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sazanamiの物語

恋愛小説を書いています。 創作表現上の理由から、18才未満の方は読まないで下さい。 恋愛小説R-18

百世不磨の心 1 (R-18) ムーンライトノベルズ掲載 1~4話

Posted by 碧井 漪 on   0 

ムーンライトノベルズ 「百世不磨の心」

毎週水曜日夜更新

百世不磨1


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★登場人物★


萩原 琥珀(はぎわら こはく) 18歳6か月 四月から大学一年生


青木 銀矢(あおき ぎんや) 26歳 中学校教諭



15歳の琥珀は第一志望の高校受験に失敗し、滑り止めの私立女子高に行くのを悲観し、

中学校の卒業間近に屋上のガラスを割って侵入し、

自殺しようと屋上の手摺りを乗り越えた。


駆け付けた先生方の説得なんて聞いていなかった琥珀。

いよいよ一歩踏み出したらこんな惨めな姿を晒しながらこの世界で生きて居なくてもいい・・・

というところへ、

話した事もなかった気がする副担任の青木銀矢先生が近付いて来た。






百世不磨の心 2 (R-18・ムーンライトノベルズ5~8話)

Posted by 碧井 漪 on   0 

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百世不磨の心 ムーンライトノベルズで連載中


百世不磨2


先生は大人なんだから、うん、こういう経験ある・・・よね。


確か先生はあの時23歳位だったから、三年経った今は26歳位で、

彼女が居るんだな。


そっか、そっかぁぁ・・・三年前に私に言った事を本気にしていたのは私だけだったんだ。


先生は冗談というか、本気で言ったのではなくて、

ただ副担任をしているクラスの生徒が飛び降り自殺しちゃうのを止める為に言っただけの事だよね。


うん、私だって別に本気じゃなかったけれど。


そうそう、びっくりしただけ。


明らかに学校の男の先生が女生徒に言う言葉じゃなかった。


セクハラっていうんだよね、こういうのって。


一歩間違えたら危険な発言。教師生命が終わっちゃう発言・・・


それなのに、私にそう言った理由だけ知りたい。


先生からセックスを教えて貰うのは無理だって分かったけれど、

私にあの時屋上で言った理由に関しては訊いてもいいよね。


「石鹸あったー?」


「は、はーい、ありましたぁ。お借りします。」


私はとにかく落ち着こうと、

汗をかいた顔を石鹸で洗った。


タオルでゴシゴシふきふき。


はーっ、さっぱり。


メイク落ちちゃったけど。


まぁいっか。


青木先生はこのぶっさいくな顔も重々知っているし、中学校の卒業アルバムの個人写真だって写りが最悪だったし。


先生には彼女が居るんだから、私の事なんて絶対女として見てくれないカンジ?


もーいいや。


処女のまま死にますって先生に言って、屋上で言った先生の言葉の真意を聞いてから帰ろう。


「ごはんだぞー。」


「はーい。」


あれ?


先生、今ごはんとか言わなかった?


お茶煎れるって言ってたのにごはん?


ぐーっ。


確かに労働してお腹は空いたけど。


私はキッチンへ向かった。


さっきまで確かゴミが載っかっていて埃被ってたカウンターテーブルがピッカピカになっていて、そこにはプラスチックの下敷きみたいなストライプ柄のマットの上に、

刻み海苔のかかったパスタとわかめスープがあった。


そして先生の運んで来たマグカップからは、挽きたてのコーヒーの香りがした。


「コーヒー、ですか?」


「コーヒー嫌い?」


「いっ、いいえ。それより、このごはんは一体どうしたんですか?」


「ああ、良かったら食べてって。頑張ってくれたから、お礼といえる程のものではないけれど。」


「先生が作ったんですか?すごーい、お料理も出来るんですね。」


「まぁ・・・ゆでて炒めただけだから。」


琥珀は席に着いた。


パスタの具は豚バラ肉と干し椎茸とホタテの貝柱?


そしてわかめスープにはゴマと春雨が入っていた。


先生はマグカップを二つカウンターの上に置いて私の隣の席に腰掛けた。


湯気の上がるカップの中身はやっぱり黒々とした色と香りからコーヒーだと判った。


「いただきます。」と手を合わせた先生に倣(なら)って私も、

「いただきます・・・」と手を合わせて、添えられていた割り箸を手にした。


パキッ、パキッ、

私も先生も割り箸を割って、

その和風なパスタに箸を付けた。


つるっ、カミカミ、ごっくん。


「味はどうだ?」


「お、美味しいです・・・」


見た目は茶色っぽくて派手じゃないけど、味は意外にも、

名店のパスタって言ってもいい位、美味しい。


「あり合わせだけど、だしが効いてていいだろ。」


「はい!」


はっ、何だか先生のペース。


あの質問、いつしよう?


でも今、食事時にする話じゃないよね。


ま、いいや、食べてからで。


「萩原、いい顔になったな。」


「えっ?」


「顔洗ったらすっきりしたなと思って。さっきより美人になってる。」


「び、美人?またまた。お世辞が上手ですね。昔も今も。」


メイク落としたからブス・・・気を遣われる程、酷いのかな・・・落ち込む。


「昔?お世辞ってどんな事言った?」


「いえ、別に。それより、先生の彼女ってどんな人ですか?」


「彼女?居ない・・・あ、居る、かな?」


「どっちなんですか!」


「萩原は?恋人居るのか?」


「居る訳ないですよ。こんなブスに・・・」


「そうか?可愛いと思うけど。」


「そうは言ったって、先生は実際に私みたいなのと付き合ったりしないでしょう?」


「んー、生徒とはな、駄目だろ。」


「生徒じゃなかったら、処女とか貰ったりするんですか?」


「は?今、何を貰うって言った?」


「さっき石鹸の入っていた引き出しに、コン・・・アレを見つけて。」


「アレ?あれって何だ?」


「アレは、その、ゴムですよ・・・」


「ゴム?どこかのパッキンが入ってたか?どこのだ?」


「とぼけなくても、誰にも言いませんから。先生だって人間だし、男だし、そういう事をするのは普通ですよね。ただ、色々な生徒にそういう事を言って誘うのはどうかと思います・・・けど。」


「生徒にそういう事を言うって何の事だ?ちゃんと解るように最初から言ってくれ。」


「だからっ!私の自殺を止めた時のような事を、色んな子に言うのは止めて下さいって、教師生命に関わっちゃうかもしれないからって意味です!」


「自殺・・・?誰が?萩原が?」


「先生、忘れたんですか?屋上で、私が飛び降りようとしていた時、”セックスしないで死ぬのは勿体ない”から”18になっても”私が”処女だったらセックスを教えてやる”って、約束した事・・・その場しのぎの嘘だったんですか?」


「はて?屋上で処女とセックス?そんな約束は・・・えーと・・・したのか?」


「しました。先生に”しっかり生きろ”って言われて、自殺やめて生きて来たのに、先生の嘘つき!先生こそ、しっかり生きて下さい!」


「は?しっかり生きろ?生きろ・・・んー?・・・ああ、あの時の、自殺するって死ななかった、こ、こくはく?じゃなかった、何だっけ、磨くと光るヤツ。」


磨くと光るコクハク?それってもしや。


「コクハクって、琥珀・・・ですか?」


「そうそう、それそれ。コハク。あの時のかー。ホント生きてて良かったな。」


「良くないです。全然。18にもなって、キスもまだで一生処女かもしれなくて、このまま一生処女でも、先生は責任取ってくれないって言うし・・・」


「責任って何の?」


「死ななかったらキモチいいコト教えてくれるって言ったのに!他の子にはしても、私にはセックス教えてくれないっていう事ですよね?」


「あー、わかったわかった。そんなに知りたいなら、何とか教えるから、取りあえずそれ食べてからな。食べ物を粗末にしたらいけないぞ。」


興奮する私を宥めた先生は、食事を終えた私を、奥の部屋に呼んだ。


こくり・・・

私はその部屋に入って、先生に気付かれないように唾を呑み込んだ。


どっきん、どっきん・・・いよいよ、ロスト・バージンってやつね。


だけど、ああ・・・歯磨きしてないし、シャワーだって浴びてない。


それに、アレだって、洗面台の横の引き出しに入ったままですよ、先生。


「そこ座って待ってて。」と先生は私をベッドの上に座らせた。


多分ここか?と先生は呟きながら、その後、あった!と何かを見つけたように呟いて、

電源を入れたテレビパソコンの中に、ビーッとDVDっぽい物を差し込んだ。


そして部屋のカーテンを閉めて真っ暗にした。


「先生、もしかして・・・映画鑑賞ですか?」


まさか、この期(ご)に及んでまで、こんな事でお茶を濁すつもりなんだ、と琥珀は怒って立ち上がろうとしたその時、

画面から流れて来たのは、裸の男女が卑猥にもつれ合っているシーンと、

「あっ、あっ、い・・・ぁあんっ!」と甲高く喘ぐ女性の声だった。


「処女の琥珀は見た事ないんだろ?アダルトビデオ。これで勉強しなさい。」


えっ・・・?


