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sazanamiの物語

恋愛小説を書いています。 創作表現上の理由から、18才未満の方は読まないで下さい。 恋愛小説R-18

百世不磨の心 29 (R-18・ムーンライトノベルズ44話)

Posted by 碧井 漪 on   0 

百世44
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    その普通ではないホテルの入口は、どこにも見当たらなかった。


    建物は確かにあるけれど、歩道に面した入口というのは、歩いてではなく車で入って行くといった感じの、「P IN OUT」と書かれた錆びたゲートしかなく、私は車じゃないのにここから歩いて入って行ってもいいのかよく解らなくて、ホテル囲い前の植木周辺を、時々通る歩行者に背を向けながら、駐車場ゲート付近でウロウロしていた。


    えーん、みゆきちゃーん、早く戻って来てぇぇ・・・!


    「何なら先に入ってて」とみゆきちゃんは言い残し、海岸駐車場からホテルの駐車場に移動すると車に向かった。


    私も行くと言ったけれど、「シート濡れるからヤダ。すぐ来るから待ってて」と連れて行って貰えなかった。


    でも、私は肩にタオルを掛けた状態・・・一人でズカズカ入って行くのもここに立って居るのも、どっちにしても恥ずかしかった。


    遅いな、みゆきちゃん。


    ま、まさか・・・!


    「まったくー、琥珀ってばドジだから、一緒に居ると疲れる。それに車も汚されそうだし。ちょっと反省して貰う為にこのまま一人、車で帰っちゃえ。琥珀は自力で帰れるような事も考えてたみたいだし、何とかするでしょ」


    とか考えて帰っちゃった?


    えーん、やだ、やだよう!


    こんな所にズブ濡れで一人置いて行かれたら、帰り電車って、駅がどっちにあるのかさえ分からないのに・・・


    スニーカーの中も濡れて温くて心地良くない感覚で、歩く度グチャッグチャッと音を立てるのもみっともない。


    長靴を履いて池で遊んだ時みたいな感じ・・・



    乙女ですって 117 (R-18) 恋の温度

    Posted by 碧井 漪 on   0 

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      火曜日の朝、由佳の実家のリビングで、ピピッピピッピピッ、体温計の電子音が鳴り響いた。


      39.2℃。


      嘘っぽいけど、全身熱いからそうなのかも・・・頭ガンガン痛いし。


      「ゲホッ、ゴホ・・・ケホッ。ぁー・・・」


      喉が詰まってる感じで、声が出せない。


      頭の中は朦朧としている。


      こんな事で会社を休みたくないとは思ったけど、全身ダルくて声も出せない私が、這って会社に辿り着けたとしても戦力外だというのは明らかだから出社を諦めようと決めた。


      仕方ない・・・余りまくっている有休消化しますか。月末の忙しい時に申し訳ないけどさ。





      乙女ですって 116 (R-18) 夢の夜

      Posted by 碧井 漪 on   0 

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        ガチャ、ガチャガチャッ!


        もー、何よぉ、このバスのドア、何で鎖掛けて開けられなくしてるの?


        由佳はクラブ裏の袋小路に停められたままのバスの前に来ていた。


        クラブの店内に入って行っても、うるさい上に仕事中の真琴さんとはゆっくり話が出来ないし、それに理由は分からないけれど実家から締め出す位だから完全無視される可能性が高い。


        ピューピュー吹き荒(すさ)ぶ風に紛れる溜め息を一つ吐いた由佳は、バスの陰にしゃがみ込んだ。


        これで少しは風を避(よ)けられる。


        真琴さんの休憩まだかなぁ?


        出て来なかったらどうしよう・・・と考え始めたのは、由佳がしゃがみ込んで一五分程経った頃だった。


        じっとしてたら足が痺れて来た。


        一度立って・・・またしゃがんで、いつまでここにいるつもり?


        乙女ですって 115 (R-18) 彼の人生の秘密

        Posted by 碧井 漪 on   0 

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          定時より遅れて会社を出た由佳は、急いで真琴の家に向かっていた。


          タクシー使うと「勿体ない」って真琴さんに怒られるから、バスを降りたら走らなくちゃ!


          はっはっ、はっはっ、えーん、スニーカーが欲しーい。ヒール辛いよー、靴擦れしそう。


          あと五分で真琴さんが家を出てしまう時刻。


          家の前で見送る位しか出来ないけど、でもそれでもいいわ。一目だけでも会いたい。


          ダッシュよ!


