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sazanamiの物語

恋愛小説を書いています。 創作表現上の理由から、18才未満の方は読まないで下さい。 恋愛小説R-18

縺曖 211

Posted by 碧井 漪 on  

トイレは口実だったが、安心したせいか急に尿意を感じた伸長は、足早に男子トイレへ入った。


用を足すと、伸長は元来た道を辿り、無事に皇の待つ雑貨店の前に辿り着いた。


店内を覗くと、皇の姿は見えない。


え?皇くん、どこ?


待たせてしまい、不安になった伸長は、両隣、向かいの店、更にその隣の店と、皇を捜した。


ふと、伸長は足を止めた。


吹き抜け部分に設けられた、通路と通路を繋ぐ広い橋のようなスペースの観葉植物の陰に、皇の横顔が覗いている事に気が付いた。皇の体は、緑に隠れて見えない。

暁と星 46 星の命が尽きるまで

Posted by 碧井 漪 on  

暁と星46
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恋愛小説(オリジナル)


屋敷に戻ると、並川が玄関先に立って居た。


星良が手にしている賞状筒を見た並川は、

「卒業おめでとう。」と思い出したように言った。


「ありがとうございます。」


「お昼でも食べて話がしたかったけど、ちょっとそういう話でもないから。」と珍しく神妙な顔をしていた。


「急ぎのお話ですか?」


「うん。超特急。」


「並川さん、そのお話の前に星良さまの膝の怪我を診て下さい。」


「膝の怪我?」


縺曖 210

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「伸長くん、こっち!」


お店の中から皇くんは僕に向かって手招きした。


『寄ってもいい?』と皇くんが僕に訊いたのは、僕にも”店の中まで付き合って欲しい”という意味だったのだろう。


「えっ、と・・・」


僕のスニーカーのつま先は左右内側を向き、店の中へ入る事を躊っているのがよく分かる。

乙女ですって 211 (R-18) 結婚?

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オリジナル小説発表


綱島さんの状態を聞いたけど、ここで説明出来ないわよ。


「いいえ。知らないわ。」


「そうですか・・・」


病名を知らないと言っただけで、綿雪さんは急におとなしくなった。


そんなに大したことないと思ったのかしら?


「それじゃあ、終わったらここで。あ、定時は過ぎるかもしれないけれど・・・一人で先に行く?大学病院よ。」


「結構です。お待ちしています。」


「あ、そう・・・じゃあ、後で。」


「はい。」

そうそうない 7 2015年8月29日のこと(5)

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著作権



恥じらいはないのか?


本当は男だったりするのか?


いや、でも、彼女のTシャツの胸の先は、左右、ツンと不自然にとんがっている。男ではこうはならない。


背も低く、体も細く、声も女だが、態度は男?


女が好きだと言うし『体は女、心は男』と言うやつか?


「お風呂、ありがとうございました。あ、石鹸とシャンプー拝借しました。」


「あ、ああ、それは別に・・・」今更だよ。


じっ、と視線を感じた僕は、一度ちらりと彼女の顔を見た。

そうそうない 6 2015年8月29日のこと(4)

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リアル・恋愛小説


「お腹、空いてる?」


社交辞令を言うと「はい」彼女は遠慮を知らない返事をした。


まあ、素直な人は嫌いじゃない。僕が素直になれないからだろうか。


わーさんもどちらかと言えば素直な返事をする人だった。


多分それは、僕の奥に引っ込めた本音を引っ張り出そうと試みてたのかもしれない・・・なんて考えたりする僕は、やっぱりひねくれてて、素直じゃない。


「お茶漬けか、カップラーメン位しかないけど。」


「あの、汗を流したいので、先にお風呂お借りしてもいいですか?」


「ああ・・・どうぞ。」


「ありがとうございます。」


「お風呂場、そっち。タオルとかある?」


「はい、大丈夫です。」彼女はお風呂場へ入った。

そうそうない 5 2015年8月29日のこと(3)

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愛のかたち


カラ、カラカラカラ。僕は迷いなく玄関の引き戸を開けた。


わーさん!


