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sazanamiの物語

恋愛小説を書いています。 創作表現上の理由から、18才未満の方は読まないで下さい。 恋愛小説R-18

暁と星 改稿版 1 (1~11話) ※R-18

Posted by 碧井 漪 on  


暁と星 改稿版1
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私が相続するのは間違っているのではないかと思った。


祖父はいわゆる資産家の、由緒ある家の厳格な当主だったらしい。


会社も財産の管理もすべて代理人に任せ、現在病気で入院中と、目の前の男が言っている。


その『おじいちゃん』に、私は会った事はないし、今日までその存在すら知らなかった。


私の祖母、母の母は病気で他界した。


その娘である母は、私の父と恋に落ち、結婚を反対する祖父に黙って家を出た。


それらが、この目の前の男に突然今、告げられた。


17歳11ヶ月の私より多分年上。

暁と星 改稿版 2 (12~22話) ※R-18

Posted by 碧井 漪 on  

暁と星 改稿版 階段
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「旺治郎の紅茶が好きです!そして、励さんのその身なり、話し方、それからタバコと香水の匂いも嫌いです!」


「星良さま。」旺治郎の冷静な声が耳に届いた。


「星良、まるで、その執事に恋しちゃったみたいだね。だけど所詮(しょせん)執事でしょ? 星良と結婚は出来ないし、使用人が主人を好きになるのはタブーだからね。それに、星の姫は本物の王子と結婚しないとね。名前だけ王子の執事は早く出て行ってよ。」


「祖父が不在の今、この家の当主は私です。早く出て行くのは励さんの方です。この本もロイさんにお返し下さい。人を侮辱する励さんとは二度とお会いしたくありません。さようなら、お気を付けて。」


「侮辱しているのは星良だよね。身なりと話し方は、星良も人の事は言えないレベルだと思うし、タバコと香水に関しては個人的な嗜好で、やめろと言われたらやめてもいい。たとえば星良の好むその紅茶をやめるなら、俺もタバコやめるよ。ね? そしたら俺と付き合って、いずれこの家に婿として迎えて貰って、賓海家も安泰でメデタシメデタシな訳だ。」


星良は励に、そんな提案を突きつけられ戸惑った。


ここで「いいえ」と突っぱねたい。


ちらりと並川さんを見ると、考え込んでいるのか、背を向けている。


旺治郎を見ると、ワゴンの上の茶器をぼんやりと眺めていた。


むっかぁあああ!


「投げ出していいですか?」


「はあっ?」ソファーに脚を組んでふんぞり返るように座っていた励が、立っている星良をまじまじと見上げた。


「私、この家の当主になんてなりません。母を人質に取られ、連れて来られて仕方なくこんな恰好でお見合いをさせられただけで、本当はお嬢様でも何でもないし、結婚する気もありません。この家がどうなっても私には関係ないし、お金だったら働いてどうとでもします!」


「星良の言っている意味が良く解らないんだけど。」


「はーい、はいはいはい。蔵持さん、この辺でお引き取り下さい。お見合いは"なし"という事で、ここで聞かれたお話は他言なさらないで下さいね。」


突然、並川さんが捲し立てた。

暁と星 改稿版 3 (23~33話) ※R-18

Posted by 碧井 漪 on  

暁と星 改稿版 ねこ
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キッチンの床の上に正座した星良の膝の上から体を起こした励の唇は、星良の唇を捉えている。


その光景を帰宅した旺治郎は呆然と見ていた。


そこへ、先程出て行った並川が戻って来ると、並川は旺治郎の背後から近付き、ガサッと大きな音を立てて、旺治郎の足元に落ちている"ローズ"のショッピングバッグを拾い上げながら、 「励さん、星良さん、どういった意味でのキスですか?」と二人に視線を向け、旺治郎の隣に並んで立った。


並川は横目でちらりと旺治郎のその表情を確かめた。

暁と星 34 知らなかった事

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暁と星 改稿版 窓
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星良に旺治郎の行き先を訊かれた並川は、僅かに口の端を上げ、表情を緩めた。


