SとS 20 (BL) 選ばなかった道に置いて来た恋心 - sazanamiの物語
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    SとS 20 (BL) 選ばなかった道に置いて来た恋心

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      お風呂から上がって、お茶漬けでお腹を満たした後、

      一緒に寝たいとねだったら、

      寝間着姿の監督は、ゲストルームの大きなベッドの俺の隣に横になってくれた。


      さっきの今で、本当は食事中も目も合わせていられない程 恥ずかしかったのに、

      だけど、まだ離れたくない気持ちの方が上回ってしまった。


      明日になったらもう・・・今夜の事は夢になる。嫌だな、だけどしょうがない。


      せめて最後、今夜だけ夢のような、朝が来るまでの甘い現実に浸っていたい。


      「電気消すぞ。」ベッドランプに手を伸ばした監督が、スイッチの上に人差し指を載せていた。


      「はい。」


      パチッ。


      耳に届いたスイッチの音と共に、暗闇が訪れた。


      ドキドキ、ドキドキ、ドキドキ・・・


      監督の隣で眠るのは今までも何回かあったけど、特別変な感じがする。


      さっきの事は嘘みたいな出来事で、信じたいけど、でも・・・


      監督に相手にされたいけど、される訳がないと思っていた。


      今も監督の心を掴んでいる父が羨ましかった。


      俺の好きな人は、俺の力では超えられない魅力を持つ父を、きっと今この時も愛している。


      俺はそれでも監督が好きだ。父の代わりでいいから、俺の方を向いて欲しくなる。


      以前思い切って告白したけど、当然フラれて、忘れようとしたけど忘れられなくて、

      今夜・・・というかもう昨夜になったけど、カラダも心も監督に救って貰えて、俺はすごく楽になっていた。


      監督を好きだという気持ちをこの心の奥に秘め、この先も何も言わずにただ想っていようと決めた。


      今夜限りもう会えなくなっても、監督の事を好きなのは好きなまま、変えられそうにない。


      ただの一ファンになって、いつまでも遠くから応援するだけなら、誰にも気付かれないし、咎められはしない。


      寝息が聞こえる。監督の・・・寝息・・・


      すーすー、すーすー・・・


      すーすー、すーすー・・・






      寝息が聞こえる。


      瞬太朗は眠ったか。


      実は起きていたセイは瞑っていた目を開けると、曲げた左肘を左耳に当てた。


      肘枕をした姿勢のまま、暗さに慣らした目で、自分の隣で眠る瞬太朗の寝顔を見た。


      昔の、梧朗の時と違う。


      瞬太朗に底知れぬ儚さはない。


      俺しか信じられず、俺への愛を失くしたら脆く崩れ落ちそうだった梧朗と違って、家族の愛を知っている。


      このままなら、一人でも遠くへ巣立って行ける瞬太朗。


      だがその手を、俺が掴んで引き留めたくなっている。親でもないのに。


      他の所へ行くなと引き留め、すべて教えてやりたい衝動が芽生えてる。


      もしも、瞬太朗の求めている答えが俺の中にあるというのなら、俺が・・・


      しかし、瞬太朗が俺ではない他の人間を求めようと考えるのなら、それは出来ない。


      求めている相手が俺ならば、教えを乞いたい相手も俺ならば、俺が教えたい。


      世の中のキタナイ事も、理不尽さも、知って行く過程を、その成長を、俺が傍で見守って行きたい。


      男と女だったら、恋人、パートナー、夫婦、社会的に認められた関係を簡単に手に入れられる。


      男と男だったら・・・二人で居るのが難しいのは何でなんだろう。


      40と18の男、どんな関係か知りたがる世間の好奇に、恋人ですという明言は波紋を広げるだけで、認められはしない。


      セクシャルマイノリティは少ないから異端扱いを受けやすい、海外に比べて日本では特に。


      たまたま好きになった心が、男同士だったというだけ。


      瞬太朗の相手は女か、俺以外の男か、俺。


      俺の相手は女か、瞬太朗以外の男か、瞬太朗。


      もしも瞬太朗が俺を選び、俺も瞬太朗とする事を望んだら―――叶う?