・・・・・・あれ?


わーさんじゃ、なかった。


そこには、見知らぬ男が立っていた。


山歩きの恰好で、大きなリュックを背負ったまま。着ているジャケットが蛍光グリーンだった事もあり、おそらく年下と判断した。


元々暗いが、被っている帽子のつばのせいで、相手の顔は鼻と口しか見えない。


不審者?


背は僕より低く、細身だ。


ナイフでも突き出されない限りは、何とか勝てるかもしれないと、後ろ手にシダ箒を持ち、右足を一歩前に出した。

縺曖 209

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一緒に居たいと思う人と手を繋いでいると、安心する。


逸(はぐ)れないというからだけではなく、その人が、自分の存在を忘れないで居てくれると思えるから。


それはカップルだけではなく、親子で手を繋ぐのも同じ事かもしれない。


親友同士、手を繋ぐ事はいけない事ではないけれど、僕らの齢になると、同性同士で手を繋いで歩く人は見かけない。


子ども同士は見かけるけれど、大人同士は男女カップルしか見かけない。

暁と星 45 きっと、あと少し

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暁と星45
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イラスト・まんが・挿絵・デザイン


廊下を突き当たって右側に保健室、左側には職員室があった。


旺治郎は「失礼します」と職員室へ入ると、中に居た男性教諭に「保健室の鍵をお借り出来ないでしょうか?」と訊ねた。


旺治郎に抱えられた星良の両膝の傷を見た教諭は「あちゃー、派手に転んだね。養護の先生、体育館だ。急ぐ?急ぐよね。卒業式始まっちゃうから急ごう。ほんとは駄目なんだけど、僕はここを離れられないから、お願いしていいかな?これ、保健室の鍵。」と保管箱から出した鍵を旺治郎に手渡した後、「消毒薬、大体どこにあるか分かる?」星良に訊ねた。


「分かります。」多分、分かると思った星良が返すと、


「消毒終わったら、保健室に鍵を掛けて、またここに持って来て下さい。」教諭は旺治郎に向かって言った。




縺曖 208

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喉の奥に引っ込んでいる言葉は『どこへ行くの?』だった。


日曜午後のショッピングモールは僕達と同じ位の男女や家族連れで賑わっていて、その中を、皇くんと僕は黙々と進み、長いエスカレーターの前に辿り着いた。


吹き抜け部分に設置されたエスカレーターは、ガラス天井からの陽光を浴びキラキラしている。それに乗って上階へ向かう笑顔の人々。


楽しそうだなぁと、僕の頬が緩んだ時、


「これ乗るよ・・・って、伸長くん、何ニヤニヤしてるの?」と皇くんがいきなり僕を振り返った。

乙女ですって 210 (R-18) 切迫早産

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ノックされた扉に向かって「はい。」美津子が返事をすると、

「おかみさん。」顔を出したのは渓だった。


「あら、渓ちゃん。久し振りね。あっちゃんの所に来てるなら時々お店にも顔を出してよ。」


「すみません。」


「なーんてね、忙しいでしょ、いいのよ。あら、木南さんも。先程はゆっくりお礼も言えずに失礼しました。」


「あ、いえ、お礼なんていいんです。それより綱島さん、お加減いかがですか?」


「ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした、木南さん。おかげさまで大丈夫です。ありがとうございます。」


「無理しないで下さいね。仕事の方は・・・正直、綱島さんが抜けるとかなり不安ですけど、何とかするしかないですから。」


「申し訳ありません。」


「有休申請は、加集さんがしてくれました。病気って事で。」


「病気・・・」

縺曖 207

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「あやしー。」


皇の頭にリボンを着けた姿を想像してしまったと言ったら、きっと怒るだろうと、伸長は、


「図書室のエッセイを思い出しちゃっただけ。」と誤魔化した。


「エッセイ?どんなの?」


「凄く面白いんだ。毎頁笑ってしまうくらい可笑しくて、でもハードカバーで高いから、昨年図書室にリクエストしたんだ。そう言えば・・・」


「そう言えば、何?」

縺曖 206

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「貸して。」


皇は伸長からストローを貰うと、爪の先を使って、真ん中からストローの袋をスーッと裂いた。


「器用だね。」伸長は思わず漏らした。


こんな時、伸長の姉だったら『伸が不器用なのよ』と言うだろうが、皇は違った。


「この袋、開けにくいよね。俺も苦手。」と苦笑いした。


そうそうない 4 2015年8月29日のこと(2)

