SとS 13 (BL) 心の痛み - sazanamiの物語
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    SとS 13 (BL) 心の痛み

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      え・・・っ?!何、急に、どうしたの?何があったの?


      瞬太朗は梧朗に抱きしめられ、とても動揺した。

      「おと、お父さん、何、急に。」


      瞬太朗は、身体に巻き付けられた梧朗の両腕を両手で掴んで、引き離そうとした。


      しかし、がっちりときつく抱かれて離れられなかった。


      「愛してるからね、瞬の事。」


      え、え、えっ?!


      張りのある低い声を伴った梧朗の吐息が、瞬太朗の耳元を掠め、それから梧朗は、瞬太朗の顔が見える位置まで身体を起こした。


      それでもまだ、瞬太朗の背中には梧朗の腕が巻き付けられている。

      「聞いたよ、喧嘩したんだって?それで足を痛めたって。ここ・・・顔にあざを作ってる事にも気付かないでってセイに怒られた。本当に駄目な父親でごめんね。」


      「それは、俺が勝手にした事で、お父さんには全然関係ない事だから。」


      梧朗と姫麗の前では瞬太朗は自分の事を”俺”と言っていた。


      梧朗の真似をして”自分”というのはセイの前でだけだった。


      「あるよ。親だから。瞬のモヤモヤした気持ちとか、ぶつけるべきなのは、セイや知らない人に対してじゃなくて、自分達家族にして貰わないといけないのに、忙しいからってこうやって話もしなかった事を反省してる。」


      「セイ、監督がそう・・・言ったの?俺の気持ちをぶつけるのは家族にって。」


      「うん。自分も姫麗も子ども達の気持ちを蔑(ないがし)ろにしてるって。その通りだよね。ごめんね。」


      そう話した梧朗の腕の力が緩んだ。


      その隙を衝いて瞬太朗は梧朗の胸を両手で押し、ようやく梧朗に抱かれていた腕の中から完全に逃れられた。


      「二人共、仕事が忙しいのは分かってるから、今更そんなのは、いいけど、それよりも・・・」


      「良くないよ。弟達の面倒を見てる瞬が誰にも甘えられなくてセイに甘えるのもそれが原因だって言われて、お母さんも反省してた。」


      「違う・・・そうじゃ、なくて・・・」


      セイ監督はそんな事を言ったの?


      自分の事、もう嫌になったから”来るな”って言ったの?


      お荷物だと思ってるんだ・・・


      親友の子どもの面倒まで見ていられるかって、監督は忙しいのに、

      そうだよね。


      自分は今まで監督のお荷物で、迷惑を掛けていたんだ。


      監督は荷物を下ろして、今頃せいせいしてる。


      好きです、だって?


      だったら迷惑掛けるなよって自分で自分のして来た事に対して、鼻で笑いたくなる。


      恥ずかしくて、それで・・・


      やだな、すごく惨めで泣きたい気分になる。


      監督にどんな風に思われているか、これで完全に分かった。


      自分は、世界で一番寂しい人間になってしまったみたいだ。


      誰かに縋りたかっただけだと?


      自分はただ、監督に親の代わりの愛情を求めて縋り付きたかっただけと、監督に思われていた。


      そして迷惑だと切り捨てられた。


      俺は親じゃない、自分の親に縋って甘えろと言いたかったの?


      それで両親に子どもを甘えさせてやれって言うんだね?


      違うよ、監督。


      自分は、監督に対して他の誰へとも違う気持ちを持っているって、きちんと理解している。


      受け入れられないからって、突き放して逃げたの?


      うちの親じゃなくって、忙しいのは監督の方でしょ?