アダルトビデオ・・・?


勉強って、先生!


教えるって・・・私の処女を貰うんじゃなくて、元教え子にアダルトビデオを見せるだけの事ですか?


百世不磨の心 3  (R-18・ムーンライトノベルズ9~12話)

Posted by 碧井 漪 on   0 

百世不磨3
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    「うわー、綺麗になったなぁ。さすが兄貴。」

    このマンションに住むもう一人の住人が帰って来た。

    帰宅してすぐに手洗いうがいが、昔からの青木家の決まりで習慣になっている。

    その男は、洗面台に向かった。

    手を洗っていると、バスルームの扉が開き、

    湯気と共に出て来た人物を振り返りながら、

    「兄貴、風呂入ってたの?ありがと、すっかり綺麗になっちゃって。やっぱ俺、兄貴がいないとダメだって思うよ・・・って、えー?!」

    「先生、タオル取って下さい。」

    琥珀は、バスタオルの入っている棚を塞いでいる、もう一人の住人の男に向かってそう言った。


    百世不磨の心 4 (R-18・ムーンライトノベルズ13~16話)

    Posted by 碧井 漪 on   0 

    百世不磨の心4
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      お腹いっぱいな春の日の昼下がりのレジャーシートの上、

      穏やかで、周りの空気の温度より、ほんの少し冷たく感じる風が隠す髪の無くなった私の頬を時々撫でて行く。

      雲間から覗いて地上に届いた陽射しの当たる部分と、隣に寝転んで目を閉じている金ちゃんと繋いだ手のひらだけがあったかい。

      嫌いになれる部分が見つからない。

      一緒に過ごす時間が長くなる程、好きになって行く。

      やさしくてあったかくて大人で・・・えっちで。

      彼の心の中を覗いたら、本当の本当は好きな人がいるかもしれない、その真実を知ってしまったら、きっと私は慌てふためき泣いてしまうと思う。

      私の事を”彼女”と言ってはくれたけれど、それは口先の言葉で、

      もしかすると金ちゃんの心の中には私よりも好きな女の人が居るのかもしれない、という考えに支配されると、苦しくて悔しくなった。

      初恋はいつ頃だった?

      前の彼女とはいつから付き合って、いつ別れたの?

      彼女にした女は、私で何人目?

      私の事、好き?

      どれも訊きたい事だけど、訊けない事。

      初恋は結構前かな?

      それでもって、誰かと付き合った時期は不明だけど、洗面台の引き出しにそれ程古くもなく、しかも開封済のあの箱があったんだから、何回かセックスもしてる筈。

      いいな・・・セックスって、どんなカンジなんだろう。

      そうよ、三年前に金ちゃんが気持ちいいって言ってたんだから、絶対に気持ちイイのよ。

      ごくっ・・・アレ、を使って?

      でも、他の誰かと使った残りのじゃやだな・・・

      『先生と生徒の関係じゃないから、そろそろお前の処女を貰うぞ?』

      とかとかとか・・・なーんて、今日とか、もしかして?

      どっくん!

      昨日より、もっといっぱい気持ち良くさせられちゃう?

      ああ・・・っ・・・!

      思わず、金ちゃんの手をきゅうっと握りしめちゃった。

      馬鹿馬鹿、琥珀。

      こうしてえっちな考えが、手のひらから金ちゃんに漏れ伝わっちゃったらどうしよう?

      『そんなにしたかったのか?それなら今日は銀矢がいないから帰ってゆっくり・・・』

      ゆっくり?何、何するの?

      続きを知りたいけれど知識が無くて想像出来なくなってしまった私は、火照った顔のまま、隣で目を閉じている金ちゃんの顔をそっと見た。

      百世不磨の心 5 (R-18・ムーンライトノベルズ17~20話)

      Posted by 碧井 漪 on   0 

      今回の更新に含まれている20話はムーンライトノベルズ1/14(水)20時更新と同じ内容になります。

      次回21話よりブログで一話ずつ先に更新(ブログで書き下ろし)後、ムーンライトノベルズへ転載(水曜20時)します。

      千里-1

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        ふっふっふっ・・・初めての公開よ。

        街中で、この髪型を晒すのは、かなりの勇気が要るわ。

        今朝よりも更に短くなってしまった、母の子どもの頃でさえ絶滅していた刈り上げおかっぱ頭。

        だけどね、もう一つ、アレが欲しいの。

        これはいけないコトだって分かってる。

        でもね、二軒分なの、だから許して!

        すでに一つ買った物は、もうバッグにしまい込んだ。

        本日のタイムセール税込100円の白玉子1パック10個入、御一人様一つ限り!

        二個目を通常価格で買えばいいって?

        それが不思議な事に売られていないの。

        最近は玉子が品薄で高騰しているとニュース、andママから聞かされていた私は、現在珍重されている玉子を、しかも特売価格で目の前にしてこのまま帰るなんて考えられない。

        この帽子を取れば、もう一度買いに行っけちゃーうもんねー!別人に変身よ。

        玉子買ったら、金ちゃんのお家の前に届けてみようかなー・・・なんて。

        まだ”ちさと”さんが居るなら、この玉子を玄関前に置いてピンポンダッシュで帰る。

        だってさ、今日のお弁当のせいで金ちゃんの家の玉子は確実に減っている筈だもん。

        本当だったら今頃、金ちゃんとお夕飯作って、食べて、それで昨日みたいに駅まで送ってくれたのかなぁ。

        ううん、送って欲しいとかじゃなくて、もう少し一緒に居て、話をしたい。

        帽子を取った頭で再び入ったスーパーの中で琥珀は玉子の特売棚を目指した。

        あっ!ラスト二個・・・一個!

        琥珀は最後のパックに手を伸ばした。

        すると、パックの反対の端を掴む人が現われた。

        琥珀の母よりも少し年上位の女性だった。

        黄色いプラスチック籠の中には大根、ちくわぶ、はんぺん、がんも、昆布・・・

        もしかしておでんかな?玉子は絶対必要よね。

        そう思った時、琥珀はパックから手を離していた。

        「あら・・・いいの?」

        おばさんは驚いて、一度琥珀の方にパックを差し出した。

        琥珀は、すでに玉子を一つ買っている後ろめたさから、「はい、いいです・・・」と言うのが精一杯だった。

        「ありがとう。」玉子を籠にそっと入れたおばさんは琥珀に向かって軽く頭を下げると、パン売り場の方へ消えて行った。

        かーっと顔も耳も赤くなる。決まりが悪い。

        この髪型を晒してまでズルしようとした自分が恥ずかしい。

        バカバカ、琥珀。

        金ちゃんにも、ママにもいい顔しようとしたバツだ。

        こんな玉子一個で・・・喜んで貰おうなんて短絡的な考えで恥ずかしい。髪型も恥ずかしい。

        あー、何がしたかったんだろうと考え出すと冷静さが戻って来て、人目が気になり始めた。

        人の少ないお酒売り場の棚の間までフラフラと歩いた琥珀は、棚の支柱を掴んで、はーっと息を吐いた。

        「こら。未成年は酒は買えないぞ?」

        え?

