馮離 B面 7 - sazanamiの物語
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    馮離 B面 7

    馮離7
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    あの日から四年、彼が再び小説を書き始めて三年。


    短いようで長かった俺達の三年。


    何度諦めようかと思った。


    それでもここまで来れた。


    あと一息だ。俺の役目は。


    カチャ。


    賢一は朝臣の眠る寝室へ入った。


    一泊の荷物はあらかじめ纏めてあるが、そろそろ出掛ける準備をしないと、宿の夕飯に間に合わなくなるかもしれない。


    「朝臣・・・」


    賢一は、ベッドに腰掛け、朝臣の耳元で囁いた。


    「ん・・・あれ?原稿チェック終わったの?」


    「担当さん、帰ったよ。」


    「あ・・・」


    朝臣は気付いたみたいだ。俺の言葉が仕事モードから変わった事を。


    目尻を下げた朝臣は、俺の首に手を伸ばし、


    「キスは?」


    両手の指で俺を引き寄せながら、仰向けで目を閉じる。


    薄く開かれた朝臣の唇は、乾燥して皮膚が少し捲れていた。


    時々リップクリームを塗ってやるが、朝臣はそれを好まないから、すぐにこうなる。


    朝臣は俺のキスを待っている。分かっている。


    焦らしている訳ではないが、もう少しこのまま、俺のキスを待っているその顔を見て居たいと願ってしまう。


    悪趣味。


    でも、本当に綺麗な顔をしている。


    外国の血が混ざった彼の顔は彫りが深く、少し中性的で、西洋の童話の中で眠る姫のように美しい。


    "寵姫"だなんて名を付けたからか?


    女性向けの小説を書くようになってから、男っぽさが抜けて来ている気がする。


    文章は元よりそうされている。


    彼が本当に女だったら、俺はこの先も、永く傍に居られただろう。


    こうして居られる時間は、あと僅かしかない――――そんな事を考えると、動けなくなる。


    胸の奥に湧き続ける、この複雑な感情の名前を、何と呼んだらいいのか、まだわからないまま。


    俺は、待ち切れずに開かれた彼の瞳を見ながら、考えまいと くちづける。


    今だけ、溺れてみよう。


    目を閉じて、次に開く時まで、中毒性の高いと判る、この気持ちに。


    ベッドの上で長く くちづけを交わしていると、

    「ん・・・」朝臣が鼻を鳴らした。


    何だ、ねだっておいて もう終わりか──思いながら、合わせていた唇を離す。


    さっきまで乾いていた朝臣の唇は濡れて、紅色に変わっていた。


    俺の唾液・・・穢したようで嫌だった俺は、右手の人差し指と親指を朝臣の唇につけると、指先でそっと拭おうとした。


    「賢さん、何?新しい絡みのネタ?」


    朝臣はどういうつもりで言ったのだろう。


    はぐらかされたと感じる。


    俺が踏み込もうとするのを牽制していると思える言動。


    甘えたいくせに、素直にそうする事を罪に思っている朝臣を可哀相だと思う。


    だから、俺の依存感情は、朝臣への憐みの上にあるのかと思ってしまうんだ。


    朝臣が認めてくれないと、これ以上は俺も進んでは行けないような気持ちになる。


    「唇、荒れてる。リップクリーム持って来る。」ベッドの上に手を突っ張って、腰を浮かせようとしたら、ギシッ、ベッドが軋んだ。


    そうして、ベッドの上から離す寸前の俺の手首を、朝臣は素早く捕えた。


    「いいよ。あれキライ。賢一の・・・」


    「俺の、何?」


    「・・・何でも」朝臣の言葉を遮って俺は、「キスがいいのか?」と口走る。


    「リップクリームよりは。」


    「可愛くない答え。」と、もう一度、彼にキス出来る理由を得た俺の口の端は上がりそうになる。


    だから慌ててキスをして誤魔化した。こんな顔を見られたら、言い訳が立たない。


    キスをねだる彼よりきっと、俺の方がキス魔かもしれないと、自覚しつつあるこの頃。


    憐んで欲しいのは俺かもしれない。


    才能なんて何もない俺の事を彼が必要としなくなる未来に怯えている。

    だから俺は、彼の才能を隠して居たいんじゃないかと実は考えているのではないかと、俺自身の心を最近疑い始めた。


    昔のような小説を書かせる日は、そう遠くないのに、俺が、自分で自分の目を曇らせている、のかもしれないと。


    その日が来たら、俺はもう朝臣にとって要らない人間になる。初めから、そう決めていた。


    『藤野朝臣』が復活を遂げたら、離れたくないだなんて道理はもう、通らなくなる。


    この暮らしがあと僅かなものになるのなら──苦しかったあの『始まり』の頃が、懐かしくもなる。


    俺はあと何回こうして、彼にねだられたキスをする事を許されるのだろうか?



    ※16日23:50修正
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    ジャンル : 小説・文学

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    碧井 漪

    Author:碧井 漪
    絵師 西洋蔦(ib)さんと共に更新中


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    ☆総合目次☆

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    2014.10.16設置



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