百世不磨の心 81 (ムーンライトノベルズ96話) - sazanamiの物語
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    百世不磨の心 81 (ムーンライトノベルズ96話)

    百世96
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    「ねぇ金ちゃん、何で突然キスしたの?」


    「好きだからに決まってるだろ。」


    好き、それを嘘だと思いたいか、本当だと思いたいか。


    恋って、結局思い込み?


    金ちゃんが私を好きなのも、私が金ちゃんを好きなのも、思い込みなんじゃない?


    思い込み・・・だとしても、金ちゃんはかなり頑固だから、きっとそれを簡単には認めてくれない。


    私だって思い込んだら一直線なところはある。


    「好きって言われても、よくわからな・・・」


    「琥珀。俺は今もまだ琥珀に恋してる。琥珀は俺のこと、どう思ってる?好き?それとも」「わから、ない・・・これが恋なのかどうか、今はもうわからない・・・」


    琥珀は頭を抱えるようにして、両耳を塞いだ。


    「わかった。それなら、俺が死んでも何とも思わないって言って。そうしたら諦める。百世、好きでいることも忘れる。」


    『百世』『好き』なんて、無理。


    ずっと好きでいるなんて無理。


    でもね、金ちゃんが死んでも何とも思わないなんて、もっと無理。


    確かに、忘れられなかった―――それは、金ちゃんのことが好きだった・・・ってことなの?


    みゆきちゃんに感じる好きとどう違うかって説明出来ないけど、違うってはっきり判る・・・みゆきちゃんの方がやさしくて、私をずっと支えてくれて、これからも一緒に居たいと思える人なのに・・・でも違う。今、ここにある”感情”と違う・・・


    金ちゃんを見る度、心の奥に炎が燃え盛っているように熱くなって、チリチリ、ジリジリ、私の心を焦がして行く感覚に呑まれ続けて、終わりが見えない。


    目を見つめられるだけで息が苦しくなって、他のことを考えられなくなる。


    「教えてよ、金ちゃん。好きって、どんなカンジだったっけ?」


    「こんな漢字。女偏に子どもの子。」金矢が指で宙を辿った。


    「その漢字じゃなくて、好きって、どういう感情かってこと・・・」


    「離れていても忘れられずに想っていることを好きって言うんだよ。」


    断定的に言われて、そうなのかなって、心が傾く。


    「もう一回・・・」教えて、と言おうとした口を、もう一度金ちゃんにキスで塞がれて、頭の中がクラクラして真っ白になりかけた時、また抱きしめられた。


    「でも今の俺は、好きと言うより愛おしいよ、琥珀のこと。」


    夢の中でも聞かされることのなかった言葉が、私の耳元で、金ちゃんの口から熱い息と共に吐かれた。


    嘘、じゃない、夢でもない・・・まさか今日、こんな風に金ちゃんに再会するなんて思ってもみなかった。


    気持ちがふわふわ舞い上がって、金ちゃんも私も、懐かしさから昔に戻ったみたいに感じてるだけかもしれない。


    「・・・そう、思い込んでるだけかも。恋じゃないのに、愛とも違うのに、ただ懐かしいから、そんな風に・・・」


    金ちゃんに、『そうかもな』って認めれたら傷付くくせに。


    ただ、金ちゃんに言われたことをそのまま信じて、あとで違うと思い知った時、傷付いて泣くのが怖いんだ。


    「俺が本気だって証明しようか?」


    「証明って、どうやって?」


    「これが愛なのか、そうじゃないのかってことを。」


    キシ、ギシ、キシッ・・・


    金矢は琥珀を抱きしめたまま、台所の床板の上を進み、パシン、と襖を開けて更に、


    ず、ずずっ、ず、ずっ・・・


    生徒の集まる二間続きの広い畳の部屋の上へ進んだ。


    いくつかの机と座布団が壁際に片付けられていたが、長机一脚に座布団が三枚、先刻、鳥飼快砥と琥珀、金矢の三人で面談した際のものだけが残されていた。


    金矢は台所側に二枚並んだ座布団の上に琥珀を座らせ、


    パタン、


    琥珀の上体を抱えたまま、座布団の上に静かに倒した。



    仰向けにされた琥珀の体の上を覆う恰好の金矢の姿は、灯かりを遮り、琥珀は陰になっている金矢の顔を下から仰ぎ見て言った。


    「あの、一旦、ちょっと、待って下さい。」


    「待って、って?」


    「何をしているかお分かりですか?」


    「勿論。」


    金矢は突っ張っている両腕を曲げ、顔をぐぐっと琥珀に近付けた。


    「ちょっ・・・ダメ!」


    琥珀がふいっと顔を背けると、金矢の唇は琥珀の右の顎骨の上に落とされた。


    どきん、どきどきどき・・・


    静かな部屋の中で、自分の胸を打つ音と、金ちゃんの呼吸の音しか聞こえない。


    頬が熱くて、息が出来ない。胸がギュッと苦しくなって、でも、嫌じゃなくて・・・


    どきん、どきん、どきん・・・どうしたらいいの?


