じく、マスクを着けている。


「おつかれさまでした。」


いつも通りの挨拶をした公子は、哲に背中を向け歩き出した。


今日、全然きみちゃんと話してないな。ずっと考えてたから。


この店の事。その先にあるきみちゃんとの結婚。


経営改善策を何も思い付かないまま閉店時刻になってしまった。


そうそうない 16 2015年10月3日のこと(1)

Posted by 碧井 漪 on  

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愛のかたち


「怒るエネルギーをこっちに使って。時間ないの。はい。」


座ったまま美和は、ピンクの薄紙100枚の入った袋を立っている僕に手渡した。


そして美和は白、黄色、赤、水色の薄紙を箱の中から取り出した。


計500枚、これをどうするんだ?


美和は白い紙を袋から取り出した。


「この薄紙を5枚取って、蛇腹折りって分かる?山折りと谷折りを大体2センチ間隔で繰り返して。折るのはこっちの短い方を両手で持って折って行ってね。それで、折ったら丁度真ん中辺りを輪ゴムで留めて、この分かれた左右の蛇腹を扇形に開いて、一枚ずつ、そうっと剥がして、薔薇のお花みたいになるように形を整えてね。」


はぁっ?何故僕が昨日に引き続いて、今日も手伝わなくてはならないんだ?と言いたい所だったが、美和一人で20個×5色の花を作るのは時間がかかりそうだから手伝う事にした。


段ボールを挟んで胡坐を掻いた僕は、美和に言われた通り蛇腹折りを頑張った。

縺曖 222

Posted by 碧井 漪 on  

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自作小説!!


僕の毎日は、昨日、今日、明日で大きく変わらない。月曜日から金曜日は学校へ行き、土曜日と日曜日は家で過ごす。


出掛けるとしたら、近所のスーパー。母に頼まれたおつかいか、他は新刊発売日に駅前の書店に寄る位。それも学校帰りの事が多い。


皇くんに出逢う前はそうだった。


でも今は違う。今日のように、こうしてショッピングモールで女の子へのプレゼントを選んでいるなんて。


少し、ううん、かなり変わったと思う。過去の僕と今の僕ではまるで違う人間だ。


僕は、今の僕の方が好きだ。だって、楽しいから。

暁と星 50 失った星

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恋愛小説(オリジナル)


車から降りた励は、蔵持家の玄関扉の前で足を止め、深い溜め息を吐いた。


ぽつん、玄関の中にも外にも灯る灯かりは黄色く暖かそうな色だが、今、この家の中は、外よりも冷たい空気で満たされ、凍った絆をつついたら、脆く崩れ去るかもしれない。


「家に入りたくねぇな。」励は扉の取っ手に手を掛け、呟いた。


本来なら今夜、親戚縁者を招いて、累と励の婚約披露会が行われる予定だった。


メインは長男・累が財閥系大企業の孫娘と婚約しためでたい日になる筈が・・・累が逃げた事により、祝いの会は取りやめ。


父は怒り、母は寝込み、弟の俺は婚約を無効にさせられ、挙句、家に引き戻される事になった。


自分の家なのに、居心地悪い。


元々居辛かった。自分の好きな事、やりたい事を制限された暮らし。

縺曖 221

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小説書いてる人~全員集合!!


相手の好みが分からない状態でプレゼントするなら、他の人の目に触れない物がいいというエッセイを読んだ事がある。


例えばペンケースよりペン。バインダーよりルーズリーフ。洋服より下着。形に残る物より消え物。


自分の趣味に合わない物だったとしても隠せる、或いは容易く使い切ってしまえる、そういう物だったら貰っても左程困らないと。


さっきのノートを思い出した僕は、ノートのある棚へ移動した。


他の種類はないかと、見ると2016年の手帳、家計簿、お小遣い帳、その他に───これは・・・


乙女ですって 215 (R-18) お節介

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ちょっと緊張する。けど、頑張る。訊き出すのは、安藤さんの電話番号!