      40にもなって、そんな道理が通る訳ないって考えたけど、齢を取るにつれて、人間はだんだんワガママになって行き、道理の方をどうにかしても通したくなる。


      映画を作る環境、人脈、家、車、知名度、財産、一通り手に入れて、時間以外、他に欲しい物はないって思ってた。


      独身だからって孤独を感じる程 暇ではないし、結婚してなくたって抱ける女はいる。


      子ども・・・子どもは小さなのは苦手だ。


      梧朗のように、俺にも大きな息子が三人居たら、楽しかっただろうと今になって思う。


      その内の一人、瞬太朗は息子というより、人として、特別な感情を抱いている相手。


      世間ではいけないというが、いけないもなにも、俺の瞬太朗への想いは変わらない。


      幼い頃から見て来た。


      梧朗と姫麗の大切な息子。


      特に長男の瞬太朗との付き合いは俺にとっても特別だった。


      俺達三人の護りたい存在である大切な瞬太朗。


      俺の心にかけがえのないものを与え、影響を及ぼす人間に成長した。


      その瞬太朗に求められて、応じないでいる余裕は、俺にもうなかった。


      抑えても、昔、梧朗の時より強く求めてしまうのはどうしてか。


      快楽の刺激じゃない、心安らぐ気持ちが欲しい。


      家族、俺は求めないと思っていたそれを、今頃になって求めてる。


      何の因果か運命の悪戯ってヤツか知らないが、昔愛した男の息子に、愛を与えたくなっている。


      見た目も似てないのに、ここで、おんなじような言葉を梧朗に近い雰囲気で吐かれて、おかしくさせられた。


      本当はこんな事、瞬太朗を大事に思うのなら、その気持ちに、大人として俺は応えてはならなかったのに、一人の人間として抗えなかった。


      梧朗の息子だから、って範疇を超えた。


      真っ直ぐ過ぎる純粋な瞬太朗の想いに心を貫かれて、

      お前がどこの誰でも、映画を撮るだけのこの命を捨ててもいいだなんて一瞬思った。


      今までは、監督、監督、と俺を慕ってくれる親友の息子、それだけの存在だったのに、俺が自分の気持ちを認めた今は、心配で、愛おしくて、目の届く傍に置きたいと願ってしまう。


      突き放してから二か月、でも俺は心のどこかでずっと待っていた。


      再び俺を求めてふらりと現れる瞬太朗の幻を何度も見ては、しっかりしろと頭を叩き続けた。


      娘だったら、間違いなく結婚を申し込んでいただろう。一緒に居る一つの手段として。


      だけど相手は男だ。いくら好き合っても結婚は出来ない。


      これからは、本当に瞬太朗が望むなら、俺の手許に置きたい。


      大事にしたい。


      護りたい、世の中の様々なものから。


      傷ついても、痛みを隠して立ち上がる瞬太朗、お前の泣ける場所を俺の前に作ってやりたい。


      俺の前でだけ泣けと、お前の涙も傷も全部受け止めてやりたい。


      その役目は本来、瞬太朗の親である梧朗と姫麗のものだが、俺がどうしても欲しくなる、その権利を。


      頭がおかしいと自分でも思う。


      宇宙人と罵られても何ででも、これからの瞬太朗の成長を傍で見ていたくなった。


      唯一、俺を慕ってくれるその愛しい存在を失ったら、寂しくなる。


      少し前の俺は、そんなのは我慢するか他のもので埋めればいい、そう考えようとしていた。


      けれど二か月過ぎて判った。


      瞬太朗の代わりなんてなく、離れている間はどうしているかと心配が募り、今日、偶然瞬太朗を見た時、俺は・・・瞬太朗が再び俺を必要としてくれる日を待ち望んでいた事がはっきりした。