          カッコッカッコッ・・・脱げそうで脱げない黒いパンプスのヒールを鳴らしながら、由佳は全速力で真琴の家まで走った。


          乙女ですって 114 (R-18) 永久(とこしえ)

          Posted by 碧井 漪 on   0 

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            月末は社内のどの部署も、業務終了時刻が遅くなりがちだ。


            総務の今夜の当番は俺ではなかったが、九子先輩が代わって欲しいというので仕方なく交代した。


            私服姿になった溪ちゃんは終業時刻を過ぎて、総務の前に現れた。


            珍しい・・・冷やかされるから、残業のない日は広報部まで俺が行くのだけれど。


            「溪ちゃん。俺を迎えに来てくれたの?」と、溪ちゃんに向かって両手を広げて突進しそうだったのは九子先輩。


            もう俺の恋人なんだから、気安く”溪ちゃん”って呼ばないでと言いたいけど、先輩だから我慢してる。


            しかし抱き付くのは別と、俺は先輩のコートの襟首を掴んで、先輩が溪ちゃんに向かって行くのを阻止した。


            「ちぇー、加集のくせに。溪ちゃん、今度俺と二人で飲みに行こうね!」と手を振った九子は反対の手に鍵を持っていて、業務で別の階に向かうべく、エレベーターへと早足で向かった。




            乙女ですって 113 (R-18) 気になること

            Posted by 碧井 漪 on   0 

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              加集と溪は食堂を後にし、一階と二階の階段踊り場で、それぞれの課に戻る前、いつもの通り話していた。


              「それじゃ、あとで。」


              「あ、あの、加集さん。」


              「何?」


              「菜津子さんの事ですけれど・・・様子がおかしかったから・・・」


              「うん。彼と何かあったのかもね。でも、俺達に出来る事は何もないと思う。」


              「そう、ですけど・・・」


              「菜津子さんに何かあったんですか?と直接訊いても答えてくれなそうだし、男と女の関係ってどっちが悪いとかじゃないと思うから。」


              「そう・・・ですね。では、私はそろそろ戻ります。」「うん。帰り、メールするね。」「はい。」


              溪は、加集が菜津子に対してそんな風に言うとは思っていなかった。


              他ならぬ菜津子さんは加集さんの好きだった人なのに、気にならなくなってしまったというのはどこか寂しい。


              私のせい?今は私だけを想ってくれている加集さん。


              でもどうしてか、それは嬉しくなかった。


              何故かしら?


              加集さんの一番は私になったのに・・・でも、わからない。


              菜津子さんの事を気にかけなくなってしまった加集さんの事を、これでいいとは思いたくない気持ちがある。


              それはどうしてなのか、解らないけれど・・・。




              百世不磨の心 28 (R-18・ムーンライトノベルズ43話) タイドプール

              Posted by 碧井 漪 on   0 

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                「うわーいっ!海だー!・・・って、ここさー、みゆきちゃん。」


                「何?琥珀。」


                「海って、ここなの?」


                「海でしょ?ほら、波しぶき。」


                ザッバアァーン!ザザーン!


                うん、確かに海だね。でも・・・


                乙女ですって 112 (R-18) 憮然

                Posted by 碧井 漪 on   0 

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                  冷静になろうと努めながら、まだ醒め遣らない頭で朝までずっと考えた。


                  あの日、志歩理さんと別れたホテル、そしてこの指輪。


                  昨夜菜津子とも同じ場所で別れて、そして俺の手元に残された指輪。


                  ははっ、こんなに何度も戻って来るなんて縁起でもない代物、呪われているのかもしれないな。


                  捨ててしまおうか。


                  それとも舞に渡したら別れる事になるのかな。


                  しゅわっとシたい 3 (R-18)

                  Posted by 碧井 漪 on   0 

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                    抱きかかえているいおをふかふかラグの上に下ろすと、俺はリビングの灯かりとエアコンを点け、風向きを変えた。


                    「寒くない?」と訊くと、「背中が冷たかったけど、今は平気。」と茶巾縛り状態のままのいおのくぐもった声が聞こえた。


                    「そのうち、あったかくなるよ。」


                    そう言って俺は、ラグの上に仰向けにした いおの、揃った両脚を膝立ちで跨いだ姿勢で剥き出しの胸に唇を落とした。


                    するとすぐ、いおはビクンと反応した。







                    乙女ですって 111 (R-18) 猶予う

                    Posted by 碧井 漪 on   0 

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                      これで、さよなら、なんて・・・な。