一度冷たい態度と口調になったのは星良を突き放す為だったのか、星良が旺治郎の行き先を訊ねた途端、一変して再び丁寧な口調で言った。


「知ってどうするのですか?そこに居ると教えたら星良さんは旺治郎を追いかけて行くのですか?その後はどうなさいますか?」


「その後って・・・」


「元々彼はひと月だけここに居て貰う約束でした。星良さんの縁談を調える為に、このお屋敷に来て貰っていました。」


「ひと月?でも、私がここに連れて来られてひと月はまだ・・・経っていません。」


暁と星 35 あなたしか好きになれない

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アイスクリームを食べ終えると、並川さんが窓辺に立ち、上着のポケットから取り出した携帯電話で、どこかに電話し始めた。


「うん、それじゃあ13時?分かった。」


誰かと13時に会う約束をしているよう。


携帯電話をポケットにしまった並川さんは、椅子に座ったままの私の前につかつかと歩いて来て、「午前の講義が終わったら一緒に出掛けますよ。」と言い出した。


「え?どちらに・・・」


並川さんは片手で頬を押さえながら、「歯医者。」と顔を顰めた。


それが可笑しくて、堪え切れず、少し笑ってしまうと、


「笑って居られるのも今の内ですよ。リューの治療は荒いから。」と並川さんは私を脅かした。


「リューさんの所へ行くのですか?」


歯医者さんと聞いてまさかと思ったけれど、本当にリューさんの所へ行く事になるなんて。


星良は思わずにこりとした。

暁と星 36 どうしようもないって気持ち

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暁と星 36
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並川さんがお財布を上着のポケットにしまうと、

「ではまた来週いらして下さいね。センセも星良ちゃんも。」歯科医院の受付カウンターを挟んで、リューさんが言った。


「えっ・・・?」


確か私は今日で治療終了では?とリューサンを見ると、にこりとして、


「星良ちゃんの方はセンセより早く治療が終わりそうよ。治療が終わったらクリーニングしましょう?」と言った。


並川さんは、「クリーニングなんて余計だ。治療だけでいい。」と言った。


暁と星 37 さよなら

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暁と星 37
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その晩になっても、旺治郎は屋敷に戻って来なかった。


子猫のトイレを旺治郎の部屋から二階の星良の部屋へ移したのにも拘わらず、子猫は旺治郎の部屋へ戻りたがった。


星良は仕方なく、真夜中、自分の部屋から旺治郎の部屋へ子猫を連れて移動した。


旺治郎のお部屋───私のお部屋と違うのは、温度と湿度、それから匂い。


パタン。ドアを閉めると、星良は暖房を点けた。灯かりをベッドランプに切り替えると、


子猫は旺治郎の使っていたベッドに飛び乗り、布団の中へ潜り込んだ。


星良は自分の部屋に戻るか迷ったが、戻っても子猫の事が気になって眠れないだろうと、眠るつもりはないながらも、旺治郎のベッドへ潜り込んだ。

暁と星 38 執事と婚約者

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暁と星 38
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子猫は、抱かれている旺治郎の手からピョンと飛び、ベッドの中で目を閉じているだけの星良の顔へ擦り寄った。


「にゃーん。」


その声とふさふさした毛に顔を擽られた星良はすぐに目を開けた。


窓辺に立つ旺治郎の視線は星良に注がれていた。


星良は旺治郎の視線を受け止めきれず、胸元で丸まる子猫へ視線を移した。


どき、どきどきどき・・・


旺治郎が帰って来た。本当に、夢じゃなくて本物。


起きなくちゃと思うのに、体は固まって動けない。

暁と星 39 この世で一番醜い感情

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「せ・・・」


息を呑んだ旺治郎は、その場に立ち尽くした。


「執事、いい所なんだから、邪魔するな。」


ベッドの上で、励は星良の体を押さえ付けたまま、部屋に入って来た旺治郎を見ようともせず答えた。


「何をなさっているのですか。」


「何って、そんな事一々説明しなくても分かるだろ。」


「分かりません。」


励に反論した旺治郎はベッドに歩み寄ると、星良の上を覆う励の肩を後ろから掴んで、星良から引き離した。


「何するんだよ、執事!婚約したんだからいいだろ?」

暁と星 40 あなたを忘れる日

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暁と星40
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眠れない夜、星良はロイに借りた詩集を読んだ。


恋の詩。


今なら少し解る。この気持ちが。


旺治郎を見る度、感じる事。


これは恋なのだと、私以外の誰かが認めてくれたとしても、この恋は私の胸の中に収めて置くしかないもの。


だから苦しい。


それでも、吐き出して壊してしまう事が出来ない。


2月28日。私は18歳になる。

暁と星 41 モヤモヤ

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暁と星41
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明日は、星良が三年間通った高校の卒業式。


