夜の天気雨 33 - sazanamiの物語
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    夜の天気雨 33

    慣れないコンタクトをして、ブランドの服を着た。


    姿見を見てチェック。これで、良いかしら?


    何とか、どこかの企業のOLさんぽく見えると良いけれど。


    普段より濃いメイクをして、濃紺のスーツの上にコートを纏ったたんぽぽは、夕方遅くに出掛けた。


    駅前でタクシーに乗り、大和の会社の前に停めて貰い、待っていた。


    今夜も残業と言っていた大和。


    会社の外に出掛けるかは解らないけれど、可能性はあるかもしれない。


    どきどきしながら待っていると、私の乗っているタクシーの前方に別のタクシーが一台停まり、やがて会社から出て来た大和が前方のタクシーに乗り込んだ。


    「あの、前のタクシーと同じ所に向かって下さい。」まるで探偵ドラマの主人公になってしまったみたい。


    大和の乗ったタクシーを追い掛けて、到着したのはホテル?


    ここは・・・


    すずちゃんの勤めるホテルだった。


    何で?


    私はこっそりとロビーに入った。


    あ・・・あれは、すずちゃん。


    見つかってしまうのを避ける為に、観葉植物と柱の陰に身を潜めた。


    大和の背中を目で追っていると、すずちゃんの方に向かって歩いて行く。


    大和はすずちゃんと親しげに何かを話した後、すぐにエレベーターに乗って行ってしまった。


    どうして?大和の会社の残業って、このホテルは、すずちゃんは関係ないでしょう?


    私には内緒で、二人が会う理由って、何?


    前に、すずちゃんが言っていた『愛人』って、事?


    そう言えば、お昼に見たドラマはそういうお話だった。


    でも、すずちゃんが、愛人なんてそんな事・・・以前、大和とお見合いをしたからなの?


    すずちゃんも大和が好き?そうだったら、どうしよう。


    すずちゃんは美人で、私よりもしっかりして頼りがいがあるし・・・もしかすると大和は、会社で起こった事はすずちゃんに話しているのかもしれない。


    会社を辞めてしまった私には、話しても無駄と思っているのかもしれない。


    夫の話も聞いてあげられない妻って、失格だわ・・・


    毎日、すずちゃんとここで会ってお食事してお話する方が、大和はしあわせを感じているとしたら・・・・・・


    ロビーの椅子に、一人ぼうっと腰掛けてどれ位経ったのか、トントン、不意に肩を叩かれてビクリとなった。


    え、誰?!振り向きながら腰を浮かせると

    「たんぽぽちゃん?」

    「あ・・・おじさま。」

    すずちゃんのお父さん・盛田のおじさまだった。


    「ロビーに気になるお客様がいらっしゃると連絡を貰って来てみたら、たんぽぽちゃんで驚いたよ。打ち合わせに来たのなら、早く、一緒に行こう。」


    「打ち合わせって、何のですか?」


    おじさまに連れて来られたのは、ウエディングサロン。


    すずちゃんが、おじさまに連れられてサロンに入った私に気付いた。その隣にはサロンのスタッフらしき女性と話している大和の背中が見える。


    「ぽぽちゃん。」


    「・・・たんぽぽ!」すずちゃんの呼びかけに驚いた顔で大和が私を振り返った。


    「大和・・・」


    「どうして、ここがわかった?お義父さんに聞いて来たのか?」


    「え?お父さんって?」


    「ちょうど良かったじゃない、大和さん。ドレス届いたでしょう?着せてみましょう。」


    「ああ・・・そうだな。」浮かない顔の大和。ドレスって?


