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sazanamiの物語

恋愛小説を書いています。 創作表現上の理由から、18才未満の方は読まないで下さい。 恋愛小説R-18

そうそうない 335 2019年8月30日のこと(12)

Posted by 碧井 漪 on  

「まだもう少し私達は元気だし、動けるから、東京(あっち)で暮らすわ。日葵達も遊びに来るしね。」

「そう・・・」

「引っ越したくなったら、呼ばれなくても勝手に来るわよ。」

それはまあいいけど、多分母は"勝手に"なんて来ない。

「長男だからって気を遣って居るのか?」父は今頃になってそんな事を言った。

「そういう訳でも無いよ。」

「手が足りない時は遠慮なく言って。来れたら来るから。私一人で。」

「えっ?俺を置いてく気か?」

「だって、あなたここに来ても、ただ啓渡と遊んでお風呂入ってお昼寝するだけじゃないの。」

そうそうない 334 2019年8月30日のこと(11)

Posted by 碧井 漪 on  

偉そうな事は言えない。

現に今だって、両親に来て貰い、啓渡の面倒を見て貰って居るのに。頼んだ訳では無いが、それでも・・・

「親孝行じゃないか。孫の顔、二人も見せてくれて。」

「それはそうですけれど、これから大変ですよ?」

「それは勿論頑張って行くさ。なあ、元啓。」

「う、うん・・・」

「いやあ、良かったなあ。な?母さん。元啓がしあわせで良かったろう?」

「今その話をしてるのじゃなくて────」

縺曖 329

Posted by 碧井 漪 on  

「着いたー!」

公園の門を潜った所で振り返ると、さっき電車を降りた駅が、随分下の方に見えた。

緩いと思って居た坂だったけれど、高低差を見て、そうでもなかったのかなと考えた。

郊外のここは、僕らの住む街より涼しかったが、久し振りに動かした僕の体は、とてもポカポカ温かかった。

そうそうない 333 2019年8月30日のこと(10)

Posted by 碧井 漪 on  

その後、夕食の時間になり、僕は帰る事にした。

「来てくれてありがとう。明日は無理しなくていいから。」

「来るなと言われない限り、明日も来るよ。"美弥"に会いに。」

と言うと、美和はにやりと笑ってからほっぺたを膨らませ、

「あら、私には会いに来てくれないの?」と冗談を言う。

「どうしようかな。」僕は笑って返す。

縺曖 328

Posted by 碧井 漪 on  

駅を出て、キャンプ場併設の公園へ向かった。

繋いで居た手は、改札口を出る前にどちらともなく離した。

寂しいと思うけれど、人目のあるここでは、僕も彼と手を繋ぎたいとは積極的に考えられない。

だからイサダさんになりたいだなんて思ってしまう。

僕が、女の子だったら────だけど・・・仮に女の子だったとしても、自ら手を繋ぎたいだなんて言い出せないでいるかもしれない。

そうそうない 332 2019年8月30日のこと(9)

Posted by 碧井 漪 on  

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これを食べさせるのは簡単だ。だけど、駄目だ─────と、僕は掬ったケーキを美和の口には運ばず、自分の口の中に入れた。

「あーっ!」と悔しそうな声を上げる美和の後頭部に手を回し、僕は美和の口を、まだケーキの甘さの残る口で塞いだ。

「んっ、んんっ・・・!」

びっくりしてバタつかせた美和の右手が僕の胸元を掴むようになった頃、僕は唇を離した。

「と、突然だからびっくりした・・・」

「さっき言ってたから。誕生日プレゼントって。」

「365日分のキス?」

「明日はどうか分からないけど。」毎日なんて無理だと思う。

縺曖 327

Posted by 碧井 漪 on  

「えっ?ご、ごめんなさい!どうしよう・・・」

僕は急いでシャツの袖で皇くんのシャツを擦った。

しかしそれ位では何も変わらない。皇くんの右胸の所には、円形のシミ。

こっそり教えてくれたそれは、僕の涎(よだれ)らしかった。

恥ずかしいのと申し訳ないので、僕の顔はカーッと熱くなってしまった。

「気にしなくていいって。それよりもうすぐ着くよ。」皇くんはクスクス笑い、そう言った。