      本音では構ってられない、煩わしいと思っている。


      昔、愛してた相手の子どもってだけで、

      女でもない、扱いにくい自分みたいな男、監督が厄介払いしたくなるのは当然だよね。


      自分だってもし監督の立場になったらそうするかもしれない。


      悲しいけど、現実なんてこんなもの。


      いくら愛してたって求めてたって相手に振り向いて貰えなければ、

      いつまで経っても満たされず、しあわせを感じられないで不幸だと嘆きながらあがいて惨めに生きてくしか出来ないんだ。


      知ってる。


      知ってた。


      報われない想いだって。


      届く事を期待してはならない想いだって。


      この世の仕組みとして、生殖行動を行う男女の組み合わせが結ばれるように創られているのに、

      自分はどうしてそれに反する気持ちを抱いてしまうんだろう。


      一人だけおかしいから苦しい。


      「どうしたの?瞬。足が痛いなら座る?」


      梧朗に椅子を勧められた瞬太朗は、ぼうっとしながらそこに腰を下ろした。


      「お父さん、他にさ・・・セイ監督は何か言ってた?」


      「他にって?」


      「俺の話だって言ってたから、どんな話だったのかなって思ってさ。」


      どっきん、どっきん、どっきん。


      平静を装って話した瞬太朗だったが、鼓動が速くなり過ぎて息が苦しく、声が少し上擦ってしまった様に感じていた。


      「他には何も・・・・・・あ!」


      「何?お父さん。」


      カチャッ。


      グラスに入れたアイスコーヒーを二つとほうじ茶を載せたトレーを持った姫麗がドアを開いた。


      「何の話をしてたの?」


      あ!と言った梧朗の言葉の続きが気になっている瞬太朗は、姫麗をあえて見ずに、梧朗の言葉を促した。


      「お父さん、あ!って、続きは何?」


      「セイは映画の編集作業で会社とマンションを行ったり来たりだから、瞬に来ないで欲しいって・・・相手出来ないからさ、って言ってた。」


      「あ、うん・・・・・・俺もそんなに暇じゃないから、もう行かないよって、監督に伝えておいて。」


      「瞬、はい、コーヒー。」


      「ありがとう、お母さん。お父さんもありがとう。俺は、大丈夫。二人に大事にされてるってちゃんと分かってるし、感謝してるから。俺の事より仕事頑張って・・・もう部屋に戻っていい?受験勉強あるから。」


      ギッ。


      瞬太朗は手にグラスを持ったまま、椅子から立ち上がった。



      「瞬、これからは家の事とかいいから、好きな事をしてね。」


      「うん、ありがとう、お母さん。」


      パタン。


      瞬太朗は梧朗の部屋を出た。


      そして、スタスタと歩き、自分の部屋に入ると机の上にグラスを置き、窓も開けず、ベッドの布団の中に潜り込んだ。


      今日は暑い。


      うだるような暑さの中、このままどうにかなって意識を失ってしまいたいと思った。


      身体がどんどん熱くなっても、心はひやりと冷たい。


      イラナイ。


      自分は要らないって、そういう事でしょう?


      親に甘えろっていうのは、

      監督に甘えるなっていう事でしょう?


      "好きな事"って何?何もないよ。


      メンドクサイ、

      何もかも。


      自分のこの気持ちが一番メンドクサクて、どうにもならなくて苦しい。


      うっ、ううっ、ぐすっ・・・


      止め処なく溢れて来る涙は体温より冷たい。


      好きなのに、好きだから、

      好きな人に拒絶されるのって辛いね。


      お父さんはいいな・・・セイ監督に一時でも愛されて。


      自分もお父さんみたいに美人に変身する事が出来たら、少しは好きになって貰えたかな?


      こんな風に、いきなり突き放されたりしなかったかな?


      どんどん惨めになる。


      あの人の息子だから。


      セイ監督の愛した俳優、

      自分の父親、

      羨ましいと思うのは、みんなから必要とされ、愛されるところ。


      あの人になり代わりたいとは思った事がないけれど、

      今の自分より何億倍もいい人だと思える。


      この世で一番、自分が嫌いだ。

      消し去りたい。









      ちりん、ちりん、ちりん、ちりん・・・


      耳に届いた音に気付いて目を開けると、ベッドの上だった。


      部屋が暗い・・・もう夜?


      頭痛い・・・ひんやりしてる。


      おでこの上には濡らしたタオル。


      部屋の中も、夜だからなのか、風が入って来るからなのか、昼間よりうんと涼しい。


      見ると机の上の窓が開いていて、カーテンレールに風鈴が吊るされていた。


      音を出している物の正体が判った。


      何で風鈴がここに?