    すずちゃんに伴われ、奥の部屋へ案内される。


    大きな鏡のあるお部屋。そこに掛けられていたのは、真っ白なウエディングドレス。


    どこかで見たようなデザイン。


    「すごいわ。ぽぽちゃんがデザインしたドレス、とても素敵ね。」うっとりとすずちゃんが言って、初めて気が付いた。


    そうだわ。このデザインは確かに私が描いたドレスと同じ。


    「大和さんが作ってくれたのよ。早く着てみて。」


    どうして大和がこのデザインを?私は確かお義姉さんに頼まれて・・・


    「わぁ、素敵!サイズもぴったりね。良かった。待ってて、今大和さんを呼んで来るから。」


    張り切った声を出す すずちゃん。


    だけど私には何が何だか解らなくて、鏡に映るウエディングドレスを着た自分の姿をボーッと見つめて、今こうしているのは夢かしら?なんて思っていた。


    サイズは確かに合っている。このレースもリボンの位置も私のデザイン通り。


    「・・・・・・」鏡に映った大和。


    振り向くと、複雑そうな顔で私を見つめた。


    「あの、大和・・・これ、は、どういう・・・」


    「似合うよ。とても。だけど、お前に知られる前に全部準備を済ませたかったのに、ごめんな。」


    「準備って、何の?」


    「お義父さんに聞いて来たんじゃなかったのか?」


    「いいえ、ごめんなさい。私、本当は、会社から大和の後をつけてしまって。」


    「そっか。実はさ、たんぽぽのお父さんとお母さんから結婚式と披露宴をするように言われてて、忙しいお前には黙って準備を進めてたんだ。ドレスは昨日出来上がったばかりで、まあ何はともあれ、本番前に一度試着出来て良かった。」


    「結婚式って、誰のですか?」


    「誰の?って、お前と俺のに決まってるだろうが。」


    「だって、もう結婚してしまったんですよ?」


    「入籍した後に結婚式するのって普通だから。」


    「でも、でも・・・」


    「嬉しくないの?」


    「予想してなくて、私、その。」


    たんぽぽの口元に当てた握り拳が震えている。


    大和はたんぽぽの手を掴んで「口紅付くよ?」顔を近付け、たんぽぽの唇に珍しく引かれた紅いルージュを奪いに行った。


    ぽろりと、キスの最中に零れたたんぽぽの涙。


    「や、まと・・・」


    「折角綺麗なんだから泣くな。涙は本番までとっとけ。」


    「はい・・・」










    帰ってから私は大和に、本当に『愛人』さんはいないのか訊いてみた。


    「俺を疑うんだ。へぇ・・・そう。」ふいっとそっぽを向いてしまう大和に

    「ごめんなさい。もう疑ったりしません。」と懸命に謝った。


    「証拠は?」


    大和が口を尖らせたので、

    「証拠?あ、キス・・・しますか?」と訊いてみる。


    「キスー?やだ。」


    「え・・・じゃあ、どうしたら。」


    「お仕置きだな。」


    「おしおき?」









    俺は、浮気を疑ったたんぽぽに酒を飲ませた。


    酔っぱらって「ごめんなさい」と俺に甘えてくる姿を見てやろうかと考えた俺が馬鹿だった。


    ザル・・・・・・


    飲んでも飲んでも酔わないたんぽぽ。


    俺の方が、もう・・・駄目だ・・・・・・


    「大和?大和・・・大丈夫ですか?」


    「え、あ・・・お前、は?」


    「はい、大丈夫です。今お水を持って来ます。」


    何なんだ、あの強さ。たんぽぽのだけ水にすり替えたのか?


    つよ、すぎる・・・たんぽぽ、酒飲んでも、全然・・・酔わないなんて。


    俺のが、限界・・・うーん。


    「大和、大和・・・しっかりして下さい。」










    二月になって、盛大に行われた俺とたんぽぽの結婚式と披露宴。


    「おめでとう、大和。」


    「高橋さん、おめでとうございます。」


    招待した正とソラちゃんが結婚式・披露宴に来てくれた。他にもヨシさん、内藤さん、ノブヒコ、勿論松田も。


    「ありがとう。」


    「ありがとうございます。」


    「おしあわせに。」


    「うん・・・ありがとう。」あ、やばい、泣きそうだよ。


    誰に言われるより、正に言われるのが一番堪える。


    色々ごめん。


    昔の事は忘れたよ。


    そんな風に見える顔をお互いに見つめ、握手をした。


    正とソラちゃん、二人の背中を見送っていると、「大和・・・」と俺の顔を見上げ、きゅっと手を握って来るたんぽぽ。


    「うん。」俺は、瞳を潤ませるたんぽぽの顔を見つめ返す。


    ちゃんといた、俺にも・・・俺を理解し、愛してくれる、運命の相手がいたんだ。


    しあわせになろう。


    今まで出逢った人達の為にも、しあわせになれるなら、もっと、二人でなろうと心の中で誓った。









    ホテルの控室、残っているのは、着替えた大和とたんぽぽの二人だけ。


    「式と披露宴、何とか無事終わったな。疲れただろ?」


    「いいえ、大和こそ。ありがとうございました。準備とか色々・・・」


    「お義父さん、お義母さんと話せた?」


    「はい、海外の妹からもお手紙を貰って。近い内に一度実家に行って来ます。」


    「うん、それがいいよ。」


    「今日は、もう帰っても良いのですか?」


    「うん、そうだな。二次会とかもしないけど・・・」


    「けど?」


    「鈴花がたんぽぽに渡せって。」


    大和が上着の内ポケットから、白い洋封筒を取り出した。


    「お手紙ですか?」


    「さあな。」


    私が封筒を受け取ると、にっと笑った大和。


    何かしら?