        項垂れていた琥珀が顔を上げると、その姿をじっと見て立っていた人物は金矢だった。

        「金・・・ちゃん?何でここに?」

        幻かと驚いた琥珀が聞くと、「買い物。夕方のタイムセールだから来た。さっきのあれ、どうした?コレが欲しかったのか?」と金矢が左手で持っている籠を琥珀の前に差し出した。

        中には特売品の白玉子が一パック入れられていた。

        「そ、それ・・・!」

        「ああ、俺は残り二個だった時に取れた。そのすぐ後、最後の玉子を取った人を見たらさ、琥珀でびっくりしたよ。それで琥珀が、おばちゃんに玉子を譲ったからさ・・・玉子が欲しいならこれ持って会計に行けばいい。」

        「ちが、違うの。玉子はいいの・・・」

        斜め下に視線を落とし、フルフルと首を横に振る琥珀の頭に手のひらを載せて止めた金矢は、

        「いいって、本当にいいのか?何だか泣きそうな顔してる。」と籠をスーパーの床に置き、屈んだ姿勢のまま、琥珀の顔を下から覗き込んだ。

        金矢は琥珀のコートのポケットに突っ込まれていたキャスケットに気が付いて、それを取って広げると、琥珀の頭に載せて、つばの部分を両手で整えた。

        キャスケットから手を離した金矢の手を摑まえた琥珀は、「さっきのお家に来ていたあの女の人、誰・・・?」と、おそるおそる金矢の目を見た。

        「さっきのあの女の人って?千里(ちさと)の事?琥珀が泣きそうなのってぶたれた事がショックだったのか?それはそうだよな。ごめんな。千里も謝ってた。」

        ひた・・・と外気で冷たくなったと思われる金ちゃんの手のひらが、さっきぶたれたほっぺに当てられた。

        「ううん、それは平気。」

        私の顔が泣きそうに見えるというのはきっと、びっくりして嬉しくて安心したからだと思う。

        金ちゃんに会えて、こうして触れて、触れられて、ああ・・・。

        「あのさ、混んで来たから話は後で。」

        二人だけの世界に入り込み始めていた私を、金ちゃんは一言で現実に連れ戻すと、プラスチック籠を持ち上げて買い物を再開した。

        背後をちょこちょこ付いて行く私は金ちゃんに「まだ帰らなくていいのか?」と訊かれて、

        「うん。」と答えた。

        夕方で混雑しているレジに並んで会計を済ませて、作荷台で金ちゃんは背負っていた空の大きな黒いリュックサックを下ろして慣れた手つきで荷物を詰めて行く。

        金ちゃんはプラスチック籠の底に一つ残された玉子パックを薄いビニール袋に入れてから、私に差し出した。

        「あのね、実は一つ買ってこのバッグに入っているの。」と金ちゃんに肩から提げたバッグの中身を見せた。

        「一つ買ったのか・・・それじゃ、いいの?」とそれじゃあ何で最後の玉子をおばちゃんと取り合ったの?とおそらく思っただろう金ちゃんは首を傾げたけれど、それ以上何も言わずにリュックに玉子パックを詰めて、ファスナーをジーッと閉めた。

        二個もズルして買おうとしてた事が金ちゃんにバレてしまった私は、金ちゃんに届ける為だったと説明しようか迷ったけれど、そんな言い訳したって結局ズルには変わりないんだから許されないと口を噤んだ。

        スーパーを出て、駅に行くならこっち、金ちゃんの家ならあっちと左右に別れる所で、

        「夕飯・・・いや、遅くなるから今日は帰った方がいいな。駅はすぐそこだし。」と金ちゃんがリュックを担ぎ直しながら言った。

        お夕飯に呼んでくれない理由はそれだけじゃ、ないよね・・・。

        「う、ん・・・あの・・・」

        ここじゃゆっくり話せない。ちさとさんの事も、玉子の事も、

        明日は?また来てもいい?と訊きたいけれど・・・毎日じゃ、迷惑って言われたらどうしよう。

        「駅まで行くよ。」

        ポンポンとキャスケットの上に手のひらの感触を感じた後、金ちゃんは一方通行の車道側に立ち、駅前に向かって商店がまばらに続く道を、頭の上に載せた手で私の進行を促しながら、並んで歩き出した。

        金ちゃんは私の背に手を当てた。

        対向して来る自転車や車が通る度に私の右半歩前に体を出してくれる。

        「どうした?疲れちゃったか?」

        「・・・・・・」何て言ったらいいんだろう。

        「千里の事が気になる?千里は同じ青木家の嫁候補だよ・・・銀矢の嫁、だけどな。」

        その言い方・・・やっぱり何だか銀矢先生を羨んでいるように聞こえる。

        ちさとさんは確かに、私より大人で知的でどちらかというと美人だから。

        髪型がこんな小学生以下みたいになった私なんて、やっぱり金ちゃんから見たらガキなんだろうな。

        「だから、お義姉さん的な立場の琥珀が許してあげてくれる?」

        お義姉さんって・・・普通なら喜ぶところかもしれないけれど、金ちゃんの気持ちが見えるから手放しで喜べない。

        私よりも、彼女を庇いたいみたいに聞こえる。

        ズキズキする、心が。

        お義姉さんじゃないもん、ズルしようとしたと思われているコドモだもん。

        私は金ちゃんにコドモだと思われているのが判り切っているのに、しかも年上に対して「許してあげて」なんて言われたら益々惨め、ピエロだよ。

        それなのに、我慢しちゃう・・・へへへって、金ちゃんの前で笑っちゃう。

        「怒ってないもん。平気だよ?」

        コドモに見られているなら、もうコドモでいい。

        仕方ないもん、無理だもん。今すぐオトナになるのは。

        背伸びしたってコドモ。

        金ちゃんみたいにキモチを隠して誤魔化すオトナに、私はまだなりたくないもん、と唯一のコドモなりのプライドを胸の奥でギュッて抱きしめて「バイバイ、金ちゃん。」手を振りながら無邪気を装って笑って去るしか出来ない。

        金ちゃんは帰ったら銀矢先生とちさとさんとご飯を食べて三人で過ごすのかな。

        次に会う約束も切り出せない、ビビッて縮こまってしまったコドモの私。

        会いたいって、カラダの奥で叫んでても、口から零せない。

        そんな私の耳に、

        「琥珀!電話するから!」

        改札を抜けて階段も降りていた時に届いた金ちゃんの声。

        くるっと回って、下って来た階段を急いで駆け上ったけれど、さっき通り抜けた改札の外に金ちゃんの姿はもう無かった。

        丁度今到着した電車に、私が乗ったと思って帰っちゃったんだろう。

        うん、バイバイしたから別にいいんだけれど。

        琥珀は電車の出発したホームへと階段を下りた。

        空を見上げると、もう星が見える位、暗くなっていた。

        金ちゃん、帰り道、気を付けてね。

        「すき・・・」思わず零れていた。

        溜め息と一緒に、誰も居なくなった寂しいホームで、ちさとさんみたいなオトナをやっぱり羨ましいと思いながら。

        百世不磨の心 6 (R-18・ムーンライトノベルズ21話)

        Posted by 碧井 漪 on   0 

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          眠ってしまった千里が目を醒ましたのは、揺れる救急車の寝台の上でだった。


          早朝、出勤前の会社員が駅に向かう途中、下着姿で線路の上に横たわる全身あざだらけの千里を偶然発見し、110番した。


          救急車とパトカーが到着したのは、始発が走るほんの少し前だった。


          低体温症で意識を失い、危険な状態になった千里が病院に運び込まれ、医師や警察に、

          「大丈夫?お名前は?何があったか話せる?」と訊かれた千里は、

          「どうやったら、誰にも迷惑掛けずに死ねますか?一人になりたいんです。」と話した。


          百世不磨の心 7 (R-18・ムーンライトノベルズ22話)

          Posted by 碧井 漪 on   0 

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            “もう千里の先生じゃ、ないよ・・・”


            湯気に満ちた温かなバスルーム、バスタブに張られた湯の中で後ろから千里を抱きしめていた銀矢は、それを言うのを躊躇った。


            ぎゅっ・・・何か言葉を発する代わりに銀矢は千里の胸の下に回している腕に力を込めた。


            ちゃぽん。


            天井から離れた水滴が湯の中に落ちた時、それまで黙っていた千里が口を開いた。


            百世不磨の心 8 (R-18・ムーンライトノベルズ23話)

            Posted by 碧井 漪 on   0 

            百世23

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              ベッドに移動した後も、お互いに裸で抱き合うと、どちらともなく求め合い、火照り続ける躰を繋げて、昂ぶりが果てるまで離れられなかった。


              今だけは、お互いがお互いだけを見ている時間。


              先生と生徒ではなくて、

              ただの男と女。


              誰かに咎められたりしないように、二人だけの永遠の秘密にしよう。


              心の底から湧き上がる熱い想い。



              百世不磨の心 9 (R-18・ムーンライトノベルズ24話)

              Posted by 碧井 漪 on   2 

              百世24
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                目を閉じた千里の唇が躊躇いがちに寄って来た。


                俺の唇に触れるまで、あと僅かな場所で止められる。


                焦らしている訳ではなく、躊躇っていると解るその仕草もみんな愛おしくて、

                俺の燻る感情を激しく煽るのが上手な千里、その唇を仰向けになっていた俺は自ら頭を起こして奪いに行った。






                甘くなくて苦くもない (銀と千のバレンタイン・百世不磨の心・番外編)

                Posted by 碧井 漪 on   0 

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                  「ふうぅぅーん、先生、意外とモテますね。」


                  ビクッ!