      男子トイレに入った瞬太朗を追った怪しい女が瞬太朗に触れている時、思わずカッとなった。


      あいつにはあいつの人生がある・・・その選択を俺が決めていい事じゃない・・・だけど。


      嫉妬だ――――俺の方が今日出逢ったばかりの人間よりも瞬太朗との付き合いはずっと長い。


      今まで見守って来た存在を、簡単に穢し、横取りしようとする奴に嫉妬した。


      そんな奴に滅茶苦茶にされる位なら、俺が――――。


      瞬太朗は俺の事が好きだったんだ。俺だって――――瞬太朗が好きだ。


      今夜、この家へ連れて来た瞬太朗は、以前よりもどこかよそよそしかった。


      突き放したから怒ってる、それとも俺の事なんて興味が無くなったのかと考えていたら、違った。


      瞬太朗は、俺の事を必死に忘れようともがき、自らを傷付けていた。


      わかった、もういい、俺が悪かった。


      俺が、間違った道だと思っている道へ瞬太朗を連れて来るのを怖れていただけだ。


      だけど今は、お互いの気持ちを確かめた今は、この手を離して別々の道へ進む事の方が怖くなっている。


      このまま離れるのは嫌だ・・・俺は、お前を満たして、護りたいのに。


      こっちへ来い。俺の手の中に。


      俺でいいんなら、ずっとお前の手を握って、一緒に歩いてやる。


      お前から俺の手を離して、俺のいない道へ駆け出したくなる日まで、俺と一緒に進んでくれ。


      選ばなかった過去が、あの日より未来の今になって俺の手の中へ戻って来た。


      俺を忘れなくていい、いや、俺を忘れさせたくない。


      お前のココロとカラダ。先に簡単なカラダの方を満たして、ココロはそれから。


      俺達は男だから女の絶頂感を知らない。


      女のそれはこんな感じかなって想像するだけしか出来ないけど、男のなら解る。


      今どう感じてるのか共有出来る。


      男は演技が出来ない、イったかどうかすぐ判る。


      女の体内と男の体内は違う。どっちのナカでもイクのは同じだけど、心情的に違う。


      同性同士、本来すべきじゃない禁忌を冒してる背徳感に囲まれながら、それでも相手を求めてしまう狂気と恐怖が隣合わせだ。


      戻れ、戻れない、だけど行き止まりの恋情。


      どっちが勝つか、成り行きに委(まか)せるしかない。


      男が男も喰らう肉欲、間違ってないと思うし、ただそれだけじゃないと主張したくなる。


      俺は梧朗以外の男とは関係しなかった。欲しいのはカラダだった訳じゃない。


      抱くなら女、ゲイじゃない・・・男同士で恋愛するって、もうないと思ってた。


      恋をしないのは、面倒だったのもしれないし、梧朗を忘れたくなかったのかもしれない。


      それなのに、選んだ道の先で出逢ったのは、あの日選ばずに置いて来た恋を思い出させる瞬太朗だった。


      梧朗に娘が産まれたら、サツキにそっくりだったら揺れるかも知れないな、とは、姫麗が妊娠した時に、梧朗と冗談で話していたが、

      産まれたのは男で、しかも姫麗に似ていたから、そんな感情を抱くどころか、普通に親友の息子として接して来た。


      瞬太朗も、俺の事を父親の親友として見ていた・・・と、告白されるまでは思っていた。


      突き放したのは、俺に気持ちがあったからだ。なかったら焦る事はなかった。


      怖(おそ)れた。


      まだ人生これからの瞬太朗に好きと言われて、人生半分過ぎた俺が応えてしまったら、これからのお前の未来を潰す事になる、そう考えたら怖くなった。


      けれど、俺は、瞬太朗への想いをどこかで捨て切れなかったままでいた。今頃どうしているのか、気にしないように努めた。


      瞬太朗を思うなら・・・関わるな。


      映画公開までは良かった。


      公開後、落ち着いて来た頃に、映画館に足を運ぶと、同じ年の頃の学生を見ては瞬太朗を思い出し、気になり始めた。


      俺の映画を観ただろうか?どんな感想を抱くかな?


