乙女ですって 140 (R-18) "K"の恋の行先 - sazanamiの物語
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    乙女ですって 140 (R-18) "K"の恋の行先

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      自分の部屋で溪の手帳を一通り読み終えた加集は大きな溜め息を吐いた。


      そして、先刻の溪に別れを告げられた時の事を思い返していた。


      溪ちゃんにセックス出来ないと言われた俺は・・・









      ・・・えっ?


      一生、セックス出来ない?


      溪ちゃんはその理由を詳しく話してくれた。


      昼間、美樹ちゃんに聞かされた内容より詳しく・・・性感染症の原因菌が卵巣まで達し、入院して手術を受けて苦しかった時の事を。


      そのトラウマを乗り越える事が出来ない――――どうにかならないかと考えたけど、どうにもならないと思っているから溪ちゃんは俺との別れを選んだんだって事は理解した。


      その話を聞かされた時の俺は、溪ちゃんを傷付けた昔の男に腹を立てながら、今の溪ちゃんの気持ちと、これからの溪ちゃんの人生を支えて行けるのか、少しの不安を生じさせていた。


      情けない事に、溪ちゃんの病気になった過去の話よりも一番衝撃を受けたのは、これからずっと、生涯溪ちゃんとセックス出来ないと宣言されてしまった事だった。


      溪ちゃんはセックスが嫌い、というレベルではないな・・・過去に受けた痛みから、怖ろしくて出来ない程なのだろう。


      好きな人と、セックス出来ないという現実。何度も俺が夢に見た溪ちゃんとの×××は、すべて幻になった。


      「・・・・・・」


      言葉が出なかった。


      情けないが、

      “一生セックスしなくてもいいから、付き合って下さい”と、その時、俺は言えなかった。


      結論をすぐに出せずに混乱していた。


      どうにか出来るなら、どうにかしたいだなんて解決策をアレコレ考えてしまい、次の言葉をすぐ出せなかったのが災いした・・・。


      「ごめんなさい。私はもう・・・加集さんとお付き合い出来ません。」


      「えっと、それは、もう少し考えてから結論を出そう。ね?・・・ところで、溪ちゃん、何で会社に行く恰好なの?今日、会社休みだけど・・・」


      「加集課長代理。」溪ちゃんが俺の事を初めてそう呼んだ。


      「あ、え?はい。」そんな風に呼ばれると、会社内だと錯覚しそうだ。


      「こちらを明日、村井部長代理にご提出頂けませんか?」


      「こちらを、って・・・」


      溪ちゃんは、上着の内側に右手を差し入れた。


      白い封筒をくるりと回転させ、表書きを見た瞬間、俺は驚いた。


      『退職願』


      何?何で、いきなり。


      これは受け取りたくない、けど先に溪ちゃんが封筒から手を離してしまった為、封筒は俺の手の中に残された。


      「明日からしばらく有給休暇を使用させて下さい。よろしくお願い致します。」


      スーツ姿の溪ちゃんは、まるで会社に居る時以上に、俺に向かってよそよそしくお辞儀した。


      「しばらくって・・・もしかして、もう会社に来ないつもりなの?」


      「正式な退職手続きの時に出社します。」


      「会社辞めてどうす・・・それで!アパート引き払ったの?」


      「はい。今までお世話になりました。」


      「これからどうするの?仕事は」「少し休んで、またどこかで働きます。」


      「どこかって・・・」


      「疲れてしまいましたので、これで失礼してもよろしいですか?」


      確かに溪ちゃんは疲れたような顔をしている。


      無理をさせてまで話したくはないけど、てもここで終わりなんて嫌だった。


      「溪ちゃん、話そう?今日・・・じゃなくて、別の日にさ、またきちんと」


      「話しても、どうにもなりません。」


      「溪ちゃん。」


      「いくら好きでも、どうしようもない事もあるんです!私の事は忘れて下さい。私も加集さんの事は忘れます。会うのもこれで最後にして下さい。今までありがとうございました・・・さようなら、加集さん。」


      その後、哲くんと酒を飲んで話して、そしてこの溪ちゃんの手帳とハンカチを渡された。


      処分して欲しいって、それから、溪ちゃんの事はやめた方がいいって・・・


      それってもう、溪ちゃんとは終わりにしてって事なのかな?


      お互いに好きでも、どうにもならない事って、何?


      よくある映画では、結婚の障害となるものは、家柄の不釣り合いやお金の問題。


      性的な問題で別れるという映画があるのなら、その結末を今知りたい。


      その通りにしようとは思わないかもしれないけれど、何かヒントがあるのなら、このまま進んだら二度と会えなくなるようなエンドだけは避けたい。


      セックスしない男女は、愛を育めない?