                  中学校の数学科準備室の閉めてあった筈の背後のドアの方向から、杜野千里(もりのせんり)と判る声がした。


                  青木銀矢は教師になって三年目、現在は二年生の担任を受け持つようになり、準備室の銀矢の机の上には、女子生徒達から贈られたチョコレートと判る華やかな包みの数々が、古ぼけたよれよれの紙袋をパンパンにしていた。


                  「ビックリした。せん・・・いや、杜野さん。こんな時間にどうしたの?それも私服で。」


                  黒のキャップから覗くベリーショートの黒い髪、青いダッフルコート、黒のストレートパンツに黒のボディーバッグを背中に斜め掛けしている男子にも見える恰好の千里。


                  2014年2月14日金曜日の夕方18時、まだ中学校で仕事をしていた銀矢の元に高校二年の千里が訪ねて来た。


                  百世不磨の心 10 (R-18・ムーンライトノベルズ25話)

                  Posted by 碧井 漪 on   0 

                  百世25

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                    桜が咲いたら花見に行こうかな・・・・・・琥珀と。


                    金矢はスーパーから帰る夕暮れの道で、沿道の桜並木の綻び始めた薄紅色の蕾を見上げて考えていた。


                    琥珀と、その顔を思い浮かべる前に一番に考えたのは・・・千里(ちさと)。


                    千里は銀矢と見るのだろう、咲く前も咲いた後も散る時も。


                    この先、何年も毎年春に桜を共に見る相手。


                    部屋に帰って、ダイニングテーブルの上に買い物袋の中身を一つ一つ取り出して並べた金矢は、ふぅ・・・と息を吐きながら、壁に掛けられたカレンダーに目を向けた。


                    百世不磨の心 11 (R-18・ムーンライトノベルズ26話)

                    Posted by 碧井 漪 on   0 

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                      「兄貴、手伝うよ。」


                      "兄貴"と銀矢がそう呼ぶようになったのはいつ頃からだっけ、と最近よく考えるけれど、それがいつだったか、はっきりと思い出せなかった。


                      キッチンで大根を煮る鍋の前で竹串を持っていた金矢がふっと顔を上げた時には、もうすでに銀矢は隣に立っていて、シンクの水道の水を出して手を洗っていた。


                      「いいよ、疲れてるみたいだから座ってて。」


                      「兄貴こそ。無理して倒れられたらやだからね。」


                      「大丈夫。最近は調子がいいんだ。」


                      百世不磨の心 12 (R-18・ムーンライトノベルズ27話)

                      Posted by 碧井 漪 on   0 

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                        三人で囲んだ食卓の話題は、おでんの玉子の話だった。


                        他愛無いその話題が、一番無難だった。


                        三人が子どもの頃の話も、それからの出来事についても、あえて今ここで話す話でもなかったから。


                        配膳を終えて席に着き、黙っているのも何だか良くないと考えた金矢は、結婚式の話を振ろうとしたが、その前に千里(ちさと)から聞かされていた銀矢の疑惑、そしてどこか無理しているような千里の笑顔を見て、自分から言い出すのを控えていた。


                        「この玉子さ、一人一パックで100円だったんだけど、買おうとした時に琥・・・」


                        琥珀が、と言おうとした金矢は、じっと視線を向けて来る千里と銀矢の顔を見たら言い出せなくなってしまった。


                        百世不磨の心 13 (R-18・ムーンライトノベルズ28話)

                        Posted by 碧井 漪 on   0 

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                          静かになった・・・金矢と千里(ちさと)は、やっぱり一緒に出て行ったんだな。


                          トイレに籠っていた銀矢は、腹痛の芝居をしてから三十分後、ようやくリビングに戻った。


                          ふぅ・・・何だか疲れたと、銀矢は灯かりを点けず、真っ暗な自分の部屋のベッドの上へ、ゴロリと寝転んで、顔の上に両手の甲を載せた途端、再び深く息を吐いた。


                          千里が話したかったのは金矢だろう?


                          千里は俺に義理立てして金矢に電話すらしなかったくせに、今夜は黙って会いに来ていた。


                          余程の事があったのかな・・・俺に吐き出せない想いを、いやそうじゃないか・・・俺には抱けない想いと言った方が正しい。


                          千里(ちさと)が好きなのは金矢。銀よりも目に付く金。


                          金矢は優しくて俺よりもせかせかしてないから、千里とはテンポが合って、本当はお似合いなんだ。



                          百世不磨の心 14 (R-18・ムーンライトノベルズ29話)

                          Posted by 碧井 漪 on   0 

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                          「兄貴、おかえり。千里(ちさと)と何を話したの?」


                          「何も。話す前に通りかかったタクシー拾って乗って行った。後で銀矢に電話来るだろ。その時訊けば?」


                          その割には時間がかかったな。


                          金矢の頬も夜風に晒されて赤くなってるし。


                          俺が千里に”兄貴と何を話した?”と電話して訊いたって、金矢と同じく”何も話してない”って言うだろうな。

                          別に俺は・・・何だかもうどうでも良くなって来ていた。


                          千里(ちさと)と結婚してもしなくても、

                          結局振り回されるのは俺だけ。


                          軽く見られんのも俺だけ。

                          百世不磨の心 15 (R-18・ムーンライトノベルズ30話) 心の春景色

                          Posted by 碧井 漪 on   0 

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                          金矢との電話を終えた琥珀は、

                          パッチン!

                          よーし!準備OK!

                          琥珀は髪を切ってからは似合わないと思いながらも、ミニ丈のお気に入りワンピースを纏い、ブルーデニムのGジャンを羽織った後、鏡に向かい、左に寄せた短い前髪を右手で持った髪留めで留めた。


                          ショルダーポーチを左肩から斜めに提げて、いやいや、これでは買い物対応出来ないと姿見の前で外し、

                          代わりにカジュアルなストライプ柄のコットン製リュックを背負った。


                          百世不磨の心 16 (R-18・ムーンライトノベルズ31話)

                          Posted by 碧井 漪 on   0 

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                          家に着いて、リュックの中から取り出した食材をキッチンの調理台の上に並べた金矢は、

                          「肉じゃが作るから、琥珀、じゃがいもとにんじんの皮を剥いて乱切り、しいたけの石突(いしづ)きを取ったら軽く洗って水分拭き取って飾り入れて、それからきぬさやの筋を取って斜めに二等分しておいて。」早口でそう琥珀の顔を見ずに言った。


                          「えっ、えっ、え?もう一回言って・・・」


                          「肉じゃがくらい一人で作れるだろ?それより、リュック寄越して。卒業アルバム持って来た?」


                          「う、うん。はいこれ。」


                          百世不磨の心 17 (R-18・ムーンライトノベルズ32話)

                          Posted by 碧井 漪 on   0 

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                          少し遅いお昼に肉じゃがを食べた後、琥珀は金矢と共に、ベッドの上に寝そべっていた。


                          「銀矢って、琥珀から見てどんな先生だった?」


                          金矢は卒業アルバムを開きながら壁側を向いて寝そべっていて、琥珀に背を向けた恰好のまま、写真を眺めて琥珀に質問していた。


                          「どんな、って?どういう意味でなの?いい先生かって事?」


                          「色々な点から見てさ、どういう先生だったかって知りたいと思って。」


                          「えー?うん、そうだなぁ、いい先生な方でしょう?」


                          百世不磨の心 18 (R-18・ムーンライトノベルズ33話)

                          Posted by 碧井 漪 on   0 

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                            週末、

                            お花見しようと金矢に呼ばれた琥珀は、お昼過ぎから金矢の家のキッチンで一緒にお花見弁当を作っていた。


                            お重に詰めて、お弁当の完成が近付くと、だんだん琥珀の気持ちは沈んで行った。


                            二人だけでお花見に行くのならそんな事はないけれど、

                            銀矢先生と婚約者のちさとさんと一緒かぁ・・・少し気まずくて行きたくない、のは私だけかも。




                            百世不磨の心 19 (R-18・ムーンライトノベルズ34話)