                      君が、妊娠した元妻を見捨てろという酷い女だったら、或いは、俺に泣いて縋り付いて別れたくないという聞き分けの悪い女だったら、

                      いいや・・・そんな事・・・

                      そうじゃなくて、

                      君が俺の運命の相手だったら、

                      どんな困難が訪れても、別れなくて済んだのかな。


                      子どもは望めなくたって、八十まで生きられるとしたら後三十七年、お互いの事が嫌になる位まで君と一緒に過ごしてみたかった。

                      乙女ですって 110 (R-18) 煙る愛

                      Posted by 碧井 漪 on   0 

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                        菜津子は今日まで隆人に向かって、自ら”私と別れて下さい”などという言葉を放つ日が来るとは、夢に思った事もなかった。


                        それを言った菜津子自身も、まだどこか信じられないまま、虚ろになってしまいそうな気持ちをしっかりと保っていようと、強くこぶしを握り締め、気を張り直した。


                        「え・・・?何、どうしたの、菜津子。何を誤解してるのか知らないけど、あの・・・」


                        「誤解ではありません。事実です。舞さんのお腹の中には隆人さんの子が宿っています。あなたは父親になるのです。」


                        「違う、俺の子じゃない!生まれてからDNA鑑定して、もしも・・・俺の子だったとしても、それは舞に無理矢理おか・・・」


                        「そのような事は仰(おっしゃ)らないで下さい。お腹の中の赤ちゃんが可哀相です。」



                        乙女ですって 109 (R-18) はらむ

                        Posted by 碧井 漪 on   2 

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                          「正直に話して下さい。」


                          「それは・・・一度、だけ・・・でも、俺からしたんじゃなくて、あの日、舞と鉢合わせた日、酔っぱらって眠った後、ベッドに菜津子に使った拘束具で縛られて、舞に無理矢理強要されたんだ・・・でも、それだけだ。一度だけ。」


                          「一度でも、なさったのですね?」


                          「あ・・・うん、でも、ほんとに一度・・・」








                          あの夜は・・・


                          乙女ですって 108 (R-18) 長い人生の中の短いしあわせが終わる時

                          Posted by 碧井 漪 on   2 

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                            翌日、1月25日の日曜日。


                            早起きした菜津子は、泣き腫らした目には眩しく感じる朝陽をじっと見つめて考えていた。


                            まだ・・・少しだけ信じられないという想いが残ります。


                            十二年間好きだった人とお付き合い出来る事になって一月半、毎日が夢のようでした。


                            あなただけを選べなかった私に、バチが当たったのだと思います。


                            すぐに何もかもを捨てられなかったから、

                            新しい生活に飛び込む勇気が持てなかったから、

                            しあわせは私の前からいなくなってしまいました。


                            二度と戻っては来ません。


                            私が生きて居る限り。いいえ、死んでも戻れません。


                            昨日、今日、明日、大事な日はいつなのか、私には判らなくなりました。


                            事実を知った昨日、別れが決まる今日、まだ一つも作られていない明日、

                            わかっているのは、一分一秒が刻々と過ぎて行く中で、隆人さんと会う時間、そして別れの瞬間が迫っているという事です。


                            舞さんが隆人さんのお子さんを身籠られた今、私に出来る事は一つしかありません。


                            隆人さんの負担にならずにお別れするという事。


                            隆人さんが別れを切り出されたら、黙って受け入れるだけの簡単な事です。


                            心情は簡単ではありませんけれども、私が彼の隣に居たいと泣いて縋っても、それはもう無理な事なのですから、それは出来ません。


                            成り行きという運命の通り進んで来ただけの人生です。


                            それ程までに悲しむ事ではありません。


                            一番大好きな人とお別れする事になっても、命は続いて行きます。


                            胸が痛いと思うだけで、実際に傷は付いていませんし、血も流れていませんし、心機能は正常です。


                            防衛本能が体の痛みのように感じさせて、精神のショックを和らげようとしているだけです。


                            何も感じないように、彼に会っている間は終始、夢の中に居ると思っていれば平静でいられるでしょう。


                            決して泣いたり取り乱したりしてはいけません。


                            菜津子は覚悟を決めた。


                            何があっても今日、隆人さんとお別れします。





                            百世不磨の心 27 (R-18・ムーンライトノベルズ42話)