ルルルル、ルルルル、ルルルル、プツッ。


「あ、綱島さん?木南ですけど・・・」


『ただ今、電話に出る事が出来ません。ピーッという───』


ピッ。木南は画面に表示された終話ボタンを押した。


綱島さん、今電話に出られないのね。


しょうがない。明日、面会に行った時、訊き出そう。


そして木南が自宅に帰った時、電話の着信に気付いた。菜津子からだった。


「はい、木南です。」


『綱島です。今、お電話してもよろしいですか?』


こういう所、綱島さんは丁寧。舞は友達だからなのか、私の都合を一々訊かない。


そうそうない 15 2015年9月30日のこと(3)

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僕自身は、女性を好きになる事が気持ち悪い。ノーマルと呼ばれる人が、同性から望んでもないのにベタベタと性器を触られるのと同じ感覚と言えば解って貰えるだろうか。


だからと言って、女に生まれたかった訳ではない。


女として生まれた自分というのも想像出来ないし、出来ればしたくない。


もし、そうだったら、わーさんと堂々一緒に居られるという事は考えたけれど、仮に僕が女だたらわーさんに好きになって貰えなかったかもしれないと考えると、僕は僕で、男で良かったんだという考えに落ち着いた。



何が一番大事かって、それは愛する人、わーさんと穏やかに暮らして行く事だった。


いつか終わる、そのいつかが一年前に訪れてしまっただけの事だ。


そして、この寂しさもいつか終わる。僕の死を以って。

そうそうない 14 2015年9月30日のこと(2)

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長編小説、ノベルシリーズ


「どんな人って、素敵な人。初めて人を好きになった。初恋で一目惚れ。」


美和は僕の目を真っ直ぐ見ながら、相手の事をそう話した。


「一目惚れ?相手の事をよく知らないで、見た目だけで?」


「うん。でも、後でちゃんと話したよ。」既婚女性と言っていた。片想いだったかどうかまで訊けていないが、おそらくそうだったのだと考える。


「見た目と中身、違ったんじゃない?」


「その通り。全然違った。だけど知れば知る程、益々好きになった。」


「へー。僕もそうかな。わーさんの事、知れば知る程、好きになってた。」


「それはそれは、羨ましいですな、はっはっは!」


「変な笑い方。時代劇に出て来る悪い奴みたいだ。」


僕と美和は同性愛者同士だから、男同士、女同士の方が間違いを起こすと言える。

そうそうない 13 2015年9月30日のこと(1)

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ここ数日で、朝晩、めっきり涼しくなった。


畑のひまわりは二週間前程に全て枯れ、種を取る為に、後半月はこのまま放置する。


昨年は一人で、泣きながら収穫したひまわりの種。植えたのはわーさんと一緒だったのに、刈り取る時は一人だった。


何も無くなった畑を見た僕は、僕の命はいつ尽きるのだろうかとその事ばかり考えて、次の年を迎える事なんて、あの時は全く考えられなかった。


夏が終わり、秋になったとも、冬が終わり、春になったとも分からず、ただ実体のない抜け殻のように過ごしていた。


変わったのは、志歩理からの電話でわーさんの事を話した後、それからしばらくして、ひまわりの種を植える気になった。


一周忌に、畑にひまわりが満開になっていたら、わーさんが喜んでくれるんじゃないかって、自己満足だったけど、ようやく一歩踏み出せた。


そして迎えた一周忌、思いもかけぬ事が起きた。

縺曖 220

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小説同盟


本を買う為、僕は文具にあまりお金を掛けなかった。


母に買い物のついでに、安いノートを買って来て、シャープペンシルの芯と消しゴム、赤ペンもお願いと頼んでしまう事が多かった。


使えれば何でもいい。ボールペンは皆が持っているようなおしゃれな物ではなく、町内清掃に参加した時に頂いた、自治会名の入った物だった。


例えばこんな、つやつやして花柄の、おしゃれで握りやすいボールペンはいくらするんだろう?


680円と消費税で734円。

暁と星 49 お別れのくちづけ

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旺治郎が最後に星良に教えておきたい事とは───言葉遣い、立ち居振る舞いの事かと考えた星良は身構えた。