                            Posted by 碧井 漪 on   0 

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                              夕暮れの公園に向かう間、私はまた金ちゃんと手を繋いで歩けてしあわせだった。


                              恋人、彼氏、ダーリン。


                              私の好きな人。


                              夕日に染まる金ちゃんの頬は照れているみたいに見えて、

                              そんな訳ないんだけど、

                              私が心の中に思った事に反応して照れてくれている・・・とか考えた私も照れくさくなって金ちゃんの横顔から目を逸らした。



                              百世不磨の心 20 (R-18・ムーンライトノベルズ35話)

                              Posted by 碧井 漪 on   0 

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                                日が暮れて、お弁当を食べ終えた頃は、すっかり風が冷たくなっていた。


                                風に舞う花びらを少し見飽きて来た頃、そろそろ帰ろうという事になり、荷物を纏めた後、

                                「俺、トイレ行って来る。」そう言ったのは金ちゃんだった。


                                「じゃ、俺も行って来る。」今夜の銀矢先生は、四角い黒縁の眼鏡をかけていて、少し知的に見える。


                                双子だけど、金ちゃんと銀矢先生は、眼鏡は関係なく、こうして並ぶとそんなにもは似ていないと思えた。


                                百世不磨の心 21 (R-18・ムーンライトノベルズ36話)

                                Posted by 碧井 漪 on   0 

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                                  「・・・ったく、千里(ちさと)を呼ぶなって言ったのに。」


                                  珍しく文句を言った金矢は、自分の部屋のベッドの上に仰向けに寝かされていた。


                                  「病院行かないって駄々捏ねたのは兄貴だろ?念の為、主治医に知らせておいただけだ。」


                                  「主治医って、別に千里だけじゃないだろ。」


                                  ぷうっと頬を膨らまし、拗ねた表情を見られたくないのか金矢は壁の方に寝返りを打って、ベッド脇に立って居る銀矢と、その後ろに膝をついている千里に背を向けた。


                                  百世不磨の心 22 (R-18・ムーンライトノベルズ37話)

                                  Posted by 碧井 漪 on   0 

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                                    銀矢がスッとキッチンへ移動した。


                                    金矢が居る時にはキッチンへ入ろうともしない銀矢が、珍しくキッチンで何をするのかと金矢が視線の先を向けると、


                                    カチッ、どうやらやかんでお湯を沸かそうとしていると判った。


                                    シュンシュン、程なくしてコンロを止めた銀矢は、さっきまでテーブルの上にあった筈のティーポットを知らぬ間に手元に置いていて、それにお湯を注いだ。


                                    蓋をしたポットを持つと、銀矢がこちらのダイニングテーブルの方へ戻って来た。


                                    最初から銀矢はティーポットを持ってキッチンに立ったのか・・・気付かなかった。


                                    金矢が気付かなかった訳は、ティーポットが千里の前に置いてあったからだった。


                                    千里が椅子に座り込んでから、金矢は千里の方を見なかったというより、見られなかった。


                                    銀矢に心の内を指摘された金矢は動揺していた。




                                    百世不磨の心 23 (R-18・ムーンライトノベルズ38話)

                                    Posted by 碧井 漪 on   0 

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                                      四月になった。


                                      琥珀は大学の入学式を先週終え、その翌日から授業があった為、忙(せわ)しない毎日を過ごしていた。


                                      気が付けば、金矢達とお花見に行ってから来週末で一か月が経とうとしている。


                                      花見の夜、銀矢に家まで送って貰った日から、琥珀は一度も金矢に会えずにいた。


                                      「ごめんな、琥珀。事情があって実家に帰るから、しばらく会えない。マンションに戻ったら連絡するから、それまで大学で勉強しっかり頑張れよ」


                                      百世不磨の心 24 (R-18・ムーンライトノベルズ39話)

                                      Posted by 碧井 漪 on   0 

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                                        寂しくないといったら嘘だけど、まぁ私も大学に入ったばっかりでバタバタと色々忙しかったから、最初の一か月、二か月はあっという間に過ぎて行った。


                                        三か月目に入って、大分(だいぶ)大学生活にも慣れた六月。


                                        金ちゃんとは相変わらず、電話とメールを交わすだけの日々。


                                        だからもう、金ちゃんは私の事、どうでも良くなっちゃっているんじゃないかって考えちゃう今日この頃。


                                        憂鬱が襲って来る。頭がボーッとして、首も肩も重苦しく感じてしまうのは、気圧が低いせいなの?


                                        しとしと、ジメジメ・・・私の気持ちも何だかそんな感じ。


                                        むわーっとして、あの重たい灰色の空みたいに、


                                        今にも泣いて落ちて来そうな感じなのにいつまでも降るのか降らないのかどっちつかずで、全然ハッキリスッキリしないカンジ・・・


                                        百世不磨の心 25 (R-18・ムーンライトノベルズ40話)

                                        Posted by 碧井 漪 on   0 

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                                          6月が半分過ぎた頃、金ちゃんが電話で「7月になったら銀矢の所に戻るから。」と告げられた私は嬉しくて、同時にドキドキもした。


                                          つ・い・に、キス、そしてその後まで一気に進んでしまいなさいってカンジ!キャー!


                                          周りの女子はみんな彼氏と夏休みの旅行の計画で忙しい。


                                          彼氏の居ない子と最近同じ感じになって来ていた私も、ゆうべの電話一本で、再び彼氏持ち女子大生の仲間入りなのよぉっ!

                                          百世不磨の心 26 (R-18 ・ムーンライトノベルズ41話)

                                          Posted by 碧井 漪 on   0 

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                                            7月になった。


                                            丸三か月以上、金ちゃんと会っていない。


                                            電話とメールはしてる。寂しくなったら卒業アルバムの銀矢先生の写真を見て誤魔化してるって事をチラッと言ったら、先週、メールにその日の金ちゃんの自撮(じど)り写真を添付して送ってくれた、奇跡的!

                                            言ってみるもんだなぁー、とホクホクして見た金ちゃんの写真は、大真面目な顔。


                                            どっちかって言うと、怒って見える顔。


                                            『こら!琥珀!』って感じの・・・

                                            贅沢かもしれないけど、もーちょっと笑った顔が良かったなぁ。


                                            次に会ったら、絶対金ちゃんの笑った顔の写真を撮る!って決めた。


                                            百世不磨の心 27 (R-18・ムーンライトノベルズ42話)

                                            Posted by 碧井 漪 on   0 

                                            百世42
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                                              「財布忘れた!持って来るから待ってて。」とみゆきちゃんは車のエンジンをかけ、私を助手席に乗せると、外からドアをバタンと閉めた。


                                              そして家の方に走って行く後姿は、男の子・・・足、速い。あ、そっか、走り幅跳びをしていたんだっけ。


                                              ドキッ、ちょっとカッコいい。脚が長くて細くて、その上、機敏なところに憧れる。


                                              そういえば、金ちゃんの走る姿をまだ見た事がない。


                                              どんなかな?もっとドキドキするかもしれない。


                                              いよいよ今日会える。


                                              百世不磨の心 28 (R-18・ムーンライトノベルズ43話) タイドプール

                                              Posted by 碧井 漪 on   0 

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                                                「うわーいっ!海だー!・・・って、ここさー、みゆきちゃん。」


                                                「何?琥珀。」


                                                「海って、ここなの?」


                                                「海でしょ?ほら、波しぶき。」


                                                ザッバアァーン!ザザーン!


                                                うん、確かに海だね。でも・・・


                                                百世不磨の心 29 (R-18・ムーンライトノベルズ44話)

                                                Posted by 碧井 漪 on   0 

                                                百世44
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                                                  その普通ではないホテルの入口は、どこにも見当たらなかった。


                                                  建物は確かにあるけれど、歩道に面した入口というのは、歩いてではなく車で入って行くといった感じの、「P IN OUT」と書かれた錆びたゲートしかなく、私は車じゃないのにここから歩いて入って行ってもいいのかよく解らなくて、ホテル囲い前の植木周辺を、時々通る歩行者に背を向けながら、駐車場ゲート付近でウロウロしていた。


                                                  えーん、みゆきちゃーん、早く戻って来てぇぇ・・・!