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オリジナルBL小説・・・ストーリー系


死んでしまった彼には、僕の気持ちがもう伝えられない、どうやっても。


死んで欲しくなかったんだ。僕を置いて先に死んで欲しくなかった。


人はいつか死ぬ、それは知っている。僕もいずれ死ぬ。


だけどそれまでの間、彼の残した言葉の通り、彼を忘れられない僕は、この何ともすっきりしない想いを胸に抱いたまま生きるんだ。誰よりも愛した彼の記憶と共に。


夏の終わり。


綺麗だけど寂しく映る茜色に包まれて、キー、カナカナカナ、ひぐらしの声が響き始めた。


残暑の厳しい中、彼が亡くなって明日で丁度一年が過ぎようとしている。


繰り返す季節。彼がこの世に居なくなっても、また夏はやって来てしまった。


かき氷、その言葉を聞くだけで体が震える。


一年前の今日の僕が、今のように彼の死にきちんと向き合えていたら、もっと違った別れ方をしていたのかな。

縺曖 205

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やさしい、そしてかっこいい。


僕が女の子だったら、絶対に皇くんに恋してしまっただろう。


あれ?僕・・・恋をした事もないのに、どうしてこれが恋みたいな気持ちだって思ったんだろう?


ガタッ、ガタン。


皇はカウンター席の椅子を二つ引くと、伸長に勧めた。


「ありがとう。」と伸長が座ると、皇も隣の椅子に腰を下ろしながら、カップを一つ持ち上げた。

暁と星 44 卒業式

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暁と星44
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自室に戻った旺治郎は、上着の内ポケットから携帯電話を取り出し、並川にかけた。


20秒程鳴らした所で並川が「はい、オウジ?」と電話に出た。


「先程の件ですが、今、どういう状況ですか?」


『先程の件って、励さんちの事情?』


「そうです。明日の夜の───」


『ああ、明日の夜の婚約発表ね。それは完全に無くなった』


「無くなった?どうして───」


『長男・累の婚約と同時発表だったんだよ。だけど長男が逃げた』


「逃げた?」

縺曖 204

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離れて別々に座るのも変だよね。


二席なら何とかなると思ったのに、簡単ではなかった。


お昼は過ぎているのに、混雑している。


明るいなあ、ガラス張りのフードコートの外を見た時、外にもテーブルと椅子が並べられ、お客さんが飲食しているのに気付いた。


「あ・・・!」


外なら、いくつかテーブル席が空いている。

乙女ですって 209 (R-18) 赤ちゃん

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菜津子は、出産当日の事を考えると怖かった。大好きな人の子を授かれた喜びはあるが、それと未知数な痛みについての恐怖は別だった。


誰にも打ち明けられない中、たった独りで無事に出産まで漕ぎつけられるのか、菜津子は毎日強い不安と闘いながら、最悪の場合も考えたくはないとしながらも、その事はいつも頭を掠めていた。


40歳での出産はリスクが高いと聞かされていました。臨月を迎える事も、お産が進む事も、何事も無い方が難しいという事も。


それなのに・・・何故、私は大丈夫と思ってしまっていたのでしょう。


赤ちゃんが死んでしまっては、いくら後悔しても取り返しがつきません。


「うっ、うっ、ううっ・・・!」


菜津子はベッドに仰向けのまま、両手で目を覆い、泣きじゃくった。


カラカラカラ・・・


病室の引き扉が開き、入って来たのは菜津子の母・美津子だった。

縺曖 203

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背中に冷や汗を感じた僕に向かって苦笑いした皇くんは、

「嬉しいけど、そうじゃなくて、うーん・・・」と顎に手を当てて考えた。


「ごめんね、何だか変な事、言って・・・忘れて。」冗談だと思ってくれていたらいい。


「デートかぁ・・・そうだなあ。じゃあ、俺で良ければ練習してみる?いつかの為に。」


「えっ?!」


練習?