      俺の事を今はどう・・・いや、もう冷めたんだきっと。二か月も顔を出さないのが答えだ。


      俺の錯覚は終わった。互いに恋だと勘違いしただけだった瞬太朗と俺、ということで決着を付けよう。


      ほら見ろ、瞬太朗の事ばかり考えているから、あの学生がまるで本物の瞬太朗のように見えて来た・・・・・・でもそれは本物の瞬太朗だった。


      そうして今夜、再会した瞬太朗と話す内、


      昔、無理矢理引き千切って捨てた筈の激しい恋情が蘇り、お前に向かって走り始めてしまった・・・もう止められそうにない。いや、止めたくない。





      『お前を受け止めるから、俺の傍に居てくれないか?』

      『父の代わりですか?』

      『違う』

      『それでもいいです』

      『嘘つくな』

      『だって』

      『俺がいなかったらお前は生まれてない、だからこうなる運命だったと思え。俺がお前を守って行く。それが俺の使命で運命だ――――――』



      "俺がいなかったら生まれてないだなんて烏滸(おこ)がましい"・・・・・・ああ、夢、か。


      ふぁーっ、今何時だ?


      セイはベッドの中であくびをし、上半身を起こした。


      喉乾いたな。


      齢のせいか、仕事で睡眠が不規則だったせいか、とにかく朝まで熟睡ってのは、最近出来なくなった。


      ふと隣を見ると、さっきまでそこで眠っていた筈の瞬太朗が消えていた。


      窓を見ると、まだ夜明け前で暗い。


      こんな時間に一人で外に出たっていうのか?


      心配になったセイは、急いでゲストルームを出た。





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      No title

      今回のセイの言動は、今まで 頑なに拒絶したのは そういう訳だったの?

      現在に至るまでの セイの心境を 今日知れて 良かったです。
      だってぇ あまりにも急な展開で~~~
      まるで劇的ビフォーアフターを見ている感じでしたもの( ̄∇ ̄*)ゞエヘヘ♪


      瞬太朗が、悟朗に似ていないから…と、常に その事に悲観してしたけれど、
      「似てないから 悟郎と重ね合わせないから 良かったんじゃないの!?」と、思いますねー

      セイの方は、もう 大人とか 何とか・・・の屁理屈&体裁を無視して  暴走寸前!
      さて 瞬太朗は、それに気づくかしら?
      そして 気付いたら どうするのかしら?
      ぷぷ・・・・(* ̄m||電柱||o_ _) ノ彡☆ばんばん!...byebye☆

      けいったんさん ありがとうございます(//x//:)

      今回の20話は書いたけど上げたくないなと思いつつ、上げました。

      長いですよね。飽きますよね・・・けいったんさんを始め、読者の皆様には申し訳なく・・・


      >セイの心境を 今日知れて 良かったです。

      と仰って下さいました事が唯一の救いです(21話投稿ボタンを押せそうです)。



      21話はまたR-18です。ご指摘通りセイが暴走します。もうそろそろ止めないであげたくなりました。


      似てる似てないのくだりで、光樹が出て来るのを(当初から)予定しています。本当はもっと絡めるつもりでしたが、「相違相恋」が進まず、ネタバレになる関係で光樹を全然出せませんでした。



      そしてまたR(エロ)を出すと・・・ブログのランキングも下降して行く事でしょう・・・φ(*T-T)bフフフ・・・



      ランキング順位を落としても、コメント頂きましたので怖れず(?)全力でBL書きます。もう少し練り直して、書き上がり次第の更新にします。



      セイはこの後「試し愛 最終話」の気持ちをぶっちぎって来ます。


      20年以上経って、ようやく大人ぶらずに素直になってしまう時が来てしまいました、ようです。


      運命はそこへ繋がってたのか、と作者も予想してなかった話になって来てしまいました。


      お愉しみ頂けましたらしあわせです。




      今夜は「哲」でまたクドく、一人称から脱却出来ないまま、進めます。


      幼馴染み達がトライアングルな関係へ向かう・・・かもしれません。




      プロフィール

      碧井 漪

      Author:碧井 漪
      絵師 西洋蔦(ib)さんと共に更新中


      作品の著作権は
      sazanami&ibにあります。
      無断転載は禁止しています。



      ☆総合目次☆

      *乙女ですって 相関図*

      *近男 登場人物紹介*

      *SとS 家系図*

      *恋愛小説 官能小説 作品一覧
      +覚書 2017.2*

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      2014.10.16設置



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