                                                  「何なら先に入ってて」とみゆきちゃんは言い残し、海岸駐車場からホテルの駐車場に移動すると車に向かった。


                                                  私も行くと言ったけれど、「シート濡れるからヤダ。すぐ来るから待ってて」と連れて行って貰えなかった。


                                                  でも、私は肩にタオルを掛けた状態・・・一人でズカズカ入って行くのもここに立って居るのも、どっちにしても恥ずかしかった。


                                                  遅いな、みゆきちゃん。


                                                  ま、まさか・・・!


                                                  「まったくー、琥珀ってばドジだから、一緒に居ると疲れる。それに車も汚されそうだし。ちょっと反省して貰う為にこのまま一人、車で帰っちゃえ。琥珀は自力で帰れるような事も考えてたみたいだし、何とかするでしょ」


                                                  とか考えて帰っちゃった?


                                                  えーん、やだ、やだよう!


                                                  こんな所にズブ濡れで一人置いて行かれたら、帰り電車って、駅がどっちにあるのかさえ分からないのに・・・


                                                  スニーカーの中も濡れて温くて心地良くない感覚で、歩く度グチャッグチャッと音を立てるのもみっともない。


                                                  長靴を履いて池で遊んだ時みたいな感じ・・・



                                                  百世不磨の心 30 (R-18・ムーンライトノベルズ45話)

                                                  Posted by 碧井 漪 on   0 

                                                  百世45

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                                                    ピラポロピラポロ・・・明るいメロディー音とバイブレーターの振動音が同時に琥珀のバッグの中で奏でられた。


                                                    ん、んー?


                                                    琥珀は目を瞑ったまま、大きなベッドの上で、丸めていた体を縦に伸ばした。


                                                    ふあぁぁぁー、電話?


                                                    指で擦りながら開けた目が見たピンク色の灯かりの部屋の中は、琥珀の脳を一気に覚醒させた。


                                                    え、え、えっ?


                                                    ここ、どこだっけ?


                                                    すーすーする胸元を見ると、服ではなく、親戚が入院していた時に病室で着ていたものに似てる物で・・・


                                                    あれ?何でだっけ・・・?


                                                    うーん、と琥珀が考えている内に、バッグの中から聞こえていたメロディーが途絶えた。


                                                    ああ、そうだった!


                                                    みゆきちゃんと海に来て、岩場で足を滑らせて潮溜まりにドボーンって落ちて、それから・・・


                                                    百世不磨の心 31 (R-18・ムーンライトノベルズ46話)

                                                    Posted by 碧井 漪 on   0 

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                                                      7月最初の日曜日、朝10時。


                                                      私は金ちゃんのお家に着いている筈だった・・・のに!


                                                      「きゃーっ!何で、なんでぇぇー?!」


                                                      じりじりと熱い太陽の陽射しによって徐々に温められた琥珀の部屋の高まり過ぎた温度によって、アラーム音にも反応しなかった琥珀はようやく目を覚ました。


                                                      寝ている間にベッドの下に落ちてしまったスマートフォンを拾い上げると、10時8分・・・ええーっ?!


                                                      ベッドから飛び起きた私の頭は寝ぐせバクハツ中!


                                                      汗でベトベトだし。


                                                      姿見に映った酷い恰好に、こうなったら!とお風呂場に直行。


                                                      ザバーッ、ガシガシ、ゴシゴシ。


                                                      琥珀はシャワーの下で、頭のてっぺんからつま先まで、超特急で全身をピカピカに磨き上げた。


                                                      百世不磨の心 32 (R-18・ムーンライトノベルズ47話)

                                                      Posted by 碧井 漪 on   0 

                                                      百世47

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                                                        「脱いでって、え・・・っ?」


                                                        「早く。あせもになるよ?」


                                                        「でも、自分で・・・」


                                                        琥珀は汗臭いと金矢に思われるのが嫌で近付いて欲しくないと思っていた。


                                                        「遠慮するなって。」


                                                        「でも、ほんとに・・・」


                                                        「琥珀、脱ぎなさい。」


                                                        「は、はいっ!」


                                                        どきっ、金ちゃんってば、本当に先生みたい。


                                                        琥珀は金矢に背を向けてシャツを脱いだ。


                                                        「これも外して。拭きにくい。」琥珀の背後に立った金矢は、ブラジャーのホックを外した。


                                                        パラリ、ブラジャーが、琥珀の曲げた肘まで落ちて来た。


                                                        百世不磨の心 33 (ムーンライトノベルズ48話) キスのち雨のちキス?

                                                        Posted by 碧井 漪 on   0 

                                                        百世 雨

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                                                          あと一週間で夏季休講になる大学の中庭のベンチに座り、昼食を食べ終えた琥珀と美優生は、建物の裏で日が当たらず、人通りもまばらなこの場所で涼んでいた。


                                                          今日の講義は午前で終了していた。現在は午後一時半過ぎ。


                                                          「それで?彼氏としたの、してないの?」


                                                          琥珀に詰め寄った美優生は、手にしていたアイスカフェオレを飲み干したカップから氷を口に含んで、ボリボリ鳴らし始めた。


                                                          「した、よ・・・」


                                                          建物の間を吹き抜ける風にさわさわ揺れる頭上の樹、緑の葉っぱを琥珀は見上げた。


                                                          「へぇ・・・琥珀も処女卒業したんだ、よかったね。」


                                                          “よかったね”という割に、美優生の声に甘さはなかった。


                                                          そして、まるでやけ酒でも掻き食らうかのように勢いよくカップを呷り、ザッ、ゴリゴリ、ガリガリと氷を乱暴に砕く音を響かせた。


                                                          百世不磨の心 34 (R-18・ムーンライトノベルズ49話) 二度目のキス

                                                          Posted by 碧井 漪 on   0 

                                                          百世49
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                                                            ふにっ、

                                                            囚われた琥珀の指先は美優生の唇に触れていた。


                                                            雨に濡れ、冷たくなっていたが、その感触はとても柔らかく、金矢の唇に触れられた時の事を思い出してドキドキし始めた。


                                                            「教えてって、そういうのわかんないから、無理だよ・・・それより唇冷たいから、早くあっためないと・・・」


                                                            琥珀は美優生に掴まれていた指先を、美優生の唇から浮かせると、急いで下にするりと引き抜いた。


                                                            「どうやって?」


                                                            「隣のコンビニであったかいコーヒーとか」「ずるいよ。」


                                                            「え?」


                                                            「琥珀だけ好きな人にキスして貰ってイイ思いしてさ、ズルイ!」


                                                            「そんな事、言われても・・・」


                                                            「俺にも教えてよ。琥珀が気持ちいいって思ったキスはどんな風なのか。」


                                                            みゆきちゃんは私の目と合わせたまま、視線を逸らさず、ジリジリ距離を詰めていた。


                                                            私の襟足をみゆきちゃんの右手で掴まれたと判った途端、左手で挟まれてしまった顎は、いきなりグイッと上に持ち上げられた。


                                                            百世不磨の心 35 (R-18・ムーンライトノベルズ50話) くちづけの余韻

                                                            Posted by 碧井 漪 on   0 

                                                            百世50
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                                                              美優生からキスされてしまった日の夜、琥珀は自分の部屋のベッドに潜ると、常夜灯の灯かりを見つめ、夕方、美優生にされてしまったキスを繰り返し思い出しては眠れずにいた。


                                                              あー、もう!


                                                              私が金ちゃん以外の人とキスするなんて、考えてなかった。


                                                              うう・・・みゆきのバカー!


                                                              私がまだ処女だからって、からかう為だけにあんなエロティックなキスをするなんて。


                                                              ああやってベロ使うなんて、全然知らなかった。


                                                              金ちゃんにも された事ないのに!