縺曖 202

Posted by 碧井 漪 on  

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コンクリートで出来たレンガサイズの石畳は少し上り坂になっている。その上を、ショッピングモールの入口に向かって、二人並んで歩いた。


皇くんの左手に離された僕の右手はまだ温かかった。


僕は、この手のひらから皇くんの熱がだんだん無くなって行く事を嫌だと感じていた。


こんな事を考えていると、黙っていると皇くんに見透かされそうで、僕は何か話そうと、あまり深く考えずに、思っていた事をそのまま吐き出した。


「皇くんは、デートしてみたいなって思った事、ある?」


「え?」

そうそうない 3 2015年8月29日のこと(1)

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自分の死を覚悟して一旦受け入れた彼は、あの時、愛している僕から離れたくない、このまま死にたくないと、死ぬ事に怯えてしまうのを怖れたんだ。


だから僕を遠ざけた。理由は、かき氷じゃなくても、何でも良かったんだ。


自分はもう死ぬって分かっていたから。


僕が傍に居たら、死にたくないって思いたくなりそうで、怖くて。


或いは、安らかに逝きたいのに、取り乱す僕の泣き顔なんかに見送られたくないと思ったのかもしれない。


ただ最後に僕とキスをした後、独り、そっと旅立ちたかったんだ。


それなのに僕は、キスしたいという彼の最後のささやかな望みに気付けず、叶えてあげる事が出来なかった。


こんなに長く、こんなに近く、一緒に居たのに、彼の愛を、彼の想いを何も理解出来ていなかった。


彼の死の間際、僕をわざと遠ざけた事に気付いたのは、彼の死後、半年以上経ってからだ。


余命が短いのが僕の方だったら、彼に看取られるのが僕の方だったら・・・と考えた時、ようやく分かった。


僕の中にある後悔は、薄れるどころか増すばかり。


どうしてあの時、急いでしまったのか。せめてキスしてから出掛ければ良かった、と何度も自分を責めた。あの時、どんなに急いでも、別れの時からは逃れられなかったのに。

暁と星 43 ファーストフラッシュ

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「どうぞ。」


緊張を隠しながら、星良は旺治郎の前にティーカップを運んだ。


「こちらも、召し上がって下さい。」


旺治郎は、星良の前にケーキを置いた。


二人同時に椅子に腰を下ろすと、静かなティーパーティーが始まった。


普段のティータイムでは、星良と旺治郎はこうして一緒に紅茶とお菓子を楽しむ事はなかった。


「いただきます。」とカップを持ち上げた旺治郎を、星良は息を潜めて見守った。


こく、こくり。


カチャ。


旺治郎がカップをソーサーの上に置いた。

縺曖 200

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待ち合わせたのは、昨日、皇くんとバッタリ会った中央図書館の前だった。


丁度本も借りたかったし、皇くんは近くのショッピングモールで買い物したいからと言う事で、午後一時の待ち合わせとなった。


早く着き過ぎた僕は、図書館の入口前でしばらく待って居たけれど、突っ立って居るのも変だと感じ、図書館脇に移動し、そこにあるベンチに腰を下ろした。


眩しい。ここはよく陽が当たる。


他の利用者は皆、日陰のベンチに腰を下ろしている。


何故かと考えてすぐに解った。


なるほど・・・十分も経たない内に、頭のてっぺんと頬、手の甲が熱くなって来た。

乙女ですって 208 (R-18) 昏倒

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長編小説、ノベルシリーズ


大型連休が明けた月曜、5月11日。


隆人への想いを吹っ切ったつもりでいた菜津子は、新たな問題に直面していた。


それは、妊娠5か月・22週に入ったお腹が、徐々に目立ち始めて来た事だった。


今までは太っていた事もあり、周囲にも何とか気付かれずにやり過ごして来たが、ただそれだけでは説明が付けられない状態になっていた。


通勤用のパンツが穿けなくなり、買い替えた。


これから夏に向けて暑くなる季節。


上着を着こんで、膨らんだお腹を隠す事も難しくなっていた。


縺曖 199

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小説書いてる人~全員集合!!