そんな星良の前で、旺治郎はいつも掛けている丸眼鏡を静かに外し、ポケットにしまった。


そして星良の頬に手を当てた。やさしく包むように。その手をゆっくりずらした旺治郎は、親指で星良の下唇をなぞった。


旺治郎の指先が星良の唾液で濡れた。星良はそれが恥ずかしくて、目を伏せる。


すると、旺治郎は両手で星良の頬を挟み、自分の目と合わせるように星良の顔を動かした。


「教えておきたい事って、何でしょう?」


いつもとは違う旺治郎の様子に戸惑いつつも星良が訊ねると、旺治郎は「一番好きな人に贈るくちづけの仕方です。」と答えた。


「一番好きな人に贈るくちづけ・・・?」


「はい。」


冗談を言っているのかと思って見た旺治郎の眼差しは真剣だった。星良は普段、眼鏡を外して合わせる事がなかった旺治郎の黒い瞳に魅了され、動けなくなった。


少し開いた旺治郎の唇が星良の唇に近付いて来る。


思わず星良は目を瞑った───しかし、何も起こらなかった。


そうよね。旺治郎は、“一番好きな人に贈るキス”の仕方を教えると言ったの。実際にキスをする訳ではなかったのだわ。


ホッとした星良が目をぱちりと開けた瞬間、目に飛び込んで来たのは、近付く旺治郎の黒い瞳だった。


え?


旺治郎の瞼が瞳を隠した瞬間、星良の唇は旺治郎の唇と重なっていた。


え?!


私にそっと触れた唇は、少し震えているみたいにも思えた。


違う体温が混ざり合い、同化して行く感覚。


ああ・・・このまま唇を通して、あなたの中に吸い込まれてしまえばいいのに。


触れる唇のぬくもりが愛おしい、だからこそ、私があなたに抱き締められる度に罪悪を感じる。


私以上にあなたを愛している人、そしてあなたも愛している人、暁良ちゃんに申し訳なくて・・・


ごめんなさい・・・


星良は旺治郎の胸を両手で押した。


「もう・・・いいです。十分、分かりました。ありがとうございました・・・」


星良はボロボロと涙を零した。


「───離れても、私は、星良さまのしあわせをいつまでも願っています。」


ぎゅっ・・・


星良は旺治郎の胸に強く抱(いだ)かれた。


「今・・・」


星良はこのまま死んでしまいたいと思ったけれど口にしなかった。


旺治郎と離れたくない。またあの寂しさを味わいたくない。この前は一週間も経たなかったけれど、今度は一生・・・再び会えるかどうかも分からない。


そして二度と、こうして抱き締めては貰えない。彼には大切な人がいる、私ではない人がいるから。


結ばれない運命。それでも惹かれてしまう、あなたに。


こんな激しい想いを知りたくなかった。


結ばれないのなら、出逢わなければ求めずに済んだと思うと、悲しくて遣り切れなくなっていた。


『愛してる』


そんな言葉を吐き出したいと思う相手が、自分の目の前に現われると思っていなかった。

縺曖 219

Posted by 碧井 漪 on  




「選ぶの手伝ってよ、伸長くんも勇田さんの事、知ってるでしょう?」


「うん。」でも・・・と僕は続けるのを我慢した。


勇田さんに悲鳴を上げられる程嫌われている僕が選んだ物なんて、彼女は嫌がるのではないかと。


しかし、ここで一緒に探さないなんて薄情な事は出来ない。


「どんなのがいいと思う?」


皇くんに訊かれて、それは僕も同じく悩んでいるよとも返せず、


「文具の方に行こうよ。」と無難に答えた。

乙女ですって 214 (R-18) 婚姻届

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隆人が救急車で病院に運ばれた頃、木南は溜め息を吐いていた。


今日は土曜で会社は休み。十時頃起き出した木南は、顔を洗った後、洗濯物を放り込んだ全自動洗濯機のスイッチを押すと、キッチンへ移動した。


電気ケトルに水を入れ、コンセントを挿すと、マグカップにインスタントコーヒーの粉末とスティックシュガーを二本分入れる。


冷凍庫から、凍った食パンを取り出し、ラップフィルムを剥がす。


そうして、オーブントースターのトレーに載せたパンには、スライスチーズが既にくっついていて、ただ8分程焼くだけでチーズトーストが出来る。


パンを焼いている間に、電気ケトルで沸かしたお湯をマグカップに注いでスプーンで掻き混ぜた。


チーン。


焼けたチーズトーストを載せた皿と、マグカップを持ち、木南はローテーブルの前に移動した。


ベッドを背にして腰を下ろす。


「いただきます。」


あまりに静かなので、思わず声を出して、少し虚しくなった。

そうそうない 12 2015年8月30日のこと(5)

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水族館の巨大水槽の前、大きなエイが悠々泳ぐ姿を見るわーさんの横顔に、僕は見惚れていた。


