【夜の天気雨 特別編】また お会いしましょう~陽芽野と瑞樹~ 2 - sazanamiの物語
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    【夜の天気雨 特別編】また お会いしましょう~陽芽野と瑞樹~ 2

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    どきどきどき・・・

    今日は、初めての・・・

    デート。



    彼とは、土曜日9時に私の高校近くの大きな駅の前で待ち合わせ。

    今日のデートについて、愛梨ちゃん、若菜ちゃんに相談したら、昨日、学校帰りに買い物に付き合ってくれた。


    「こっちだってば。絶対スカート!」


    「ショートパンツの方がいいって。この黒いやつなんて脚が綺麗に見えて、セクシーじゃん?」


    「あ、あの・・・二人共、私はこれがいいのだけれど。」


    「ダメ!!」私の選んだ服は、二人に却下されてしまった。


    結局、二人の意見をミックスしたようなボトム、ミニスカートに見えるアイボリーのキュロットになった。裾がレースで飾られているけれど、少し短い気がする。


    「大丈夫だって。陽芽野は脚細くてキレーなんだから。」


    「そうそう、出さなきゃ勿体無いよ。」


    勿体無いってどういう事なのか、訊きそびれてしまった。


    上は紺色の薄い生地に白いドットが入ったブラウス。長袖だけど、ふんわりしてて涼しく、とても着心地が良かった。


    「かわいー。」


    「うん、いいね。じゃ、次はメイクー!」


    二人に言われるままにコスメグッズを買って、愛梨ちゃんのお家でメイク講習会。


    雑誌を開き、「その相手の彼の理想は、この女ね?」と、まるで仇のように愛梨ちゃんが雑誌を顔に近付けて、サツキさんの写真をじっと見つめる。


    「うん、そうだけど・・・」


    「任せて!雰囲気似てるからイケる!若菜、手伝って。」


    「ガッテン!」制服のシャツの袖を捲り上げる若菜ちゃん。


    二人がお手本にしているサツキさんのメイク。私が真似しても無駄だと思うのだけれど。


    「ほーら、完成。」


    「うわ、そっくり!カツラ被ったら姉妹みたいじゃん?」


    鏡を見せられて、そうかな?似てるのかな?あまりそんな気はしなかったけれど、二人が協力してくれて喜んでくれていたので「ありがとう。」とお礼を言った。


    「くーっ、かわいい。」


    「ほんとほんと。明日のデート、上手く行くといいね。」


    上手くって、どうすれば上手く行く事になるのかも解らない。


    「そうだ。あんまりグロス強くしない方がいいよ。男の人ってベタベタして見える唇にキスするの抵抗あるんだって。」


    「それアイちゃんの彼でしょ?一緒にしないでよ。」


    「そんな事ないよ。」


    「二人共、解ったから・・・」


    私の事で喧嘩になったら大変だと思った。


    「んふふ、キス出来るといいねぇ。」


    「出来るよ、ねっ?」


    「キスって、そんな・・・デートだって初めてなのに。」


    昔、男の人にキス・・・は多分された事ないと思うけど、忘れてるのかな。


    あ、ダメ、思い出さないように・・・嫌な記憶、忘れてしまおうとすればする程思い出されて気分が悪くなって来る。


    陽芽野は両手で頭を抱えて目を閉じた。


    ゆっくり息を吸って吐く。


    しばらく繰り返し、落ち着いてから目を開くと、私を心配そうに見つめている二人の顔がすぐ目の前にあった。


    「大丈夫?」


    「ごめんね、無理だったよね。キスとか忘れて、とにかく楽しく。目的は男の人に触れるようになる事。」


    「それ、違くない?」


    「ありがと、アイちゃん、若菜ちゃん。」


    二人は知らない。私のカラダの事なんて。


    私もぼんやりとしか憶えていない。すごく嫌だったという事しか―――


    「いいって事よ。礼には及ばないさ。」


    「こんなの夕飯前?」


    「あはは、今?夕方だから、夕飯前?」


    陽芽野も二人につられて、うふふと笑った。


    でも、心の中は、ひやりと冷たい。


    はっきり憶えてないからどんな事があったかなんて二人に言える訳がないし、それがショックで声が出せなくなってしまった事を、二人に教えた所で、嫌な思いをさせるだけだから・・・


    ただ一つ迷っているのは、セイさんにはこの事を打ち明けた方が良いのかという事。


    それとも、黙っていた方がいいのかしら?


    「早いね。まだ8時30分だよ?」


    改札を出た場所に立っていた私に声を掛けたのは―――


    「セイさん。おはようございます。」


    「おはよ。今日はいつもと感じが違うね。」


    「あっ、はい・・・」


    気付かれたかしら?今日の恰好は、サツキさんを意識していると。


    「それじゃあ、行こっか。」


    「はい。」


    私に近いセイさんの左手は、ショルダーバッグのベルト部分を掴んでいて今日は・・・手を繋いでくれない。


    私からセイさんに「手を繋いでくれませんか?」と聞くのも変だし。


    長袖のシャツをくるくると捲っていて、そこから見える曲げた肘の骨がゴツゴツしてて、男の人っぽい。


    でも不思議、怖くない・・・セイさんの事。


    お兄ちゃんみたいだからかな。


    愛梨ちゃんと若菜ちゃんは「怖くないって事は、好きなのかもよ?」「その人だけ平気なら、きっと運命の相手なんだよ。」と言っていた。


    運命の相手って、どうやって判るのかな?


