sazanamiの物語
    コンテントヘッダー

    縺曖 220

    にほんブログ村テーマ 小説同盟へ
    小説同盟


    本を買う為、僕は文具にあまりお金を掛けなかった。


    母に買い物のついでに、安いノートを買って来て、シャープペンシルの芯と消しゴム、赤ペンもお願いと頼んでしまう事が多かった。


    使えれば何でもいい。ボールペンは皆が持っているようなおしゃれな物ではなく、町内清掃に参加した時に頂いた、自治会名の入った物だった。


    例えばこんな、つやつやして花柄の、おしゃれで握りやすいボールペンはいくらするんだろう?


    680円と消費税で734円。

    続きを読む

    テーマ : 恋愛小説
    ジャンル : 小説・文学

    コンテントヘッダー

    暁と星 49 お別れのくちづけ


    にほんブログ村 恋愛小説


    旺治郎が最後に星良に教えておきたい事とは───言葉遣い、立ち居振る舞いの事かと考えた星良は身構えた。


    そんな星良の前で、旺治郎はいつも掛けている丸眼鏡を静かに外し、ポケットにしまった。


    そして星良の頬に手を当てた。やさしく包むように。その手をゆっくりずらした旺治郎は、親指で星良の下唇をなぞった。


    旺治郎の指先が星良の唾液で濡れた。星良はそれが恥ずかしくて、目を伏せる。


    すると、旺治郎は両手で星良の頬を挟み、自分の目と合わせるように星良の顔を動かした。


    「教えておきたい事って、何でしょう?」


    いつもとは違う旺治郎の様子に戸惑いつつも星良が訊ねると、旺治郎は「一番好きな人に贈るくちづけの仕方です。」と答えた。


    「一番好きな人に贈るくちづけ・・・?」


    「はい。」


    冗談を言っているのかと思って見た旺治郎の眼差しは真剣だった。星良は普段、眼鏡を外して合わせる事がなかった旺治郎の黒い瞳に魅了され、動けなくなった。


    少し開いた旺治郎の唇が星良の唇に近付いて来る。


    思わず星良は目を瞑った───しかし、何も起こらなかった。


    そうよね。旺治郎は、“一番好きな人に贈るキス”の仕方を教えると言ったの。実際にキスをする訳ではなかったのだわ。


    ホッとした星良が目をぱちりと開けた瞬間、目に飛び込んで来たのは、近付く旺治郎の黒い瞳だった。


    え?


    旺治郎の瞼が瞳を隠した瞬間、星良の唇は旺治郎の唇と重なっていた。


    え?!


    私にそっと触れた唇は、少し震えているみたいにも思えた。


    違う体温が混ざり合い、同化して行く感覚。


    ああ・・・このまま唇を通して、あなたの中に吸い込まれてしまえばいいのに。


    触れる唇のぬくもりが愛おしい、だからこそ、私があなたに抱き締められる度に罪悪を感じる。


    私以上にあなたを愛している人、そしてあなたも愛している人、暁良ちゃんに申し訳なくて・・・


    ごめんなさい・・・


    星良は旺治郎の胸を両手で押した。


    「もう・・・いいです。十分、分かりました。ありがとうございました・・・」


    星良はボロボロと涙を零した。


    「───離れても、私は、星良さまのしあわせをいつまでも願っています。」


    ぎゅっ・・・


    星良は旺治郎の胸に強く抱(いだ)かれた。


    「今・・・」


    星良はこのまま死んでしまいたいと思ったけれど口にしなかった。


    旺治郎と離れたくない。またあの寂しさを味わいたくない。この前は一週間も経たなかったけれど、今度は一生・・・再び会えるかどうかも分からない。


    そして二度と、こうして抱き締めては貰えない。彼には大切な人がいる、私ではない人がいるから。


    結ばれない運命。それでも惹かれてしまう、あなたに。


    こんな激しい想いを知りたくなかった。


    結ばれないのなら、出逢わなければ求めずに済んだと思うと、悲しくて遣り切れなくなっていた。


    『愛してる』


    そんな言葉を吐き出したいと思う相手が、自分の目の前に現われると思っていなかった。

    続きを読む

    テーマ : 恋愛小説
    ジャンル : 小説・文学

    コンテントヘッダー

    縺曖 219




    「選ぶの手伝ってよ、伸長くんも勇田さんの事、知ってるでしょう?」


    「うん。」でも・・・と僕は続けるのを我慢した。


    勇田さんに悲鳴を上げられる程嫌われている僕が選んだ物なんて、彼女は嫌がるのではないかと。


    しかし、ここで一緒に探さないなんて薄情な事は出来ない。


    「どんなのがいいと思う?」


    皇くんに訊かれて、それは僕も同じく悩んでいるよとも返せず、


    「文具の方に行こうよ。」と無難に答えた。

    続きを読む

    テーマ : 恋愛小説
    ジャンル : 小説・文学

    コンテントヘッダー

    乙女ですって 214 (R-18) 婚姻届

    にほんブログ村テーマ 恋愛小説(オリジナル)へ
    恋愛小説(オリジナル)