    この雰囲気に流されたら、自分の気持ちを確かめることなんて出来なくなってしまう。


    恋、愛、それとも違うものなのか・・・


    目をきゅっと瞑ったら、体の上にあった金ちゃんの気配がふっと無くなった。


    琥珀がそっと目を開けた時、金矢は、座布団の上に押し倒していた琥珀の体を引き起こした。


    正座した琥珀は、スーハースーハー、と息を整えたあと、金矢に向き合ったが、視線は合わせられずに、ぐっ・・・膝の上に乗せて握り締めた両こぶしに視線を落とした。


    「・・・・・・」金矢は黙っていた。


    何で急に黙り込むの?


    突然、抱きしめたり、キスしたり、挙句、押し倒したりして、それなのに何も言ってくれなくなるとか、どういうつもり?


    「えっと、あの・・・私・・・」


    「・・・・・・」


    「何か言って、くれませんか?」


    「・・・・・・」


    『何かって、何を?』


    顔を上げて金ちゃんの目を見たら、私にそう訴えかけられている気がした。


    だからって、黙ったまま、無視?


    勝手にどきどきしちゃう私をこのままにしないでよ。


    さっき『ダメ!』って止めなかったら、避けなかったら、キスして、そしてそのあと・・・


    どっきん。どっきん、どっきん・・・


    さっき三年ぶりに再会したばかりなのに、その間の時が止まって、丸ごと消えて、変わらない金ちゃんの前で、昔に戻ったみたいに錯覚してる。


    銀矢先生の結婚式・・・金ちゃんと別れたあの日を迎える前に見た夕陽、


    そしてさっき見た夕陽が、そのクリスマスイブ前日の一緒に見た夕陽まで戻ったみたいに感じてる。


    どきんどきん、鳴りやまない胸の奥がどんどん熱くなって、目の前に正座して、少し俯く金ちゃんの腕に再び抱きしめられたくなっている。


    もう一度、『好きだ』って金ちゃんの口から聞きたい。もう一度・・・


    もしも聞けたら、私は―――


    「あのっ、青木先生!」


    琥珀は、黙り込んだ金矢に対し、『金ちゃん』と呼べず、面談時と同じく『青木先生』と呼んでしまった。


    それに反応した金矢が、畳に落としていた視線を上げ、琥珀と目を合わせた。


    どきっ!ううん、どきどきしている場合じゃない。


    私、まだ100%の確信は持ってないけど、90%位は間違いないと思うから、言ってみるね。


    あとの10%は、青木先生が判断して下さい。このドキドキは多分・・・昔よりも確実に、そうかもって思える。


    「私も、多分まだ・・・青木先生に"恋"してると、思います・・・」


    「・・・・・・」


    琥珀に向かい合って正座していた金矢は、はーっと大きな溜め息を吐いた後、突然、ぱたりと右側に体を倒した。


    「青木先生?どうしたんですか?大丈夫ですか?」


    驚いた琥珀は、正座を崩して金矢の傍に膝を進めた。


    金矢の左肩に置かれた琥珀の手を、金矢は右手で包みながら、


    「琥珀、いや、萩原先生に青木先生と呼ばれる日が来るなんて、今日はすごい日だな。俺の人生で最良の日になるかもしれない。」と下から琥珀を見上げて言った。


    「最良の日って・・・そんな。」


    「よし、最良の日にしよう。萩原琥珀さん。俺と」


    琥珀は息を呑んだ。


    『付き合って下さい』


    そう言われたら、『はい』と答えなくてはならない?と考えた。


    付き合う、みゆきちゃんには申し訳ないけど、嘘を吐くよりいい。


    認めよう。私は金ちゃんにまだ恋してる、と。


    『はい』と答える覚悟を決めた琥珀が息を小さく吸った時、金矢が言った。


    「俺と、百世不磨の家族になりましょう。」


    「・・・へ?家族?」


    「承諾してくれるなら、はい、とお答えください。」


    「はい、って、え?百世不磨の家族って何ですか・・・家族?え?」


    「俺と結婚して、家族になって、それで・・・叶うなら、百世先まで命を繋いで欲しいって意味だよ。」


    「百世先までって・・・」


    ぐいっ、金矢は掴んでいた琥珀の手を強く引っ張ると、琥珀は畳の上にうつ伏せに倒れた。


    とすっ。


    そして畳の上に倒れたままの金矢の手が、同じく畳の上に倒された琥珀の背中をぐるりと包んだ。


    「琥珀と俺の子どもが欲しい。ただ、俺の体が体だから、もし望めなかったらその時は、教え子達に、繋いで行って貰う。」


    「金ちゃん・・・」


    「俺、もう琥珀を追い掛けないで待ってる自信ない。今度、琥珀が俺の前から逃げたら、走って追い掛けるから。」


    「駄目だよ、それ・・・死んじゃうよ。」


    琥珀は右手で、金矢のシャツの左胸をぎゅっと握った。


    死んじゃ、やだ。


    私・・・金ちゃんに生きていて欲しいよ。


    琥珀は涙を浮かべた瞳で金矢を見つめた。




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    碧井 漪

    Author:碧井 漪
    絵師 西洋蔦(ib)さんと共に更新中


    作品の著作権は
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    無断転載は禁止しています。



    ☆総合目次☆

    *乙女ですって 相関図*

    *近男 登場人物紹介*

    *SとS 家系図*

    *恋愛小説 官能小説 作品一覧
    +覚書 2017.2*

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    2014.10.16設置



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