    『ぽぽちゃんへ


    ご結婚おめでとうございます。


    この際だから、書いちゃうけど、私はいつもどこかイイ子ぶってるぽぽちゃんが少し嫌いでした。


    あ、もちろん全部嫌いだった訳ではないの。


    ただ正論ばかり言っているなって思っていたの。


    でもね、大和さんに出逢ってからのぽぽちゃんは変わって、すごいなって思う事も多々あって、羨ましくなりました。


    ささやかですが、結婚のお祝いに、良いお部屋をご用意しました。


    大和さんと二人っきりで素敵な夜を過ごしてね。




    追伸:


    今度会った時に、今夜の感想聞かせてね。


    おしあわせに!



    先を越されて悔しい鈴花より』





    封筒の中には お手紙と一緒に、このホテルのお部屋のカードキーが入っていた。


    「大和、これはどうしたら?」


    「どうしたらって、従姉妹からの結婚祝いだろ?ありがたく受け取れば?」


    「ここに泊まるんですか?」


    「嫌なの?タダだよ?」


    「タダ、ですか。」


    カードキーをひっくり返して、じっと眺めるたんぽぽ。


    0円に弱いたんぽぽ。


    「今夜は、一緒に寝よう。」


    「いつも一緒に寝てるじゃないですか。」


    俺はたんぽぽの耳に手を当てて囁く。


    「今夜は、一緒に寝る、もう一つの意味を教えるよ。」


    「もう一つの意味ですか?」


    うーん、ちゃんと解るまで、教えられるかな。


    口で言っても解らないたんぽぽには・・・


    「実践するから。」


    「実践?」


    「詳しくは部屋に行ってから。」


    「はい。」


    俺はたんぽぽを抱き上げて、部屋まで運んだ。


    今夜、お前を全部、愛してるって、伝えるから。


    俺の事、ずっと忘れさせない為にも。



    夜の天気雨33

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    ※2017.3.15 改稿



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      No title

      きゃああ、結婚式素敵ですね!
      誤解も溶けて良かったです。
      新婚初夜、どきどきしながら期待しています~v

      管理人のみ閲覧できます

      このコメントは管理人のみ閲覧できます

      くるみさん コメントありがとうございます*^▽^*

      今夜は「試し愛」明日は「夜の天気雨 R18」でイラストがエロbさん(ibさんのエロ版)です。


      くるみさんのブログの描写には及びませんが、エロnamiのチカラを借りて、「夜の天気雨」も、とうとうエロモード?になってきました。


      ラストまで後少しです。

      コメントありがとうございますm*^▽^*m

      今夜は「試し愛」、明日は「夜の天気雨 R18」で初夜?・・・何度も修正して時間かかりました。

      ただ、短いと感じるかも・・・R表現は勉強不足で難しいです。いつも物足りない感じですみません。もっと修行する時間が必要ですね。


      「試し愛」で目玉が出てしまったと言う事で、驚かせてすみませんでした。

      ibさんには同一人物だから、と伝えてありましたので、「目が同じダヨ(レイヤー5枚ダヨ)・・・輪郭時々崩れるから読者は混乱するカモだけど。」と頑張って描いて貰っていました。


      梧朗は、女性のように線の細い男性をイメージして書きました。


      三人の恋の行方は、エロnamiだけが知っています・・・?!(^^;)よろしければ引き続き応援して下さいm^^m
      プロフィール

      碧井 漪

      Author:碧井 漪
      絵師 西洋蔦(ib)さんと共に更新中


      作品の著作権は
      sazanami&ibにあります。
      無断転載は禁止しています。



      ☆総合目次☆

      *乙女ですって 相関図*

      *近男 登場人物紹介*

      *SとS 家系図*

      *恋愛小説 官能小説 作品一覧
      +覚書 2017.2*

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      2014.10.16設置



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