    隆人が救急車で病院に運ばれた頃、木南は溜め息を吐いていた。


    今日は土曜で会社は休み。十時頃起き出した木南は、顔を洗った後、洗濯物を放り込んだ全自動洗濯機のスイッチを押すと、キッチンへ移動した。


    電気ケトルに水を入れ、コンセントを挿すと、マグカップにインスタントコーヒーの粉末とスティックシュガーを二本分入れる。


    冷凍庫から、凍った食パンを取り出し、ラップフィルムを剥がす。


    そうして、オーブントースターのトレーに載せたパンには、スライスチーズが既にくっついていて、ただ8分程焼くだけでチーズトーストが出来る。


    パンを焼いている間に、電気ケトルで沸かしたお湯をマグカップに注いでスプーンで掻き混ぜた。


    チーン。


    焼けたチーズトーストを載せた皿と、マグカップを持ち、木南はローテーブルの前に移動した。


    ベッドを背にして腰を下ろす。


    「いただきます。」


    あまりに静かなので、思わず声を出して、少し虚しくなった。

    続きを読む

    テーマ : 恋愛小説
    ジャンル : 小説・文学

    コンテントヘッダー

    そうそうない 12 2015年8月30日のこと(5)

    にほんブログ村テーマ BLイラスト・漫画・小説何でも書いちゃう!へ
    BLイラスト・漫画・小説何でも書いちゃう!


    水族館の巨大水槽の前、大きなエイが悠々泳ぐ姿を見るわーさんの横顔に、僕は見惚れていた。


    イルカショーの始まる時刻が近付き、小さな水槽が並ぶ展示場に移動した僕らの周りから人けがなくなり、わーさんと手を繋ぎたくなった僕はそっと、彼の手に手を近付けた。


    きゅっ。


    僕からではなく握られた手は、随分小さいと感じた。


    隣に立つわーさんの顔を見ると、あれっ・・・そこにあった筈の顔がない。


    『元、早く行こう?イルカショー始まるよ?』


    声を辿ると、わーさんの背は縮んで・・・というより、不思議な事に、わーさんは彼女の姿に変わっていた。


    でも、声はわーさんだ。


    イルカにはしゃぐ彼女の姿。でも中身はわーさん・・・もしかして、彼女の体を借りて、僕に会いに来てくれたのかと考えてしまう。

    続きを読む

    テーマ : 恋愛小説
    ジャンル : 小説・文学

    コンテントヘッダー

    縺曖 218

    にほんブログ村テーマ 創作倶楽部へ
    創作倶楽部


    「さて、と・・・ここにしようかな。」


    両腰に手を当てた皇くんは、さっきと違う店の前に立って僕を振り返った。


    「ここ?」


    「うん。」


    僕も名前を聞いた事のある、バラエティーに富んだ商品が多数陳列された店だった。


    続きを読む

    テーマ : 恋愛小説
    ジャンル : 小説・文学

    コンテントヘッダー

    そうそうない 11 2015年8月30日のこと(4)

    にほんブログ村テーマ リアル・恋愛小説へ
    リアル・恋愛小説


    「ガーゼ、どこにやった?」


    頭をテーブルの上に出してから訊ねると、

    「もう平気です。」と微笑む彼女。


    平気な訳ないだろう。僕にも経験があるから分かるが、足の甲の皮膚は薄く、少しの火傷でも物凄く痛い。


    彼女の場合、火傷した面積が広いから、靴下だって履くのは辛い筈。


    それもこれも、僕のせいだ。


    だから今夜も彼女を追い出せない。

    続きを読む

    テーマ : 恋愛小説
    ジャンル : 小説・文学

    プロフィール

    碧井 漪

    Author:碧井 漪
    絵師 西洋蔦(ib)さんと共に更新中


    作品の著作権は
    sazanami&ibにあります。
    無断転載は禁止しています。



    ☆総合目次☆

    *乙女ですって 相関図*

    *近男 登場人物紹介*

    *SとS 家系図*

    *恋愛小説 官能小説 作品一覧
    +覚書 2017.2*

    応援バナー
    いつも応援ありがとうございますm(T▽T)m
    にほんブログ村テーマ 恋愛小説(オリジナル)へ
    恋愛小説(オリジナル)
    にほんブログ村テーマ 小説15禁・18禁(性描写あり)へ
    小説15禁・18禁(性描写あり)
    blogramによるブログ分析
    blogramランキング参加中!
    ↑当ブログ成分が
    解き明かされています(//∇//)






    2014.10.16設置



    最新記事
    検索フォーム
    全記事表示リンク

    全ての記事を表示する

    アクセスカウンター2012.6.28~
    ご訪問ありがとうございます
    現在の閲覧者数:
    リンク
    最新コメント
    カテゴリ
    月別アーカイブ