イルカショーの始まる時刻が近付き、小さな水槽が並ぶ展示場に移動した僕らの周りから人けがなくなり、わーさんと手を繋ぎたくなった僕はそっと、彼の手に手を近付けた。


きゅっ。


僕からではなく握られた手は、随分小さいと感じた。


隣に立つわーさんの顔を見ると、あれっ・・・そこにあった筈の顔がない。


『元、早く行こう?イルカショー始まるよ?』


声を辿ると、わーさんの背は縮んで・・・というより、不思議な事に、わーさんは彼女の姿に変わっていた。


でも、声はわーさんだ。


イルカにはしゃぐ彼女の姿。でも中身はわーさん・・・もしかして、彼女の体を借りて、僕に会いに来てくれたのかと考えてしまう。

縺曖 218

Posted by 碧井 漪 on  

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「さて、と・・・ここにしようかな。」


両腰に手を当てた皇くんは、さっきと違う店の前に立って僕を振り返った。


「ここ?」


「うん。」


僕も名前を聞いた事のある、バラエティーに富んだ商品が多数陳列された店だった。


そうそうない 11 2015年8月30日のこと(4)

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「ガーゼ、どこにやった?」


頭をテーブルの上に出してから訊ねると、

「もう平気です。」と微笑む彼女。


平気な訳ないだろう。僕にも経験があるから分かるが、足の甲の皮膚は薄く、少しの火傷でも物凄く痛い。


彼女の場合、火傷した面積が広いから、靴下だって履くのは辛い筈。


それもこれも、僕のせいだ。


だから今夜も彼女を追い出せない。

暁と星 48 ここから一秒も進みたくない

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暁と星48
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プツッ。


ボタンを押すと、寂しさが星良の心に大きな波のように押し寄せた。


またね、と言った励さんと、もう会う事はないかもしれない。


私の頭を包んでくれるあの大きな手にも触れられない。


恋人というより、お兄さんみたいな存在だった。


旺治郎が居なかったら、恋と思っていたかもしれない気持ち。


星良の目に熱いものが込み上げた時、

ガタン、バタン!

部屋の窓が強い風に揺らされ、庭の方から音がした。


はっ!星良は、手にしている子機に気付いた。


電話機、返して来なくちゃ。


目元を拭って、星良がキィと扉を開けると、真っ暗な廊下に黒い影が蠢くのを感じた。瞬間、星良の心臓は、ヒッ!と縮み上がった。その時「星良さま。」旺治郎の声が聞こえた。

縺曖 216

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当然、好き。


皇くんの言葉が、僕の胸に突き刺さる。


「当然。僕も好きだよ。親友だもん。」


照れて笑う皇くん。僕の顔もきっと同じようになっていると思った。


でも、この”好き”は、犬達を見て感じる”好き”と同じで”恋”ではない。


男同士だから、当然、この”好き”は”恋”と呼べない。”BL”でない限り。

乙女ですって 213 (R-18) 神様と天使

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長編小説、ノベルシリーズ


菜津子が入院して四日後、五月十五日。


隆人は菜津子が入院している事を知らなかった。


赴任先へ戻ってからの隆人は、気持ちが沈み、何をするにも表情を変えず、無気力だった。


舞からは退院したというメールを貰い、菜津子の事は、あまり思い出さなくなっていた。


嬉しいや楽しいという感情も思い出せなくなり、孤独の中、生きている実感もないまま、ただ日々を淡々と送っていた。

そうそうない 10 2015年8月30日のこと(3)

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オリジナル小説発表


「あつっ・・・」言いながら彼女は足の上にあるご飯を取り払おうとしない。


見兼ねた僕は、熱々のご飯を手で払い落し、彼女を風呂場へ引っ張って行って、シャワーの水を彼女の赤くなった足の甲に掛けた。


「馬鹿、何ですぐ動かなかった。」


「悪いのは私だから。」


厚かましいくせに、急にしおらしくなる。


訳が分からない、女という生き物は。


悪いのは僕だ。


皿を叩き落としたせいで、彼女は足の甲を火傷した。


肌色のストッキングの上からも赤くなっているのがよく分かる。


何をやっているんだ僕は。

そうそうない 9 2015年8月30日のこと(2)