アルバイトが出来るというだけではなく、学費がかからないからという大きな理由から選んだ公立高校。


特に思い入れなどないと思っていた。


勉強とアルバイト、家事までこなしていた忙しい高校生活の間中ずっと、星良は早く卒業して働いて、今より楽な暮らしをしたい、とそれだけを考えていた。


専門学校や大学に進学する同級生達を羨ましいとも考えないようにしていた。


けれど今、星良は一か月前まで知らなかった世界を知り、ゆったりと送れずに終わりを迎えようとしている高校生活を手離す事が急に寂しくなった。


星良は修学旅行にも行けなかった。学費はかからないとはいえ、修学旅行の費用は別だった。往復の飛行機代、宿泊・体験学習費、その他旅行に必要な物を揃えるとなると10万円にも及ぶ。


母には修学旅行の話を伏せ、旅行当日は学校で補習授業を受けた。

暁と星 42 18歳の誕生日

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「あー、それでなのね、星良ちゃん。まだ告白出来ないでいるのは。旺ちゃんの好きな子に遠慮してどうするの?選ぶのは旺ちゃんでしょ。好きなら好きってどんとぶつかりなさいよ。」


「そんな、無理です。私なんて・・・」


「そうね。私”なんて”と考える女の子、旺ちゃんには相応しくないわ。旺ちゃんには真摯に旺ちゃんだけを想い続けられる女の子と結ばれて欲しいもの。」


“想い続けられる女の子”───明日、励さんと婚約する私には、それも出来ない。


もう諦めよう。この恋という気持ちを手離そう。


そうすれば、旺治郎と離れる時、この苦しさが少しは和らぐだろうから。

暁と星 43 ファーストフラッシュ

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「どうぞ。」


緊張を隠しながら、星良は旺治郎の前にティーカップを運んだ。


「こちらも、召し上がって下さい。」


旺治郎は、星良の前にケーキを置いた。


二人同時に椅子に腰を下ろすと、静かなティーパーティーが始まった。


普段のティータイムでは、星良と旺治郎はこうして一緒に紅茶とお菓子を楽しむ事はなかった。


「いただきます。」とカップを持ち上げた旺治郎を、星良は息を潜めて見守った。


こく、こくり。


カチャ。


旺治郎がカップをソーサーの上に置いた。

暁と星 44 卒業式

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暁と星44
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自室に戻った旺治郎は、上着の内ポケットから携帯電話を取り出し、並川にかけた。


20秒程鳴らした所で並川が「はい、オウジ?」と電話に出た。


「先程の件ですが、今、どういう状況ですか?」


『先程の件って、励さんちの事情?』


「そうです。明日の夜の───」


『ああ、明日の夜の婚約発表ね。それは完全に無くなった』


「無くなった?どうして───」


『長男・累の婚約と同時発表だったんだよ。だけど長男が逃げた』


「逃げた?」

暁と星 45 きっと、あと少し

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廊下を突き当たって右側に保健室、左側には職員室があった。


旺治郎は「失礼します」と職員室へ入ると、中に居た男性教諭に「保健室の鍵をお借り出来ないでしょうか?」と訊ねた。


旺治郎に抱えられた星良の両膝の傷を見た教諭は「あちゃー、派手に転んだね。養護の先生、体育館だ。急ぐ?急ぐよね。卒業式始まっちゃうから急ごう。ほんとは駄目なんだけど、僕はここを離れられないから、お願いしていいかな?これ、保健室の鍵。」と保管箱から出した鍵を旺治郎に手渡した後、「消毒薬、大体どこにあるか分かる?」星良に訊ねた。


「分かります。」多分、分かると思った星良が返すと、


「消毒終わったら、保健室に鍵を掛けて、またここに持って来て下さい。」教諭は旺治郎に向かって言った。




暁と星 46 星の命が尽きるまで

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暁と星46
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屋敷に戻ると、並川が玄関先に立って居た。


星良が手にしている賞状筒を見た並川は、

「卒業おめでとう。」と思い出したように言った。


「ありがとうございます。」


「お昼でも食べて話がしたかったけど、ちょっとそういう話でもないから。」と珍しく神妙な顔をしていた。


「急ぎのお話ですか?」


「うん。超特急。」


「並川さん、そのお話の前に星良さまの膝の怪我を診て下さい。」


「膝の怪我?」


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