                            Posted by 碧井 漪 on   0 

                            百世42
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                              「財布忘れた!持って来るから待ってて。」とみゆきちゃんは車のエンジンをかけ、私を助手席に乗せると、外からドアをバタンと閉めた。


                              そして家の方に走って行く後姿は、男の子・・・足、速い。あ、そっか、走り幅跳びをしていたんだっけ。


                              ドキッ、ちょっとカッコいい。脚が長くて細くて、その上、機敏なところに憧れる。


                              そういえば、金ちゃんの走る姿をまだ見た事がない。


                              どんなかな?もっとドキドキするかもしれない。


                              いよいよ今日会える。


                              乙女ですって 107 (R-18) 夕陽と共に沈んでいく人生の設計図

                              Posted by 碧井 漪 on   0 

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                                「綱島菜津子さーん、検査室へどうぞー。」


                                舞の診察が終わり、菜津子が呼ばれたが、菜津子は既に病院を後にしていた。


                                「綱島ナツコ?・・・まさか、ね。ナツコなんてよくある名前だし、隆ちゃんの付き合ってる女が綱島さん・・・って事は絶対にないわよね。どの道、ナツコという女とは別れる運命なんだから、隆ちゃんは。」


                                診察室を出た舞は、独り言をブツブツ言いながら病院の廊下を会計に向かって歩いた。


                                予定外なのは前回受診した病院と予定日が変わらなかった事ね。最終月経日を偽っても駄目だった。


                                困るわ・・・何とかして今日算定されてしまった予定日より後の日付けになってから産まれてくれないと、前夫の子になってしまう。


                                SとS 15 (BL) 会いたくて動けなくなる

                                Posted by 碧井 漪 on   0 

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                                  心を焦がした八月、熱はとうに冷めたと思っている十月。


                                  九月に瞬太朗は18歳になっていた。


                                  セイに拒絶され、会えなくなって以来二か月、瞬太朗は何事も無く淡々と過ごしている、と周囲と自分自身に思わせようとしていた。









                                  乙女ですって 106 (R-18) 生まれた時から決まっていた

                                  Posted by 碧井 漪 on   2 

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                                    今月の生理予定日を三週間以上過ぎた菜津子は、一月二十四日土曜日、近くの総合病院の産婦人科を受診した。


                                    総合病院の産婦人科の受付で問診票とがん検診の申し込みをした菜津子は、診察室近くの広く長い通路にある待ち合いの長椅子に座って、文庫本のページを捲り始めた。


                                    「あら、綱島さん?こんにちはー、お久し振りです!こんな所で会うなんて奇遇ですね。」


                                    明るい声に顔を上げると、菜津子の前には、ニコニコ顔の伏見舞が立っていた。


                                    今も隆人のマンションで暮らしている舞と会うのは、十一年ぶりに再会した一月五日以来の事だった。


                                    「こんにちは。」


                                    菜津子は浮かせたお尻を椅子の端に寄せ、長椅子の空いていたスペースを更に広げて、大き目な手提げバッグを抱えたまま立ち尽くしている舞を見上げた。


                                    「あ、すいません。隣、いいですか?」


                                    「はい。」


                                    舞は菜津子の隣に腰を下ろした。



                                    風邪みたいに移して 2

                                    Posted by 碧井 漪 on   0 

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                                      クビ・・・って、本当に私がこのお店を辞めさせられちゃうの?


                                      私はてっちゃんの顔を見た。


                                      「吉夜、それは困る。きみちゃんが居なかったら昼間の接客が」「今は殆んど常連しか来ないから、哲が表に顔出しても平気だよ。俺だって夜だけだけど、手伝える日は手伝ってるだろ?」


                                      そう、私が雇われている唯一で最大の理由。


                                      それはてっちゃんの見た目が、若い女性客に気持ち悪がられた事があったから。


                                      てっちゃんは常連以外のお客さんが来ると、裏に引っ込んだまま出て来ない。


                                      その間の接客やレジは全部私が引き受けている。


                                      てっちゃんの良さも解らない人なんて、てっちゃんの淹れたコーヒーを飲む資格はないから帰れ!って言いたくなるけど、そんな事したら本当にクビになってしまう。


                                      風邪みたいに移して 1 【「乙女ですって(R-18)」 派生・公子編】

                                      Posted by 碧井 漪 on   0 

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                                        空気と同じ。