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オリジナルBL小説・・・ストーリー系


僕は顔を洗い、歯磨きをして、髪を整え、礼服に着替えた。


布団を押し入れにしまい、開けていた窓と薄いカーテンを閉めてエアコンを点けた。


仏壇の水とご飯を取り替え、お線香をあげて手を合わせると、スッ、僕の後ろに正座する彼女の気配を感じた。


早く出て行って欲しい。特に今日はわーさんの命日だから、静かに過ごしたい。


僕は一日、ここを離れない事を心に決めていた。


昨年の今日、ここを離れた事を今も後悔している。

縺曖 214

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「わ、わっ!」


僕の心臓はバクバクバク!あんまり驚き過ぎて、本当に止まるかと思った。


「まったく・・・見てないで助けてくれれば良かったのに。」


「助けるって?え?どうやって?」


「俺が、見てるとドキドキする相手として登場してくれれば良かったのに。」


「皇くんが”見てるとドキドキする相手”?えっと、それって僕の事?」


縺曖 213

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うわぁ、凄いなぁ。僕は彼女に感心した。


ところが、

「ごめん。俺、栗田さんの事、嫌いじゃないけど、付き合うとかって正直分からないから、出来ない。ごめんね。」と皇くんはきっぱり断った。


「そ、そっか・・・あたしこそごめんね。いきなり”好き”とか言ったりして。」


「それは、ありがとう。”嫌い”って言われるより嬉しかった。」

乙女ですって 212 (R-18) 天罰下れ

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うーん、切り出し難い。


『綱島さんのお腹の中の子の父親って、安藤部長?』って訊くのも何かね・・・


あー、面倒臭い。何で関わっちゃったんだろう。


でも、このままにしておけないじゃない?


安藤さんが舞の再婚相手じゃなかったら関係ないって聞き流す所だけどさ。


一応まだ友人の舞が、他の女を孕ませた男と結婚するって言うんだから、それは訊いておいてあげないと、よね?


しかし、そんな人だと思わなかった。


二人の女に手を出した安藤さんがすべていけない。ちょっと顔がいいからって、あちこち手を出していいもんじゃないっつーの。


やさし過ぎると思ったけど、実はどっちつかずなだけの最低男だったのね。


しかも綱島さんの事は遊びって事でしょう?妊娠させるような事をしておいて、ポイ?


人は見かけによらないって言うけど、ほんと酷い男。天罰下れ。

そうそうない 8 2015年8月30日のこと(1)

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翌朝・・・


パン、パンパン、パーン!


何かを叩く音が聞こえた。


チュン、チュンチュン!


怯えた鳴き声を上げたスズメの飛び立つ羽音に僕は目を開く。


ここは、家だ。見上げている天井が明るい。朝・・・?


窓の方を見る。


そこはいつもと違う光景だった。開け放たれた窓、両脇に追いやられたカーテンは微風に揺れていた。

縺曖 212

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「何?栗田さん。」


「あたし、中学の時からずっと藤野くんの事、好きでした。付き合って下さい。」


ショッピングモール内のザワザワしている周囲の声が、ぴたりと止んだような気がする程、僕は彼女の声しか耳に入って来なかった。


皇くんに”クリタさん”と呼ばれた女の子は、さっきとは向きを変えてしまったから、表情は見えない。けれど、少し俯いて、皇くんと目を合わせられていないように見える。


さっき見た様子では、白い肌、目はくりっと大きくて、前髪は眉毛まで、後ろ髪は背中の真ん中までサラサラと流して、紺色のワンピースに白いカーディガンを羽織った、清楚で可愛らしい女の子だった。

自殺相談所 27 他の世界

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自作小説!!


「可哀相だねって人に言われて、お母さん自身もこの子の事を可哀相と思ってない?違うよ。この子には社会より大事なこの子独自の世界があって、それを大切に生きているだけなんだよ。協調性がないからって個人を責める社会の方がいけない。自閉症と診断されなくたって周りが見えてない、分かってない人は、案外沢山いるだろ?それと変わらない。診断されたからって肩身狭くして生きなくちゃならないんだったら、病院なんか行かない方がいい。病名なんて何の意味がある。全身全部健康な人なんていないよ。みんなどこか悪い所があるだろう?あんたはここが悪い、それを責める人なんて相手にしなけりゃいい。子どもは騒ぐもの、静かな方が異常だと俺は思う。それなのに公園やスーパーでちょっと騒いだだけで、親の躾がなってないとか人の迷惑考えろとか言って来る了見の狭い大人のせいで、おとなしく出来ない子は叱られてさ。大人だって騒ぐだろ。飲み屋や祭りやアイドルのコンサートなんかでさ。自分らは騒ぐだけ騒いで、子ども達には駄目って、そりゃ酷だわな。まず自分達が自制出来るようになってから言ってくれって話だ。」


「そうは言っても・・・」

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