溜め息を吐いた瞬間、机の上の教科書の上で、携帯電話がブブブと昆虫の羽音のような音を立てながら横に動き出した。


【着信 皇くん】


僕は動く携帯電話を慌てて掴むと、二つ折りのそれを両手でバッと開いた。


耳に当てて、

「は、はい。もしもし・・・」と詰まりそうになる声を絞り出した。

縺曖 198

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ごめんね、皇くん。僕は皇くんの大嫌いなBL小説に出て来るような事は絶対にしないから。


そうだよ、忘れてたけど、皇くんが好きな異性は勇田さんだ。


皇くんは、僕には友情、勇田さんには愛情を感じている。


友情と愛情の優先順位は、愛情だと僕も思う。


友情を優先して欲しい気持ちはあるけれど、でも、皇くんも愛情の方が大事だろうと思うから、そこで僕は一歩下がる。


勇田さんとの恋を応援する。親友だから。


応援と言っても、具体的に僕が出来る事は何もなさそうだけれど。


縺曖 197

Posted by 碧井 漪 on  


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伸長はその夜、再び姉の部屋で少女漫画を開いた。


以前読んだ時と違う話に思えて来る。何故だろう。ヒロインの女の子の切なさが手に取るように解る。


片想いしている男の子が皇くんだとして、ヒロインが僕・・・見た目も中身も全然違うけれど、好きという気持ちは同じ。


恋も友情と同じなんだ。

そうそうない 2 2014年8月30日のこと(2)

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彼は病気だった。末期の癌。本人も余命を知っていた。


都会から田舎に移住したのも、彼の療養の為だ。


どうせ死ぬなら病院で死にたくない。好きな事をしたまま、自然に亡くなりたい。


そう思った彼は、条件を満たす場所を一人で探し、一緒に暮らしていた僕と別れ、一人で移住するつもりだった。


それを僕が邪魔して、僕が勝手に彼に付いて来ただけ。


彼の宣告された余命が本当だったら、来年の桜も見れないと覚悟していた。


それが、桜が散るのも、紫陽花が咲くのも、自分で種を蒔いた向日葵畑を歩くのも、二度も出来た。

暁と星 42 18歳の誕生日

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「あー、それでなのね、星良ちゃん。まだ告白出来ないでいるのは。旺ちゃんの好きな子に遠慮してどうするの?選ぶのは旺ちゃんでしょ。好きなら好きってどんとぶつかりなさいよ。」


「そんな、無理です。私なんて・・・」


「そうね。私”なんて”と考える女の子、旺ちゃんには相応しくないわ。旺ちゃんには真摯に旺ちゃんだけを想い続けられる女の子と結ばれて欲しいもの。」


“想い続けられる女の子”───明日、励さんと婚約する私には、それも出来ない。


もう諦めよう。この恋という気持ちを手離そう。


そうすれば、旺治郎と離れる時、この苦しさが少しは和らぐだろうから。

自殺相談所 26 他人の子

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バスッ、バスン!


夜、21時過ぎ。渡辺の家の二階の部屋は、いつもより騒がしかった。


二組の客用の布団の上を走ったり転がったり、枕を襖に投げつけたりする柊のせいだった。


「柊、やめなさい!落ち着いて。」


普段と違う環境に戸惑っているのだろう。大きな声で叱っても柊が聞き入れない事を知っている梢は、オロオロしながら、何とか落ち着いて、早く眠ってと心の中で唱えていた。


その時、騒ぎを聞きつけた渡辺が「どうした?入ってもいいか?」と襖の向こうにやって来た。


「はい、どうぞ。すみません。」


梢はそう言って、立ち上がった。


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