    二人に詳しく訊いておけば良かったと後悔した。


    「どしたの?難しい顔して。何か悩み事?」


    「いいえ。考え事をしていて。」


    「考え事?どんな?」


    「大した事ではないです。」


    「そう。あ、着いた。ここの三階。」


    駅から続く通路を通って辿り着いたのは、複合商業施設。


    3周年記念セールと書かれた横断幕と、色とりどりの造花で華やかに装飾された正面入口はまだ開いていない。


    「あの、まだお店閉まってますけれど・・・」


    「こっち、裏口が開いてる。あ、言ってなかったね。映画観よう。」


    「映画・・・」


    「ごめん、嫌だった?」


    「いいえ。観たいです。」


    観たいとは言ったものの、今どんな映画を上映しているとか、私は何も知らなかった。


    「観たいのってある?」


    「特に・・・怖いの以外なら何でもいいです」


    「怖いのってホラー系?」


    「そうです。」


    「じゃあ、それにしよう。」


    「え・・・」


    「ウソウソ。俺、この邦画観たいんだけどいいかな?怖くないヤツ。」


    日本の映画・・・セイさんは、何となく海外の映画を選ぶのかと思っていたから意外だった。


    「はい。私は映画の事は詳しくないので・・・」


    そう言えば姫麗さんがセイさんの事を『映画バカ』と呼んでいたような。


    セイさんがチケット窓口へ向かった時、私のバッグの中のスマートフォンが振動しているのに気が付いた。


    「あ、姫麗さん。」


    映画館の入口の方を向いて「はい。」と電話に出ると、

    「陽芽野ちゃん、待ち合わせ9時だったよね。今駅なんだけど、どこ?」と訊かれた。


    「少し早く来てしまって・・・今は映画館です。これから邦画を観ます・・・あ、セイさんが戻って来たのでこれで。」


    「あ、ちょっ、陽・・・」


    急いでバッグにスマートフォンをしまった。


    「今の電話って・・・いや何でもない。」


    クスッとセイさんが笑った。


    そして

    「ひめちゃん何飲む?ポップコーンとか食べたい?」

    と訊かれたので、私はポップコーンは断り、アイスカフェオレを頼んだ。


    案内された席はカップル用の席で、真ん中に肘掛けの無いソファータイプになっていた。


    隣の席との仕切りがない分広く感じられた。


    でもこれだと、動いたら、隣同士、肘と肘がぶつかってしまうかもしれない。


    「はい、カフェオレ。」


    「ありがとうございます。あの、お金を―――」


    「いいよ。俺が映画付き合わせたんだから。」


    「すみません、いただきます。」


    椅子に座ると、すぐに暗くなり、予告が始まった。


    ブブブ・・・と振動するスマートフォン。バッグの中でこっそり見ると姫麗さんからのメールで

    『どの映画か分からないから、映画館のロビーで待ってる』

    姫麗さんの事をただずっと待たせてしまうのは申し訳ないと思ったけれど、劇場内に居る今はどうしようもなく・・・

    『すみません』

    とだけ返信して、スクリーンを見ると本編が始まった。


    セイさんが観たいと言った映画は、軽食を移動販売する車を手に入れた青年が全国を回って様々な人とふれあい、成長し、最後に自分にとって大切なものを見つけるというお話。


    物語の終盤、主人公の青年の乗る車が故障し、それを修理してくれたのは、口数の少ない山村に住む年配の男性。


    昔、車の整備工だったとぽつり話し始めたおじいさんは、実は病気で余命一ヵ月と宣告されていると言う。


    車の修理が終わり、ありがとう、とお礼を言ったのは主人公ではなくておじいさんの方だった。


    自分には何も残っていないと思っていた。


    だけど、あった。


    故障した車を直している間は、自分がどんな人間で、あとどの位生きていられるとか、そんな事はすべて忘れて、活きていられた。


    人が生きると書いて人生、自分はその時その時の今が一番活きて輝いていると思って走り続けた。


    そして嬉しい事と悲しい事を交互に積み重ねてここまで来た。


    この先の道もない、エンジンも止まり掛けた今になって感じる心を表すのはしあわせという言葉しか思いつかないと、気付かせてくれてありがとう。


    おじいさんは穏やかに笑い、主人公は声を出さずに泣いていた。


    あ、もうダメ・・・ぼろ、ぼろろっと涙が零れてしまった。


    暗い場内でバッグの中のハンカチを、手探りで探しながらチラリとセイさんの方を見る。


    スクリーンからの明かりで見える彼の横顔は真剣だった。


    まるでその映画の中に入り込んだ人のように、彼は今、この劇場内には存在しないかのように見えた。


    私が隣に座っている事なんて憶えていないみたい。


    トントン。左側の肩を軽く二度合図される。


    えっ?何?

    と、左隣のシートの人を振り返ると

    「どうぞ。」と、目の高さにハンカチを差し出された。


    「え、いえ・・・結構です。」


    ペア用のシートなのに一人で座っている、ちょっと怪しい男の人に小声で返すと

    「あなたのハンカチですからお返しします。」とその若い男の人は言った。


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    碧井 漪

    Author:碧井 漪
    絵師 西洋蔦(ib)さんと共に更新中


    作品の著作権は
    sazanami&ibにあります。
    無断転載は禁止しています。



    ☆総合目次☆

    *乙女ですって 相関図*

    *近男 登場人物紹介*

    *SとS 家系図*

    *恋愛小説 官能小説 作品一覧
    +覚書 2017.2*

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