                                        あなたが居ても居なくても。


                                        でもね、空気と同じだったら、

                                        あなたが居なくなったら死んじゃうの。


                                        息が苦しくて、欲しくなって、

                                        恋とか愛とかそれと同じか知らないけれど、

                                        私にはあなたが必要だって、それだけは解るの。


                                        私はあなたに必要とされる人間になりたい。


                                        毎日毎日、精一杯頑張るから、

                                        要らないって言わないで。



                                        百世不磨の心 26 (R-18 ・ムーンライトノベルズ41話)

                                        Posted by 碧井 漪 on   0 

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                                          7月になった。


                                          丸三か月以上、金ちゃんと会っていない。


                                          電話とメールはしてる。寂しくなったら卒業アルバムの銀矢先生の写真を見て誤魔化してるって事をチラッと言ったら、先週、メールにその日の金ちゃんの自撮(じど)り写真を添付して送ってくれた、奇跡的!

                                          言ってみるもんだなぁー、とホクホクして見た金ちゃんの写真は、大真面目な顔。


                                          どっちかって言うと、怒って見える顔。


                                          『こら!琥珀!』って感じの・・・

                                          贅沢かもしれないけど、もーちょっと笑った顔が良かったなぁ。


                                          次に会ったら、絶対金ちゃんの笑った顔の写真を撮る!って決めた。


                                          乙女ですって 105 (R-18) 出来ない理由

                                          Posted by 碧井 漪 on   0 

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                                            「指輪を買ってから正式に申し込もうと思ってたけど・・・指輪を買うのは君の実家のお店だから、事前に話しておいた方がいいかなとも思って。そうだな、今月末か遅くても二月中には籍を入れよう。結婚式は式場が見つかり次第すぐに。会社も辞めて良いし、俺の奥さんとして毎日一緒に暮らして欲しい。」


                                            「隆人さんと、一緒に・・・暮らす・・・」


                                            「そう。安藤菜津子・・・ますます美味しそうな名前になってしまうけれど、いいよね?」


                                            「あっ、あの・・・私・・・何と申し上げてよいのか・・・」


                                            「いつにしようか、引越し。あーその前に、明日菜津子の実家にご挨拶に行かないとなぁ・・・緊張する。」


                                            「私・・・このままでは、いけませんか?指輪はもう隆人さんから頂いたものがありますから要りません。戸籍もこのままで、隆人さんのお家にも毎日、いえ、今は行けませんけれど、そのうちお泊りにも行きます。それと・・・会社は辞めたくありません・・・」


                                            「会社は辞めたくないって・・・籍もこのままって、どういう事?」

                                            乙女ですって 104 (R-18) 所有者登記

                                            Posted by 碧井 漪 on   2 

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                                              ただ素直に『はい』と返して欲しい時に、それだけは首を縦に振ってくれない菜津子。


                                              可愛過ぎて独占したくて、早く俺だけのものにしたいという焦りから結婚の話をすると、俺を愛してくれている筈の菜津子はどうしてか消極的になり、結婚話が一向に進まなくなる。


                                              本当は俺と結婚したくない=俺の事を好きではない


                                              そうなの?


                                              いや、そんな事ないと思う・・・というか思いたいから"菜津子は絶対に俺が好き"という思い込みで、些細な事で湧き出て来る不安をなぎ払っている。


                                              今以(いまもっ)て自信が持てないから、菜津子に”欲しい”と言わせたいんだろう。


                                              俺を”欲しい”と。


                                              さっきはあんなに欲しがったのに、躰の熱(ほて)りが鎮まると、途端におとなしくなってしまう菜津子。


                                              本当は俺の事をどう思っているのか、この先どうしたいのか、

                                              心の欲を顕わにしない菜津子の事を躰の欲で惹き付けようだなんて、浅はかかもしれない考えだけれど他に思い付かない。


                                              乙女ですって 103 (R-18) ゼンブホシイ

                                              Posted by 碧井 漪 on   0 

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                                                一月九日金曜日。


                                                『今夜、一緒に会社を出よう。菜津子は先に帰らずに総務で俺を待ってて』


                                                昼にメールを送っておいた。


                                                残業回避に成功し、課を出る時にメールを送り、落ち合うのは会社の裏。


                                                週末まで長かった。


                                                大通りでタクシーを拾って乗り込むと、お互いにマスクでの変装を解いた。


                                                ゆうべ電話で予約しておいたホテルの部屋は、菜津子に初めて襲われたのと同じ部屋にした。


                                                「どう?懐かしいでしょ。」


                                                「はい。あの日は、色々と申し訳ございませんでした。」


                                                そうだね、あの日は、今日をこうして過ごしているなんてお互い想像もつかなかったよね。


                                                乙女ですって 102 (R-18) 愛しい人のほほえみ

                                                Posted by 碧井 漪 on   0 

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                                                  水曜日の昼休み、由佳は隆人と他の営業部のメンバーと昨日に引き続き一緒だった。