                                                              でも、不思議な感覚だった。


                                                              友達なのに、ドキドキしてゾクゾクして、ヘンだけど、もっと・・・とか思って来ちゃって、危うく「もう一回して」とか言いかけて、ハッとした。



                                                              百世不磨の心 36 (R-18・ムーンライトノベルズ51話) スキダ

                                                              Posted by 碧井 漪 on   0 

                                                              百世51
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                                                                後ずさった琥珀は、開いていた部屋のドアに踵をぶつけた。


                                                                「いっ、たっ・・・!」


                                                                我慢し切れず漏らした琥珀の声に、美優生とキスしていたおさげの女の子が気付いて振り向いた。


                                                                目が合うと、琥珀と同い年位に見える女の子は、恥ずかしそうな様子で目を逸らした。


                                                                「あ、えっと・・・ノックしないでごめんなさい。眠ってると思って・・・お邪魔しちゃってごめんね、みゆきちゃん。帰るから、あの・・・どうぞ続けて。それじゃあ・・・」


                                                                「・・・・・・!」


                                                                美優生はパクパク口を動かしたが、声は嗄(か)れていて琥珀には届かず、琥珀もそのまま部屋を出てドアを閉めてしまった。


                                                                ベッドから立とうとする美優生を、おさげの女の子が止めた。


                                                                「だめ!美優生くん、そんな体で行かないで。あたしが行くから、ここで待ってて。」


                                                                百世不磨の心 37 (R-18・ムーンライトノベルズ52話)

                                                                Posted by 碧井 漪 on   2 

                                                                にほんブログ村 BL・GL・TLブログへ
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                                                                  「したら、何してくれる?」


                                                                  「うーんと、窓の桟(さん)の掃除でどう?」


                                                                  「それだけ?」


                                                                  「えっと、洗濯槽のカビ取り剤を入れて、洗濯機を回すのは?」


                                                                  「あ、ソレ、昨夜(ゆうべ)しちゃった。」


                                                                  「むーっ・・・」


                                                                  「何、キスならこの前もしただろ。ほら。」


                                                                  チュッ。


                                                                  金矢は、シンクの前で隣に立っている琥珀の前髪を濡れた指先で掻き上げて、キスを落とした。



                                                                  百世不磨の心 38 (R-18・ムーンライトノベルズ53話) 偽る愛

                                                                  Posted by 碧井 漪 on   0 

                                                                  百世53
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                                                                    とびきりの美人って訳じゃない。


                                                                    だけど、可愛いって思う、俺はね。


                                                                    頭の回転は普通、より ほんの少し遅いかもしれない。


                                                                    それでも、補ってあげたいと思う方が強い。


                                                                    体つきも標準的で、そそられる程の凹凸はない。


                                                                    そんな事は何も関係なく、抱きたくなる、見ているだけで もう。


                                                                    男が好きになる魅力的な女の要素は皆無でも、手遅れだ。


                                                                    俺は好きになってしまった。


                                                                    恋に落とされた、何の策略も持たない天然ボケた琥珀に。


                                                                    琥珀の彼氏の金ちゃんという男に、毎日嫉妬している。


                                                                    はらわたが煮え滾りそうな位、ジリジリ熱くなって堪んないって程に。


                                                                    俺が琥珀の彼氏ならこうしてやるのにと、考えて止まない。


                                                                    琥珀の好きな彼氏と別れて欲しいとまでは願えないけれども、


                                                                    この手で掴んで離したくないと思ってる存在ではある。


                                                                    今まで何度も言うのを我慢して来た。「好きだ」と告げたら終わってしまう関係の俺達だってわかりきってるから。


                                                                    俺の事は男として見てない琥珀。


                                                                    それで一緒に居られるならと、告げずに押し込めたままの気持ちが溢れそうだ。


                                                                    募る想いは、俺の胸をただ苦しくさせるだけで、てんで役に立たない。


                                                                    もしも 俺が琥珀に「好きだ」と告げたら、そこから先には一歩も進めなくなるってわかってる。


                                                                    行き止まりで、恋には発展しそうにない関係を、このまま続けるかどうするか。


                                                                    これはもう、友人として我慢の限界を迎える日まで過ごすしかない・・・?


                                                                    それとも、琥珀にいっそ告白して、遠く離れてしまった方がいいのか。


                                                                    はーあっ。


                                                                    琥珀は今頃、金ちゃんの部屋でキスして貰ってるのかな?


                                                                    いいな、金ちゃんとやらは。


                                                                    相思相愛、かぁ・・・。








                                                                    百世不磨の心 39 (R-18・ムーンライトノベルズ54話) 虚飾の代価(だいか)

                                                                    Posted by 碧井 漪 on   0 

                                                                    百世54
                                                                    にほんブログ村 大人の生活ブログ 恋愛小説(愛欲)へ
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                                                                      唇を塞がれて覚える息苦しさに、彼の事を考えてしまう。


                                                                      いつもこんな苦しさに耐えて来た彼とは金矢、その彼と同じ顔を持つ双子の弟の銀矢は、塞いでいた私の唇から離れ、今、この首筋を鎖骨へ向かって辿っている。


                                                                      ぞく・・・


                                                                      肌が濡らされる刺激に、私の体は熱を帯びて来る。


                                                                      彼(きんや)にされる事のない行為を、こうして彼(きんや)によく似た人にされる。


                                                                      心にずっと開いたままの亀裂の中に、補うように埋めてくれるのは愛じゃなくてもいい。


                                                                      裏切り続けている罪悪感、それ以上に隠しているのは彼への想い。


                                                                      金矢に生きて居て欲しい。


                                                                      それを傍で見て居たい。


                                                                      私の欲望は、彼(きんや)の弟・銀矢を巻き込んでいる。


                                                                      銀矢が私以外の女の体を求めた事は決して責められない。


                                                                      心の中で私も同じ事をしている、当然だと思う。


                                                                      けれどもそれを認めて銀矢から手を離したら、私は金矢の傍に居る事さえ叶わなくなる。


                                                                      結婚なんてしたくない。生涯独りのままでいい。


                                                                      医者として、一人の人として、彼(きんや)の人生を最期まで見届けられたら、それだけでいい。


                                                                      それなのに、周りは放って置いてくれない。


                                                                      仕事でもそう、勧められるのは海外に留学して勉強したらと・・・日本を離れたくない私は断り続けている。


                                                                      両親は、兄弟のいない私に家を継げ、婿を貰えと次々にお見合いをさせ、断るのが大変だった。


                                                                      今落ち着いているのは、銀矢が私の婚約者として居てくれるから・・・こうして彼(きんや)の傍にも行ける生活が送れている。


                                                                      銀矢が別の女の許へ行ってしまったら、

                                                                      私は困る。愛もお金も要らない、ただ彼(きんや)の弟、家族であるという事が必要。





                                                                      百世不磨の心 40 (ムーンライトノベルズ55話) 寂(しず)か 

                                                                      Posted by 碧井 漪 on   2 

                                                                      にほんブログ村 トラコミュ 恋愛小説(オリジナル)へ
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                                                                        甲高く澄んだ響きに、ベッドに背を凭れたまま眠ってしまっていた金矢はハッと目を開いた。


                                                                        しまい忘れ、カーテンレールに吊るしたままの風鈴か・・・一瞬、鈴の音かと思った。


                                                                        少しだけ開いたベランダ窓の外は、意識の有る時点では茜色だったのに、今はグレーがかっていた。


                                                                        昼と夜の差が大きくなった温度と秋の草花の匂いを混ぜた風が秋を運んで来た。


                                                                        涼しい風が吹き込む窓を閉めた金矢は、続けてカーテンを閉めると、部屋の灯かりを点けた。


                                                                        もう18時過ぎだな・・・夕飯の支度を終えてからずっと眠り込んでしまったようだ・・・


                                                                        「琥珀が来なくなったから退屈だな。銀矢は今日も遅いだろうし・・・」


                                                                        琥珀とは毎晩定時に電話で話していたが、試験や課題、それに加えて家庭教師のアルバイトを始めたと、忙しくも充実した学生生活を送る琥珀の大切な時間を削りたくないと、金矢は会話を必要最小限に止(とど)めていた。


                                                                        夏休みが明ける前から銀矢も忙しく、中旬になってもなお帰りは遅いし、千里(ちさと)とも会っていないのか、「千里は元気?」と何気なく千里の様子を銀矢に訊いてみても、「さあ?兄貴が電話してみれば?」と素っ気ない返事だけ。


                                                                        ふう・・・・・・


                                                                        百世不磨の心 41 (ムーンライトノベルズ56話) 感じる距離

                                                                        Posted by 碧井 漪 on   0 

                                                                        にほんブログ村 大人の生活ブログ 恋愛小説(愛欲)へ
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                                                                          やっぱり無理だ、出よう、と自分の左手と繋がれている琥珀の右手を引っ張った時、

                                                                          「いらっしゃいませー、あら、素敵なカップル。こちらに、お二人で入れる試着室ありますからどうぞー。」と、おそらく20代後半の女性店員が俺の背後にさっと回り込み、両手のひらでグイグイ背中を店奥に向かって押した。


                                                                          え、あの、ちょっと!