      額のタオルを手に持った瞬太朗が、記憶を辿りながらベッドの上に上体を起こすと、こめかみに痛みが走った。


      「いっ、たいっ・・・!」


      尋常じゃない痛み。


      何、これ・・・


      部屋のドアは廊下に向かって開いていた。


      「瞬、大丈夫?」


      部屋に入る廊下の灯かりの中に影を落としたのは姫麗だった。


      手にはグラスに入った水とアイス枕を持っている。


      「頭、が、すごく、いたい・・・」


      「熱出してたのよ。麗がお兄ちゃんがおかしいって教えてくれたの。どうして窓も開けずに部屋に居たの?熱中症になるところだったわよ?」


      「あ・・・うん・・・頭、いたくて、それどころじゃ・・・ない・・・」


      「これから病院行く?タクシー呼ぶわ。」


      「い、いい、よ、いか、ない・・・おとう、さんは?」


      「仕事に行ったわ。今度休みを取る為にって夕方に事務所に行ったの。」


      「そう・・・」


      「起きられる?ご飯は食べられそう?」


      姫麗はグラスを差し出した。


      「今は、いい・・・いらない。」


      「うん。」


      姫麗は瞬太朗の頭をそっと撫でた。


      じわり・・・瞬太朗の目の奥が熱くなって、


      「・・・・・・頭、いたい・・・」


      瞬太朗は、そう言って誤魔化しながら、涙を零した。


      「うん。」


      姫麗はベッドに腰を下ろして、瞬太朗のおでこに手のひらを当て、それからゆっくり背中をさすった。


      ちりん、ちりん、


      割れそうに頭が痛くても、良かった・・・と瞬太朗は歯を食い縛って耐えなければならない程の痛みの中で思っていた。


      この痛みがある間だけ、もっと辛い胸の奥の痛みを忘れていられるから、と。

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      若さからか 性格からなのか…
      瞬は、何事も 真っ直ぐ捉え過ぎている気がしてならない。
      言葉の裏には もっと 深い意味が隠されてたりするのに!

      まぁ それもこれも セイが 悟朗に言った 方向違いの言葉のせいでも ありますけどねぇ。(;¬д)(д¬;)ネェ

      しかし セイ監督!
      それって 無自覚から来たものなの?
      σ( ̄、 ̄*)ん~~ 
      私は、意識的に わざと しているとしか思えないんだけどなぁ。

      でもねー
      セイが ある意味 悟朗に一途な所も好きだったりしますの私♪
      Σ( ̄□ ̄ =;)ハッ! 
      傷ついているのに 不用意な言葉を言って ごめんよ 悟朗!

      罪滅ぼしに 良い事を教えてあ・げ・る♪
      瞬は瞬なんだから どんなに頑張っても 悟朗にはなれないんだよ!?
      だから パパに似せようとしない方が、セイには・・・
      今回は ここまで♪ヾ(  ̄▽)ゞオホホホホホ...byebye☆

      けいったんさん コメントありがとうございます(*^^*)

      > 若さからか 性格からなのか…
      > 瞬は、何事も 真っ直ぐ捉え過ぎている気がしてならない。
      > 言葉の裏には もっと 深い意味が隠されてたりするのに!

      若さですね、きっと。

      瞬太朗は冷静で賢いタイプとして、両親が賑やかな分、一歩引いてる感じというのがキャラクター設定(相違相恋6話)だったのですが・・・恋で溺れさせてしまいました(しかも相手がセイで申し訳ないm--;m)。


      本当にどうなるんだろう・・・ラストが見えない話を書く事は殆んどないので貴重^^;?です



      > まぁ それもこれも セイが 悟朗に言った 方向違いの言葉のせいでも ありますけどねぇ。(;¬д)(д¬;)ネェ

      > しかし セイ監督!
      > それって 無自覚から来たものなの?
      > σ( ̄、 ̄*)ん~~ 
      > 私は、意識的に わざと しているとしか思えないんだけどなぁ。





      > でもねー
      > セイが ある意味 悟朗に一途な所も好きだったりしますの私♪

      セイが一途で好きとのお言葉をいただきまして、今後の展開を考えてみました。


      セイならこう言うかな?というセリフが浮かんだのは良いのですが、まだまだ先の場面になりそうなので、次回が真っ白な原稿と明日から(今日は遅くまで仕事なので・・・)また向き合いたいと思います。


      > 罪滅ぼしに 良い事を教えてあ・げ・る♪
      > 瞬は瞬なんだから どんなに頑張っても 悟朗にはなれないんだよ!?
      > だから パパに似せようとしない方が、セイには・・・
      > 今回は ここまで♪ヾ(  ̄▽)ゞオホホホホホ...byebye☆


      梧朗になれそうなカレ(Hくん)も出そうかと画策してましたが、もうそれどころじゃない感じで・・・セイが出ると話が勝手に進むので、どうしようφ(--;)


      理想は、引っ掛かって止まっている相違本編(まだ6月)がダーッと8月~9月に前進してくれたら(遅筆な作者が全てイケナイのです)、それに絡めて光樹を出せる・・・かな?と・・・


      瞬太朗が梧朗に似せて自分を近付けようとするのか、それをセイはどう見るのか、書けたらいいな!とまだ上げられない、先の話ばかり書いていて、次話がドウナル?!・・・φ(^^;)ドウスル。


      プロフィール

      碧井 漪

      Author:碧井 漪
      絵師 西洋蔦(ib)さんと共に更新中


      作品の著作権は
      sazanami&ibにあります。
      無断転載は禁止しています。



      ☆総合目次☆

      *乙女ですって 相関図*

      *近男 登場人物紹介*

      *SとS 家系図*

      *恋愛小説 官能小説 作品一覧
      +覚書 2017.2*

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      2014.10.16設置



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