                                                  今日は定食なんだ、安藤部長。


                                                  昨日、火曜日は安藤部長は定食ではなくお弁当だった。


                                                  まさか、綱島さんが作ったのを持って来たの?とびっくりしたけれど、二人の仲はまだ社内に公表されていないから、詮索されそうな物を持って来るなんてどうしたんだろう?・・・と由佳が物言いたげな顔でお弁当を覗き込んだ事に気が付いた隆人は、

                                                  「今、親戚がウチに泊まりに来てて、その子どものついでに作ったからと持たされたんだ。」と言い訳しているかのように自ら話し出した。


                                                  「子どもですか?」ん?何故?綱島さんが作ったのではないの?変ね。


                                                  乙女ですって 101 (R-18) 元夫婦

                                                  Posted by 碧井 漪 on   0 

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                                                    新年早々最悪な夜、そして迎えた俺の人生史上ワースト3に入るであろう朝だ・・・出来るなら、ゆうべの事は悪夢であって欲しい。


                                                    それが駄目なら、ゆうべに戻ってやり直したい。


                                                    あんな事、絶対に菜津子には言えない・・・俺はこの先どうしたらいいんだ。


                                                    頭を抱えながら俺は、この一夜で最悪な場所と化した自宅マンションの玄関から、愛しい人に会える会社へ一刻も早く飛び出そうとしていた。


                                                    靴を履いた俺の背後から悪魔、いや大魔王の足音が近付いて来る。


                                                    「それじゃ、ゆうべの結果が判るまで、最低三週間は追い出さないでね。はい、お弁当。」


                                                    「弁当?」隆人が恐る恐る振り返ると、舞の手に突き出されていた小さな紙袋が丁度鼻先にあった。





                                                    積み重なって解けるとき 1 【100話からの恋物語 「乙女ですって(R-18)」溪編】

                                                    Posted by 碧井 漪 on   2 

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                                                      溪ちゃんの部屋でミルクココアを飲み終えた俺は、22時過ぎ、

                                                      「良かったら俺、このまま泊まって行こうか?」

                                                      と言った後で、快くない空気が、一瞬で煙みたいにモクモクと立ち込めた・・・ように感じた。


                                                      見開いた目を俺に向けた彼女の表情が険しかったから、そう感じられた。


                                                      チクタクチクタク、時計の秒針の音がまるで俺を刺して来るかのように責めて来る。


                                                      ああ、俺、やっちゃった。彼女に「不審」がられているかも、いや、「不信」を買っている・・・。


                                                      百世不磨の心 25 (R-18・ムーンライトノベルズ40話)

                                                      Posted by 碧井 漪 on   0 

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                                                        6月が半分過ぎた頃、金ちゃんが電話で「7月になったら銀矢の所に戻るから。」と告げられた私は嬉しくて、同時にドキドキもした。


                                                        つ・い・に、キス、そしてその後まで一気に進んでしまいなさいってカンジ!キャー!


                                                        周りの女子はみんな彼氏と夏休みの旅行の計画で忙しい。


                                                        彼氏の居ない子と最近同じ感じになって来ていた私も、ゆうべの電話一本で、再び彼氏持ち女子大生の仲間入りなのよぉっ!

                                                        乙女ですって 100 (R-18) 結婚相手

                                                        Posted by 碧井 漪 on   0 

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                                                          「たか・・・!」


                                                          「あら、女性・・・誰?こんばんは。」


                                                          ダイニングキッチンに立ち尽くす隆人の背中の向こうに見えたのは、凶悪な犯人の姿ではなく、二、三十代の女性の姿だった。


                                                          しかし右手には包丁が握られていて、その刃先が隆人に向いている。


                                                          菜津子は女性につかつかと歩み寄り、包丁の刃先を指で掴むと下に向けた。


                                                          「あなたこそどなたで・・・す・・・」毅然と放った菜津子は、やや面変わりしたと感じるものの、見憶えのあったその女性の顔と名前を頭の中で一致させた途端、言葉を切った。


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