                                                                          体の両側にあるのがピラピラレースの下着類を陳列した棚でなかったのならば、声を上げたり拒否出来ただろうが、上手に避けなければ販売商品が腕に掠る程狭い所を押されている俺にその余裕はなかった。


                                                                          店奥に着くと、ファッションビルの通路からは、男の俺がランジェリーショップ内に居るのは見えないと、少し息が出来るようになったが・・・赤、ピンク、オレンジ、白、黒!目の遣り場に困る上、別にスケベな事を考えてなくても緊張からか口元が勝手に緩み出す。


                                                                          ははっ、笑ったらマズそうな場所であればある程笑い出しそうだ。


                                                                          女性店員と話し始めた琥珀に背を向け、俺は試着室の方を向いた。


                                                                          俺は穿いているジーンズの尻ポケの下をギュッと抓って、笑い出さないようにするのに必死だった。

                                                                          百世不磨の心 42 (R-18・ムーンライトノベルズ57話) ヘンな気持ち

                                                                          Posted by 碧井 漪 on   0 

                                                                          ブログランキング・にほんブログ村へ
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                                                                            「ち・・・それは、俺が認めない。絶対違う!」


                                                                            「うん・・・もう言わないから安心して。銀矢は知ってる。私が金矢を好きな事。昔、私が万世の代わりにあなたにしたキスの事も。あなたも気付いて、たわよね、勿論。」


                                                                            「・・・・・・」


                                                                            「あなたが愛しているのは琥珀さんだって事は解ってる。それでいいの。私に何かをして欲しいと望んでいる訳じゃないの。ただ、金矢に生きていて欲しい、それを見守っていたいだけ。」


                                                                            「医師として?」


                                                                            「その前に、人として。」


                                                                            「じゃあ、何故・・・俺に、愛してると言ったの?」


                                                                            百世不磨の心 43 (ムーンライトノベルズ58話)

                                                                            Posted by 碧井 漪 on   0 

                                                                            にほんブログ村 大人の生活ブログ 恋愛小説(愛欲)へ
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                                                                              金矢はただ黙ってダイニングの椅子に座り、銀矢の帰りを待ち詫びた。


                                                                              琥珀からの電話はなかった。何事もなく家に帰り着いているといいが・・・


                                                                              それよりも、金矢の心に重く大きく圧し掛かっているのは、銀矢と千里(ちさと)の婚約解消についてだった。


                                                                              千里が俺を好きって・・・何で、どうして?


                                                                              それなら何故、銀矢と付き合い、銀矢と婚約した?


                                                                              わからない。


                                                                              千里の気持ちも、銀矢の気持ちも、俺は一体どうしたらいい?二人の為に何をしてあげられる?


                                                                              銀矢、早く帰って来て説明して欲しい。


                                                                              百世不磨の心 44 (ムーンライトノベルズ59話)

                                                                              Posted by 碧井 漪 on   0 






                                                                                お風呂上がりに、ご飯に味噌汁と鰹節をかけたものを掻き込んでお腹を満たした琥珀は、二階の部屋へ上がると、さっき机の上に置いたスマートフォンのランプがグリーンに点滅しているのに気が付いた。


                                                                                手に取ってベッドに横たわり、履歴を確認すると、金矢からの着信が6回もあった。


                                                                                こんなに・・・どうしたんだろう、何か急ぎの用事があったのかな?


                                                                                だとしたら、さっき買い物中に出られなくて申し訳なかったな・・・


                                                                                でも、出られる状況ではなかったと、その後もすぐに折り返しかけ直さなかった事や、美優生に対して抱いてしまった気持ちを後ろめたく感じた琥珀は、金矢に電話するのを躊躇った。


                                                                                そして、美優生に言われた言葉も気になっていた。


                                                                                百世不磨の心 45 (ムーンライトノベルズ60話)

                                                                                Posted by 碧井 漪 on   0 






                                                                                  「緒方さー、最近、彼女と一緒に居ないけど、もしかして別れたの?」


                                                                                  家庭教師のバイト帰りに、夕飯時で混雑する駅前のラーメン屋のカウンター席で、美優生にそう訊いて来たのは、このバイトを紹介してくれた同じ高校出身で別学部の男、妹尾だった。


                                                                                  「お待たせしましたー」と妹尾と同時に、美優生の前にもラーメンと餃子、半ライスが並べられた。


                                                                                  美優生は、ラーメンから立ち上る湯気を見ながら、割り箸に手を伸ばした。


                                                                                  「彼女じゃないし。」今日は割り箸が綺麗に割れなかった、くそっ。


                                                                                  最近の美優生は自分でも何故かイライラしてるなと感じる程だった。


                                                                                  「へぇー、そう。まぁ、緒方ならもっとレベルの高い女と付き合えるもんな。」


                                                                                  「何そのレベルって。」美優生はムカッとして、割るのに失敗した割り箸を餃子に突き立てていた。


                                                                                  「体型も髪型もイマイチの女より、年上の、ほら、入学後に声掛けて来たおっぱいデカイ先輩とかさ。」


                                                                                  「はぁ?興味ないよ。」


                                                                                  醤油にラー油と酢を加えた物にアツアツの焼き餃子をドプッと浸けて、口に運んだ。


                                                                                  百世不磨の心 46 (ムーンライトノベルズ61話)

                                                                                  Posted by 碧井 漪 on   2 

                                                                                  にほんブログ村 トラコミュ TL好き、ティーンズラブ好きvへ
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                                                                                  でも声を聞かされて、会いたいという気持ちは治まるどころか強められてしまった。


                                                                                  声も聞きたいよ、だけどそれより会いたいと気が付いた。


                                                                                  寂しいからだとは思う。


                                                                                  ただそれ以上に、誰かの身代わりとしてでない俺を求めてくれると信じられる相手だから会いたい。


                                                                                  俺自身を必要としていると、思っていい?


                                                                                  琥珀に会いたい。



                                                                                  百世不磨の心 47 (ムーンライトノベルズ62話)

                                                                                  Posted by 碧井 漪 on   0 

                                                                                  にほんブログ村 トラコミュ TL好き、ティーンズラブ好きvへ
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                                                                                    琥珀も美優生も、銀矢の話をしばらく黙って聞いていた。


                                                                                    そして琥珀と美優生は銀矢に渡されたファイルの中の書類に目を通した。


                                                                                    「杜野千里の勤める工場はここだ。近くの社員寮に住んでいる。基本、休日は土日祝日。」


                                                                                    新幹線とタクシーで二時間、車で行ったら四時間近い場所だという。


                                                                                    「場所が判っているなら、先生が行けばいいと思います。」


                                                                                    そう口を切ったのは、琥珀ではなく美優生だった。


                                                                                    銀矢は上着のポケットから白い封筒を取り出して、琥珀の前に置いた。



                                                                                    百世不磨の心 48 (ムーンライトノベルズ63話)

                                                                                    Posted by 碧井 漪 on   0 

                                                                                    百世ホーム

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                                                                                      銀矢の依頼を受けてから、一月(ひとつき)以上が過ぎ、十一月三日、祝日・文化の日。


                                                                                      早朝、琥珀は一人で駅のホームに立っていた。焦茶(こげちゃ)色コートを着込み、黒いリュックを背負った姿で、もうすぐ来る電車を待っていた。


                                                                                      それは、杜野千里の暮らしているという街へ行く事にしたからだった。


                                                                                      百世不磨の心 49 (ムーンライトノベルズ64話)

                                                                                      Posted by 碧井 漪 on   0 

                                                                                      にほんブログ村 トラコミュ オリジナル小説サーチ!コミュ☆へ
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                                                                                        新幹線を降りてから在来線に乗り換え、やっとセンリちゃんの暮らす街に着いた。


                                                                                        電車を降りると、お昼に近いというのに陽射しの熱は弱く、風が冷たかった。


                                                                                        想像していたより在来線の駅舎は古くなく、大きかった。


                                                                                        でもお店が少ない。


                                                                                        駅にあるのは売店と喫茶コーナー。


                                                                                        駅を出るとこじんまりしたロータリー、そしてタクシー乗り場とある停留所標識は錆びて、とてもタクシーが来そうにないと感じた琥珀は、比較的新しい屋根付きのバス乗り場へ足を向け、時刻表を確認した。



                                                                                        このカテゴリーに該当する記事はありません。