近男 -Kindan- 53 - sazanamiの物語
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    近男 -Kindan- 53

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    『結婚したい相手、見つかったら知らせるから』


    流星から放たれた言葉に、胸の奥を抉られたみたいだった。


    零しそうな涙を堪えるのに必死だった。


    今、立って居る場所は夢の中かもしれないと、混乱した。


    流星が、結婚する―――誰かと。


    真っ暗な部屋のベッドに伏した輝美は、枕に顔を埋めた。


    遣る瀬無い。息が苦しくて、焦燥が募る。


    そうよ、いっそこのまま息が止まればいい。


    流星のことを考えなくて済む世界に行ける。



    私の気持ちを悟られないよう、

    『これから見つけるわ。結婚・・・考えてみる』

    そんな事を言った。言いたくなかった。


    でも、流星に向かって"結婚なんて考えられない"・・・とは言えなかった。


    誰とも結婚したくないけれど、誰かと結婚しないと、


    あなたと結婚出来ない私は、苦しくて狂ってしまうかもしれない。


    あなたの結婚に、心から賛成出来ないままでいたくない。


    忘れたいの。


    あなたをワスレサセテくれる人は、誰でも同じ。


    快楽を与えてくれる人を探そう。



    誰でもいい、そう思い込んで一緒になれば、それがいつか愛に変わる日が来ると信じよう。


    女は男を愛するように創られている。


    だから、私はきっと愛せる。あなた以外の男も愛せる筈。


    あなたを追わなくて済むように、私とあなたの間に立ってくれる人なら、どんな人でもいい。







    翌日・火曜日から輝美は、密かに婚活を始めた。


    まさか一生することはないと思っていた結婚活動。


    でも、婚活って具体的にどうすればいいのか・・・と考えている内に、火・水・木・金。明日は、また土曜日になってしまう。


    結婚に関する様々な情報に敏感になった結果―――


    結婚相談所は35歳以上の女性が登録しても厳しいらしいと、社内で女子社員達が話しているのを聞いた事があるのを思い出した。


    合コン、と今時は言わないその集まりに、年下の女子社員から私も誘って貰うというのは難しそうね。


    こんな時、小説やドラマでは、親戚や上司から、お見合いのお話があったりするけれど、今日現在、私の所にそういったお話が来る予定も予感もございません、でした・・・


    はぁーっ、心の中で溜め息を吐くのは、今週何回目かしら。ずーっと胃が重い。


    結婚なんて―――”なんて”と思ってしまう時点で結婚を”大事”に考えていないわね。


    したくないのにする、結婚。


    “したくない”?


    正確にいうと、


    結婚は”面倒”、”億劫”、”不要”、

    そして”未知”=”怖い”生活。


    結婚生活について色々な所から聞きかじった話を集約すると、

    お互いの事を知り尽くし、新たな魅力が発見出来なくなった以降、受け入れられない部分が目に付く度に、だんだん愛情が薄れて行くというのが結婚生活・・・らしい。


    それは、仮に私の結婚相手が流星と考えても、愛情を長続きさせるのは簡単な事ではないと思える。


    私には、流星への愛情が薄れて行かない自信があるけれど、流星は違うと思うのよ。


    あと4年で40歳になった私が、いつまでも流星から愛されていると思えない・・・現時点で愛想尽かされて、家庭内別居みたいになってしまっているというのに、いつ飽きられて、出て行かれてしまうかと思うと・・・怖い。


    「塩谷さん。」


    はぁっ・・・塩谷・・・流星も塩谷・・・


    「塩谷さん。」


    トントン、と背中を叩かれながら、ボリュームを下げた高音ボイスで呼びかけられた輝美は、机に向かっていた顔を上げ、バッと勢いよく振り向いた。


    輝美を呼んだのは、溪と共に受付業務に就く鈴木りいなだった。


    「はい・・・鈴木さん。どうしました?」


    いつも見るりいなとは違うと輝美が感じたのは、りいなが制服から私服に着替えていたからだろう。


    りいなの後方、突き当りの壁に設置された時計を見ると、終業時刻を20分過ぎていた。


    いやだわ、私・・・随分ぼんやりしていたのね。


    村井部長代理と加集課長代理は他の部の部長達と一緒に、今夜は外で懇親会だと、定時前に総務へ向かった。


    異動に関する送別会とも聞かされている。


    確か営業部の安藤部長が・・・「・・・という訳なんですけれど、いかがですか?」


    りいなに訊ねられた輝美だったが、肝心な部分を聞き逃していた。


    「え、ええ、ごめんなさい。何かしら?ぼんやりしてしまって、もう一度お願いします。」


    「新しく入った方の歓迎会といいますか、飲み会なのですけれど・・・塩谷さんが必要なんです!」


    「え?飲み会に私が必要って、どういうことかしら?それと、新しく入った人って、新入社員の入社式は来月なのに・・・?」


    「その、新しく入った方というのは社員食堂の契約社員で、当社の社員ではありません。」


    「でしたら、私が歓迎会に参加する必要はなさそうですけれども?」


    「そう・・・なんですけれど・・・お願いします!今夜少しでいいですから、お時間作って頂けませんか?」


    鈴木さんの話によると、

    その新しく食堂に入った契約社員というのは、20代前半の細身長身の男で、歓迎会はしなくていいと言ったそう・・・だけど、周りがその男と飲みたいと騒ぎ出したらしく、

    どうしてもと言われた男は、じゃあ・・・と条件を出した。


    それが、『塩谷』という名前の人が参加するならというものだったそう。


    『塩谷』という名の人が参加するならば、その男も友人を呼ぶと言った。


    もしも私が断ったら、その飲み会というか合コンというか、婚活会合?の計画は流れるそう。


    おかしい話よね・・・


    輝美がりいなに何故『塩谷』なのか訊ねると、わかりません、だった。


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    プロフィール

    碧井 漪

    Author:碧井 漪
    絵師 西洋蔦(ib)さんと共に更新中


    作品の著作権は
    sazanami&ibにあります。
    無断転載は禁止しています。



    ☆総合目次☆

    *乙女ですって 相関図*

    *近男 登場人物紹介*

    *SとS 家系図*

    *恋愛小説 官能小説 作品一覧
    +覚書 2017.2*

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    2014.10.16設置



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