      それは分からないけど、俺が今まで付き合って来た女の子とは、いわゆる普通のセックスをして来た。


      どちらからともなく、自然な流れで、お互いに好きだから、それで体を重ねるものだと思っていた。


      だけど、それが嫌いな人もいる・・・


      セックスが苦手な女性もいるというのは、知識として知っていた。


      女性は初めての性交時に痛みを伴うと聞くからだろう。


      性犯罪被害に遭った女性も、そういう事はしたくないというのは当然だ。


      女性を不快にする男が悪い、と思う。


      ただ、それが自分の好きになった人に当てはまってしまうと別だ・・・


      好きな女性と、俺は普通にセックスしたい。


      普通ってなんだ?


      普通って、普通・・・付き合って、結婚して、子どもが産まれて、定年後は二人でのんびり・・・と、そういう一般的な夢を見ていただけだった、溪ちゃんと二人でそういう風になれたらって。


      ・・・なのに、

      付き合う事も、結婚も、子どもも・・・無理で、だったらせめて定年後に二人でのんびり暮らす・・・のも、駄目?


      そこまで先の俺の平凡な夢プランを仮に話したとして、溪ちゃんが気に入るとは限らない・・・「はい」と言ってくれないかもしれない。


      それから、「一生”セックス”出来ない」という言葉が胸に重く圧し掛かる。


      自慰なら・・・独りで隠れてこっそり?


      しかし現在、溪ちゃんに「軽蔑します」と言われてからは自慰する度に罪悪感に苛まれて、回数は激減し、殆んどしていなかった。


      なければいい。性欲があるからいけないんだ。


      いっそセックスしなければ、溪ちゃんと結婚出来る?


      わからない・・・俺は本当にそれでいいのか。無理してないのか。


      溪ちゃんにも哲くんにも、俺が溪ちゃんと付き合うより、別の人を探した方がいいような事を言われ、

      確かに、溪ちゃんじゃない女性と結婚して、子どもを産んで貰って、定年後に孫に囲まれながら穏やかに過ごす事は可能かもしれない。


      溪ちゃん以上に、俺を想ってくれる人がいればの話だけど。


      俺は哲くんから渡された紙袋の中からハンカチを取り出した。


      折り畳まれたそれを鼻先に当てると、特に匂いはしなかった。


      手帳を開いて、何度も溪ちゃんの書いた文字を辿っていると、ここに書かれている”K”という男の事は、何だか恰好良く書かれ過ぎていて、実は俺じゃないんじゃないかと思ったが、内容的に俺自身の行動と合致していたので、やっぱり俺の事だ・・・と判明した時
      は物凄く恥ずかしくなり、顔がボッと熱くなった。


      『今日のKさんのお昼は社食の日替わり定食で、残さず完食されてすごいなぁとみとれてしまった。私もKさんみたいにいっぱいご飯を食べられたらいいのに』


      『今日はKさんと同じエレベーターに乗れてドキドキした』


      『Kさんが笑っていた。なにかいいことがあったみたいで、私も嬉しくなった』



      そんなに好きなんだ、俺の事・・・他人事みたいに、溪ちゃんと溪ちゃんの大好きな”K”との恋を叶えてあげたくなっていた。


      “K”が俺なら、溪ちゃんの恋は叶ってる筈なのに、それでも駄目な理由ってどこにあるんだろう。


      溪ちゃんも好き、俺も好き、両想いなのに。


      何度も読んだ後、手帳というより、溪ちゃんのここに詰まった想いを簡単に捨てるなんて、出来なくなっていた。


      そして”K”である俺の運命は、間違いなく溪ちゃんの傍にある気がして来ていた。




      『運命の相手に別れを告げられた男の人生』


      運命の女性に出逢ったと思う男がいた。


      しかし、二人はそのまま別々の道を進み、結ばれないで終わった・・・という映画なら、よく知ってる。




      もしや俺もそうなのかな?


      そうかもしれない。結果は二度も溪ちゃんにフラれた・・・。理想と現実のギャップがあったからなのだろうか?


      溪ちゃんが好きなのは手帳の中の"Kさん"であって、イコール俺ではないという、皆まで言えない哀しい話。


      いつか誰かと結婚出来ると思い込んでいた俺が間違っていた?


      生涯独身の人も居る。


      俺は運命の人に愛想を尽かされて、独りで歩いて行く事になってしまった人間だったのか?


      菜津子さんもそうなのかな?


      想い続けた安藤部長と結ばれないまま定年まで働き、実家で家族を見送って一人で生きる・・・


      それを決意したんだろうか、すごいな、菜津子さんは女性なのに。


      いやいや、でもまだ菜津子さんは結婚を諦める事はない。今度また恋をしてスピード結婚とかする可能性だってある。


      誰でもいいからお見合いすると菜津子さんが言い出した時には、俺が立候補しようか?


      お互い、運命の人と別れてしまった者同士、案外上手く行くかもしれない。


      安藤部長にも菜津子さんの事を頼まれた事だし・・・今からそういう展開もありなのかな?


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      Author:碧井 漪
      絵師 西洋蔦(ib)さんと共に更新中


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      ☆総合目次☆

      *乙女ですって 相関図*

      *近男 登場人物紹介*

      *SとS 家系図*

      *恋愛小説 官能小説 作品一覧
      +覚書 2017.2*

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      2014.10.16設置



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